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21話 1日限りのニャイドカフェ!

ー夜:テントー


グリンスは既に隣で寝ている。


しかしタークは考えていた。


スタンク…奴の事はこのキャンプに来てから昨日知った、それまで本当に知らない人物だった、なんだか影が薄い。


しかしあの目は、なにか違う気がするのだった。


スタンク自身、特殊で、特にあのパンクヘアは頭に残る…。


ターク「…(なーんか…警戒しておくかなぁ)」


グリンス「すぅ…」


グリンスは横で静かに眠ったまま。


ターク「…(ぐへへ…それより…ちょっとバカしても減るもんじゃねーし…失礼しま──…)」


バチン


グリンスは丁度寝返りをうち偶然タークに腕を振り下ろすのだった。


次の日…。


焚き火の前、タークは腕を組んで考えていた。


ターク「(……この世界の料理ってさ……なんつーか、豪快に焼くか煮るかしかねぇよな……)」


振り返れば、今まで食ってきたものはほとんど、

「狩った肉をそのまま串に刺して焼く」か

「大きな鍋で煮込む」といった、まさに狩人

向けの食事ばかりだった。


ターク「…(まぁ石器時代みたいなもんだし…

普通なのかもしれないし…)」


美味いことは美味い…だが、変化が欲しい。


ターク「(ようやく学んだぞ。)」


タークはニヤリとする。


ターク「(野菜を包む、スープにする、焼くにもただの炙りじゃなくて、ちゃんとした焼き加減を考える……。)」


タークは思い出す。


ルニャ族のいた村は現実世界で言う…日本の文化と似ていた、ターク自身"仕事"の都合で行ったときにいくつか見たことがあったのだ。


畑の雰囲気に田んぼ。


しっかり料理があった。


ルニャ族の中にはタオルを頭に巻いてるまじで萌える奴もいた。


例にルニャCにルニャDがそうなのだ。

※ターク命名


ターク「しかし…(ルニャA…)」


そう、ルニャAはどこかで見たことがあったと

思い出した。


ターク「…(あの少しボロい傘帽子…間違いなく

俺を不審者扱いした奴…)」


ターク「…(いかんいかん…思考がズレた…とにかく…あの村の雰囲気…そして料理は確実にあの村

周辺のみだろう…応用してみるとしよう…)」


ターク「…(そして…)」


タークはキャンプの端の方、日が当たる場所で呑気に日向ぼっこしているルニャ族達を見て。


ターク「…(奴らには働いてもらうとしよう。)」



ターク「よしっと…」


タークは木の板を削りこう書いた。


ニャイドカフェ。


ターク「…(あの村の料理の感じと…現実世界での

記憶をあわせ、日本でなんかあったようなカフェを作る!今日限りで!…店員は勿論あいつら…完璧だ…)」


ターク「…(丁度この世界にもコーヒー…見てぇなやつがあるし…完全ではないにしろ、現実世界みたいになりそうだぜ…。)」


タークはニヤリとし大声で言う。


ターク「ルニャ軍団!出番だ!」


ルニャB「にゃ?にゃにゃ?」


ターク「お前らは料理も出来る!おそらく接客も

出来る!ならば!」


タークは腕を振り上げ、高らかに宣言した。


ターク「1日限りの『ニャイドカフェ』開店するぞ!!」


ルニャC「にゃ!?カフェ!?にゃんだそれは!!」


ルニャD「タークの命令なら、やるにゃ!」


みんなは分からずともすぐに乗り気になり始めた。



案外簡単に席やテーブルを用意することが出来た。


木箱などの寄せ集めが逆におしゃれに見えるのだ。


ルニャA.B.C.D.Eは料理を作り。


ルニャF.G.H.Iは小さなお盆を持ち料理を運ぶ。


簡易的な厨房の大きな鍋や鉄板でルニャ軍団は協力して調理していた。


ルニャ軍団たちは頭に小さな三角帽子をつけ、手作りのエプロンを身につけ、まるで本物の喫茶店のスタッフのようだった。


タークが考えたメニューはシンプルながらも、この世界にはあまりないものばかりだった。


コーヒーモドキ。


特性狩人カツサンド。


ルニャ畑のコムギコパンケーキ。


などなど…。


そのどれもが狩人たちにとって新鮮な食事であり、

開店直後から大盛況!


