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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

五題噺【スズメバチ】【植木鉢】【すり鉢】【金魚鉢】【火鉢】

作者: 五十嵐古西

 私はスズメバチの巣を駆除する仕事を自営業でやっている。もともとは夫の仕事だったが、夫が病床に伏してからも駆除の依頼が絶えないので、泣く泣く私がマニュアルを読破し、駆除に向かっている。一軒あたり15000円程度、たいてい週1回くらいのペースで駆除に向かう。また、副業として便利屋も経営している。これは内容にもよるが、月に5万円程度。

 原発の作業員のような白い防護服に身を纏い、吸引機でスズメバチを吸い込む。全身防護服を着ていてもスズメバチの針は長いので刺されることは多く、常に簡易医療セットを携帯している。吸引機の中を真空にしてスズメバチを窒息死させたあと、巣を専用のナイフで切り取る。巣は庭が広ければその場で焼却処分するか、それが出来なければ専用の業者に引き取ってもらう。


 私は収穫したスズメバチを暖炉の上で乾燥させたあとにすり鉢に移し、粉末にする。もともとこの蜂の死骸は捨てていたのだが、同業者から蜂の死骸が滋養に富んでいるという話を聴き、夫に粉末にして飲ませることにした。地味な作業が嫌いではない私にとっては、これもなかなか楽しいものだ。蜂の死骸が私のこん棒によってすり潰されていくのも、私の加虐精神を刺激して若干の快感に浸ることができる。

 アシナガバチには良質なエキスが入っていないので、駆除する巣がアシナガバチの巣だとわかったときは少しがっかりする。

 一回のスズメバチ駆除から取れるスズメバチ粉末は約一・五キロ、約二週間分だ。夫もこれを飲んでいるおかげで風邪をこじらせている夫の体調も良くなってきている。

 こんなことをしなければならない最大の理由は、私たちが健康保険に加入していないからだ。何かの手違いで私たちの口座から健康保険料が引き落とされていなかった。それに気づかなかった私たちは、市の職員に家宅捜索され健康保険証を取り上げられた。病院に行けば適切な処方をで早く治るであろう夫の病はこうして長引いてしまった。


 ベットに横になっている夫に、私は夕食を与えていた。

「ごめんな、俺、何もできなくて…」

「謝らなくていいのよ、こんな時こそ支え合うのが夫婦だから」

「いつも有難うな…」


 ガラスが破れる音が聞こえた。

「ちょっと見に行ってくるね」

 私はリビングに向かった。清原和博のような筋肉を持った屈強な男が、私の庭の植木鉢を持って、スズメバチ粉末の麻袋に向かって歩いている。盗まれる、と私は思った。

 私は、しゃがみ込んでスズメバチ粉末の入った麻袋を結ぼうとしている男の後頭部にすり鉢に置いてあったこん棒をクリーンヒットさせた。後頭部にこん棒がめり込んで、周りの皮膚がこん棒を覆いかぶさるように包み込み頭から離れなかった。私は怖くなって、すぐにこん棒を手から離した。

 男は痛がったそぶりすら見せず、私の方にゆっくりと振り返った。その振り返る速度はあまりにも遅く、不気味だった。そして持っていた植木鉢をゆっくりと振り上げ、最高速で私の頭を狙った。それは私の頭に直撃し、同時に激痛が私を襲った。土が私の前に落ちた。鮮血は机の上の金魚鉢に受けさせた。それは水と金魚と混ざって、奇妙なグラデーションを描いた。私はおもむろにその金魚鉢を振り上げ、男の坊主頭に思い切りぶつけた。金魚鉢のガラスは一瞬にして砕け散り、金魚が宙を舞い、地を跳ねた。男のサングラスは一気にずれ落ち、私と同じように、頭から鮮血を流した。金魚が死に行く姿など、私にはどうでもよかった。私には、あの男を何としてでも殺すほかはなかった。


 男は後頭部に刺さったままのこん棒をゆっくりと引き抜き、手に持った。学生時代は柔道部に所属し、スタントマンのアルバイトもこなした私の血がおさまるわけはなかった。私は男の顔にハイキックを食らわせようとしたが、顔を直撃する寸前で男に足を捕まれた。男は私の左足を捻った。激痛が走ったが、それで白旗を上げるわけにはいかなかった。すぐに足を離させたが、男は私の顔面に右フックを食らわせようとした。私は反射神経で身をかがんだが、鳩尾を蹴られて倒れそうになった。何とか立ち上がり、私は男の急所に強烈な蹴りを入れた。これは公民館主催の護身術講座で学んだもので、何度も砂袋をつけたマネキンを相手に練習を重ねたので、絶対の自信があった。男はその体に似つかわぬ声で叫びながら床に倒れ込んだ。私は勝利を確信した。

 倒れ込んだ男に私は馬乗りになり、暴れる両腕を両足で抑え、トドメとして私は父の思い出の品の火鉢を男の顔に押し付けた。火鉢は夫の部屋に行く前に火を消したばかりだったのでまだ熱く、男は叫び続けた末、顔は焼け焦げる前に溶けた。私はそうやって溶けていく男の顔を、私は馬乗りになったまま、暗黒の微笑でみつめていた。


 男の息の根が止まるのを確認したあと、私は台所包丁で男の体を解剖するように切り裂いた。ひとつひとつの内蔵を引っ張り出しては手にとって眺め、飽きたらトイレに捨てた。顔は既に原形を留めていなかった。


ただ、グロテスクなものを書きたかっただけです

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― 新着の感想 ―
[一言] リアリティがあるようでないようで面白かったです。しかし、文章の書き方が惜しいです。 文の初めを一マス空ける、・・・→……など。
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