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22話 食欲旺盛猫

焚き火の前、大きな鍋をかき混ぜるターク。


ターク「はぁ……まさかルニャ軍団のために飯を作ることになるとはな……。」


ルニャ軍団たちはすでに期待に満ちた目でタークを見つめている。


ターク「ったく、みんなしておかわり自由とか言いやがって……俺はレストランのシェフじゃねぇんだぞ……。」


文句を言いながらも、タークは手際よく具材を煮込んでいく。


すると、横からルニャAがふらっと現れた。


ルニャA「にゃん!手伝うにゃ!」


ターク「お前が?」


ルニャA「にゃ!タークは相棒にゃん!相棒の手伝いするのは当然にゃ!」


ターク「ふっ…そうかよ…」


少しだけ感慨深くなるターク。


だが、すぐに別の記憶が蘇る。


ターク「……いや待て、さっきまで『給料未払いにゃ!』とか言ってたやつが相棒面するんじゃねぇ!!」


ルニャA「にゃ!?それはそれ!これはこれにゃ!!」


ターク「しかも、ニャイドカフェの後半、お前

ずっと体育座りして見学だったしな!」


ルニャA「……うっ……それは……。」


ターク「何が『相棒だから手伝うにゃん』だ…

…いい話みたいにしやがって……!」


ルニャAはバツが悪そうにしながらも、ちょこんと

タークの隣に座り、鍋を覗き込む。


ルニャA「でも手伝うにゃ…」


ターク「…まぁ…良い心がけじゃねーか」


タークは苦笑しながらも、ルニャAの頭を軽くポンと叩いた。


ターク「よし、じゃあまずはお前、野菜を切れ。手を滑らせるなよ?」


ルニャA「にゃっ!任せるにゃ!」


こうしてタークとルニャAの"相棒"?関係は

一つ新しい形を見せ始めるのだった。



焚き火の周りに集まるルニャ軍団。


大鍋から湯気が立ち上り、美味しそうな香りが辺りに広がる。


ターク「さて、出来たぞ、おかわり自由だ…

どんどん食え。」


ルニャ軍団たちは歓声を上げながら、タークの作った料理に飛びついた。


そんな中、タークの隣でひょこひょこと動き回る

ルニャA。


ルニャA「にゃ!ターク、手伝い楽しかったにゃ!」


ターク「おう、助かったぜ。」


ルニャAは満足そうに尻尾を揺らしながらタークを見上げる。


ルニャA「にゃ……でも、ターク。」


ターク「ん?」


ルニャA「そのルニャAって呼び方……変にゃん…

なんか……モブみたいにゃん……。」


タークは一瞬固まり、ルニャAの言葉を頭の中で反芻する。


ターク「……お前、それを言っちゃダメなお決まりってやつだぞ。」


ルニャAはむぅっとした顔でじっとタークを見つめる。


ルニャA「にゃー……でも、他のルニャと同じ

にゃん……。」


ターク「ったく……わかった、じゃあ二つ言っておく。」


タークは指を一本立てる。


ターク「まず一つは……そういうことを言ってはダメだ。」


そして、もう一本指を立てる。


ターク「二つ目は……名前を一匹一匹につけると、ややこしくなるんだよ。」


ルニャA「にゃー……でも、タークはみんな違うって言ってたにゃ……。」


ターク「確かにな…よし、じゃあお前だけ特別に

ちょっと変えてやろう。」


ルニャAは耳をピクンと動かし、期待の眼差しを向ける。


ターク「お前の名前は……"ルニャエイ"にしてやろうか?」


ルニャA「にゃっ!?それじゃあ文章上でしか変わらにゃいにゃん!結局呼ばれる時はいつも通り

ルニャAって聞こえるにゃん!!」


ルニャAは抗議の声を上げるが、タークは肩をすくめる。


ターク「だから、そういうこと言うなって……。」


ルニャAはふてくされたように耳を伏せる。


ターク「……ま、いいじゃねぇか。ルニャAだって

立派な名前だろ? それに……"エース"って意味も

あるんだぜ?」


ルニャAは一瞬きょとんとした後、驚いたように目を丸くする。


ルニャA「にゃ……!?それは……ちょっとかっこいいにゃん……。」


ターク「だろ?」


ルニャAは嬉しそうに尻尾を揺らしながら、タークの肩にぴょこんと飛び乗る。


ルニャA「よしにゃ!タークの相棒としてもっと活躍するにゃ!」


タークは苦笑しながら、ルニャAの頭を軽く撫でた。


