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潮風  作者: きりん
5/6

5話

海に行った後の日焼け後の痛さもなくなった8月中盤、私はいつも通り涼しい部屋でダラダラしていた。昨日までの3日間はお盆で遠くにある親戚の家に遊びに行ってたので、このダラダラできる空間により一層有り難みを感じている。しかし、その平穏もすぐに終わりを迎えることになった。

そろそろお昼ご飯でも食べようかなーっと考えていると電話がなった。スマホには汐の名前が表示されていた。毎年この時期恒例のアレか...と考えて覚悟を決めて電話に出た。

「もしもし汐?」

「もしもし遥ー、頼みがあるんだけどさ...」

「言わなくてもなんとなく察しがついてるよ」

「うぅ...」

「夏休みの課題でしょ?」

「はい...」

「毎年手伝ってあげてるんだから今年くらいは自分の力で終わらせてみれば?」

「まだ何もやってないのに遥様の手を借りないで終わらせることなんて出来るわけないよ!」

「じゃあもっと早く手をつけなさいよ...」

「それが出来たら苦労しないというか...まあ遥は家で何もすることが無くダラダラしてるだけでしょ?お願いだから手伝って!」

「毎年これなんだから...仕方ないから手伝ってあげるよ」

「ありがとうございます遥様!」

こうして、私の貴重な夏休みを汐の宿題を終わらせるために使われることが決定した。


お昼ご飯も食べ終わり、食後のアイスを食べていると汐が家に来た。

「遥に会うの久しぶりな気がする」

「お盆は遠くにある親戚の家に泊まりに行ってたからねー」

「いいなー。私もどこか遠い場所に行きたかったな」

「そんなことを考えるより宿題を終わらせてればよかったんじゃないの?」

「いやー、やっぱ嫌なことは後回しにしちゃうというか...」

「そういうとこは何歳になっても変わらないね」

「一生変わらなさそうです...」

「とりあえずだらだら喋ってないで宿題終わらせよう」

「はーい」

ようやく汐が宿題に取り掛かるようだ。

しかし、30分ほどすると汐が飽きてきて漫画を読み始めた。

「汐、本当に宿題を終わらせる気ある?」

「あるけど集中力が持たないんだって〜」

「集中してやらないと日が暮れるまでに終わるどころか夜が明けても終わらないよ?」

「じゃあ宿題終わらせられたらご褒美ちょうだいよ〜。そしたらやる気でるよ!」

「いや、手伝ってあげてる私が貰いたいくらいなんだけどね...」

「いいじゃんいいじゃん!そんな大層なものじゃなくていいからさ!」

「うーん、じゃあ...」

ここで1つの案を思いついた。そう、汐と花火を観に行くことである。我ながら名案だ。

「花火一緒に観に行こうよ。毎年8月の終わり頃にやってるやつ。宿題終わらせられたら何か奢ってあげるからさ」

「ほんとに?じゃあ頑張って終わらせて気持ちよく花火を観に行こう!」

汐は単純だなー、などと思いつつも提案に乗ってくれて嬉しく思う自分がいた。


汐の宿題を手伝っていると、日が沈みかけており、時計は7時を回っていた。

「そろそろ夜だし残った宿題は明日やろっか」

「そうだねー。久しぶりにこんなに勉強したなー」

「夏休み始まった頃に終わらせてればこんな思いしなくて済むのにね」

「まあ毎年のことだから慣れちゃったけどね。これも逃れられぬカルマってやつか...」

「なんで中二病風なの...」

「さっき読んでた漫画のセリフに出てきた」

そんなやりとりをしてると、リビングからお母さんの声が聞こえてきた。

「遥ー、汐ちゃん、ご飯できたよー」

「分かったー、今行くよー」

「おばさん、ありがとうございますー!」

そう返事をして晩御飯を食べに部屋を出た。


晩御飯を食べ終わり、私の部屋でだらだらしていると汐が言った。

「どうせ明日も宿題やるならさ、今日泊まっていってもいい?」

「別に良いけど、着替え持ってきてないでしょ?」

「遥から借りる!」

「下着は貸さないよ?」

「1日くらい下着変えないでも大丈夫だって、へーきへーき」

「汚いなぁ」

「汚くないよ!いや、汚くない訳ではないかもしれないけどまだ許容の範囲内だよ!」

「まあ汐がいいならいいけどさ」

「じゃあ私シャワー浴びてきちゃうね」

「いてら〜」


汐がシャワーを浴びに行くと部屋が途端に静かになった。たった半日前までこの静かな空間にいたのに何故だが懐かしく感じられる。まあ私は騒がしいのは好きではないけど、汐の騒がしさはなんか落ち着くな...などと考えていた。まあ幼馴染だしね、と思い納得した。それに多分お互いの波長が合うんだろう、とも思った。

そうこうしているうちに汐が戻ってきた。

「ふー、気持ち良かったー」

「じゃあ私も浴びてこようかな」

「はーい、いってらっしゃーい」

そして私はシャワーを浴びに向かった。


シャワーを浴び、部屋に戻ると汐がベッドで寝ていた。

「汐ー、起きろー」

返事がない。完全に寝ているようだ。

「汐起きてー」

そう言いながら私は汐の肩を掴んで揺らした。

「ん〜...なに〜?」

「そこで寝てたら私が寝れないでしょうが」

「移動するのめんどいし布団敷くのめんどい〜... 」

「も〜、何とかしてよ〜」

「うるさいなぁ...じゃあ一緒に寝ればいいじゃん」

「ええー、暑いし狭いじゃん」

「いいからいいから、久しぶりに一緒に寝ようよ」

「仕方ないなー」

そう言いつつも汐と寝れることが少し嬉しかった。

花火を観に行く約束もできたし、なぜか一緒に寝ることになったし、今日は良い1日だったな...。そう思いながら私は眠りについた。




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