表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異獣飼い  作者: 喜拓
1/1

人の心

 生まれた時から()()()は傍にいた。








 高校に入学してから、気づいたら3か月ほどたっていた。友達もいるし、寮での生活は楽しかった。ただ一つ気掛かりがあるとすれば...

「渡部、目にくま出来てるぞ。」

僕の肩に乗っているシバがそう言ってきた。

生まれた時からこいつは、僕のそばにいた。見た目はただの柴犬だけど、とても小さく他人には見えないのだ。そして何よりうるさい。

「夜中、話しかけ続ける奴のせいだろ」

ため息をつきながらシバに言うが、当の本人は聞いていないようだった。

「渡部がかまってくれないからだぞ...」

もう意味がわからん。隣にこいつがいなければ、朝の通学も散歩感覚で楽しめたのに...

そう考えていると前から二人の女の子が歩いてきた。制服からして近くの中学生だろう。

「髪型変えたんだね~、か~わ~い~い」

腰当たりまで髪のある女の子が言うと、もう一人の女の子は顔を赤くして笑っていた。

一見、ただの仲のいい友達の会話に聞こえるが、僕にはこう聞こえる。

「髪型変えたんだね、か~わ~い~い」『ブスが出しゃばんなよ』

更にあの顔を赤くしていた女の子も、『当たり前のことじゃブス』


こう聞こえるのだ。原因は分かっている。

「おいシバ、()()()?」

「何の話ぞ?」

こいつ、とぼけてやがる。

「おい、殴るぞ」

握った拳を顔まで上げる。認めないのなら、このまま殴ってやろう。

「わかったわかった、すまんぞ。罪は認めるが、殴られるなら女がいいぞ」

そうだこいつMだった。その上エロでオス、何より厄介なのが、こいつの『心を読み取る能力』

小さい頃からこの能力に困らされ続けてきた。普通の人はこの能力を羨ましがるかもしれないが、現実はそうはいかない。

陰口を言われているのがわかるし、人の心が読めるが上気を遣う必要があるのだ。

めんどくさすぎる。まぁとりあえずがん押ししておこう。

「シバ、次見たら一発な?」

「ひどい!女を見なかったら死んでまう」

反省していないのがまるわかりだった。

この『心を読み取る能力』はシバの視界に入った人物に発動される。つまり、シバが見た人物の心が読み取れるのだ。

学校までは決して遠い距離でもないのに、こいつのせいで足がすでに重い。

しかし、学校を遅刻したらしたでまためんどくさい。怒られている自分を想像し、足を無理やり学校へ向かわした。





 教室に入ると同時に、チャイムがなった。心なしか教室がいつもよりざわついていた。それに、先生もまだ来ていない。少し気になり男子の輪に混ざりに行った。

「今日、なんかあんの?」そう問いかけると、その輪の中にいた人は驚いていた。

「は?渡部知らねえの!?美人転校生の噂!今日だぜ!」

そのうちの一人が興奮しながら言ってきた。

「ハ-フらしいぜ!」「しかも知的!」「狙ってみるか」

などと、次々とその転校生の情報が言われる。一体どこから仕入れたのだろうか。

話を聞くのが疲れたので僕は席にもどった。

 数分後、担任が教室に入ってきた。「静かに!!」と甲高い声で注意を二、三回続けていたが、一向に静まることなく、担任は諦めその転校生を呼んだ。

「麻衣さん。いらっしゃい。」

ガラガラと開いた引き戸からその転校生が歩いてきた。

すると、その転校生は黒板の前で止まりおもむろにチョ-クを取り出し、大きく名前を書いた。

福田麻衣(ふくだまい)です。気軽に話してください。」

そう言って一礼をした。男達からは黄色い歓声、女達からは「よろしく-」「可愛い-」

『友達にしよう』  『負けた…』

などと口々に声をかけていた。

福田って姓でどこがハ-フだよ。ふきだしそうになったのをぐっとこらえていると、ふと違和感を感じた。

福田が自己紹介をした時、周りの女の心の中は読めていた。それは、シバは周りを見ていたことになる。

ましてや、あのエロ犬のシバだぞ?可愛い女が来ると聞いて見ないはずがない。

左肩を横目で見ると案の定シバと目が合った。どうやら考えていることは同じらしい。

「シバ、見ていたよな?」

小さな声で一応確認すると、シバはゆっくり頷いた。

「僕、心読めなかったんだけど...」

シバに動揺を隠しながらそう言った。

「警戒しておいたほうがいいぞ」

いつにもなく真剣な声だった。

顔をあげると福田と目があった。

慌てて目をそらした。不自然だっただろうか。まぁいい、いま関わりあうのは気が引ける。

これでマイナスイメージを持ってくれると願ったり叶ったりだ。

再び肩にいるシバに目を戻すと、シバは震えていた。何があったのか聞く前にシバが口を開いた。

「あいつ俺を見て笑いやがった...」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