46話 道のりはもう少し
その日…いつもの青い空とは違った…雲に覆われていて大雨が降っていた。
パカリッ…一度馬が足をつく度にいつもより大きい足跡が残る。
ターサー「っ…酷い雨だ…」
リリー「…」
ターサー「平気か…寒くないか?」
馬を操りながら前に抱え乗せているリリーに聞く。
リリー「平気です…ターサーさんのくれたレインコートがあるので…」
リリーはPITの開発するレインコートを着ていた。
PITのレインコートは大きさを自由自在に変えれるハイテクなレインコートなのだ。
開発スローガンが
Even a bear could wear it
という程だった。
ターサー「…やめても良いんだぞ?今日は…」
リリー「平気です…」
ゴロゴロ!!ガシャーン!!大きな雷が鳴る…
ターサーには景色が見えている…だから雷の怖さはそこまでであった…しかしリリーは違う。
少し幼い上に雷の音だけが聞こえる、目は見えないので暗闇で聴こえ続ける嵐の音は辛いものであった。
ターサー「…街まであと20kmだ…時間的に今日中に着くはずだが…」
パカリッ…パカリッ…
ゴロゴロ!ドッシャーン!!!
リリー「や…やっぱり!やめます…今日…」
キィッ!ヒヒーン!!馬を止めてテントを張っていく。
ターサー「…よし…中に入れ…今タオルを渡す…」
リリーをテントに入れ濡れた顔を拭くためのタオルを渡す。
ターサー「…嵐の中のキャンプほど…危ないものはないが…これ以外に選択肢はないか…」
リリー「ぅ…」
ターサーは外の嵐に怯えてる元気付ける言葉を掛けてみる。
ターサー「リリー、良いことを教えてやろう…
嵐のキャンプには確実なメリットがある!」
リリー「メ…メリット?」
ターサー「動物が襲ってこない!」
ゴロゴロ!ガッシャーン!!!
リリー「うわぁぁぁ!!デメリットが大きすぎますぅ!!!」
リリーはテントの中でうずくまる。
ターサー「っ…はぁ…言えてるな…」
ターサーはテントの中の紐を引っ張る。
すると中から透けて外が見える。
ターサー「…(動物以外に…追跡者はいないか…?流石に雨の中来る事もないか…)」
ターサーはよーく辺りの地面を確認する。
ターサー「…(あれは俺の足跡…あの小さいのはリリーの……あの一つはなんだ…?)」
よーく足跡に注目する、まるで1本あしで歩いてるかのように片足だけの足跡が続いている。
ターサー「…」
ターサーはホルスターから銃を手に取る。
ターサー「…(前に向かって行ったのか…?)」
ターサーは足跡をさらによーく、テントの中から見る。
少し違和感があるのだ…。
ターサー「…(足跡が真っ直ぐというよりも…まばら…片足だけということは…跳びながら行った可能性を考慮しても良いが…それにしても…まばら……後ろに飛んで行ったとすれば…話は別になる…)」
ターサーはゆっくりリリーの元に膝をついて。
ターサー「リリー、テントから出るな…」
リリー「えっ…置いてくんですか!」
リリーは顔を上げる、目に巻いてる赤い布の奥は明らかに目をうるうるさせているのが分かる。
ターサー「すぐに戻る…俺以外が来ても開けるな…それが助けの声でもだ…」
リリー「っ…ひ…秘密の暗号!」
ターサー「え?」
リリー「秘密の暗号決めましょう!」
ターサー「っ…わ…分かった…なんだ?」
リリー「ピンクのウサちゃん…」
ターサーは戸惑ったように。
ターサー「な…なんだそれは…もっとマシなのは…」
リリー「敵の人が来たとしても言わなそうなのを選んだんです!」
ターサー「っ…分かった…ピンクのウサちゃんだな…了解…ボス…」
ターサーはゆっくりジッパーを下ろしテントを開ける、その瞬間に雨の音はテントに飛び込んでくる。
ターサーはゆっくりテントから出た後にジッパーを閉める。
ターサー「…(間違いない…足跡は近くの場所に続いてる…しかし…何故このような真似を…)」
ターサーはテント前のジメジメした泥にトラバサミを開いて置き、足跡の続く方向に行く。
カチッ…ターサーは足跡にライトを照らす。
ターサー「…(こっちか…)」
足跡を辿って少し…
ターサー「…(足跡はここまでか…)」
ザー…!雨は降り続けている…。
しかしターサーは気付く…自分にだけ雨が降ってきていない。
ターサー「…」
ターサーは瞬時に真上に銃を向ける。
傘が浮いてるのだ。
ターサー「…(これは…)」
その時だった…バサッ!!!
傘が急に閉じてターサーの方向に頭を向けて降ってくる。
ターサー「…(っ!)」
緊急にローリング回避し落ちてきた傘に銃を向ける。
ターサー「…(これは…)」
曇りで反射もなしに見えなかったが、なんと傘の頭には刃物がついていた。
「お見事…」
パチ…パチ…
と拍手の音と共に男が現れる。
その男は片足がない、トン…トン…っと片足で跳びながら目の前に現れたのだ。
ターサー「誰だ…何が狙いだ…」
男は着物を着ていた、黒一色、肌は色白、髪は金髪、短め、目は青い…。
男「あなた…ヨウカイは信じますか?」
ターサーは男に銃を向け続けながら。
ターサー「…何だ、それは」
男はターサーの質問に答えず話し始める。
男「件は言った…あなたは旅路の途中に襲われる…と…」
ターサー「…ぁ…?」
ゴロゴロ…ガッシャーン!!!!
男の元に雷が落ちる。
ターサー「っ…!」
ターサーは少し下がるが、光りと共に男の姿は消えていた…。
ターサーは銃を向ける周りを見渡す、気配もない…傍に落ちていた傘に目を向け、近くに膝をつく。
ターサー「…(なにがどうなってる…厄介な敵ばかりが現れる…)」
ターサーは傘を拾い上げ立ち上がる。
テントの前に着くと設置していたトラバサミの中央に傘をズシッと刺してトラバサミと傘を両方投げ捨てる。
ターサー「リリー!俺だ!開けるぞ!」
リリー「秘密の暗号!」
ターサー「っ…」
ターサーは少し唸り。
ターサー「ピンクのウサちゃん…」
リリー「ふふっ、良いですよ!」
何故かキャッキャッしてるリリー。
ジジジ…ゆっくりとジッパーを開ける。
ターサー「…無事だったか?」
リリー「無事ではありましたけど…凄く怖いですよ…」
ターサー「今さっき機嫌が良かったろ…」
ジジジ!ジッパーを閉める。
ターサー「まぁいい…今回も見張っといてやるから…ゆっくり寝ろ…明日には雨も止んでるはずだ…」
リリー「…分かりました!」
リリーは手を伸ばして何かを探している。
ターサー「どうした?何を探してる…」
リリー「ターサーさん…」
ターサー「俺はここだ…」
ターサーはリリーに手を伸ばす。
リリー「あ…」
リリーはターサーの手首を握る、リリーの手は少し暖かった。
しばらくして…。
リリー「すぅ…」
リリーはゆっくりと安心したように眠っていた。
続く




