2話 白き害獣の叫び声
ターサーはガルボに目を合わせ質問を始める。
ターサー「それで…害獣の事を詳しく聞きたい…
そもそも…そいつ単体で…この村を…この状態に
陥れたのか?」
ガルボ「あぁ…事の発端は…数年前…食糧の倉庫が荒らされた事から始まった…村には戦える人間はいない…平和な村だった…」
ガルボはポタポタと涙を流し始める。
ガルボ「…だか目の離せない問題に農民は集まった…"あの時"は20人以上いた農民は…一致団結し
害獣を討伐しにいったが…誰一人生きて帰って
こなかった…。」
ターサー「…それが村の食糧難と収入を絶った…
ということか…」
ガルボ「あぁ…それから少しの間は俺の出稼ぎで
賄っていた…勿論…一人という事で限界だった…
村の子供は栄養不足で何人も犠牲になった…
それでも村の子供…いや…みんなは俺に食糧を
多く分けた…俺しか…働きにいけないから…」
ターサー「そうか…」
ガルボ「俺はそれが辛かった…」
サフン「ガルボ…」
ガルボ「…ある日…出稼ぎから帰った時だった…
村に戻るには森を通る必要がある…」
ターサー「あぁ…そうだったな…俺も来るときに
通った…」
ガルボ「まさにそこで害獣はいたんだ…奴は白かった…だからこそ赤い目はさらに不気味だった…」
ターサー「…」
ガルボ「恐ろしかった…俺より大きくて…何かを
食ってた…口の周りには血をつけ…目は赤く光っていて…狼のような…人間のような…」
ターサー「狼人間…」
ガルボ「……狼…人間…?あぁ…あぁ!それだ!
しっくりくる…奴は狼に見えた…だが立っていた…足元には…もう何か分からない肉塊が落ちてた…」
ガルボは話している内に手を震わせていく。
ガルボ「…奴を退治しなければ…村に人は寄越せない…子供も働きに行かす事は出来ない…女も安心して眠ることが出来ない…」
ターサー「…大体分かった…奴はいつ現れる…」
ガルボ「俺が見つけた時は夜だった…」
ターサー「夜行性か…よし…今夜早速探しに行く…」
ガルボ「っ…おい…奴は…」
ガルボはテーブルに強く手をつき立ち上がる。
ターサー「分かっている…だが…急ぐに越した事はない…なんせ子供が犠牲になってる…今が夜ならと思うくらいだ…」
ガルボ「…」
ガルボは少し沈黙するが拳に力をいれる。
ガルボ「その通りだ…今すぐにでも行動する必要がある…」
ガルボは覚悟を決めたようにターサーを見上げる。
ガルボ「…今夜…0時…ここに来てくれ。」
ターサー「分かった…」
サフン「いいや…来る必要はない…」
ガルボ「…っ…?」
ガルボは戸惑ったようにサフンの方を向く。
サフン「ターサーよ…お主は時間が来るまで…
この部屋で過ごしてくれていい…」
ガルボ「あぁ…それがいい…なら…俺は0時にこの部屋に来る…時間までゆっくりしていてくれ…」
ターサー「助かる…ありがとう…」
ガルボはそのまま部屋を出ていく、しばらくするとサフンもゆっくりと立ち上がっては部屋を出ていく。
ターサーも一旦部屋を出ては馬に近付き乗せて
いた武器を取り部屋に戻る。
テーブルに銃を並べそれらを見つめる。
ターサー「…(狼人間…どの武器が有効か…)」
テーブルの上には愛用のハンドガンに加え
バレルの長いショットガン…細いアサルトライフル
猟銃…
ターサー「…(相手は狼で猟銃は用途に適してると
言えるが…こいつは装填数が少ない…ここは
六発入るショットガンが良いか…)」
ターサーは他の銃を隅に置いてはショットガンに
スリングを取り付ける。
ターサー「…(さて…少し眠るか…)」
