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32話 時計の鳴る部屋で

32話 時計の鳴る部屋で


ーハウィ邸ー


チッ…チッ…チッ…


夜の部屋…その部屋の外の廊下の時計の音はかすかに聴こえる。


ルリィ「ん…んんぅ…」


寝苦しいのは時計の音のせいではなかった。


こういった静かでリラックス出来る部屋は辛い思いをした人間に思考を巡らせる…。


辛い過去も思い出させる。


ルリィ「…」


???「あの魔法使いの…?」

???「穢らわしい魔法使い…」

???「人殺しの娘よ」


ルリィ「っ!」


バサッ!起き上がる。


ただ脳裏に今まで言われた辛い言葉も…哀れみの

言葉も全てが蘇ってくる。


ルリィ「…(私は…私はそんなんじゃ…)」


ルリィは部屋の棚に置いた魔法使いの帽子を手に取る。


青色に黄色のラインが入っている、この帽子は昔からある帽子なのにも関わらず綺麗なままだった。


魔力が込められている為だった、強力な魔力が…

それはルリィの母親ヴァイオレッドが着用していたものなのだ。


ヴァイオレッドの処刑後、ルリィは投げられるように渡された、ただ娘でありその時は小さいということで街には居続けられたが周りの目と扱いから逃れるように街を出た、バッグと帽子だけを持ち…。


しかしマジリカ国全体に伝わっていた話からは

逃れることが出来なかった。


ルリィ「…(きっと…私を愛してくれる…誰かが…きっとそうです…もしかしたら…私の過去を

気にしない強い男の人と出会って…)」


ルリィ「(それから…甘えてみちゃったり…)」


ルリィは帽子を抱きしめる。


ルリィ「…(お母様…きっと…見つかりますよね。)」


ただ良い何かを感じることが辛さから逃れる方法だった、だがそれは思いの外効果があるのだ。


…


コッケコッコー!


外のニワトリが鳴いて朝を伝える。


時計は六時を指している。


ルリィは気が付いたら帽子を抱きしめながら眠っていたのだ。


ルリィ「…(朝…)」


ルリィの眠っているベッドの位置は朝になると

丁度朝日に照らされる。


部屋の白い家具たちも朝の目覚めを良くしてくれる。


ルリィ「…(やっぱり…お母様と眠っていると…

安心します…)」


ルリィはぎゅっと帽子を抱きしめてはベッドから出て棚に帽子を戻す。


それから…


シュルル…パジャマを脱いでメイド服を着ていく。


ルリィ「…(さっ…今日も頑張りますよ!)」


部屋を開けて階段を一歩二歩降りて1階に行く。


ルリィのご主人様、ハウィは起きるのが早く、

毎朝キッチン既にいる。


その為、部屋から出た瞬間のコーヒーの香りも

朝だと言うことを認識させてくれるのだ。


ルリィ「おはようございます!」


ルリィは元気良く挨拶する。


ハウィ「お、やぁ…おはよう」


ハウィは相変わらずの白髪混じりのヤギヒゲを

している。


ハウィ「今日も無理のないよう頑張るんだぞ」


ルリィ「はい!」


ルリィは家事を始める。


ー洗濯ー


樽に溜まっている綺麗な水で洗濯をし外にかかっている紐に取り付けて干していく。


ルリィ「…よいしょ…」


風が優しくなびき、洗濯物もそれに応えるように揺れる。


ルリィ「…(今日も良い天気です♪)」


ー次に朝食ー


ハウィは毎朝コーヒー一杯で新聞にじっくり目を通す。


その間に洗濯、そして次に朝食という時間の

ゆとりがあった。


少し重たい鍋を持ち上げ薪ストーブに乗せる。


薪ストーブでは暖も取ることも料理に使うことも出来る、鋳鉄製であり、見た目も悪くない。


肉と野菜を食べやすい大きさに切り分けていき鍋に入れる、シチューはルリィのいる町で定番で

あり、奥様が集まって昨日のシチューはどうだったと話すレベルであった。


ルリィはゆっくりと鍋をかき混ぜ食材の美味しさを最大限出していく。


ルリィは今朝はビーフシチュー作っているのだ。


カッカッカッ…木製のお玉を軽く鍋でバウンドさせる、次にスプーンですくって味見をして調整をする。


そうして七時少し過ぎに朝食のシチューを完成させる。


ルリィ「…(ふふっ…今日も美味しく出来ました)」


ハウィ邸は町長の家ということもありはるかに大きいわけではないが庭に畑がある、そこでは

マジリカならではの方法で野菜が育てられている。


魔法で野菜を育てる方法は野菜をより美味しくさせるのだった。


それに加え、ハウィの趣味である狩猟でとってくるシシザルの肉は柔らかくビーフシチューを素早く作れる他、少し溶けてさらに深い味にしてくれるのだ。


ルリィ「お待たせしました!」


木製の器にシチューを入れスプーンと一緒に

ハウィの目の前に置く。


ハウィ「ほぅ…今日はビーフシチューか…中々

良い香りがする…」


ルリィ「それだけじゃありませんよ♪」


ルリィは近くの雑貨屋で購入したパンも皿に乗せて置く。


ハウィ「これは…最高の朝だ…」


ルリィ「ふふっ…」


ルリィも自分の分をよそい一緒に食べる。


このようにしてルリィのメイドとしての朝は過ごせているのだ。


ハウィはビーフシチューを一口食べる。


ハウィ「うむ…濃厚なシチューだ…肉も口で

蕩ける…かといって野菜は野菜らしく食べていられる…最高の一品だ…ルリィ…」


ルリィ「ありがとうございます♪」


ルリィは辛い過去と比べれば今は…


人生一幸せな生活であった。

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