ヴァルド「こりゃ…中々悪くねぇな」


セリーヌ「本当ですね…」


ゲマナ「これうまー!」


ジェリック「おぉ……味のバランスがいい!

栄養価も考えられているのでは?」


タークは「まぁな」と得意げに頷く。


しかし、そんな順調な開店の裏で……

事件は起こっていた。


……にゃにぃ!!!


ルニャAが料理をこぼしたにゃん!!!


ターク「おい、ちょっと待て!?こぼしただと!?」


ルニャA「にゃぁぁ!!ごめんなさいにゃ!手が滑ったにゃん!」


厨房の床に落ちたカツサンドを見て、タークの表情が曇る。


ターク「……ルニャA、お前は皿洗いに回れ。」


ルニャA「にゃ、にゃん!!了解にゃ!」


……にゃにぃ!!!


ルニャAが皿を割ったにゃん!!!


ルニャB「にゃ!?何をしてるにゃ!!」


ルニャC「割れた皿は掃除するにゃ!!」


ターク「おいおい、皿割るとか……お前は掃除に回れ。」


ルニャA「にゃ、にゃん……ごめんなさいにゃ……」


タークは深いため息をつきながらも、厨房のルニャ

軍団たちに指示を出す。


しかし、ここで終わりではなかった。


……にゃにぃ!!!


ルニャAが掃除へたくそにゃん!!!


