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ロリコ史記  作者: 信礼智義
第一章 ロミとジュリア
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閉話3 フランクの事情

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 フランク王宮では会議が行われていた。フランク王国は現在深刻な財政難に苦しめられていた。そもそも大きな産業もなく、農業主体であったこの国は、小麦を主な生産物としていた。ところが、近年の過度の植え付けと長期に同種の作物を植え続けたせいでの連作障害により、小麦の生産量は減少の一途を辿っていた。


 このようなことが起きたのは、重い税金と小麦の収穫量の増大を国家が強制したからだ。

 これまでは、小麦、カブなどの根菜類、クローバなどの家畜のえさを順繰りに育てていく輪作農法を農村で行っていたが、小麦の収穫量を増やし、税収を上げたい政府の命令により根菜類や家畜のえさの栽培をやめ、ひたすら小麦を作るようにした。

 税も収穫量の8割にまで上がっており、一時的には政府歳入は増加したが、小麦の生産の量は年々減少し、小麦が育たなくなった土地も出てきた。


 何故政府はこんな伝統的な農法を無視した行為を行ったのか。

 この国の地理的状況にその原因の一端があった。

 北は大森海という巨大な森があった。この森には、貴重な薬草や貴石が多く眠っていたが、巨大な害獣や毒を持った蟲、死病の類がはびこっていた。

 実際、冒険者がほんの近縁部に入り、薬草や貴石、動物を採取していたが、生存率はおおむね8割程度だった。

 つまり、5人で森に入ると、1人は帰ってこれないということだ。


 西は魔人と獣人の国があり、争うが絶えなかった。この地に辺境伯を置いて対処させていたが、とても 1貴族で対応できるものではなく、国家が援助、場合によっては兵を出さねばならず、莫大な金がかかった。


 東はと言うと、いくつかの小国を挟んで東の大国が存在し、緩衝地帯となっている国の陣取り合戦となっていた。

 当然防備のための軍備と小国への干渉をつづけるために莫大な費用が掛かった。


 南は、ベネト共和国と言う商業国家と、ロリコ王国、不毛地帯を間に挟んでギーニ王国があった。


 フランク王国は西と東への対処のため、軍事費にかなりの額を費やしている。また、先王の時に大森海に北方騎士団を派遣、一挙に森の開発を狙ったが騎士団は壊滅的被害を受け、王国は大損害を出した。大森海進出にかかった経費と北方騎士団の再建にかかった費用が国の財政に大きな傷を残していた。


 以上ことから国家財政は赤字が続き、何年か先までの税収を担保に他国からお金を借りている状況だった。

 そのお金も返せずに、とうとう商人たちも融資を渋るようになってきた。


 「何か対策はあるか」と王は尋ねた。重臣たちは黙っていた。もう、支出の切りつめしかないことは皆分かっていた。その場合、宮廷貴族の俸給カット、領地貴族から税の徴収、軍備の縮小が考えられるが、どれもものすごい反発が予想されていたたため、誰も言い出すことができなかった。


 一人の重臣が口を開いた。皆は、唖然としながらその重臣を見た。

 お前、何を発言するのかと。

 「隣国のロリコ王国では、最近新しい商品が出て、大変人気になっていると聞きます。もともと鉱物資源が多く、手工業の盛んな地域でしたが、今回出てきた絹織物はとてもよい商品で、我が国だけでなく諸外国でも大変人気のある商品となっています。また、貴重なキノコも多数輸出しており、はちみつや蜜蠟の輸出も徐々に伸びてきています。以上から現在ロリコ王国は大変経済的に豊かになっています。これまでも鉱物資源や工芸品は目を見張るものがありましたが、併呑するには山がちな地形で農業は難しく、利益を考えたら二の足を踏んでいましたが、いまなら併呑としても十分な利益が見込まれましょう。軍事的にも農民兵しかおらず、軍事的にはフランクには全くかなわないと思われます」


