第一話 失意と追放
久しぶりに投稿を始めました。今回は普通のファンタジーです。お読みいただければありがたいです。
毎日18時に投稿しますので、どうぞよろしくお願いいたします。
僕の名前はミロ、僕の父はこのフランク王国の男爵で僕はその三男として生まれた。父はで騎士団の正騎士を務めていた。
父の姿にあこがれて、僕は騎士を目指した。
次兄のニコは「お前なんかに騎士になれるはずないだろう」といって馬鹿にしてきたが、長兄のイースは「頑張ってみろ」と応援してくれた。
12歳になって騎士学校の入学試験を受けた。入学試験は厳しかったが、必死の努力の結果、合格することができた。
しかし、僕はここで僕は初めて現実と向き合うこととなった。
伯爵以上の嫡男だけが生徒扱いされ、男爵以上の嫡男と伯爵以上の次男以下は聴講生、それ以下は召使扱いで、教科書ももらえず、授業中の雑用や学校の雑用にこき使われた。
聴講生以下は試験も受けさせてもらえず、教官に対する質問も許されない。入学早々聴講生が教官に質問して殴られていた。
そんな環境でも僕は捨てられていた教科書や本を読み、図書館の雑用のときに合間を見て本を読み漁った。夜に雑用から解放されてから剣の練習をした。剣はないので、落ちていた鉄の棒を振って練習していた。
剣の型や扱い方は、実家にいたとき覚えた型を元に、雑用の合間に教官の指導や生徒たちの練習を盗み見て必死に覚えた。
その努力があだになったのか、生徒たちの剣の練習台として叩きのめされる役を仰せつかった。
こちらからは絶対に攻撃してはいけない。ひたすら剣で受けるかよけるだけ。当然勝ってはならず、必ず負けなくてはならない。
しかし、これは僕自身とっても良い訓練になった。剣の見切りを覚え、そのうち自分からわざと当たらなければ、教官ですら僕に当てられないようになった。
そのうち剣だけでなく、格闘技の練習台にも選ばれた。ひたすら投げ飛ばされ、叩き落された。これもそのうち身のかわし方を覚え、ダメージの少ない受け方を覚えた。
騎士になるために必死に努力した。いきなり正騎士になれるのは伯爵以上の嫡男だけなので、あわよくば従騎士、ダメでも騎士付従者を目指して頑張った。
3年ののち騎士学校を卒業した。
卒業するためには卒業試験があり、この試験は厳しく、パスできなければ退学となる。僕は召使扱いでありながら上位の成績をとり、無事に卒業できた。
この卒業試験の成績が今後の出世にも響いており、上位であればよりよい将来が約束されているわけだ。
ところが騎士学校を卒業しても配属の知らせが何もなかった。
本来であれば騎士学校を卒業すれば、僕のような男爵家の三男でも最悪騎士付従者見習いにはなれるし、上位の成績を取った僕はさらに上位の地位からスタートしてもおかしくなかったのだが、僕だけ何の沙汰もなかった。
そのうち、実家に帰るよう命じられたため、実家に戻ったところ、父の部屋に呼ばれた。
部屋には父スーシ・ハーロンと長兄のイースがいた。
父はいつものように厳しい顔で、兄は何の感情もない顔で僕を見ていた。
そこで言い渡されたのは僕は騎士団に入団できないこと、わが家ではそのような軟弱者は不要なのですぐに家から出ていくこと。家名を名乗ることも禁止とのことだった。
呆然としながら僕は父の部屋をでたところで、次兄のニコにあった。
「あはは、やっぱりお前には無理だったんだよ。お前みたいな無能のクズはさっさとこの家から出ていきな」次兄のニコは笑いながら言った。
「騎士学校を出れば、絶対に従者見習いになれるはずなのに」私は悔しくて涙を流した。
「いいことを教えてやるよ。お前は父上に売られたんだよ」にやにやしながらニコは言った。
「父上の上官の息子が騎士学校を卒業できず退学になったんだと。それを聞いた父上がその上官に申し出たんだ。三男が騎士学校に通って上位の成績で卒業できたのですが、その経歴を献上します。その代わり、我が家の騎士団での地位向上にお力をいただければとな。おかげで父上は小隊長に、兄上は正騎士候補に、俺は従騎士に成れるわけだ。お前みたいなクズを家の役に立ててやったんだ。我々と父上に感謝するんだな」そういってニコは笑いながら立ち去った。
しばらく意識が飛んでいたのだろう。気が付いたら僕は数少ない荷物とともに門の外に放り出されていた。門番の男が気の毒そうに僕を見ていた。
すべてに絶望した。努力がすべて無駄だった。さらに尊敬していた父に売られていたなんて。もう全てが嫌になった。
