勇者と魔王は出会うもの。
文字数が少ないと思われます。
おまけがメインな気がしてならない。
あの二人が家に来て一カ月後、俺は良くも悪くも日常を過ごしていた。
ぼーっとしている時間は日常の大半を占めている。平和な時間が過ぎ去っていく。
「ふぅ…」
最近の狩りの不調は順調に進んでいる。今日も獲物獲得率は0%だ。
とはいうものの、食糧がなければ困るので最終的には罠を張るという手段を使う。かかっている時もあればかかっていない時もある運任せなこのやり方は楽ではあるが最終手段にするには問題である。
ただ、それ以外に獲物を捕まえる方法が思い浮かばないので色々な場所に配置して確率を上げるしか今の現状では手いっぱいではあった。
草むらを掻きわけ罠をかけたところまで行くと不思議な物が目に飛び込んできた。
金色の髪、赤と白で彩られた鎧、地面には白銀の剣。髪はマルクより長く、ふくらはぎ中部まで伸びている。その金髪の女性は-蔓によって木に縛り付けられて身動きが取れない状態になっていた。
俺が仕掛けた罠のせいだ…。本来ならもう少し小柄な熊を捉えるための罠なのだが。
「どうしたものか…」
流石に…巫女と話が出来たとしても勇者はごめんとしか言いようがない。
…。
…。
…。
あぁ、もう!俺が魔王だなんて絶対に嘘だ!
結局、俺はローブを家から持って来て蔓を落ちていた白銀の剣によって切って助けてしまった。
「す、すまない…助かった」
勇者(女)は長時間縛られたせいで固まった筋肉を伸ばすように背伸びをした。
美人というのは得である。これが不細工な男だったら絶対に見殺しにした。うん、そうだ。そうに違いない…。
俺は美女(勇者)を見ながらふと思った疑問を投げかけた。
「こんなところで何を…?」
「あぁ、ここに魔王の幼生体がいると聞いて偵察に-」
その言葉を言った瞬間に我に返ったかのようにこちらを睨んだ。
「すまないが、そのローブを外してはくれないか」
手には先ほど返した白銀の剣が握られていた。赤髪のフレイスとはまた別の殺気が満ちている。
カタカタと体が震えた。助けなければ良かったと後悔し、もう遅いと思ってしまう。
「…」
「…」
無言の要求がひどく痛かった。俺は殺される覚悟を決めてフードを恐る恐る取った。薄暗い森の中、葉の隙間からもれる日光によって忌まわしき黒髪が映し出される。
「…」
が、勇者は剣を下しため息をついた。
「なんだ。赤髪じゃないか…。おどかさないでくれ」
「…」
何を言っているんだろう、この勇者は。
そう思って自分の髪を少しだけ摘み、目に見えるところまでもってくる。
赤、燃え盛るような赤がそこには映し出された。火の巫女フレイスよりも更に純粋な赤が。
「…?」
「どうしたんだ?まるで自分の髪じゃないような反応だな」
「はぁ、さっきまでと色がちが-」
しまった。これでは-
「色が変わる…だと…?」
-ばれる!
「き、君!もっと詳しくその話を聞かせてくれないか!」
…。あれ、なぜこの人はこんなにも目を輝かせているのだろう…か?
あれから押し切られるように家まで上がりこまれてしまった。
きっと俺には女難の相が一生に亘って出ているに違いない。
まぁ、そんな人生感はよしとして。女勇者-リーン・クライスが言うには”ホワイトカラー”と呼ばれる種族がいるそうだ。
本来生まれたばかりの髪の色は属性とは何ら関わりを持たないらしい。人の感性、価値観など色々な要素が周りの属性マナに感応して髪や眼に収束し色が染まるらしい。つまるところ、0歳から11歳くらいまでの髪の色は当てにならないと言われているそうだ。
「そこで、だ」
ようやく本題に入れるころには俺は頭がパンクしそうになっていた。このリーンという女はマルクよりも鬱陶しい…。聞いていなければ「聞いているのか!?」と言ってくるし、適当な相槌はすぐにばれてしまう。
「ホワイトカラーと呼ばれる特異体質の者が出てきたのだ」
「はぁ」
「ホワイトカラーとは何年たっても髪の色が定着せず”虹の巫女”や”虹の神官”と言われてだな」
結局何がすごいのか…。人の集中力というのは一分も続かないらしいからほとんど右から左へと流れている気がする。いや、マルクの知識の聞きかじりなだけなんだけど。
「唯一、全ての妖精との契約が出来るのだ!」
「えーと…」
「つまりだ!」
初めからまとめて言えばいいのに…。
「君は世界を救う救世主になれるかもしれないってことだ!」
…。あぁ、そうなんだ。
「ってそんなわけないでしょ!」
「馬鹿を言うな!ホワイトカラーでここまで鮮明で妖艶な赤などに染まる者など聞いたことがないんだぞ!」
いや、今まで黒でしたけど?それも鮮明で妖艶な黒でしたけど?
