ラスボスが強すぎてどうしても倒すことができないので、アイテム無限増殖バグを使うことになりました
パーティは全滅してしまった.....。
セーブしますか?
はい◁
いいえ
..............
目を覚ますと宿にいた。木でできた古風な雰囲気で、時々木の香りが漂ってくる。
ベッドが4つありそれぞれ勇者、僧侶、魔法使い、武闘家が使っていた。
勇者は起き上がり、この場所が宿だとわかると「また負けたのか」とだけ呟いた。
勇者一行は、ついにラスボスである魔王と対峙した。強大な力の魔王を相手に、何回やっても何回やっても何回やっても、勝利を掴めずにいた。
レベルや持ち物は決戦に向かうのに事足りることはなかった。いや、ないはずなのだが、何度挑んでも勝つことはできない。
「あの『魔王の威厳』ってのがズルすぎるんだよな」
何回も負け続けてどんよりする空気の中、勇者は口を開いた。「魔王の威厳」というのは、ランダムで発動しHPを大回復し、自分にかかっている攻撃や防御などの弱体化、いわゆるデバフという奴を全て消し、攻撃防御素早さなどのステータスを大幅にあげるというもの。
そこから繰り出される闇属性の攻撃が強すぎるため、回復してもHPを全部回復できず、ダメージが蓄積して行き回復してもそれが追いつかずにどんどん瓦解して行く。
「あそこまでダメージが大きいと、さすがに回復が追いつかないのよね」
「あれをされるとどうしても回復が追いつかない。どうすれば......」
しばらく4人は黙り込む。しばらく無言が続き、「あっ」と勇者が声を漏らした。
「仕方ない、こうなったら....雫を手に入れるか」
勇者はカバンから瓶を取り出した。水色で上から下に波のような模様が施されたビンで、中には真っ青の液体がポチャン、という音を立てながら波を作っている
「でもそれ、1個しか手に入らないとても貴重なものなんだぞ」
この「安らぎの雫」というアイテムは味方の1人のHPとMPを全回復させるという強力な効果を持っている。
だが、その代わり、武闘家の言うとおりこれは1個しか手に入らない貴重なアイテムで、使いどきを 選ばなければならないものだった。
それもあり、これを使わずにクリアしようと考えるものも、少なからずいた。
「ああ、これは村人から聞いたんだが、これを増殖できる技があるらしい」
それはゲームとかによくある「バグ技」と言う奴の類で、ゲームやソフトに危険を及ぼすこともある。
バグモンスターを生み出したり、アイテムを無限増殖したり、残機のあるゲームでその残機を増やしたりする事が出来る。
「まず、カバンを開きながら宿の角を進む」
勇者はまるで壊れたロボットのように壁に向かって直進し続ける。そしてカバン開けたり閉めたりを繰り返す。
するとしばらくして勇者はどこかに消えた。
「あれ、消えた!どこに行った!?」
「天井あたりにいる。こうやってバグ世界に行けたら増やしたいアイテムを使う.....と」
天井の辺りにいる勇者はそこで安らぎの雫を使う。するといつのまにかベッドの横に勇者が現れた。
カバンを開くと安らぎの雫が2個に増えている。
「増えてる!よし、これを使って魔王を倒すぞ!
「「おおー!」」
全員でアイテムを無限増殖することとなった....。
「ははは、また前と同じように葬ってくれるわ!!!」
魔王との決戦の時が来た。ピリピリとした緊張感が走る。魔王は靄のような黒いオーラをみにまとい、再び立ちはだかる。
「もうお前の知っている俺たちではない!!さあ行くぞ!!魔王!!」
「来い!!返り討ちにしてくれるわ!!」
剣を振りかざし勇者は高く飛ぶ。魔王が手を突き出すと黒い靄は黒い剣へと変わり、勇者の剣と相対させる。キン!という音とともに金属の擦れる音が静かな魔王城に響く。
すかさず魔法使いが杖から炎を出す。ゴーっという音とともに炎は円形になり、勢いよく魔王に向かって行く。そして目的の場所に着くと轟音をたてて爆発する。
魔王の怯んだ隙にその刃を振りかざし、魔王を斬りつける。
「くっ.....小癪な!!」
魔王が剣を一振りすると波動が飛び、全員を遠くに吹き飛ばす。
「くそ、使うしかないか!」
勇者は安らぎの雫を取り出し、一気に飲み干した。
「ははは、その安らぎの雫は1度しか使えないはず!そんなアイテムを使うとは愚行だな!」
勇者は瓶に入った液体を飲み干すとみるみるうちに傷が消えて体が軽くなったような気がする。
「また先ほどのように焼け付くしてくれるわ!」
「魔王の威厳」が発動し、HPを回復し大幅に能力を上昇する。
靄がどんどん大きく広がっていき、周りにまるでオーラのように身に纏った。それは禍々しい雰囲気を醸し出す。
「私の前から消え去れ!!」
靄は黒い波動となり、再び勇者達に襲いかかる。その圧倒的な力で城の壁や椅子などが崩れて行く。
「ははははは!お前らに勝利は来ない!!」
「それはどうかな??」
取り出したのはまたもや安らぎの雫だった。
それを見て魔王はあっけにとられてしまう。
「え、ちょっと待って、それって1個しか手に入らないはずなんだけどなんで2個もあるの?」
「ふっふっふ、実はお前と戦う前にアイテム無限増殖のバグ技を使ってこれを増やさせて貰った!カバンにはまだ997個あるからな!」
「お前、いくら勝てないからってそんなずるいことするのか!なんて最低な野郎だ!」
「いや、世界を滅ぼす魔王がそれ言うか??」
正論をぶつけられ、何も言えなくなる。
他のメンバーも安らぎの雫を取り出し一気に飲み干した。
「いくら勝てなくていくら勇者だからってやっていいことと悪いことだって......」
「行くぞ!」
勇者と魔王は激しい戦いを繰り広げた。一進一退の攻防と言うよりかは勇者側による一方的な暴力と言うべきものだった。
雫が全回復の為、魔王の攻撃で倒れる事は無く、ひたすら勇者達に攻撃を受ける。
「ぎゃあああああああああ!!!」
魔王は呻き声をあげながら消えて行った。
「つ、ついにやった!!やったぞー!」
あまりの嬉しさに勇者は声をあげた。その声は崩壊した城から響き渡った。
「ちょっとずるい気もするけど.....まあ、倒したし.....」
「これで世界は平和になったんだ!」
その時だった。勇者達が城で喜ぶ光景は黒い幕に閉ざされ、一面黒色だけが残った。
クロノスRPG
はじめから
シャットダウン
データが吹っ飛んでしまうのでゲームでの過度なバグ技には気をつけよう!!!
この小説のようにバグ技やってデータが消失しても責任は自分にあります。
(最近のは無いだろうけど.....)