ふらふらと歩きながらここ王都パリスの中央を流れるセレヌ川にかかる橋の上に来た。ここから身を投げれば楽になれるのかな、と思い川に飛び込もうとした。そのとき襟首をつかまれ引き戻された。
「おい、若いの。何やってる」30歳半ばぐらいの男が僕の顔を覗き込んでいた。
「ほっといてください。僕なんて生きてる価値はないんだ」
「おいおい、何腐っている。見たところ貴族かいいとこの出だろ。自棄起こさず、家に帰れ」
「帰る家がないです」
「おいおい、そりゃどういうことだ」
ぽつぽつと事情を話した。騎士になれなかったこと。家を追い出されたこと。父に売られたこと。男は黙って聞いていた。
「さて、事情は分かった。でお前はどうする。死ぬたきゃ今度は止めないが。すこしでも生きたいなら俺がアドバイスしてやるよ」
僕は黙って考えた。しばらくして、小さな声で「生きたいです」と答えた。
「まあ、悪いけど生きていられる可能性は低いけどな。いいか、貴族崩れは技術もないうえ、プライドが高いから人の下で働くこともできない。まあ、行きつく先は野垂れ死にか自分から死ぬか。ただ、一つだけ生き残れる可能性がある。それは冒険者になることだ」
「冒険者?」
「冒険者だ。まあ、冒険者なんて言ってはいるが、やってることのほとんどは商人の護衛や傭兵だ。たまに危険な土地にある貴金属や薬草を採取する仕事もあるが、こっちはある程度経験や知識がないと確実に死ぬがな。とりあえず、冒険者になることだ」
僕らは冒険者ギルドに向かった。僕みたいに何の技術もない貴族崩れは冒険者になる以外道はないのだ。ちなみに男の名はフィフというそうだ。一緒にギルドのカウンターに向かった。カウンターには顔に傷のあるガタイのいい男がいた。
「よお、フィフじゃねえか。そのガキはお前の色か」その男は言った。
「こいつは自殺しかけていたところを拾ってきた。冒険者登録を頼む」
「お前みたいなクズが何やってんだ。頭でも打ったのか」
「最後に一つぐらいいいことしようかと思ってな。俺ロリコに行くわ」
「ロリコだって!お前冒険者やめるのか」
「ああ、もう年取って体が動なくなってきたしな。そろそろ潮時だ」
「分かった。まあ仕方ないな。おい坊主、この書類に名前とか書け。字は書けるか」
「はい、大丈夫です」名前や年齢、特技等を書いた。
「これで大丈夫でしょうか」「ああ、いいだろう。これはランク「見習い」の免許だ。なくすなよ。冒険者ギルドには「見習い」「駆け出し」「普通」「ベテラン」「上級」「優秀」「英雄」の7階級ある。依頼を達成し、経験を積んで、功績をあげれば階級が上がっていく。まあ、経験だけで上がれる「ベテラン」になれるのも「見習い」の一割程度だけどな」
「後の人どうなるのですか」「途中で死んじまうな。だいたい殺されちまう。重傷をおって冒険者をやることができず、野垂れ死にというのも多い」
「誰も助けないのですか」
「当たり前だ。自分のことで精いっぱいで他人のことなんか知ったことか。情けをかけて逆に自分が死んじまうことだって多いんだぞ」
生きることの厳しさを知った。いままで僕はなんだかんだで守られていたのだ。一人で生きることの厳しさを思い知らされた。
冒険者登録をして町から出る護衛の依頼を受けた。フィフさんが受けているロリコ行の商人の護衛だった。依頼料は見習いなので半分しかもらえないとのことだが、とにかく嫌な思い出のあるこの町から出たかった。行先なんてどこでもよかった。
護衛として雇われたフィフさんたち冒険者達と一緒に街を離れた。行先はロリコ王国の首都インパールだと後から聞いた。
冒険者たちはみな優しかった。比較的年をいった冒険者が多く、僕のように若い者が、ロリコ行の護衛に就くなんてと珍しがっていた。
道のりは安全で、護衛がいらないのではと思い、フィフさんに聞いてみた。
フィフさんは、ロリコに行く意味を教えてくれた。なんと僕たちは売られるとのことだった。ロリコでは男子の出生率が低く、またロリコの女性は地元から離れるのを嫌がるため、どこの村でも婿不足なんだそうだ。
それで村長は出入りの商人に婿を持ってくるよういって、商人は冒険者を雇って婿として連れてくるそうだ。
冒険者の方もそれは分かっており、年を取って冒険者を続けるのは厳しくなったものはロリコ行の護衛を志願してどこかの村で婿として生きる道を選ぶそうだ。
ちなみに婿となると行動の自由はなく、一生妻に縛られて生きることになるそうだ。
この護衛の依頼を途中でやめれば違約金を払うしかなく、そんな金は持っていなかった。そのまま逃げれば冒険者ギルドから追放され、生きていくことも難しい。
