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8話 哀しき奇策

タッタッタッタッタ!


ターサー「はぁ…はぁ…」


茂みの奥に奴の気配を感じる。


ターサーは息を整え銃を構えながら近付いていく。


そうして木陰から覗こうとした瞬間だった。


ザシュッ!!!


何かを切る音が聞こえた。


ターサーは木陰関係なしに銃を構えながら身を乗り出す。


ターサー「っ…」


狼人間「グゥ…グゥ…」


そこには狼人間…と…狼人間の右腕が落ちていた。


ターサー「っ…ルフ…」


そのまま狼人間は倒れ、みるみる内にルフの姿に戻る。


ターサーはその様子を見ながらそっと銃をホルダーにしまい近付いていく。


ターサー「…」


寒さの対策に着ていたミリタリージャケットを脱いではルフにかけ、そっと傍に膝をつく。


ターサー「…(誰かを傷つけない為…か…)」


ルフの近くには狼の右腕が落ちて残っていた…


が…ルフの右腕は…なかった。


その時


タッタッタッタッ!


ガルボ「はぁはぁ…ターサー…ここにいた…か。」


ガルボはターサーを見つけると同時にルフも見つける…


ルフは静かに横たわり穏やかに呼吸をしていたが…


ガルボはすぐさまルフの右腕にも気付きターサーの隣に立ったまま近づく。


ガルボ「どうなってるんだ…」


ターサー「…ルフが狼のまま自身の右腕を切った…」


ガルボ「ルフ…どうして…」


その時だった、さらにこちらに走ってきている足音がする。


ターサー「っ…」


ターサーはすぐさま察知し誰かも理解するが止めるのには少し遅かった。


サーカ「はぁはぁ…ターサー!ガルボ!…っ!」


サーカは二人に近づくが何かに気付き足を止める。


サーカ「…ル…フ?」


サーカはただ立ったまま倒れているルフを見続けている。


サーカ「…そうか…そういう…事だったのか…」


サッ…サッ…サーカは再び歩きだし草を踏み倒しながらルフの元へ歩いていく。


サーカ「…ルフが…」


ターサーとガルボは何も言い出せなかった…ただ

その場を見ている事しか出来なかった。


ルフ「…っ…ぅ…」


ルフがその場で目を覚ます、少しずつ瞼を開けていっては目の前にたっているサーカに気付く…

そして…微笑む…


ルフ「サーカ…くん…無事だ…よかった…」


ルフは遅れてくる痛みに耐えながら涙を流し…ただ

サーカを見つめていた…。


やがてルフは右腕を上げ、サーカに向かって手を伸ばそうとするが、掴む手はない。


ルフ「っ…」


今度は左手を上げる。


サーカはゆっくりその手を握る。


サーカの涙がその手に落ちる。


ルフ「…こんな私でも……好きでいてくれる?」


ルフは先日からずっと聞きたかったことを…ここ場でようやく口にする。


答えが怖かった事だ。


サーカ「…俺は…」


サーカは少し口を閉じるがすぐに開ける。


サーカ「ルフじゃなきゃダメだ…」


サーカはぎゅっと強く手を握る。


ルフ「嬉しい…」


ルフはそのまま目を瞑り左手で…サーカの温もりを感じ続けていた。



~次の日~


ルフは目を覚ます。


ゆっくりと目を開ける。


ターサー「起きたか…」


ルフ「ター…サー…さん…」


ルフは力のない声をだす。


ターサー「あぁ…ルフ…俺だ…」


ルフは瞳だけを動かし辺りを見渡す、いつもの部屋だが、少し違う。


窓はガラスが割れておらず、カーテンもある。


ルフ「ここは…どこ?」


ターサーは微笑み言う。


ターサー「サフンの村だ…」


ルフ「…誰かが…やっちゃいました?」


ターサー「違うさ…」


ターサーはフッと笑う。


ターサー「あれから1ヶ月経った…お前が目を覚ますとは分かってはいたが…安心したぞ」


