第6話 親友との出会いと二番目の妻
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ある日裏庭で剣の稽古をしていた。その日はたまたまジュリアに用事があり、一人だった。
「どこかにいったらだめですよ。もしいなくなったらお仕置きです」と恐ろしい言葉を残して名残惜しそうに出かけて言った。
一心不乱に剣をふるっていると、「おい、お前」と声を置けられた。振り替えると金髪で容姿の整った同い年ぐらいの男がどや顔で立っていた。
「なんでしょうか」ヤバそうなやつに声をかけられたと思った。騎士学校でも偉そうなやつから声をかけられるとだいたいろくでもないことだったからだ。
「剣の練習しているようだが、へたくそすぎて見ていられない」
「申し訳ありません、お目障りでしたら別のところへ行きますので、お許しください」そう言って頭を下げた。こういう場合、下手に逆らわない方がいいことは身にしみてわかっている。
「ふん、お前にはプライドがないのか?それでも士分なのか?」
士分?どうしてそう思ったのかよくわからないが、早くどこかに行ってくれないかな。
「申し訳ありません」「お前を見ているとイライラする。そら、剣を取れ。根性を叩き直してくれる」その男は、体勢を低めにして体を斜めにして両手に山刀を構えた。「思いっきりかかってこい。手を抜いたら許さないからな」といって、襲い掛かってきた。
その男は強かった。でも楽しかった。騎士学校では一切の反撃を許されずただ攻撃されるだけだったが、今はそんなことは関係ない。心行くまで打ち合った。
いつの間にか夕方になっていた。
二人とも疲れ切って、座り込んでしまった。男は言った。
「お前なかなかやるな」
「あなた様こそ」
「おい、お前のことが気に入った。うちに来い。飯を食わしてやる」
でもジュリアがそろそろ迎えに来るし、夕飯はいつもジュリアと一緒にとっているからな。
「せっかくのお申し出ですが…」
「いやなのか?」その男はすごく悲しそうな顔で言った。
「いえ、行きます」思わず流されてしまった。あとでジュリアに謝ろう。
「そうだ、まだ自己紹介がまだだったな、ジム・キッカだ。よろしくな」
「ロミと申します。よろしくお願いいたします」
ジムの家に連れていかれた。ジュリアの家に勝るとも劣らない豪邸だった。
ジムはロリコの民族料理を色々出してくれた。どれもとてもおいしそうだった。
「ロミ食べてくれ。あと、俺のことはジムといってくれ」「ジム様ですか?」
「ジムだよ。俺たち友達だろ」
「えっ」
「友達じゃないのか」すごく悲しそうな顔をしたので、あわてて「ジムですね。それでは私のことはロミと呼んでくれればうれしいです」
「おう、ロミ。これからよろしくな」満面のほほえみで快諾してきた。
「ねえ、兄さん」そこに女性の声が聞こえた。振り返るとすごい美人がいた。小柄ながらすごくスタイルがよく、ロリコの民族衣装は今まで見たことのある衣装のなかでもひときわカラフルで、布面積も通常より少なく、ボディのメリメリがはっきりわかるようになっていた。
顔は、きれいというより色っぽい感じで思わず見とれてしまうような女性だった。「兄さんが友達連れてきたって聞いて、何の冗談かと思ってからかいに来たのだけど。ほんとに友達連れてきたの?」
「ああ、ロミだ。こいつは俺の妹でフィリアという」「ロミさん、お兄さんのことよろしくね。あと私のことも」フィリアは肉食獣が獲物を見つけたときの目で言った。
「はい、ロミと言います。よろしくお願いします」とりあえず、笑顔で挨拶した。
「うふふ、かわいい。本当においしそう」
「はい、おいしそうな料理ですよね」
「おう、冷めてしまう前に食べよう。フィリアも一緒にどうだ」
「ちょっと意味が違うのだけど、まあいいわ。わたしも一緒に頂くわ」
フィリアさんはなぜか僕の隣に座っていろいろ世話を焼き始めた。
「ロミさんはどちらから来たのですか」僕の口に食べ物を運びながら言った。
「フランクから来ました」
「どうしてロリコにいらしたのですか」
「僕は冒険者で護衛の任務でここに来ました」
「兄とはどこで知り合ったのですか」
「王の屋敷の裏庭で訓練していたら話しかけられて」
「ロリコの女はいかがですか」
「皆さんかわいらしい方が多いですね。それでフィリアさん」
「なにかしら」
「あの~いろいろなところが当たっているのですが」
「大丈夫。わざとだから」
「えっと…」
「嫌いですか?」
「いえ、そういうわけではないのですが」
「お~い、俺も話に混ぜてほしいのだが」ジムが言った。
「兄は友達がいないのですよ。ほらなんか偉そうでしょう。口の利き方もなっていないし。それに自分勝手に話を進める癖があって。でもかなりのさびしがり屋で。ロミさんが友達になってくれて、嬉しいのでしょ。ねえ、兄さん」
ジムは顔を真っ赤にして、横を向いて黙ってしまった。
「兄さん、喜んでいいわよ。ロミはすぐに義理の弟になるのですから」
「えっ」急いで逃げようとしたが完全に抑え込まれてしまった。
「うん、なんかこれって思ったのよね。これは私の物だと。母さんは国元だから、許可をもらうのは既成事実を作ってからになるけど、まあ、大丈夫でしょう」
「フィリア、おまえ、ロミのことが気に入ったのか」ジムが嬉しそうに言った。
「ごめん、実は」口を手でふさがれた。
