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6話 男は恋心を釣る

次の日…鳥のさえずり、青い空。


村の子供も元気に大人の手伝いをし、村の復旧を

進めている。


ターサーはサフンの家前にいるガルボに話しかける。


ターサー「おはよう」


ターサーはサフンの玄関前のバルコニーの柵に手をつき、ガルボに顔を向ける。


ガルボ「おはよう…なんだか、これからって感じがするよ…村はやっと復旧を始めた…俺が害獣がいなくなった事を伝えたら…みんなの瞳が…希望に

満ちたんだ…久々に見た目だ…」


ターサー「そうか…」


ターサーには少し気がかりがあった。


狼人間の正体はルフだった、どうにか気絶させた後ルフの姿になったが、本当にそれきりなのかどうか


そんな疑問があった。


ターサーだけでない、ガルボもそう思っているかのような…なんとも言えない表情だった。


ただ一つ分かるのは…もしルフがまだ狼になるなら

処刑以外あり得ないことだった。


捕らえるのは生き地獄、なにもしないのは村の崩壊

このジレンマが二人をさらに悩ませていた。


ターサー「ガルボ…ここ数日…ルフの様子は悪か

ないが…用心することがある…」


ガルボ「…分かってる…多分…同じことを考えている…。」


ターサー「そうか…」


そうして二人で考えを深めながら話を続けていると

少し離れた場所に気が沈んだルフを見つける。


ターサー「……少し様子を見てくる」


ガルボ「…あぁ」


ターサーは柵についた手を離してはルフの元へ向かい歩いていく。


ターサー「ルフ…」


ルフ「……。あっ…ターサーさん…おはようございますっ…」


ターサー「あぁ……それで、昨日の事は考えたか?」


ターサーは少し暗い気分に見えるルフに少しでも

違うことを考えさせようとしてみる。


ルフ「……やっぱり…私じゃダメですよ…」


ルフは苦笑いしながら昨日の自信とは程遠い事を言う。


ターサー「…どうしてだ?」


ルフ「…普通の人間じゃないんですもん…」


ターサー「あれは…」


ルフ「ターサーさんも分かってますよね…私は…

あれっきりじゃないと思うんです…記憶はないけれど…分かるんです…。」


ターサー「……そうだな…」


ルフ「だから…もう良いんです」


ターサー「…もし違ったら?」


ルフ「えっ?」


ターサー「もし…本当はあれっきりで…既に普通の人間なら…幸せな人生を生きる権利がある」


ルフはターサーの言葉に黙り込み。


ターサー「…お前はまだ若い、残りの時間の過ごし方は…幸せを選らぶべきだ…。」


ルフ「…私は…」


サーカ「ルフ!」


後ろからサーカの声がした瞬間、ルフは振り返る。


ルフ「サーカくん…」


ターサー「昨日言った通りだぞ…ルフ…」


ターサーは静かにその場から離れる。


ルフ「っ…え…ええっと…サ…サーカくん…な…

なんの用でしょうか…」


ルフは頬を赤らめながらサーカに目を合わせては

逸らすを繰り返す。


サーカ「数年ぶりに戻ってきたのに、あんま深く

話せてなかったから…だから…釣りでもして話さないか?」


サーカは無邪気に笑顔を見せる。


ルフ「……はいっ♪お話…しましょう♪」


そうしてルフはサーカに連れられ川に行く。


川の水は透き通っていて意外に深いのが分かる。


川の周りは綺麗な緑の草が生えている、そんな中

サーカはふわりと草の上に腰を下ろし釣り道具を

調整しながら話す。


サーカ「ここ自体は大分前に見つけたんだけどさ…

やっぱりルフと来たくてさっ…一緒にこれてよかった」 


サーカはまた無邪気な笑顔をルフに見せる。


サーカ「よしっ…完璧…ほら…餌と…釣竿…」


ルフ「うん…♪」


ルフは嬉しそうに受け取ってはぎゅっと釣竿を握る


サーカ「よーし…大物釣ってみんな驚かしてやろっと…」


サーカは赤毛を束ねた紐を結び直し釣糸を川に垂らす。


ルフもそれを見よう見まねで垂らし目をつぶる。


魚を釣るために集中する…という訳でなく、近くに

大好きな人がいることをただ感じていた。


自然と口角が上がる。


サーカ「あ…おい…」


ルフ「…?」


ルフはサーカの声に反応し目を開ける。


そう、竿の先が曲線を描いている、かなり強く。


サーカ「っ!結構大きいのかかってるぞ!」


サーカは自身の釣竿を上げては急いでルフの後ろから一緒に釣竿を握る。


ルフ「っ!結構つよいですっ!」


ルフは頑張ってサーカと一緒に釣竿を引き続ける。


サーカ「踏ん張れぇ!!!」


サーカと一緒に魚に引っ張られる竿を引き続ける…


そしてついに…


バシャーン!!!!


1メートル程の大きな魚を釣り上げる。


釣り上げた勢いに二人して後退し後ろに手をつく。


ルフ「っ…はぁ…はぁ」


サーカ「はぁ…ふぅ…おい…ルフ…すっげぇの釣ったな!」


ピシャピシャ!


釣り上げた魚は地面の上で跳ね続けていた。


ルフ「は…はぃ…」


ルフは息を整えながら大きな魚を見る。


ルフ「…(二人で…釣ったお魚…)」


サーカ「これなら数日は飯に困らないぞ!」


サーカは先に立ち上がってはルフに手を差し伸べる。


ルフ「…」


ルフは少し手を取るのを躊躇する…が…今だけは…

自分の気持ちに従うことにした。


サーカの手を思いっきり握ってはサーカに引かれ

立ち上がる。



ガルボ「おいおい…こいつはすごいな…」


二人は村に帰ってはみんなに魚を見せていた…。


ターサー「こいつが川にいたのか?」


サーカ「あぁっ!ルフがドバーンって釣ったんだ!まじで凄かったんだぜ!」


ヤン「ルフ姉すっげぇ!!」


ラン「意外にも力持ちなんだね!」


サン「でっけぇー!」


子供は集まり魚を囲んでいた。


ルフ「…」


ルフは自分が初めてこの村で役に立ったことを実感した、みんなが食べる魚を自分で釣ったのだと。


ルフ「ふふ…頑張っちゃいました♪」


ターサーはそんなルフを見てフッと微笑む、明らかなルフの成長だった。


続く




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