どうすればいいかフィフさんに相談した。
フィフさんは笑って言った。「ロリコで嫁をもらって暮らせば、死ぬことはない。ロリコの女は小柄だし、性欲もきついうえ、束縛の度合いも半端ではないが結構悪くないぞ。おまえも一緒に暮らさないか」
心が動いたが、この旅で心が少し持ち直してきたのだろう。もう少し冒険者として頑張りたいといった。
フィフさんは言った。「村に入ったら、泊まった部屋のドアに鍵をかけてどんなに呼ばれてもカギを開けてはだめだ。ロリコの風習ではドアを開けられない限り入ってはいけないことになっている。しかし開けたが最後、女は入ってきて力づくでモノにされてしまうぞ。そうなったら結婚するしかなくなるからな」
「逃げ出したらどうなるのですか?」
「ロリコは山間の盆地に人が点々と住んでいる山岳国家だからな。地元の人間から逃げるなんてまず無理だ。逃げ出して捕まればえらいことになるぞ」フィフさんは身を震わせて言った。
何日かの旅の後、とある村に着いた。僕は食料と水を受け取ると部屋に鍵をかけて閉じこもった。商人からは宴会があるから参加しないかと言われたが断った。夜になると「宴会に参加しませんか」「ドアを開けてくれませんか」という女の子の声とドアをトントン叩く音が聞こえた。
僕は毛布にくるまってぶるぶる震えていた。
開けてくれという声と、ドアをトントン叩く音は夜中まで続いた。
いつも間にか眠ってしまったようだ。明るくなってから僕は外に出た。商人のところにいったら僕以外の護衛はいなくなっていた。
「あなたはここに残らないのですね」商人はびっくりしたように言った。
「他の冒険者たちは?」僕は尋ねた。
「みんなここに残ることになりました」商人は平然と言った。
「みんなを売ったのですか?」僕は強い口調で言った。
「売るなんでとんでもない。彼らはこうなることを望んでここに来たのですよ。私は少しお手伝いしただけです」商人は微笑みながら言った。
「ロミさんでしたよね。冒険者になって何年目ですか」商人は僕に聞いてきた。
「冒険者になったばかりです」僕は答えた。
商人はいった。「ロミさん、冒険者は体力仕事だ。危険も多いし、一部を除けば食っていくのがやっとの仕事です。いや、それすら難しい。そのうえ怪我をしたり、病気になれば生きていくことはできなくなる。それがなくても年を取れば体も動かなくなっていくし仕事もなくなっていく。そうなったら技術や特技のないものは最悪飢え死にします。そういう冒険者たちに私は安寧を提供しているのです。ここでならかわいい妻をもらえるし、畑を耕したり、家畜を飼いながら生きていけます。」
商人は僕を見つめながら問いかけた。「私のやっていることは間違いだと思いますか?」
僕は黙ってしまった。
出発の準備をしていると、フィフさんがやってきた。隣には12歳ぐらいの少女を連れていた。「ロミ、ここでお別れだな」
「フィフさんいろいろありがとうございました」僕は頭を下げた。するとフィフさんは頭をなでてくれた。
「まあ、元気でやれな。疲れたら嫁を世話してやるからこの村に来い」フィフさんは言った。
「そうよ、ぜひおいで下さい。みんな喜ぶわ」フィフさんの隣にいた少女が言った。フィフさんの奥さんらしい。フィフさんそういう趣味だったんだ。かなりびっくりした。
商人は、出発を促した。僕だけを護衛にして馬車を走らせ始めた。
「あの冒険者と知り合いですか?」
「はい、色々助けてもらいました」
すると商人は憐れんだように僕を見ていった「君は人を信じやすいみたいだね。あいつは札付きの悪だよ。両刀遣いのフィフと言って、強盗、殺人何でもあれで、捕まえた男も女も見境なしに強姦して性奴隷にするので有名だよ。飽きたら奴隷としてうっぱらう。そのうえ、まあ、よっぽどひどい目に合わされたのだろうな。だいたいあいつが売り払った奴隷は精神的にも肉体的にも壊れていて使い物にならなくない。知らずに買った商人は大損するんだよ。商人仲間では有名だよ」
僕は呆然とした。フィフさんがそんな人だったなんて。
お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。
星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。
最近なかなか忙しく作品が書けません。なんか時間に追われています。まあ、あちこち手を広げ過ぎと言うことなんですが。




