30話 影の総司令と忍者
パカリッ!パカリッ!
ターサーは馬を少し早めに走らせていた。
ターサー「…(あの奇妙な忍者…もしPITの者なら…かなり厄介だ…あいつが厄介というより…
あいつみたいのが他にもいるんだとしたら…)」
ターサー「リリー、強めに掴まっとけ…やっ!」
パチン!森に響き渡る手綱の音、馬の鳴き声。
ターサーは思考を巡らせさらに馬のスピードを上げる。
~PIT基地~
司令官「総司令…お呼びでしょうか」
暗い部屋、影の中で一つ…赤く光る、そして煙を放つ。
葉巻の香りが部屋に充満する。
総司令「ふぅー…ガルド族領に向かうと聞いた
ものでな…わざわざ司令官のお前も…だ」
司令官「…」
司令官は姿勢を少し崩しベルトに手をかける。
司令官「総司令…それは作戦があっての事ですよ」
総司令「なにも疑ってるわけでない、しかし…
マジリカの偵察部隊が奇妙なことを報告してきた」
司令官「奇妙なこと?」
総司令「これをお前に言っておくのは、マジリカがガルド族領に近く、現れるかもしれないからだ」
司令官は前傾姿勢に耳を傾けるようにする。
司令官「現れる…?どういうことです…?」
総司令「マジリカでターサーを見つけた」
司令官は総司令の前のデスクに手をつく勢いで近づいた。
司令官「っ…いまなんと…?」
総司令「早まるな…しかし、正体不明の忍者のようなものが現れ…ターサーに襲いかかっていた…それだけじゃない…偵察部隊も手下のようなやつに追われたと言っている」
総司令「命からがら帰ってきた隊員から聞いた話だ…女は…"不死身"だ…と。」
…
パカリッ…パカリッ
ターサーは変わらず馬を走らせている。
しかし視界の横に確かに写る…何かが
ササッ…サササッ!
馬を走らせている道の横、木々を素早く走っていたのだ。
そう、メシスの姿であった。
ターサー「っ…!(まだ追ってきていた!?)」
メシス「そう簡単に逃がせないのよぉ♡?」
メシスは再び不気味と色気の混じる笑顔をしながら息切れもせず馬の横、馬よりも速い速度で隣を走ってくる。
リリー「タ…ターサーさん?なんか…馬が速い気がします…何かあったんですか?」
ターサー「気にするな!続けて掴まってろ…」
パチン!
馬をさらに強く叩き走らせる。
メシス「無駄よっ♡!」
ピシュン!確かに聞こえたのだ、速く走り、それから飛ばないと出ないような音、そしてクナイの
風を切る音。
3本のクナイが馬の足元に刺さる、重く強く刺さったクナイは馬の足をすくう。
ターサー「っ…(倒れるっ…)」
ターサーはすぐに反応し前に乗せていたリリーを抱きしめ馬から飛び降りる、しっかりとリリーを抱き抱え怪我を阻止する。
ズザザ…!地面に擦れながらも身体で着地する。
リリー「きゃっ!」
リリーがなにが起こったか把握できるのは聴覚と感覚だけであった、自分の身体が激しく揺れ抱きしめられてるのが分かる。
ターサー「っ…大丈夫だ…!」
ターサーはリリーを抱えたまま近くの岩影に走り身を隠す。
ターサー「良いか…俺が良いと言うまで身を伏せてろ。」
ターサーはホルスターから銃を抜いて岩影から顔を出す。
メシスは足を交互にゆっくりと進み、こちらに来ていた。
ターサー「…(厄介な敵だ…)」
ターサーは感覚でメシスを銃で狙い続け視界内で何か利用できるかを探した。
ターサー「っ…」
片手で銃を持ったまま瞬時に腰からライトを取る。
PITで扱われていたライトで1280ルーメン出る。
PITの訓練で銃を扱わない近接戦ではナイフ…よりもはるかに強いとされていた。
辺りは既に暗くなりつつあり効力は最大である。
ターサーはメシスの目に向けライトを照らす。
メシス「っ…?」
メシスは目を細める。
ターサー「…っ…(光は効くってことだな)」
ターサーは少し笑いライトを手に、銃をホルスターにしまいながらついでに腰からある物を取る。
その動作は素早く次に目眩ましの効いたメシスに接近し足をかけ強く持ち上げ転ばせる。
ドスッ!
メシス「んっ…♡!」
地面に倒した鈍い音とメシスの高い声が響いた直後だ。
ターサー「痛みが快感でも、影の忍者はこいつに弱い」
ターサーはフラッシュバンのピンを抜いてメシスが倒れた横、地面に刺す勢いで仕掛ける。
このフラッシュバンもまたPIT特製のものであった、Momentary Sunという異名を持つフラッシュバンである。
ターサーは仕掛けた直後すぐに走り口笛を吹く。
既に起き上がっている馬はご主人の元に駆けつける。
リリーを素早く抱き上げたターサーは馬に二人で乗り全速力で馬を走らせる。
背後ではパン!!!!
と森中に響き渡る乾いた音と背後からでも分かる
光が伝わる。
メシス「ぁぁぁっ!?」
今度こそメシスは快感でなく苦痛を味わっているのが分かった、その声で。
パカリッ!パカリッ!
ターサー「リリー、平気か」
リリー「えっ?」
ターサー「ぁあ…えっと…」
フラッシュバンの大きな音でしばらく耳は聞こえずらかったのであった。




