僕には・・・
真太郎は、その日、電車で学校から帰宅途中だった。
電車の中は、少しだけ、混雑していた。
真太郎は、イヤホンで、音楽を聴いている。
アップテンポの曲だ。
頭の中では、クラスメートの女子の、さやかちゃんのことを考えていた。
明るく、笑顔が素敵な、さやかちゃん・・
クラスが同じでも、真太郎は、声を掛けることも、できないでいた。
でも、遠くで、さやかちゃんを見ているだけでも、幸せだった。
さすがに、ストーカーのように、ジドーッとは、見ない。
休み時間に、時折、彼女の笑い声が聞こえる。
そんな時に、真太郎は、胸がたまらなく高鳴り、ソッと、彼女を見るのだった。
電車で、前の席には、違う学校のカップルがいた。
二人で話して、とても楽しそうだ。
(僕も、さやかちゃんと、二人で、あんなふうになれたらなぁ・・まぁ、絶対無理だなぁ)
そう、思いながら、イヤホンのボリュームを上げる。
対面との温度差・・
現実の自分に、真太郎は、小さく溜め息をついた。
その時、後ろから、一瞬、まばゆい光を感じた。
真太郎は、振り向いたが、もう何も光っていない。
(気のせいかな・?)
真太郎は、前に向きなおした。
また、例のカップルが楽しそうにしている。
また、溜め息をつく、真太郎だった。
この時、真太郎が、さやかちゃんとは、このようになれない・・
それは、次の日に、決定的なものになった。
さやかちゃんには、もう彼氏がいた・・などという生易しい話では、なかった。