 他の重臣たちはその意見を聞いて口々に賛同した。

 ロリコがそんな利益を生んでいるなら占領して、利益をすべて奪えば問題が解決する。

 それに、軍事力に大きな差があり併呑は単なる手続きに過ぎない。

 これはいいアイディアだと、他の重臣から羨望の目で見られた。これに成功すれば、この発言をした重臣も褒美がもらえることは間違いないからだ。


 王は口を開いた。「この案を採用しよう。直ちに軍を送れ。一個騎士団でいいだろう」

 軍事担当の大臣は言った。「それでは早速南方騎士団に命じましょう」

 宮廷貴族の有力者である重臣が言った。「いや、ここは中央騎士団を出しましょう」

 「中央騎士団ですか?」と皆が驚いて声を出すと、「危険な任務ならいざ知らず、成功が約束された戦闘でみすみす手柄を地方騎士団にくれてやることはないでしょう。ここは中央騎士団に出てもらい、手柄を立ててもらいましょう」と言った。

 それもそうかと皆が納得した。中央騎士団には重臣たちの身内や縁戚が多く所属しており、彼らに手柄を与えるいいチャンスだと考えたからだ。


 王は「それでは中央騎士団に行ってもらおう。あと、直轄領から農民兵を徴兵せよ。土木作業や雑用に使うので、1万ぐらいでいいだろう」と言って、「今日の会議は実りのあるものだった。次の会議の時はロリコの利益をどう処理するかの話になるかにな」と笑って言った。

 他の重臣たちも笑っていた。会議は散会となった。


ハーロン家にて

 俺はニコ。この家の次男だ。いま応接間で、父の兄、そしてこの俺の3人で会議をしている。

 「我々の出陣が決まった。相手はロリコの野蛮人どもだ。楽勝だな」といって、いつもは厳格な父が嬉しそうに言った。

 兄のイースも「これは手柄を立てるチャンスですね。手柄を立てればもっと出世できるかもしれません」と嬉しそうだ。

 兄は先だって嫁を貰った。準伯爵家の3女だ。若くして聖騎士になったことで、将来有望とみなされての婚姻だそうだ。

 くそ、長男だからとひいきされていい身分だなあ。


 俺は従騎士の身分だった。これでも男爵家の次男としてはかなりの出世だろう。

 まあ、この出世はすべてあいつのおかげだというのが腹が立つ。

 俺には弟がいた。名前はロミと言う。ガキの頃からこざかしい奴で俺は嫌っていた。

 そいつが騎士学校に行き、幸運にも上位の成績で騎士学校を卒業できることとなった。

 俺はぎりぎりの卒業だったので、嫉妬で狂いそうになった。

 その時、父上が上司の息子が卒業できなかったと聞き、ロミの成績と交換することを申し出たと聞いて、小躍りした。ざまあみろだ。

 その結果、上司の息子は上位の成績で卒業できることになり、上司から感謝されたそうだ。

 その結果として、父上は正騎士の小隊長、兄イースは正騎士に、俺は従者見習いから一挙に従騎士になった。

 ロミはどうしたって?こんなことを他に知られるわけにはいかないので、父上が家から追放したさ。あいつ呆然としていたよ。ほんといい気味だ。


 さて、俺もこの戦頑張らなくちゃとは思うが、下手に手柄を立てると父上に手柄を没収されロミみたいに追放されてはいけないからな。ほどほどに働くか。

 

 まあ、スペアの俺にとって一番いいのは兄がこの戦で戦死してくれることなんだが、ロリコ相手ではそんなことは望めないかな。

 

 まあ、戦場での出来事だ。なんかの拍子に事故に遭って、戦死することはよくあることだ。期待せずにゆっくりとチャンスを待つか。と内心思いながら、二人の話を聞いていた。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


物語りは終わりに近づいてきました。もうしばらくお付き合いください。

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