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1-0 そして役者はそろった

■2002年5月12日 東京都千代田区霞が関 警視庁本庁舎 10:00

警視庁本庁舎の一角は非常に重苦しい雰囲気に包まれていた。ここ最近、「怪盗」等というフィクションの中でしか存在しないと思われていたものが、世間を騒がせていたためである。

「手掛かり、無し、か・・・」

本来、窃盗事件は警視庁刑事部捜査第三課が主管する案件である。ところが、本件はその連続性・知性的な手口より、知能犯担当の二課に役が回ってきた。

「どうせなら、一課のほうがよかったのに・・・」

思わず愚痴をこぼす幹部が続出しているこの案件、「連続窃盗事件」、後の「怪盗ラファエル」と呼ばれることになる怪盗と警察の「戦争」の幕開けとなることを、この時点では誰も知るよしはなかった。

会議はいつになるかわからない愚痴の言い合いに収集し始めた。その時、上座に座る男が決断を下した。

「諸君の話を聞いていると、専属のチームを作成し、この事案の対処を行うようにしたほうがいいと思われる。数日内にチーム編成を行うので、そのように。」


■5月15日 警視庁内会議室 10:00

「もうそろそろかね。」

警視庁刑事部長黒崎孝也が部屋の時計を見ながら言った。窓の外では皇居の新緑が見える。

「もうそろそろかと思います。」

刑事部捜査二課課長中森行典がそれに答える。

「最善のチームなのだろうね?この部隊は。」

「はい。本庁・所轄の垣根をこの際破壊し、ベター・チームを創設しました。」

「なぜベストではないのかね?本案件、メディアへの露出は控えているが場合によっては警察の沽券にかかわる案件なのだよ?」

「部長、本案件は長期化します。最悪、警察総力をつぎ込む必要があるでしょう。それまで、このチームで防ぎ切ります。」

黒崎の疑問に、中森が答えた。

「うむ・・・君の判断を尊重しよう。ベストを尽くし、結果を残してくれ。」

その時、会議室のドアがノックされた。

「失礼します。千葉です。」捜

査二課のコントローラー、捜査案件のの切り盛りを担当する管理官の千葉百雨の声がした。

「入りたまえ。」

黒崎が返答をするとドアが開き、数名入ってきた。

「掛けたまえ。」

中森の声に反応し、彼らは椅子に座った。

「君たちを呼んだのはほかでもない。」

黒崎が言葉を区切った。

「昨今、怪盗等という正体不明のものが首都圏を中心に出ておる。よって、我々・神奈川県警・千葉県警・埼玉県警は極秘に調整を行い、無論各公安委員会にも調整済みだが、警視庁を主体とし、本庁刑事部捜査二課内に対策班を設置し、この事態の対処に当たることとなった。」

会議室にいた全員に緊張感が走った。この案件が捜査二課の担当になって以来、事態の進展をこの目で見てきた連中ばかりである。

「指揮命令系統上、捜査二課とは別個になる。また、我々以外の各県警の上層部しかこの事は知らない。管理責任者に千葉君を充てることとする。」

「はい。承ります。」

「次席責任者として、高宮君。君にやってもらいたい。」

「承ります。」

「内海君。君が現場の責任者だ。随時、各県警より2名の出向者を入れて増強を図るが、とりあえずは内海班で処置を頼む。」

「承知しました。」


■同時刻 某所

「刑事部はうまくえさに食いついたか。」

スーツを着た男が同じ井出達の男に言った。

「ええ、うまく食いつきましたよ。警視庁刑事部は警察庁刑事局と調整して広域捜査班を立ち上げるようです。」

「そうですか。なかなか進まないと思っていましたが、急に動き出しましたね。」

「黒崎さんは次の次の次ぐらいを狙っていますからね。刑事畑出身で総監・長官はあまりいませんから、これを機会に一気に狙う気なのかもしれませんね。実際、エースをつぎ込んでいませんから。」

「どういうことですか?」

別のスーツ姿の男が興味を示した。

「一課案件ということで処理する話もあったのです。実際のところは・・・ただ、黒崎さんが潰しましてね。ここで、大塚さんと組んで広域捜査班構想、ひいては今回の件で日本版FBI構想をぶち上げて一気にポイントを稼ぐ作戦に出たのですよ。マスコミ受けしますしね。この事案。」

「マスコミ受けするようにするのは、我々4騎士だよ。」

「そうですな。」

その場にいた全員が苦笑した。

「いずれにしても、ラファエルも刑事部も頑張ってもらわねばならない。そのために、我々はここにいるのだし、これからも行動をする。そのことを、各自忘れないで頂きたい。」

「その辺は承知している。」

「では、今回の会合は解散にしたい。次の目標は資料のとおりとしたいが異存はないだろうか?」

「異議はない。」

同じくスーツ姿の男の声に、皆が賛同した。

「では、次の行動は原案通りということとする。事務手続に関しては、いつも通りとしたいが出来るだろうか?」

スーツ姿の男たち全員の首を縦に振るジェスチャーに司会役の男は納得した。


資料にはこう書かれていた。△△商事・代表取締役社長 小田修誠と・・・




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