5.無口な先輩×お喋り後輩
桂蜜柑。家政部所属。
お喋りが好きで、一方的にマシンガントークをすることもしばしば。
明るく人懐っこい性格の女子生徒。
「で、ですねー、今日家庭科で調理実習があったんですけど、グループが先生に決められちゃってて、普段料理しない子ばっかり集中しちゃって!」
「…そう…」
話をする蜜柑の横には、無口で何を考えているか分からない、と言われている小緑眞。
「なのに作れって言われたのが、中華丼に中華スープ、杏仁豆腐の中華料理で…杏仁豆腐はシロップかけてるのに何か味しないし、中華丼の具は危なく生焼け、中華スープは味が濃すぎて何が何やらって感じで、もう背筋凍りました!」
「……?桂は…何、作ったの?」
「米炊いてました。鍋で」
「ある意味…一番難しい…」
「慣れれば出来なくはないんですよ。でも、焦げないようにするのが難しいんですよー。離れられないし。でもおこげも美味しいんですけどね!あっ、余ったご飯でおにぎり作ったんですけど食べます?」
蜜柑がラップに包まれたおにぎりを差し出すと、眞は頷いて受け取った。
「そういえばー、うちの学年に転校生が来たんですけど、結構色々やらかす子みたいで。もう絶世の美少女らしいんですけど、初対面の相手に遠慮なくズケズケ物言う子で。あたしの友達より酷いじゃんって!あ、その友達も結構言うんですけど、本当のことしか言わないし、そういう子だって周りも分かってるからいいんですよ。でも友達もまだそんなにいない段階でそうやってズケズケ言ったら結構ヤバくないですか?」
「…転校生…あ。俺、会った」
「マジですか!どんな感じでした?」
おぉっ、と身を乗り出す蜜柑。
「桂、近い」
「あ、すみません」
「…何か、褒められた」
「褒めるぅ?」
「表情がないわけじゃない、とか…繊細だ、とか…」
「そんなの当たり前じゃないですかー。小緑先輩のどこが無表情だって言うんです?それに結構図太いですよね。あたしの話聞いても静かに聴いててくれるし!」
「それ言うの、桂くらい」
「そうですかね?」
眞は、友達が少ない。
それは喋ることが少ないというのもあるが、眞自身が、そこまで友人を望んでいないからだ。
だが、一度気に入った人間ならば別。
眞にとって、よく喋る蜜柑は新鮮だし、表情をくるくると変えるので面白い。
部活で作ったというお菓子をおすそ分けしてくるが、それも眞の好みに合わせてあって、いくらでも食べてしまう。
「そうそう!この間のマフィンどうでした?あたし的にはちょっとパンチが足りなかったかなって思うんですけどね」
「…美味しかった。また、作って」
「小緑先輩がいうなら、また作ってきます!今度はもっとグレードアップしますよ絶対!」
ガッツポーズをする蜜柑。
眞はそんな彼女を優しい目で見ていた。
(そういえば小緑先輩、褒められたって話なのにあんまり嬉しそうじゃなかったな~?)