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ロリコ史記  作者: 信礼智義
第一章 ロミとジュリア
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閉話6 とある捕虜の回想

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 ああ、ロリコ特殊作戦のことかい?

 あれは悲惨な戦いだった。わしが所属していたフランクの中央騎士団はロリコ征服に向けて軍を動かした。

 わしは第5大隊第4中隊第2小隊の隊長としてこの戦いに従軍した。

 団長や幹部たちは、みなロリコなんてすぐに征服できる、そうしたら領土をもらってもいいし、騎士団での昇格も魅力的だ。どちらにしようか今から迷うな、と話していた。

 わしや仲間たちもこんな楽な戦争で騎士団にて昇格できそうだな。中隊長に早くなりたいものだと口々に言いながら行軍していったものだ。


 あの地獄が待っているとも知らずに。


 想像したのとは違いロリコは強かった。後から聞いたらみな農民ばかりだった聞いてびっくりしたよ。 兵も強かったが指揮官が良かったのだな。

 初めから悲惨な目に合わされたよ。

 国境で次々と騎士団の兵士が死んでいった。従騎士や従者だけでなく、聖騎士も沢山死んだよ。全然侵攻できず、時間ばかり経っていった。

 団長はフランク王に2週間でロリコの首都を落とすと約束したものだから焦って力押しで解決しようとした。

 本当に悲惨だった。

 従騎士や従者たちはロリコ銃やロリコ砲で次々と殺されていった。それでもひたすら突撃をかけ、次々と陣地を落としていった。

 まあ、その代わり、死体が山になって、その死体の匂いが戦場に強く匂っていたよ。

 その匂いは今でも思い出すな。


 敵の城砦にたどり着くまでにほとんどの兵は死傷し、正騎士も4千まで数を減らしていた。


 食料もなく、武器はボロボロ、どう考えても城塞なんて落とせないと悲観したよ。

 すると敵から寝返り者が出てきたんだ。そいつが地下の秘密の入り口に案内するといったので、それに乗り、正騎士4000と従騎士、従者ら2000で地下から城塞に突入した。


 敵の抵抗は頑強だったが、数で押し込んだ。

 目につく敵を皆殺しにしていくと、歓声が上がった。何事かと思ったら敵の大将首を取ったのだという。

 わしは敵の大将の首を見ようと奴らに近寄った。

 10人以上の男たち、みな正騎士だ、が打ち取った首を掲げて小躍りしていた。

 大手柄だな、うらやましいと思っていたら首を持った男がわしのところにやってきて、「お前この首を預かってくれ。俺たちは城塞の食糧をあさりに行く。お前にも少し分け前をやるぞ。いいか、ここに10人以上仲間いる。この首を取ったのは我々だ。もし裏切れば皆で必ず殺す。いいな」と言って城塞に走っていった。

 わしもそうだが、とにかくまともな食糧がなくて、みな腹をすかしていたから城内にある食料あさりが優先だったのだろう。

 敵は籠城用に食料や武器をため込んでいたはずだから見つけて腹いっぱい食って、武器も手に入れるつもりなのだと思った。


 俺は重い首を持ってその場に合った壁を背にして座り込んだ。人の首って結構重い、腹ペコのわしではこれをもって城塞に食い物あさりに行くのは難しい。あいつらわしに貧乏くじを引かせやがって、と思っていたさ。

 それから少しの間だろう、大爆発が起きた。わしが寄りかかっていた壁の左右から爆風や岩屋がれきが飛んできた。


 何が起こったんだと、詳細のほうを見ると無残にも崩れ去り、がれきの山となっていた。

 がれきの中からはうめき声がする。

 わしはぼーとその情景を見ていた。

 仲間を助けなかったのだって?

