プロローグ〜孤独な世界〜
私は1人だ。孤独だ。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを理解しようとしてくれない。誰も私のことを……。
私には感情がない。いきなりで申し訳ないが……理解してほしい。痛いとか辛いとか疲れたとかはあるけどこれは感情ではなく感覚。嬉しいとか楽しいとか嫌いとか好きとかって言う感情がない。八重 彩。14歳。中学2年生で、通ってるのは私立花園学園。感情がないため、私には笑ってる女の子達の中に入れない。ひたすらに無表情で読書をするのが趣味。あとはヘッドホンをして音楽を聴くとか、イラストを描いたりとか。部活にも顔を出す。だが……。
「さやかぁ、もうちょっとくらい表情つけてもいいんじゃない?ほらこことかさぁ、ちょっと上に描くだけで笑ってる顔になるんだよ?うまいんだからさぁ、もうちょっと表情とかのバリエーション増やしたほうがいいと思うんだよね〜。」
ほぼ毎日部長にこんなことを言われている。私は漫画、イラスト部。その中のイラスト支部である。漫画、イラスト部はストーリー思案支部、漫画支部、イラスト支部に分かれている。(イラスト支部は事実上、部長と私だけである。)イラストを描いて、たまに挿絵にしてもらったりしている。応募とかも結構する。ネットにUPもする。私は大抵。すぐにアポが取れて。挿絵の依頼をされる。だからそこそこうまい。ことにはうまい。
「八重さん、お願いがあるのだけど、表情豊かな子、描けるかしら?主人公を描いていただきたいの。」
よくこんなお願いをされるが………笑った顔とはどの顔だ?あの目が開いてるのかどうなのか分からない顔か?私は基本無表情の子しか描かないため、よく分からない。イラストノウハウ本を買って読んでも、描けない。自分でできることは描けるが、自分でできないことは描けない。だから私はそういう話は申し訳ないが断っている。私だってやる気がないわけではないが…できないのだ。分からないから。
ある日言われた。あなたは気持ち悪いと。
「なんなの?私はイラストレータープロなんです気取り?無表情でお澄まし顔して。さぞ私たちがアホらしく見えるんでしょうね!私たちみたいにできることが限られてる人がアホのようにあなたには写ってるのでしょうね!!」
決して嫌ではなかった。何も感じなかった。だから私は返事を間違えてしまった。
「それを私に言って、どうなるの?」
と。
部長と副部長の会話が聞こえた。
「彩ちゃんは多分、私たちのことを見下してるわ。見損なった。あの子は……感情を押し殺して、心の中では私たちのことを嘲笑ってるのよ。」
そんなこと……するはずがないのに。私はそれから、人を信じたくなくなった。
信じれないんじゃない。
__信じたくなくなった。
私は1人だ。孤独だ。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを理解しようとしてくれない。誰も私のことを……。