ターク「ったく……ほんと、お前は調子がいいよな。」


焚き火の光に照らされながら、タークとルニャAの

間には、確かな"友情"が生まれつつあった。


そんな一人と一匹を見ていたグリンス、微笑んでいた。


だがそのせいか他からの視線に気付けていなかったのだった。


スタンク「…」


スタンクはグリンスを影から見ていた。


ゴロゴロ…。



雷が鳴る…。


ターサー「まずいな、雨が降りそうだ…。」


リリー「どこでしのぐんですか?」


ターサーは馬で変わらずリリーを自身の前に乗せた

まま走っていた。


ターサー「あぁ…どこかでテントを張るさ…。」


リリーと出会ってから10日は経っていた。


ターサー「…」


ー回想ー


ドカン!!


ドアを蹴破る。


ターサー「あんたらか、リリーの親は…」


リリーの父親「なんだ!お前は!強盗か!」


リリーの父親は座っていた椅子からすぐに立ち上がり警戒してきていた。


リリーの母親はそんな様子を座ったまま目を見開き見ていた。


ターサー「そんな所だ…」


リリーの父親「ふんっ…アホめ!」


リリーの父親は急に殴りかかってきた。


しかし訓練を受け、実戦経験も豊富なターサーには

足元も及ばなかった!


ドカッ!バシッ!


リリーの父親は気付けば床に膝をついていた。


リリーの母親「な、なんのつもりなの!」


ターサー「盲目の娘に買い物に行かせているな?

それで自分達は?色も分かる、光りも綺麗に分かるのに楽をしているのか。」


リリーの母親「っ…何を…」


ターサー「あんたらの娘は俺が預からせてもらう」


リリーの父親は血を吐きながらもゆっくりと立ち上がり。


リリーの父親「ぐ…ふふ…なんだ…ゴミの回収に来たのか…はは…勝手に連れていくといい…」


リリーの母親「そうよ…奴隷がいなくなるのは痛いけど仕方ないわ…」


そんな戯れ言を言う二人にターサーは俯いて

苦笑しては顔を上げ言う。


ターサー「…リリーが居なくなったお前らが普通の生活を出来るか見物だな…」


リリーの父親「何が言いたい…」


ターサー「全部任せてばかりの奴がどれくらいでの垂れ死ぬかって言ったんだ…」


リリーの父親「なんだとぉっ!」


リリーの父親は背後に立て掛けていたショットガンを手に取り構える。


が…ターサーはすぐに反応しショットガンを取り上げては銃身で殴る。


リリーの父親「ゲボッ!」


リリーの父親は再び床に膝をつく。


リリーの母親「あなたっ!」


リリーの母親は椅子から立ち上がり駆けつける。


ターサー「…この金で血を拭くんだな」


ターサーはそんな二人を尻目にテーブルにお金を少し置いては家を出ていく。


ターサー「リリー…」


家を出ると馬に乗ったままのリリーが音のしている

こっちを見て言う。


リリー「ターサーさん…何があったんですか…?

凄い音が…」


ターサー「なんでもない…なぁ…これからは俺とこい」


リリー「え?でも…」


ターサー「もうあいつらはお前の親じゃない…」


リリー「…」


ターサー「俺が守ってやる。」


リリー「……私はっ…その…ありがとう…ございます…」


ターサー「礼は良い…さ…ここは離れるぞ…」


ー回想終わりー


キュッ!


テントを立てて二人で中に入る。


二人で静かに座っている。


リリー「音…雨音…好きなんですよね…」


ターサー「…雨の音がか?」


リリーは顔に、目に巻いてる赤い布を少し触りながら話す。


リリー「はい…ずっと目が見えない私でも…

音だけは楽しめるんです…それに…雨の日は…

外に出なくて良かったから。」


ターサーはリリーの言葉を聞いて少し優しく聞いてみる。


ターサー「外には…出たくなかった理由が?」


リリーは少し俯いて言う。


リリー「友達もいないし…なんだか…外は怖くて

…それに…買い出しもなかったし…。」


ターサー「そうか…」


少しの間沈黙する、が…リリーは再び口を開く。


リリー「それで…この数日間…?ずっと移動してる気がするんですが…一体どこに…」


ターサーは少し間を置いて言う。


ターサー「お前の目を直す」


続く。

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