閉話4 フランク中央騎士団長の憂い
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中央騎士団団長、ヨーゼフ・ビオネ―は得意の絶頂にあった。
ロリコに対する進攻軍として中央騎士団が選ばれ、ヨーゼフは進攻軍司令官に選出されたのだ。
配下は、中央騎士団と魔法兵100名、弓兵1000名、農民兵1万であり、更に直轄地での食料や馬などの物資の徴発権も与えられた。
この任務に成功すれば、軍での昇進、爵位の陞爵、報奨金や領地を追加で与えられることを約束されていた。そして相手はロリコの野蛮人たちだ。剣も槍もまともに使えず、変な武器しか持たない、ろくな戦略も持たない劣った連中だ。例えるなら格闘家と生まれたばかりの赤ん坊が戦うようなもので、はっきり言って楽勝だと思われた。
壮行会では王自ら出席され、激励の言葉をかけられ、騎士団一同は感激に包まれた。
「2週間もあればロリコの首都インパールを落として見せましょう」と私は王に宣言した。
王は満足そうに「貴殿の奮戦を期待する。勝利を!」と言った。
我々も「勝利を!」と言って王の言葉に答えた。
ロリコ国境までは順調だった。王の直轄領の代官たちは次々と食料を持ってきた。
我々は街道を順調に進んだ。
国境にたどり着き、早速国境の街道の左右に迫る丘を占領した。ロリコは全く兵を置いておらずあっさり占領できた。あいつらは戦略のかけらもないようだ。
翌日早朝から堂々と正騎士を中心に隊列を組んで進んでいった。
第一大隊が通り過ぎ、第二大隊が通り過ぎようとするところで、丘から石や油が降ってきた。更に轟音が鳴り響き、狭い街道は火の海となった。それだけではない。通りかかっていた第三大隊の聖騎士たちが轟音とともに次々と倒れて言った。火は馬たちを混乱させ、落馬する者も相次いだ。重騎士は馬も騎士も重い鎧をつけており、落馬すればそれだけで大けがを負う。更に馬が倒れかかってきたら、いくら頑丈な鎧と言えどもつぶされてしまう。
混乱が収まった時、第二大隊は壊滅、第三大隊も全滅に近い被害を受けていた。
(ここで言う壊滅とは9割以上の死傷、全滅は5割以上の死傷を言う)
通り過ぎた第一大隊はどうなったのであろうか?わしの息子も第一大隊にいたのだが無事であろうか?
翌日丘の占領を目指して兵を送ったが、送った兵たちは壊滅した。2000も送ったのに!
その翌日2万以上の兵を送った。何とか丘を占領し、農民兵たちに街道を片付けさせた。
今度は第十大隊から進行させた。正騎士のうち、一番身分の低いものによって編成されているのが第十大隊だ。そして一番高いのが第一大隊となっており、序列は数字順になっている。
歩兵から通すべきではないかと言う意見もあったが、敵地への進攻のさきがけが正騎士でないと言うのは問題があるとほとんどの幹部たちが言っており、わしもそう思ったのでとりあえず第十大隊から侵入させた。
第十大隊は無事に通り、第九大隊が通過中、第八大隊が街道の入り口に入ったところで、大轟音が鳴り響き、丘は地崩れを起こした。
丘の上にいた兵たちは全員が地崩れに巻き込まれ、第八、第九大隊も飲み込まれた。
儂は茫然となった。まだ、国境も越えていないのに、いったいどれだけの兵力を失ったのか、これでは2週間でのロリコ占領はどうなるのか、王に宣言してしまったのだぞ、しかも貴族たちの面前で。
このままでは、褒賞どころか懲罰をあたえられるぞ。貴族社会でも恥知らずとさげすまれ、村八分にされてしまう。
息子たちの生存も確認できていないし、どうしたらいいのだろうか。
泣きっ面に蜂と言うべきか、その夜、敵の夜襲があった。一体奴らはどこから出てきたのだろう、一斉に襲い掛かってきた。すぐに本営と正騎士たちの防備を固めたが、奴らは意外なところを襲ってきた。
なんと魔法兵たちの幕舎を真っ先に襲い、その後弓兵たちと物資の集積所を襲って、帰っていった。
おかげで、正騎士と本営は無傷だったが、魔法兵たちは壊滅、弓兵は全滅した。弓はすべて破壊されていた。更に食料や物資は焼き捨てられたが、食料は再び挑発すればいいし、物資も同様にすぐに集まるだろう。魔法兵や弓兵など戦いの補助に過ぎない。
本当に戦いの基本を知らない奴らだ。
翌日から、歩兵と軽騎兵を使った力押しによる侵攻を行った。とにかくここを抜かなくては。
土砂で埋まった街道を無理やり抜けさせ、進攻させた。報告があり、敵は防塁を幾つも築いており、その防塁の前には死体が乱雑に並べられいいるそうだ。
その死体は身ぐるみはがされているが第一大隊と第十大隊の騎士たちだとのことだ。
儂は愕然とした。正騎士の死体を裸に剥き、衆目にさらすとはなんという恥辱、儂は死体の回収を命じた。
ところが死体を回収しようとすると敵は謎の武器を使って邪魔をしてくる。更に死体には罠を仕掛けており、動かそうとすると爆発する。
このままではいたずらに兵を失うと他の幹部たちから言われ、やむなくあきらめた。
死体は無視し、力攻めだ。
夕刻には敵の防塁を占領することに成功した。
しかし被害は兵、軽騎兵合わせて2万以上と言う大損害だ。しかし背に腹は代えられない。力攻めをつづけることにした。
