閉話5 ロリコ王の驚愕と考え、そして逃亡と監禁
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ロリコ王国第1会議場
ロリコ王ジョン・オウカは、フランクの侵攻に驚愕した。なぜフランクが攻めてくるのだ、なぜなのだ。
家臣たちはすぐに兵を出すべき言ったが、そんなこと認められるはずがない。とりあえずすぐにフランクに事の真意を確かめるため、使者を送るように言った。
家臣たちは猛反対していたが、単なる誤認かもしれない。
いや、誤認である可能性がほとんどだ。フランクが我々を攻めてくるはずがない。
なんかの間違いに違いない。
盛んに兵を出せ、せめて準備をという部下たちには、使者が返ってくるまで待つよう強く言い渡した。
かなり反発があったが、何とか言う事を聞かせた。
数日して使者は帰ってきた。手には、フランク王からの書状が添えられていた。
そこにはこのような趣旨のことが書かれていた。
フランク王国は、正式にロリコに対して宣戦布告を行う。
原因はすべてロリコの側にあり、フランクは正当な要求を行ったに過ぎない。
ロリコはフランクにすぐに降伏せよ。
降伏すれば命は助けてやる。
もし抵抗するなら皆殺しとする。
なお今後、ロリコはフランク王によって統治される。
ロリコ王家及びロリコ貴族の持つ財産はすべて没収する。
ロリコ人はフランクのロマン人より下の地位とし、一切の権利は認められない。
速やかにフランクに従え。それがお前たちが助かる唯一の道だ。
ジョン・オウカは驚愕した。そして思考停止となった。
家臣たちは口々にフランクと戦うことを主張し、軍の動員と現在最前線で戦っているロミの救援を言うが、フランクと戦って勝てるはずがない。
「軍は動員しない。降伏する」というと、臣下たちは何を言い出すんだと驚愕した顔で俺を見つめた。
アサヒも俺に対して「あなた、いったい何を言っているか理解しているのですか」と冷たい目で見てきた。
「いま、現にジュリアと婿のロミが領地の村人を率いて前線で戦い、敵を足止めしているのですよ。相手の中央騎士団に対しかなりの出血をしていて、まだ国境地帯で踏ん張っているのです。それをいきなり無碍にするなんて何を言っているのですか」
「ジュリアがフランク貴族に嫁いでくれればこんなことは起こらなかったはずだ。すべてロミが悪い。あいつを処刑してフランクに許しを請おう」
「ジョン、話を聞いているのですか」
「そうだ、留学していた時、世話になったマロン伯爵に手紙を送り、講和を結べるよう交渉してもらおう」
「皆さん、別室に来ていただけますか」アサヒは言った。
三公四伯とその他重臣たちは別室に移り始めた。
「おい、どこへ行く。降伏だ。すぐに降伏の使者を送れ」と叫ぶがみな無視して部屋を移っていった。
「王が勝手なことをしないよう見張っておくように」とアサヒは警備の兵に言って、別室で会議を開いた。
ちょっと待て、俺は王だぞ。どうしてみないなくなる。俺は後を追おうとして、兵士たちに止められた。
「俺は王だぞ。そこをどけ」
「アサヒ様の命令です。おとなしくしてください」と言って、無理やり椅子に座らされた。
誰も言うことを聞かない。
しかし、玉璽は俺が握っている。いつも持ち歩いていてよかった。絶対に離すものか。
ロリコ王国第2会議場
「皆さん、王は錯乱しています。療養が必要です。療養の間タローを摂政として補佐にキッカ殿ついていただけますか」私が言った。
「アサヒ王妃様の仰せのままに」ギムカ・キッカは恭しくいった。
「すぐにタローを連れてきなさい」と警備兵に言うと、しばらくしてタローがやってきた。
「いかがいたしました?お母様」
「フランクが攻めてきました。いま、前線でロミたちが戦っています。至急援軍を出さなければなりません」そして三公四伯の方に目をやると、「まずは、三公四伯に問います。タローを摂政とすることに賛成なもの」というと、全員が起立した。
ロリコの決は賛成の者は立ち上がり、反対の者は座ることになっていた。
