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25話 PTSD



昼時ターサーはリリーと馬に乗り共に移動していた。


ターサー「…」


パカリ…パカリと移動していると思考が巡らされる。


脳のどこかが何かを思い出させようとして来る。


燃えた村、燃えて叫んでいる人々…


焼け落ちる家…。


目の前に横たわっている女、それに銃を向ける自分


???「ター…サー…?どうし…て…」



ターサー「すぅっ…」


ターサーは昔の事を寝る度に、ゆっくりしている時に、様々な時に思い出される。


ターサー「…」


リリー「ターサーさん?」


馬の上、自身の前に乗せているリリーが背を向けたまま上を向き巻いた布越しに見ようとしているのが分かった。


彼女は目が見えない、ターサーが黙っているとすぐに不安になってしまうのだ。


ターサー「すまない、なんてもない…少し速度を上げるか…」


ターサーは馬を少し強く蹴る。


ターサー「やっ!」


馬はターサーの要望に答えるようにより速く走る。



少し走った先に街が見える、手前に看板がありそこには「ジャッカル」と書かれている。


ターサー「街だ、今夜はここで過ごすぞ」


リリーと馬で移動しているとあっという間に日が暮れていたのだ。


ターサー「どの宿が良いか」


夜でも活気がいい街だった、この国、マジリカの方ではかなり活気的な街であった、レンガ造りの家に

レンガ造りの道、他の街は道が土か家が木かのどちらかであったがここは違った。


ターサー「バーも洒落ているな。」


リリー「どんな感じなの?」


ターサー「…人が多い」


リリーはなんだか寂しそうに俯き呟く。


リリー「そっか…」


ターサー「…ぉ」


ターサーはようやく宿を見つけた…しかし少し

変な雰囲気の宿だった。


ターサー「…ここは…どうするか…リリー、なんだか奇妙な宿だ…一応泊まれそうだが。」


リリー「えぇっと…別に泊まれるなら大丈夫だと

思いますけどね…それに、楽しいかも?」


リリーは少しウキウキしていた。


ターサー「なら、ここにしよう。」


ターサーは宿の前に馬を繋ぎ止めリリーを先に降ろし自分もゆっくり降りる。


ターサー「こっちだ」


リリーの手を握りゆっくり宿の中に入っていく。


キィィ…少し木の軋む音がするドアの先にすぐに

印象に残る男がいた。


店主「いらっしゃぁいませぇ!」


店主は坊主でM字に禿げていて、それでいてクルクルとした黒い髭。


ピンクの蝶ネクタイに黒ベスト。


ターサー「二人だ、部屋は空いているか?」


店主「ん~?むむぅ?当店で女の子を連れるお客様は初めてですねぇ…。」


ターサー「なにか問題があるのか?」


店主「いえいえ!当店は一切関与しませんよぉ!

それより、お風呂もお付けいたしますか?」


ターサー「風呂?風呂に入れるのか」


店主はさらにグイグイと来る。


店主「勿論ですぅ!勿論デラックスにいたしますのねぇ?」


店主はさらにグイグイと、グイグイと来る。


ターサー「よく分からんが、それで行こう」


店主「かしこまりましたぁ!!!」



会計を先払いで終えたターサーはリリーをお風呂の部屋のドア前に連れていき、リリーの前に膝をつく。


ターサー「デラックス…どうやら、女性が洗ってくれるらしい、ここは安全な場所だ、心配するなよ?」


リリー「わ…分かりました…」


リリーは少し緊張しているのか手が震えていた。


しかしそのタイミングでお風呂から華奢な女性が出てくる。


女性「あなたがお客さんね?」


女性はターサーを見て言う。


ターサー「いや、この娘を頼む、盲目だ、洗って上げて欲しい。」


女性はターサーから視線を落とし下のリリーに目を向ける。


女性「あら…珍しいわね、分かったわ、それじゃあ…あなたは…」


ターサー「202だ、終わったらそこまで送ってくれ。」


女性「ええ、分かったわ、任せて頂戴…さ…

こっちよ」


女性は盲目のリリーに対して笑顔を向け誘導していく。


リリー「は…はいっ!」


リリーは依然として緊張したままだった。


その後、ターサーは部屋に戻りベットに座る…

休もうとするが少しボーッとするだけでもやはり

過去が思い出される。


ターサー「っ…(ダメだ…)」


ターサーはベットから立ち上がりフロントに向かう。


フロントの玄関ドアに手を掛けたその時だった。


後ろから…。


店主「お客様ぁぁぁ!デラックス風呂はどうでしたか?」


ターサー「あぁ…いや、使ったのは俺じゃあ…」


宿主「いやぁ~当店自慢なんですよぉ…あの女性…美人だったでしょう…?」


ターサー「いや…だから…」


宿主「ふふ…隠さなくとも…」


ターサー「はぁ…」



その頃、リリーは浴槽に入り、女性は傍にいる。


女性「目に巻いてるの、外すわね…」


リリー「はい…」


女性は優しくリリーの頭の後ろに手を添えて結び目

をほどいていく。


リリーは盲目ながらも目を開けゆっくりとまばたきをする。


女性「あら、綺麗な瞳ね…」


リリーは銀色で綺麗な瞳をしていた。


リリー「そうなんですか…?」


女性「えぇ…綺麗な瞳よ…」


女性は微笑みリリーを見つめる。


リリー「でも…なにも見えないんですけどね。」


女性「辛いわね…」


リリー「…それでも…ターサーさんがいるから…」


女性「あ…」


女性は一呼吸置いて聞くまいかと思いながらも聞いてみる。


女性「一応聞くけど…そういう目的で来たんじゃないわよね?この宿には…」


リリー「え…?えっと?」



その後、ターサーは部屋で頭で考えないようにうろちょろとしながら待っていると女性がリリーを連れて戻ってくる。


女性「終わったわよ」


女性は微笑みを向けながらリリーの頭を撫でる。


女性「またね」


リリー「はい…」


ターサー「…綺麗な瞳だな…」


リリー「え?」


ターサー「初めて見たからな…。」


続く

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