表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

3.チャラ男子×男前女子

年齢制限はほぼこの話のせいです。


竜胆瑠璃。演劇部所属。

身長は女子の平均くらいだが、その言動、態度から男女ともに友人から慕われる、いわゆる男前女子である。


「透君のバカ!!」

大きな平手打ちの音が屋上に響く。


「おっと」

演劇の練習をしようと、瑠璃が台本を持って屋上を訪れたと同時に、平手の主であろう女子が屋上を去っていく。

ぶつかりそうになって、ひらりと身をかわし、入れ替わるように屋上に立つ。


「…コイビトをとっかえひっかえするのはいいけれど、本気になるつもりがないなら、やめることをおすすめする。いつか身を滅ぼすよ」

「なになに?竜胆さん、それもしかして、嫉妬?」

平手打ちを受けた男子、青桐透がへらへらと笑みを浮かべて瑠璃に近づく。


「はぁ…緩いのは下半身だけにしなさい」

「ははっ、怖いねぇ」

瑠璃に冷えた目で見られて、透はオーバーに肩をすくめた。


「怖くて結構。ただ、私が言いたいのは…貴方と付き合う女の子たちの方は本気なんだから、いい加減逃げるのをやめて真摯に向き合ったらどうかってこと。今度は貴方自身が刺されても知らないよ」

「…っ瑠璃」

瑠璃の言葉で、へらへらした笑みを消し、苦しそうな表情になると、やめてくれ、と言わんばかりに瑠璃の名を呼ぶ。


「怒らせてしまったのなら、ごめんなさい。だけどコレは一応、貴方を心配しての進言だと思ってほしい」

「心配?竜胆さんには関係ないのに?」

「本当に関係ないと思うなら私も何も言わないよ」

「……」

「演技と嘘の違いって、分かる?」

「…分かるわけないじゃん」

「嘘は心と言葉が真逆の状態で、演技は心がまだ言葉に一致してないけど、いつかは一致してくる状態のこと」

「で、それが俺と何の関係があるわけ?」

「…彼女とっかえひっかえしてて本当に楽しい?」

「……楽しいよ。彼女がいて楽しくない男なんていないだろ」

「そういうことは目を合わせて言うことだね。それにね、貴方とつき合った女の子の一人が言ってたよ。本当に楽しそうな顔、見たことないってさ」

「そんな、こと…」

「あまり女子をナメるな。好きな相手の表情くらいは分かるんだよ。それ故に、本気じゃないことが分かった怒りのまま、ネイルアートをした手で殴って…血を流させることもある」

瑠璃はそう言うと、透の頬に絆創膏を貼った。

先ほどの平手打ちの後から、頬が切れていたのだ。


「ならさ…瑠璃ちゃんが俺と付き合ってよ…」

「なら、とか言う内は答えは変わらないよ」

すがりつくような目で透は瑠璃に言うが、言外にNoの返事。


「つきあいが長い相手なだけに、流れで関係を変えるのは嫌なんだ。透も、本当はそういう性格のくせに、そうしないと私が本当に離れていくとでも思ってるんじゃないか?」

「…ほんと、かなわない。俺のせいで一生残るかもしれない怪我した時も許して…変わらず接してきてさ…」

抱きしめる、というよりも抱きつくようにして透が瑠璃に覆い被さる。


瑠璃と透は、実は小さい頃から近所に住む、いわゆる幼馴染だった。

幼い頃から瑠璃の性格はあまり変わっていないが、透は物静かで穏やかではあるものの、明るい少年だった。


その透にトラウマを植え付け、性格が変わってしまうような問題が起きたのは、まだ中学生だった時のこと。


透は一つ上の先輩から告白されて、断ることなく付き合っていた。


その頃は男女という性別があるために少し疎遠になっていたが、会えば話していたので、瑠璃と透の関係はほとんど変わっていなかった。


そんなある日。

透が彼女である先輩と別れたという噂が流れた。

それは事実だった。

少なくとも、透の中では終わったことだった。


しかし相手にとっては違った。


「貴女が"るり"?」

「…確かに私の名前は瑠璃ですけど…」

次の瞬間、面識のない人物に声をかけられて目を瞬かせていた瑠璃の腹に、包丁が突き立てられていた。


原因は、幼馴染であるために離れない二人の関係についての嫉妬。

なんでも、透はたまたまデート中に見かけた瑠璃の名前を呟いたらしい。


誰なのかを聞いてきた彼女に透は瑠璃について説明した。

しかし、その時の名前呼びと自分には見せない表情だったということで、一方的な喧嘩に発展した。

そして、彼女の方から別れると言い出し、それに応じた透の中でも別れたことになっていたのだが、彼女の方に未練があり、私怨で瑠璃を刺したのだ。


それからというもの、自分のせいだと責める透を瑠璃は気にするなと許したのだが、彼自身が中学卒業まで彼女を避け、高校に入るなり女遊びをするようになったのだ。


今でも、瑠璃の腹部には薄くではあるものの赤い傷が残っている。


「瑠璃ちゃん…今すぐには無理だけど…いつか、いつかちゃんと真面目に告白するから…待ってて」

「仕方ないなぁ」

瑠璃は笑いながら、自分を見下ろす透の髪に手を伸ばして撫でた。



女遊びをしているが、透が付き合って別れる時の原因は、性行為。


小さな声ではあるが、行為中に「瑠璃ちゃん」と口走ってしまう。

幸い彼女たちは何人も付き合っていると思いこんでいるので、気にすることはあっても中学の時のように探そうとはしない。


実際は付き合うのは一人だし、行為だけは、付き合ってなくても一度で良いと求められれば応じる。

応じるが、瑠璃を思い浮かべなければ、いわゆる男の部分というものが反応しないのだ。


だから感情が高ぶって、瑠璃の名前を口走り、別れることになる。

実際の青桐透は、かなり一途な人物である。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