ターク「………………」


ルニャAは箒を逆さに持ち、モップは拭く方向が逆、さらには割れた皿の破片を適当に蹴ってどこかへ追いやろうとしていた。


ルニャD「ちょ、ちょっと待つにゃ!?危ないにゃ!!」


ルニャA「にゃぁぁ!?どうすればいいにゃん!??」


ターク「………………」


タークは静かにルニャAの肩を掴み、言った。


ターク「……お前はもう座ってろ。」


ルニャA「にゃ!?!?」


こうして、ニャイドカフェは大盛況ながらも、

ルニャAだけは仕事を剥奪されてしまったのだった……。



ニャイドカフェは大盛況のうちに幕を閉じた。


キャンプの者たち全員満足そうに食事を終え

ルニャ軍団たちも達成感に満ちた表情をしていた。


タークは一緒にルニャ軍団達と後片付けをしていると背後からグリンスとマールが来る。


マール「手伝いますよ」


グリンス「私もだ」


タークは二人に振り返り言う。


ターク「いや、悪いよ…そもそも二人は客だったし…」


グリンス「そうじゃない…」


ターク「え?」


グリンスは少し離れた場所を指差す。


グリンス「一匹、なんだか落ち込んでいる…なにかあったのだろう、ここは任せろ、お前の仕事は

終わった訳じゃない。」


ターク「…」


グリンスの指差した場所にはルニャAがいた。


彼は厨房での失敗、皿洗いでの失敗、さらには掃除でも大失敗をし、最終的に仕事を剥奪されてしまったのだ。


彼はしょんぼりとキャンプの端で体育座りをしていた。


タークはさっきの自分の説教を思い出しながらも

静かにルニャAの元へ歩いていく。


ターク「……おい。」


声をかけると、ルニャAは耳をぴくりと動かしながら、少しだけ顔を上げた。


ルニャA「……にゃ……」


見るからに落ち込んでいる。


その姿を見て、タークは軽くため息をつきながら、ルニャAの隣に座った。


ターク「まぁ、お前のドジっぷりは確かに酷かった、歴代最高レベルだったな。」


ルニャA「……にゃ……」


ターク「皿は割るし、掃除は下手だし、料理はこぼすし……なんならもう、働かなくていいレベルだった。」


ルニャA「……にゃ……」


ルニャAは目を伏せ、尻尾をしゅんと下げる。


タークはそんな様子を見て、肩をすくめながら言った。


ターク「……でもな。」


ぽんっと、ルニャAの頭を軽く撫でた。


ターク「そんなんで落ち込むなら、俺の相棒にするぞ?」


ルニャA「にゃ…?」


ターク「俺の相棒になったらな……多少のドジじゃあ許されねぇ、仕事はちゃんとしろ、でもな、もう落ち込む必要はねぇよ。」


そう言って、タークは軽く笑ってみせた。


ターク「それに、お前がいなかったら、あんな面白いカフェにはならなかっただろ?むしろ……

お前がいなきゃ、あの騒動は生まれなかった…

そう考えれば、功労者だろ?」


ルニャAは目を瞬かせながら、じっとタークを見つめた。


やがて、ふにゃっとした笑顔になり。


ルニャA「にゃ……!じゃあ、タークの相棒になるにゃ!」


そう言って、飛びついてきた。


ターク「うおっ……!」


タークは思わず倒れ込みそうになりながらも

ルニャAの小さな身体を受け止める。


ターク「……ったく、調子のいいやつだな……」


そう呟きながらも、タークの顔には自然と笑みが浮かんでいた。


こうして、新たな相棒が誕生したのだった。


その一部始終を遠目から見ていたグリンスは、小さく笑っていた。


ーそうして夜、グリンスは焚き火でまだ休憩中だが

タークは早めに寝るためにテントに戻った時だー


タークがテントに戻った瞬間だった。


ルニャA「にゃにゃっ!?これはどういうことにゃ!?」


突如、ルニャAがタークの前に飛び出してきた。


その後ろには、昨日の「1日限りのニャイドカフェ」で活躍したルニャ軍団たちが勢揃いしている。


ターク「……お、おう。何だ、いきなり。」


ルニャB「給料未払いにゃ!」


ターク「……は?」


タークは一瞬何を言われたのか分からず、ルニャAの顔をじっと見つめた。


ルニャA「ニャイドカフェのバイト代、まだもらってないにゃ!こんなのブラック企業にゃ!」


ターク「…(てめぇが言うのかよ!さっき良い感じ

だったろーが!!)」


タークは心で叫びながらもルニャ軍団は止まらない。


ルニャC「そうにゃ!にゃんのためにあんなに一生懸命働いたと……!」


ルニャ軍団たちは一斉にタークを取り囲み、抗議の声を上げる。


ターク「……いや、ちょっと待て、お前ら給料って……俺、そんな契約してねぇぞ?」


ルニャA「にゃ!?雇ったのにタダ働きさせる気だったにゃ!?」


ターク「違う!違うぞ!そもそもあれは一日限りのイベントで、お前らはノリノリでやってただろ!」


ルニャB「ノリノリだったけど……それとこれとは話が違うにゃ!」


ルニャ軍団たちの団結力はすごかった。


もふもふ軍団が一斉にタークを囲み、猫パンチの嵐が繰り出される。


ターク「ぐっ……!俺は猫パンチに負けるわけにはいかねぇ!」


ルニャD「じゃあ、にゃにかで払うにゃ!」


ターク「にゃにかって言うな!」


そこへグリンスがテントの入り口から顔を出した。


グリンス「……何を騒いでいる。」


その一言でルニャ軍団たちはピタッと動きを止め

タークも息を整える。


ターク「おい、グリンス!お前からも言ってやってくれ!こいつら、給料未払いだとか言い出してるんだぞ!」


グリンスは少し考えた後、冷静に言った。


グリンス「……労働の対価は支払われるべきだ。」


ターク「お前もかぁぁぁ!!」


タークは思わず頭を抱えた。


ルニャA「にゃ!さすがグリンスにゃ!」


ルニャC「で、どうするにゃ?」


ターク「……分かった、分かったよ。じゃあ……特別ボーナスとして、全員分の飯を俺が作る!」


その言葉に、ルニャたちは一瞬考え込む。


ルニャB「……おかわり自由?」


ターク「一応な。」


ルニャC「デザートは?」


ターク「……ちょっと甘い果物くらいは用意してやる。」


ルニャたちは顔を見合わせた後、

一斉に「交渉成立にゃ!」と喜びの声を上げる。


ターク「はぁ……これで許せよ?」


グリンス「……それでいいんじゃないか。」


グリンスは小さく笑いながら、焚き火の方へ戻っていく。


ターク「ったく……この世界で俺は、一体何をしてるんだか。」


そう言いながらも、タークは早速ルニャたちのために料理の準備を始めたのだった。


続く。

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