何とか最終防塁まで攻め落とした。しかし、被害が多い。正騎士は温存したので4千以上残っているが、軽騎兵と歩兵はかなり損耗し、軽騎兵は1000ほど、歩兵は4000ほどしか残っていなかった。更にほとんどが負傷兵だ。
あと、どうでもいいことだが農民兵は肉壁として使用したので、生きている者はいなかった。
更に食料や物資の補給も進んでいなかった。王直轄領の代官宛て追加徴収の通知を送ったが、皆補給を出し渋った。すでに命令された量の物資は届けた。これ以上は王宮の許可がいる。確認するので待っていただきたいと口々に言ってきた。そんな暇はない。すぐに寄こせと言ったら、グズグズ言ってくる。
兵に余裕があるなら剣でもって脅かすのだが、今は兵の数も足りない状況だ。徴発に兵を割くのも難しい。
よって現状医療品はおろか、食料の支給も難しい。水もない。何とか幹部と正騎士分は最低限確保しているが、それでも正騎士たちからかなり不満が出てきている。
更にこの要塞だ。無視して進めば、完全に後方と途絶する。つまり補給は一切ないわけだ。更に隙を見て後方から襲い掛かられる恐れがある。いくらなんでも放置して進攻するのはリスク型過ぎる。
まだとば口だと言うのに、兵は1万程度しかなく、その半数は負傷していて、毎日何人か死んでいっている。
体を動かすこともできないのが半数以上を占め、次々と増えている状況だ。
彼らに医療品や食料、水は与えているのかだって?
たかが従騎士や従者ごときにそのようなものを与えるなぞ考えられん。そんな余裕があったら、正騎士に与えるべきだ。中にはどこからか野草とかを取ってきて食べようとする不届き物が出てくるが、直ぐに没収の上、むち打ちの刑にしている。
そうすると、大体翌日には死んでしまうがな。
どうしようか考えていると、一人の男が投降してきたと報告があった。
どういうやつか会ってみると、名前をフィフというフランク人の元冒険者であった。
普通ならばこんな奴すぐに処刑してしまうのだが、いろいろ苦しんでいる時だ。なんかの役に立つかもしれんと、会ってみることにした。
そいつから聞いた話だと、この防衛軍の指揮官はフランク人で貴族の出だという。
騎士学校で教育を受けたらしく、どうりで野蛮人にしては強かったわけだ。
そいつから秘密の地下道を教えてもらった。後敵が600ぐらいしかいないことも知った。
とりあえず投降するように命じてみよう。当然これだけの犠牲を強いたやつなど生かしておく理由がない。投稿を命じると同時に地下道から兵を突入させる。同時に敵の指揮官に対して、一斉に切りかかることにした。
敵の指揮官の親族がまだいたかな、そいつに行かせよう。投降しなければ家族も処刑だと言えば、投降するかもしれんな。
敵の指揮官の名はロミ・ハーロン、ハーロン家の三男だった。ただ、ハーロン家の者は当主と跡継ぎは戦死、次男は行方不明であった。ただ、次男は従騎士だったので、おそらく死んだのだろう。
死体は、正騎士の者しか確認しておらず、あとは放置か一緒くたに埋めてしまうかしていたからな。
儂はやむなく直接要塞に出向いた。聖騎士10名を連れて行った。
騎士の一人に白旗を持たせて要塞の門に着いた。
「ここの指揮官に会いたい」と大声で言うと、一人の男が出てきた。5人ほどの兵を連れていた。
「ロリコ王国ロミ・サクラ中伯です」とその男が言った。
「お前はフランク人だな。なぜこんなことをした。裏切り者め。さっさと降伏しろ」と教え諭した。
その男は、何言っているの?と言う顔をしながら、「私はロリコ人ですよ?貴族の家に生まれましたが、家からは追放されて平民となりました。ロリコに来てここで妻をめとり、身分を得てロリコ人となりました。フランクとはもう縁が切れています」と抜かした。
「ふざけるな!フランク人はフランク人だ!」とわしは一喝した。
そいつはあきれた顔をしながら「フランク人とは貴族のことを指し、平民は昔のロマン人で被支配民族だから気にかける必要はないと教わったのですが、いつから平民もフランク人になったのですか?」
「お前、もともとは貴族だろ」とわしが言い募ると、「ですから勘当されて追放されています。一切の名乗りも禁止されています。貴族の子弟としての私はすでにいません。単なるロミと言う平民です」とこともなげに言った。
もはやこれ以上の問答は意味がない。「問答無用、切りかかれ!」とわしが叫ぶと、一斉に切りかかった。敵の銃声が一斉に鳴り響いた。8人が倒されたが、2人がロミ・サクラに切りかかった。
二人ともロミに切り捨てられたが、一人が手傷を負わせることに成功した。前もって剣には毒を塗らせておいたので、長くはもたないだろう。
わしはその場から逃げ出そうと、後ろを向いたところ、背中に何発も銃弾を受け、その場に倒れた。使者を攻撃するなんて、とんでもない野蛮人だ。
わしはそう思いつつ、城壁からの銃弾によりハチの巣になったからだから血を吹き出しながら気を失った。
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