1.双子ゲーム×声フェチ女子
山吹雛菊。部活は吹奏楽部。
クラス内のスクールカーストとしては可もなく不可もなくの位置にいる女子生徒。
「「山吹さーん!」」
そんな彼女に、声をかける二人組がいた。
通称、出灰ツインズ。
校内でも有名な双子で、兄が皓で弟が黙。
この二人はそっくりなことを活かして、名前を当てさせるゲームを色々な人間にやらせている。
「「今日は君の番だよ!」」
このクラスでは出席番号が最後にあたるため、クラスでも隅の席にいる雛菊の前に双子が立った。
「「さぁ!どっちがどっちでしょーか!」」
ぐるぐると入れ替わってから、同時に問いかける。
「え…」
自分に回ってくるとは思っていなかった雛菊は一瞬瞑目した。
「「はーやーくっあててー!」」
「……私の右手側が皓君で、左手側が黙君」
双子が急かすと、少しためらいながらも雛菊が答える。
「!」
「…!」
一瞬、息を飲む音が聞こえる。
「「正ー解ー!!当てたのは山吹さんで二人目だよー!」」
「でもー」
「どうして分かったの?」
自分たちや当てられない者にとってはもっともな質問を雛菊にぶつける双子。
「えぇと…その…」
「「うんうん」」
言いにくそうにしている雛菊に向かって、双子が身を乗り出す。
「こっ、声で…!」
「「声?」」
かくん、と同時に首を傾げる双子。
「そうっ!皓君は少し高め、黙君は少し低音で響くの!こう…皓君の声はね、元気系なんだけど、黙君は癒し系の声!まぁ、どっちも耳元で囁かれたら、ぞくぞく来ること間違いなしなんだけど…あ…ゴメン」
テンションを上げて語っていたことに気づいた雛菊が、気まずそうに目をそらす。
「声で分かるの~?」
「その…私、声フェチで…」
「声フェチ…ってだけで分かるかな~?」
「あ。山吹さん、吹奏楽部だっけ。それで、耳が良いんだ?」
黙が思い出したように言う。
「私が吹奏楽部だって…知ってたんだ」
「知ってるよ」
こくり、と頷いたのは黙だけだ。
それからというもの、双子はよく雛菊のクラスに遊びにくるようになった。
懲りずに"どっちがどっちでしょうゲーム"を振っては当てられていたが、それはそれで楽しそうにしている。
特に皓は正解すると「すごいすごい!」と何度でも嬉しそうに笑う。
ゲームとして成り立たせるためには、声は必須だったからだ。
そして、声帯と声の波長はいくら一卵性の双子と言えど、異なる。
声帯の構造は同じでも、声の波長は機械で計測してしまえば違ったものになる。
だから、雛菊はいつでも当てられる。
一度だけスケッチブックに文面を書いて出題しに来たが、その頃には雛菊も二人の違いを外見上からも見抜けるようになっていたので、あっさりと見抜かれていた。
接してみると分かるようになるが、この二人の中身やふとした時の表情は大分違うのだと雛菊は気づいた。
皓は、ゲームを振っていることからも分かるように、明るく無邪気なイタズラ好き。しかし、相手からイタズラを仕掛けられると簡単に引っかかるという純粋さを持っている。
黙はどちらかというと皓がゲームをしているから一緒に楽しんでいるだけ。
自己を強く持っている方で、自分は自分、他人は他人、という態度をとることも多い。
そんな違いはまだまだあった。
たまたま黙が一人でいたところに声をかけた際、雛菊は確信を持って「黙君」と呼んだのだが、若干嬉しそうに、「僕は皓だよ」と答えてきた。もちろん嘘だが。
逆のこともあって、皓のことを「皓君」と呼ぶと、「あ。どしたのー?」と普通に答えてきた。
ゲームの時に自分を見分けて貰うと喜ぶ皓と一人の時に自分を見分けて貰うと喜ぶ黙。
(そういえば、正解した一人目は、どうやって見分けたのかなぁ…)
雛菊はそんなことをぼんやり考えながら、手を振りながらやってきた双子に手をふりかえしていた。