…
チク…タク…
部屋が暗く、先ほどまで気付かなかった時計の針の
音で目を覚ます。
ターサー「…(そろそろか…)」
ターサーがそう思っていると部屋のドアがゆっくり開く。
ガルボ「ターサー…時間だ…」
ターサー「あぁ…」
ターサーはガルボに着いていきゲートを出ては
森へと近付いていく。
サッ…サッ…サッ…
草を踏む音しか聞こえない…ターサーは気付く…。
虫の鳴き声がないのだ…。
ターサー「…(奴は虫も食うのか…となると…本当にここは奴が出る…)」
ガルボはターサーの前を熊の手を持ちながらゆっくり歩いていた。
ガルボ「ま…前は…あの大きな木の下にいるのを
見た…」
ターサー「…」
ターサーは双眼鏡を取り出し夜行フィルターをつけ
木の下を見る…
現状…なにもおらず気配もない…
はずだった…
夜行フィルターは熱を強調し写す…。
ターサーは双眼鏡で木の下を見続けていると一瞬…
チカリと光る時がある…その光は…丁度人形?を
うつしている…
ガルボ「…」
ガルボは木の下に近付こうとするがターサーは
双眼鏡で覗きながら手で遮る。
ターサー「何かがいる…」
ガルボ「何か…?」
サッ…サッ…サッ…
草を踏む音がだんだんと大きく聞こえてくる。
そしてターサーは気付く…草を踏む音が聞こえる度…人形?が点滅してるのが見えるのだ。
そうして「サッ」音が聞こえ双眼鏡で目の前がチカリと光った時だ…。
ターサー「伏せろ!」
ガルボを押しターサーも後ろに飛ぶ。
狼だ…いや、狼人間が確かにいる…さらにその狼人間はさらに手を振り被らせた後だった…。
狼人間の爪が月の光を反射している…。
ターサーはそのまますぐにショットガンに手を伸ばし構える。
ターサー「…(現れた…しかし…サーマルが通らないだと…?)」
そう考えてる内にも狼人間は手を振りかぶらせてくる。
ターサー「っ!」
ターサーはすぐさま手でガードし狼人間の腹に
蹴りをいれる。
狼人間「グォ!」
ターサー「っ…(銃を構えるにはまだ近いかっ…)」
ターサーはかなり冷静に考えていた…しかし…
狼人間はお構いなしに攻撃を続ける…。
狼人間「アオォン!!」
右手、左手、右手、左手…
かなり速い爪での振りかぶりに付け入る隙がない…
後ろに避けるしかなかった
その時
ブン!
狼人間が疲れを見せ右手を振りかぶり切った時…
少しの静止が見えた…
ターサーは狼人間の手首を掴み取りすぐさま脚に膝蹴りをかわし体勢を崩す…。
狼人間「グッ」
狼人間は抵抗する事が出来ず、そのまま地面に叩きつけられる。
ターサー「っ…(今かっ…)」
ターサーはショットガンを構える狼人間に構える。
ターサー「…!」
ターサーはトリガーから指を離す…。
狼人間がみるみる内に普通の人間に変わっていくのだ。
手や足は細く…毛もなくなって綺麗な肌が見える…
そして胸は膨らんでいく。
ターサー「…(女…?)」
ターサーはショットガンを構えたままガルボの方に下がっていく。
ターサー「どういうことだ…奴を知ってるか?」
ガルボ「…あ…あぁ…」
ガルボは上半身の白い布のような服を脱いでは気絶
した女にかける。
ガルボ「こいつは…昔に行方不明になったはずだった…勿論狼人間が出る前だ…。」
ターサー「……とりあえず…捕獲する…村に連れていくぞ」
ガルボ「っ…でも…」
ターサー「…救える命だ…こいつが起きたら…話を聞こう…」
ターサーは女に近付いては被された布が落ちないようにそっと持ち上げる。
女は白い長い髪、おまけに睫毛も長く白かった。
続く