なんて言えるわけがないので次の言葉を考えていると、とある疑問を思いついた。
「ホワイトカラーってなんで色変わるの?」
「む…」
どうやら分からないようだ。
「…詳しくは知らないのだが…。
周りにある人の感情や感性などに影響を受けると聞いたことはある。
しかしだな、その影響が出るまでには一か月以上かかったり急に出たり出なかったり。
正直に言えば”虹”の称号を持つ者が少なすぎて分かっていないのだ」
…。
「じゃあ、ホワイトカラーが黒に染まることは」
「ある」
「生まれた時の髪の色は!」
「白…と言われているが赤や青でもホワイトカラーの者はいた」
俺は一体何のために…。
目の前が真っ暗になるかのような眩暈に襲われた。
「そろそろ本題に入ってもいいだろうか」
俺は眩暈を悟られないように小さな声ではいとだけ答えた。
「君が…魔王の幼生体…なのか」
どくん。心臓が跳ねた。
「いや、君を殺すつもりはないんだ。ただ一緒に神殿に向かってほしいだけなんだ」
「い、いや…だ」
それから数時間リーンの長い、長い説得の嵐が俺を襲うことになるわけなのだが…。
この勇者には眠気というものが存在しないのかずっと喋り続けていた。眠気に負けそうな俺はそれを聞く振りをしながら寝ようとして起こされるの繰り返しを続けさせられていた。
まぁ、結局は根負けしてしまう俺なのだが…。
その日の夜に髪の色は黒へと戻ってしまった。ここは黒の影響が強いらしい。勇者様も体調が悪くなる場所だ、早く出発したいと言っていた。
俺は別に…居心地はいいけど。と言ったら斬るぞと脅されてしまった。勇者っていうのは乱暴者なのだろうか…。
「準備は万端か」
「罠もすべて外したから問題ない」
「わ・な?」
しまった。隠し事が下手なのはマルクの影響だ。いや、いいわけじゃないんだ…。
「動物を狩る用の…ね」
「あぁ、なるほど」
シャキンといつの間に抜いたのかすら分からなかった剣を鞘にしまった。余程あの罠が嫌だったのだろう。
「でも、フードなくて問題…ないのか」
「問題ない、勇者が魔王連れてても捕獲したとしか思われないだろうから」
それは…処刑台に向かう囚人になれということか…。
少しうなだれながらもスタスタと歩いて行くリーンを追う。寝不足のせいで足取りは重いが少しだけ期待していた。何か、何かが変わるのではないか…と。
「そういえば」
俺が感傷に浸っているとリーンがこちらを向いて少しだけ微笑んだ。
「名前を聞いていないな?」
暫く、本名を名乗るか迷ったがばれたら斬られかねないので本当のことを言うことにした。
「レィテッド・エスペランド。知り合いからはレイと呼ばれてた」
「知り合い…魔王の幼生体に…?」
リーンはきょとんとした顔で俺を見て笑い始めた。人の顔を見て笑うとは…失礼な。
「その知り合いの話、次の街に着くまでに終わるか?」
「無理だな、二ヶ月は掛かる」
「ならちょっとずつ聞くとしようか」
「話すわけないだろ」
「今から旅をしようという仲間に冷たくはないか?」
「いつの間にか剣を抜いてる奴には言われたくないな!」
少しずつ、魔王城から俺は離れていく。次帰ってくる時があるのかどうか分からない。ただ、少しだけ俺は変わっている気がした。何も変わらない家の前で変わってしまった自分がいるような寂しい感覚が俺の中で渦巻いては消えていった。
α(おまけ)
※この先はキャラ崩壊の恐れ(特にリーン)があります。そして出て来ていないキャラが(ry
なので無理だ。というからは戻るボタンでお戻りください。
パターン1:もしも勇者が男だったら
「助かったよ、僕の名前はフレデリック・アルバート。皆からは大勇者と呼ばれる存在さ!」
「…」
「あっ、なぜ僕の剣を振り上げるんだい…ま、待って!アッー」
「…後ろに毒蛇がいたから追い払おうとしただけなんだが…気絶してしまった…」
パターン2:もしもリーンが○○だったら其の1
「そろそろ本題に入ってもいいだろうか」
「はい…」
「私を…さっきの蔓で縛ってくれ!」
「…お願いだから正常に戻って!」
パターン3:もしもリーンが○○だったら其の2
「準備は万端か」
「罠もすべて外したから問題ない」
「…ポッ」
「待て!お前に使うわけじゃない!」
パターン4:もしもレィテッドがシスコンだったら
「す、すまない…助かった」
「いや、困った時はお互い様です」
「なら何かお返しをしなければ」
「気にしないでください。お兄ちゃんと呼んでくれればそれで」
「とりあえず半径3m以内に近づくな、変態」