「もう、他の女に囲われているのでしょ。大丈夫。それはこちらで対応するから。とにかく、もう返さないからね」フィリアは瞳孔の開いた眼でにやりと笑った。やばい、どうしよう。
その時だった。ドアがドンと開いて、ジュリアが現れた。手にはハルバードをもって、無表情で僕を見た。
「ジュリア助けて」男なのに情けないけど、身動きできない。このままだと、かなりまずいことになる。
「あら、ジュリア、ひさしぶり。元気だった」フィリアはなんでもなさげに言った。
「フィリア久しぶり、いつ国元からこっちに来たの」ジュリアも普通の声で返した。
「昨日着いたの。ジュリアあなたの結婚式に出るために。父と母ももうすぐ来るわ。ジュリア結婚おめでとう」
「ありがとう、ところであなた一体何をしているの」
「私も夫となる男を見つけたの。これからものにするつもり。今忙しいから今日は帰ってくれるかな」
「その男、私の物なんだけど」
「ごめん、私にちょうだい」
「絶対に嫌」
「でももらうから」
ジュリアがハルバードをふるった。フィリアはさっと飛びのき、いつの間にかハルバードを持っていた。
両者は激しい打ち合いを始めた。
ふと見るとジムが手招きしていた。「ロミ、モテるな」ジムは言った。ジムはジュリアが入ってきた時点で、食べ物を部屋の隅に避難させ、食事を続けていた。
喧嘩を止めようとして、ジムに手伝ってくれと頼むと、無理だとジムに言われた。「やめとけ。女同士に戦いに首を突っ込むなんて、自殺行為だぞ。それにこれはある意味、妻の序列決めだからな。やりたいだけやらせてやれ」
「でも二人が死んだり怪我でもしたら」
「二人は親友だ。子供の時から遊んだり喧嘩したりしているからな。ジュリアのことは知ってると思うが、フィリアも南の大伯の娘として教育を受けていて相当戦えるぞ」
「南の大伯?」
「ああ、わが家はロリコ王国四大伯のうち、筆頭大伯であるキッカ家だ」
びっくりした。なんで、こうすごい家の人と知り合いになるんだ。何のめぐりあわせなのかと、思った。
そのうち、戦いはやみ、二人は顔を突き合わせて、話をしていた。
「それじゃジュリアが第一夫人で正妻、私が第二夫人に副妻でいいわね。その代わり、私も味見させてもらうから」
「しかたないか、その条件で手を打ちましょう」
話がまとまったようだ。
「おい、ロミ逃げた方がいいぞ」
「えっ、なんで?」
「ロミ~」ジュリアがこちらにやってきた。かなり怒っている様子だった。
「ジュリアごめん。でも浮気するつもりはなかったんだ。友達になったジムの家に来たら、フィリアに迫られて」
「浮気?そんなことよりも勝手に私の言いつけを破って裏庭から離れるなんて、これは罰を与えないといけないようですね」まあ、王家の一員として誘拐されたり、殺されたりする危険があるわけだし怒るのも無理はないな。
「ああ、連絡しなかったのは申し訳ない。急に誘われたものだから。なあジム。あれジムは?」
ジムは既に逃げ出した後だった。
「ジムには後でたっぷりお仕置きしなくちゃなりませんね。その前にロミ、あなたの処分です」ジュリアがかなり怒っている。「もうあなたは外には出しません。一生私たちの部屋で過ごしてもらいます」監禁か。罰としては軽い方かな?
そのまま僕は監禁された。ちなみにフィリアもついてきた。三人での生活はちょっと大変だが、悪くはない。本も読めるし、部屋で運動もできる。食事も運んでくれるし、風呂もトイレも部屋にある。夜の仕事は倍になったが、全然余裕だ。ちなみにフィリアはいろいろ最高だった。
フィリアは基本ずっと部屋にいて、たびたび求めてきたので、こちらもたっぷり相手をしてやった。フィリアはとても満足そうだったが、ジュリアは結婚の準備と仕事があり、なかなか時間が取れなくて不満そうだった。
監禁は10日ぐらいで解けた。ジュリアは僕を独占できないことに怒って、それならばと自分と一緒に行動するように言った。
しばらくしてフィリアの母親ユウ・キッカ・チクカと会った。結婚式に出席するため、インパールに来たとのことだ。かなり美人でフィリアによく似ていた。
ジム、フィリア、僕、ジュリアとユウさんの五人で会った。ジュリアとユウさんは知り合いで、ジュリアの小さいときのことを話してくれた。ジュリアは顔を赤くしていた。
ユウさんは大変優しい人だった。ニコニコしていて、いろいろ話をした。最後にフィリアをよろしくね、ジムとも仲良くしてやってね、はい、こちらこそよろしくお願いしますと答えた。ユウさんは微笑んでいた。
結婚式の準備は進んでいった。ジュリアの母と三公の相談の結果、士分に取り立てられるとのこと。フランクで言うと正騎士クラスに当たる。
どうもロリコでは剣で戦うのは、軍に所属する士分と言われる身分の物だけだそうだ。
それ以外の者は山刀や八角棒という八角の短い鉄棒を持つことが多い。なお、軍のメイン武器はロリコ銃で一人一丁配付される。なお、ハルバードや大斧は女性の武器だそうだ。
僕のようなフランクで騎士になれなかった者にとって、正騎士になれるなんて、ものすごく嬉しいことだ。
しかし、聞いたところジュリアの父である王が反対しているらしい。まあ、そうだろうなと思った。
そんなこんなで結婚式を迎えた。
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