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潮風  作者: きりん
6/6

6話

汐の夏休みの課題を終え、夏休みも終盤に差し掛かっていた。今週末はいよいよ約束していた花火大会に行く日だ。

いつものようにダラダラしていたが、ふと思い立って買い物に行くことに決めた。花火を見に行く時に着る浴衣でも買おうかと思ったからだ。汐を買い物に誘おうと思ったが、たまには1人で買い物にでも行こう。

さあ、出かけようと思い外へ出たが、やはり暑い。断念しそうになるがなんとか駅に向かい歩みを進めた。

駅に着くと、久しぶりに北見さんに会った。

「あっ、北見さん」

「遥ちゃん久しぶり〜」

「北見さんここで見かけるの初めてだけど何か用事でもあるの?」

「汐に呼ばれて汐の家に行くの。てっきり遥ちゃんも呼ばれているのかと思ってた」

「いや、私は呼ばれていないけど... 」

北見さんを呼ぶなんて珍しいな...。どんな用事あるんだろうか?

「遥ちゃんが暇ならよかったら汐の家に来る?汐もその方が楽しいと思うし」

「いや、私は遠慮しておくよ。今から買い物に行くし」

「そっかぁ。ちなみに何を買いに行くの?」

「えっと、それは...」

北見さんに伝えるのが恥ずかしいわけではのに汐の家に行くことを聞いてなんとなく言いづらさがあった。

「別に言いたくないなら言わなくてもいいよ?」

「浴衣を買いに行こうかと思って...」

「なるほどね〜、もしかして汐と花火観に行くのに着るの?」

なんで知ってるんだ⁉︎っと思ったが汐とは仲が良いため話したんだなと察した。

「そうだよ。私は浴衣持ってないし着ていくのも良いかなーって思ってね」

「ふ〜ん、まあ遥ちゃんなら何でも似合うと思うよ!」

「でも柄とか色とかどうしようか悩んでるんだよね〜」

「遥ちゃんはクールなイメージだから水色とかいいんじゃないかな?あっ、でも前に海に行った時に着てた水着はピンクで似合ってたし迷いますなぁ」

そう言う北見さんはどこか楽しそうであった。

「北見さん、時間は大丈夫なの?」

「あっ、待ち合わせの時間過ぎちゃう!じゃあ私はそろそろ行くね!」

そう言って北条さんは汐の家に向かおうとしたが、5メートルほど走ったところで振り返り、

「遥ちゃん、買うものに迷ったらメールしてね!汐が好みそうなの考えとくから!」

そう言い残して走って行ってしまった。

なんかこれって汐とデートみたいになってる...?という考えが思い浮かんだが、このうだるような暑さのせいで思考回路がショートしているということにした。


ようやくいつものショッピングモールに到着した。外の地獄のような暑さとは違い、冷房の効いたこの空間は天国のように感じる。

とりあえず浴衣を探そうとうろついていたが、なかなかこれといったものが見つからない。どうしようかなー、いっそのこと買わなくていいかなーなどと考えているとメールが届いた。北見さんからだ。私が悩んでいることを見抜いているのか?女の勘は恐ろしいな...などと考えたがこれ幸いとメールを開くと、『ヒントはギャップだよ!頑張れ!』と書いてあった。

ギャップ...?どういうことだ?などと思いつつ私は北見さんに返信した。

『ギャップって具体的にどんなのかな?』

こう返信して自分なりに考えようと思ったところにすぐにメールが来た。

『遥ちゃんのイメージはクールなんだよね。だからは汐は可愛い浴衣を着た遥ちゃんが見てみたいと思うんだよね!』

そう返信がきた。

北見さん楽しんでないか...?と思ったが頼れる人が他にいないため素直に従ってみる。

一通り見て回ったところ、白い生地にピンクと赤の花柄の浴衣が良いなと思った。可愛いし北見さんのアドバイスに近いものだし、これにしよう、そう決めてレジへと向かった。

「いらっしゃいませ。お預かりいたします」

ぼーっと会計を済ませようとしていると、店員さんに話しかけられた。

「お客様は浴衣を着てお祭りにでも行かれるのですか?」

「あっ、いえ、友達と花火を観に行こうかと...」

「お客様美人さんなので彼氏さんと行くのかと思いました」

「いや、彼氏なんかいないですよ〜」

そんな会話をしつつ、店員さんはこう言った。

「この浴衣の柄の花をご存知ですか?」

「いえ、知らないです」

「この花の名前はアネモネ。花言葉は儚い恋、恋の苦しみですね。色によって花言葉も異なりまして、赤は君を愛す、ピンクは待ち望むという意味なんですね」

「そうなんですか。花言葉はもとより花の名前も知らなかったです...。選んだのも可愛いなーって思ったからなので」

「あなたの心の奥底にある意識が惹かれてしまったのかもしれませんね」

そう言って店員さんは笑った。


浴衣を買って帰宅するまで、私は店員さんに言われたことを考えていた。アネモネの花言葉についてだ。儚い恋、恋の苦しみ...確かに私が汐に恋したら女の子同士だし、叶わないのだろうけど別にそんな風に思っているわけじゃないしなぁ。