 首一つさえ持つのがやっとなわしにがれきの撤去なんてできるものか。

 しばらくそれを眺めていたのだが、わしはゆっくりと動き出した。

 このままここで立っていてもしかたがない。第一この首を取ったものはみな死んだのではないか。なんにしろ、この首を本部に届けなくては。

 そう思って、幹部を探した。

 城塞の外に出ると、テントを見つけた。

 そこが本営だろう、わしはそこに向かった。

 立哨が立っていて、「タレカ」と尋ねてきたので所属と自分が正騎士であることを伝えると、中に入れてくれた。

 そこには大隊長の階級をつけた男がいた。

 「恐れ入ります。敵の指揮官の首を持ってまいりました。団長にお渡しください」と言って、渡そうとした。

 するとその男は「団長は敵に殺された。ほかの大隊長も城塞に行って帰ってこない。首は受け取る。お前しばらくここに詰めて、わしの指揮下に入れ。とりあえずさらすための首台を作れ」と言った。

 わしが首台を作り、首をそこに乗せた。

 そのあと、とにかく生き残りを集めろと命じられ、ふらふらしているものに声をかけて集めていった。

夕方になり、集まった数は1000人ばかりだった。ほぼ全員が正騎士だった。

 従騎士や従者の生き残りは負傷や飢えで動けないものが、病院という名の広場に転がされていた。そちらは数に入れていない。


 そんな仕事をしていると、ロリコを裏切った男、フィフと言うやつが、本営にやってきた。

 約束の報酬をもらいに来たという。

 お何時のおかげで仲間がたくさん死んだのだぞ、と皆が恨みの目が見ているがそいつはどこ吹く風とばかりにひょうひょうとしていた。

 「お前がフィフか」と大隊長が言った。

 「ええ、ロリコ軍の状況をお知らせし、地下道のこともお教えしました。約束しました報酬をいただきたい」と要求してきた。

 大隊長は俺たちに目配せしてきたので、俺たちはそいつを押し倒し手足を縛り転がした。

 「何をする!」とフィフが叫ぶが、無視だ無視。

 「お前のおかげで、多くの兵が死んだ。団長も死んだ。全部お前のせいだ。お前には、そのお礼をたっぷりとしなくてはな」と言うと、落ちていた鉄の板を焚火の上に乗せた。

 しばらくすると、鉄は赤くなっていった。

 その上に木にくくりつけたフィフを鉄板の上に置いた。

 叫び声が響き、肉が焼けこげる匂いがした。

 とても臭い匂いだった。

 しばらくは叫び声が聞こえたがそのうち聞こえなくなった。

 死体は適当なところに放っておいた。


 食い物もなく、みな飢えていた。大隊長はとりあえず本営の警備を命じると、テントに入ってしまった。おれもかなり疲れていたので、本営のテントの横で地べたに寝ころび寝てしまった。

 「お前は誰だ!」と大声で誰何する声が聞こえて、目が覚めた。テントの後ろから様子をうかがうと大隊長は一人の女と向かい合っていた。

 その女は12歳ぐらいの外見だったが、右目、右腕がなく、頭から血が垂れていた。

 その女は大隊長をちらりと見るとまっすぐ首台に置かれている首の方に行き、左手にもっていたハルバードを投げ捨て、その首を取った。

 首をしみじみと眺めるとその首を抱きしめ、そのあと突然自爆した。

 俺はすぐに伏せて助かったが、大隊長は爆発のあおりを食らって命を落とした。


 仲間から聞いたのだが皆が固まって休息をとっていたところにロリコ人が来て次々と自爆していったらしい。

 おかげで数十人が死傷し、指揮系統は完全に崩壊した。


 翌朝ロリコ軍がやってきて、俺たちは捕虜になった。すでに抵抗する気力もなし、全員が降伏した。

 すでに交戦意欲もなく、指揮系統もめちゃくちゃの状態ではどうしようもなかった。


 捕虜となったわしたちは後方に輸送された。

 後で聞いた話だが、我々が降伏した後で南方騎士団が来たらしい。


 ロリコ軍は戦闘意欲に燃えていて、南方騎士団を完全せん滅したとのことだ。

 儂はどうしたって?

 フランクは捕虜どころか戦闘があったこと自体認めなかったそうで、わしなぞ盗賊扱いされてしまったよ。

 そう言うわけで帰ることもできず、そのままロリコに住むことになったわけだ。


 こんなじじの話面白かったか?

 幸せかって?

 嫁も二人ももらって、沢山の子供たちと孫もできて、わしもすっかりロリコ人だ。

 仲間達や部下たちには申し訳ないが、生き残れたこと、捕虜として殺されなかったこと、それらを考えるとまあ、いい人生だったと思うよ。


 少し話しすぎたかな。疲れたので少し休むよ。また後でな。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


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