ルフ「私…1ヶ月も…眠っていたんですか?」


ターサー「あぁ…良い夢は見たか?」


ルフ「…ん…分かりません…」


ルフは右手を上げる。


やはり右手はない。


ルフ「…」


ターサー「…お前は人を救った」


ルフ「違います…私は…」


ターサー「いいや…救ったのさ…それより…

もう立てるか?」


ルフ「…?」


ターサー「ほら…」


ルフの左手を握りそっと手を貸しながらベットから立たせる。


ターサー「こっちだ…」


ルフを優しく部屋の扉の前まで連れる。


そしてゆっくり扉を開ける。


子供達が広場で元気よく遊び、農民が元気よく畑を耕している。


村のほとんどの家は綺麗になっている。


ターサー「あれから…手を貸してくれる人達を

探してな…今は…昔より良くなった…」


ルフ「っ…じゃあ…」


ターサー「もう苦しむ人はいない」


ルフは涙を溢しながら。


ルフ「よかった…よかったです…」


ターサー「……少し一緒に歩くぞ…」


ルフを部屋から連れ出し村を一緒に歩く。


そうして着いた先は一つのベンチ、誰かが座っている。


サーカ「…ルフ…」


サーカは優しく微笑みルフを見る。


サーカ「すっげぇ待ってた」


相変わらずの無邪気な笑顔を見せる。


ルフ「…私も…凄く会いたかった…すごく…」


サーカ「…はは…それってすっげぇ嬉しい。」


ターサー「ま…後は…二人で話せ…俺はそろそろ…次の任務地に向かわないとだからな…」


ターサーはその場から離れようとする。


ルフ「待ってください!」


ターサー「ん?」


ターサーはゆっくり振り返る。


ルフ「ありがとう…ございました…」


ターサー「気にするな…」


サーカ「ターサー!さん!俺からも…お礼を言いたい!…ここ最近…ここは…ひどい状態だったけど…みんな元気な笑顔を見せるくらい…良くなって…」


ターサー「…それはそうだが…ここがピンチでも…お前が見せてた笑顔と…今の笑顔が変わらないってのは…凄いことだな…」


サーカ「え…?」


ターサー「それ…ルフにずっと見せてやれ」


ターサーは再び歩きだす、振り返らずに。


サーカは止めようと手を伸ばすが。


ルフは左手でサーカの手を止める。


ルフ「…すっごくキザな人なんです」


サーカ「……そ…そうか…」


ルフ「ふふっ…」


ルフはただ微笑みながらターサーの背中が見えなくなるまで見つめ続けていた。



ターサーは村の入り口の前で馬に乗る。


ガルボ「おいっ…ターサー」


ターサー「ん?」


村の入り口前で柱に寄っ掛かっているガルボがいた。


そして杖をついてゆっくり歩いてくるサフン。


サフン「ターサーよ…今回の件は本当に感謝している…」


ターサー「このくらい良い…」


ガルボ「いいや…こりゃ…村の伝説として語り継ぐかもな…」


ガルボはクスリと笑いながら馬に乗ったターサーに近づき。


ガルボ「これ…一応…お礼だ…」


ガルボは布に包まれた何かを渡す。


ターサー「これは…?」


ガルボ「ナイフだ…あんたの持ち込んでるもんに

敵うか分からないけどさ…」


ターサーはゆっくり包んでいる布を捲っていき

ナイスを手にとっては上に持ち上げ見る。


ガルボ「…」


ターサー「悪くない…」


ターサーはホルスターにしまったナイフと入れ替え


ターサー「…」


ターサーは無言で馬の方向転換をし…


ターサー「また会おう」


ガルボ「おう…」


ヒヒィーン!!馬を走らせ去っていく。


サフン「…神とは…決して触れられないものではない…」


ガルボはクスリと笑いながら。


ガルボ「なんだそれっ…」


サフン「巻物に書くとしたらの…前口上じゃ…」


続く

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