そう考えていたが、ふと最近汐について考えることが多くなっていることに気がついた。確かに汐と一緒にいると前より楽しいし、遊びに誘ったりしてるし、いつもだったら振り回されてばかりだったのにな。恋ってこういうものなのかなぁ、したことないからわからないけど。

そう考えたところで自分の頬をつねった。いやいや、流石に恋はしてないでしょ!冷静になれ私!などと考えて落ち着きを取り戻そうとした。店員さんに花言葉を教えられてから変に考えちゃうじゃんか〜...。そう思いながら帰宅し、自分の部屋へと向かった。


買った浴衣を取り出し、どこにしまっておこうかなと思案していると大変なことを思い出した。

あれ、私浴衣着たことないから着方がわからない...?

慌ててネットで調べて着てみようとするも案の定上手く着ることができない。どうしようかなーっと思いしばし考え込み、お母さんにお願いすることにした。

リビングへ向かうとお母さんはテレビを観ていた。

「お母さーん、浴衣の着方がわからないんだけど...」

「あら、遥にしては珍しく可愛い柄を買ってきたのね」

「少し友達にアドバイスされてね。たまには良いかなーって」

会話をしつつ、お母さんに着付けを教えてもらった。

「おおー、様になってるわね」

お母さんに教えてもらったおかげで何とか1人でも着付けができるようになった。

「浴衣着て彼氏と遊びにでも行くの?」

「彼氏なんかいないよー、てかそれ店員さんにも言われたし」

「じゃあ汐ちゃんと遊ぶのね」

「そうだよー。まあ友達もあまりいないし汐とくらいしか遊ばないよ」

「でも最近新しいお友達と遊びに行ってたじゃない?」

「まあそうなんだけどね」

「汐ちゃんと2人きりで遊びたいのね」

「いや、そういうわけじゃないんだけど...」

そう言いつつも私は帰り道に考えていたことを思い出した。

やっぱり私は汐のことが好きで、2人きりで遊びたいのかな?そのようなことを自問自答しているとお母さんが言った。

「短い学生生活なんだから、ちゃんと青春を味わいなさいね?」

そう言ってお母さんは玄関へと向かった。

「じゃあお母さんは買い物に行ってくるから」

「はーい。行ってらっしゃい」

返事をすると、玄関の扉が閉まる音が聞こえた。


自分の部屋に戻り、姿見で自分の浴衣姿を見たがなかなか上手くできるようになったのではないかと思った。これなら何とか着て出かけられるな...などと思っていたところでメールが来た。北見さんからだ。

『浴衣買った〜?』

とりあえず私は姿見に映った自分を撮りメールに添付して送信した。

『買ったよ。可愛い感じの浴衣。』

送信してまもなく、北見さんからのメールが届いた。

『めっちゃ可愛いじゃん!似合ってるしやっぱ遥ちゃんは可愛い感じのも似合うね〜。汐も喜ぶと思うよ!』

そう返信が来て、私は少し安心感があった。

『北見さんもアドバイスありがとね。おかげで浴衣の柄も決められたし。』

そう返信し、私は浴室へと向かった。


湯船に浸かりながら今日は浴衣も買ったし、北見さんにも会ったし充実した1日だったな〜、と思った。今週末に花火観に行くし、それまでは家にこもってゲームでもしてようかなぁと考えたところで、やっぱり私はインドアな人間なんだなと苦笑した。

お風呂から出て部屋へと戻ると、北見さんから返信が来ていた。

『いえいえどういたしまして〜。それから遥ちゃんさ、私のことも名前でいいよ!』

汐以外の人を苗字じゃなく名前で呼んだことほとんど無かったなぁ、と今気がついた。

『じゃあ夏希ちゃんね。よろしく。』

そう返信し、スマホを机に置いた。

お母さんが帰って来て夕飯が出来るまで時間があるし、久しぶりにゲームでもしますか〜。そう思い私はゲームの電源を入れた。

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