「それでは、タローを摂政とします。タロー摂政、直ちに軍の派遣を決済していただきたい。玉璽を取りに行きましょう」と言って、私とタロー、三公四伯は玉璽の置いてある王の執務室に向かった。部屋に入り、玉璽の置いてある場所を見た。
ところが、玉璽がない。
どういうことだ、どこへ行ったんだと臣下たちが慌てだした。
もしかしたら、ジョンが持っているのかもしれない、私はそう思いジョンのもとに向かった。
すると向こうから警備兵が焦ったように走ってきて「ジョン王が逃げました」と報告した。
アサヒは苦虫をつぶした顔をして、「逃げたか。ジョンは昔からかくれんぼが得意だったからまず見つからないわ」とうめいた。
その時、タローが言った。「いい考えがあります」とアサヒに耳打ちした。
「それはいい考えだわ。試してみましょう」アサヒはニヤリとしながら言った。
屋敷の床下にて
ここは俺が子供の時からの隠れ家だ。絶対誰からも見つからない。ここを見つけたのは本当に偶然だ。
子供の時にかくれんぼで床下もぐりこんだ時見つけたものだ。おそらくここは床にありめぐらされたオンドルの空気の流れを見るためのメンテナンススペースなのだろう。
ロリコは冬の寒さが厳しく、大体の建物の床下には暖かい空気を通しして、床から部屋を暖められるようになっている。
この部屋にはノゾキ穴があり、オンドルの中を確認することができるようになっていた。
この部屋に入るには、ある場所を押したまま壁を上に持ち上げるようにしないと入り口が開かないようになっている。
自慢ではないが、俺はこの手のものを見つけて入り口を探し当てるのが得意だ。
ここでほとぼりが冷めるのを待って、警戒が緩んだらフランクに行って降伏しよう。
玉璽がなければ軍の動員もできまい。大体ロリコがフランクに勝てるはずがない。
被害が少ないうちに降伏すべきだ。それを世間知らずのお山の大将共が徹底抗戦など叫んでいる。本当に馬鹿だ。
なぜか外が騒がしい。恐る恐る外の様子に耳を傾けると、「武器と食料の用意はいいか」「兵の動員は進んでいる」「大伯軍も順次動員が進んでいるそうだ」などという声が聞こえてきた。
「諸君、救援軍の用意ごくろう、準備ができ次第前線に向かう。急ぎ、しかし正確に準備を進めてくれ」
ちょっと待て、なぜ軍の動員が始まっているのか。俺が玉璽を持っているのだぞ。勝手な動員はできないはずだ。
俺は急いで飛び出した。そして、応急前の広場には兵士たちが集まり、出兵の準備をしていた。大量の食糧と武具が馬車に積みこまれていた。
「何をしている!俺は許可を出していないぞ!」というと、兵たちがぎょろりとこちらを向いた。その瞬間俺は何人かのロリコ人兵士に押し倒された。
「何をする!俺は王だぞ」と叫ぶが誰も聞き入れない。
「よくやりました」とアサヒがやってきた。
「タローの言ったことは本当でしたね。穴倉から出てこないやつをしとめるには、穴倉に潜るのではなく穴倉から出てこさせればいいという事は」そうしてアサヒは体をまさぐり始めた。
「アサヒ、こいつらに手を放すように言ってくれ」俺は言ったが、アサヒは黙って俺の体のあちこちをまさぐった。ついには、男の最も大切なところに触れた。
「お前どこを触っているのだ!」
「あっ、ありました。玉璽です」と言ってアサヒは隠していた玉璽を取り上げた。
「それは王のみが持つことを許されたものだ。早く返せ!」
「これをタローのもとへ」と家臣の一人言って玉璽を渡した。受け取った家臣はそのまま走り去ってしまった。
「あなたのおかげでだいぶ時間を食ってしまいました。これで正式な命令が出せます」
そういって、かがんで俺に話しかけた。
「あなたは王位をタローに譲ってもらい、あなた自身は監禁します。大丈夫、寂しくないように私も付き合いますから。ただ、とりあえずフランクを追い返してからになりますがね」
と言って、アサヒの監禁部屋に連れていかれた。
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