18話 ターク、逮捕される
ーキャンプー
ガルド族領
ジェリック「あ、あった…」
ジェリックがテントの奥でゴソゴソと物を探して
10分、ようやく何かを見つけたようで持ってくる。
ターク「一体…何探してたんだ?」
ジェリック「これはね…新聞!」
ターク「新聞…あるんだな…」
ジェリック「あぁ…えっと、こっちの方には通ってないけど…マジリカに滞在してた時に丁度買ったんだ…見てみて」
ターク「……うん…」
タークはジェリックから新聞紙を受け取るとすぐに
見出しが目に入る。
ー遂に猛威を振るった魔法使いを処刑ー
ターク「魔法使い…処刑…」
タークがその見出しに夢中になっているとジェリックが横から言ってくる。
ジェリック「それね…詳しく話すと…魔兵大戦で
大きく活躍した彼女なんだけど…娘以外の家族は
大戦で亡くなってしまったらしくて…戦争時は
ピットの兵士を何人も何十人も…」
ターク「殺したのか…」
ジェリック「うん…で、勿論終戦まで生きていた
彼女は和平交渉に納得はいかなかった…それに…
マジリカもそんな彼女を危険に思い処刑…」
ターク「そこまでする必要…あったのか?」
ジェリック「うん…でもヴァイオレットの魔法…
見てみたかったなぁ」
ターク「ヴァイオレット?」
ジェリック「彼女の名前…」
ターク「…」
タークはこっちの世界にもある残酷さに少しの悲しさ、それと…安心感を覚えたのだった。
ゲマナ「ねえ、何話してるの?」
後ろからゲマナが話しかけてくる。
ターク「あぁ…悪い悪い…新聞がどうとかで」
ゲマナ「あー…ジェリック、あれ見せたんだ?」
ジェリック「まぁね…」
ジェリックは俯き気味になる。
ターク「…(なんか後ろめたいもんだったのかい…)」
ゲマナ「そんな事よりも!グリンスが呼んでるよ!
ターク…」
ターク「グリンスが?俺を?」
タークはそれを聞いた瞬間心の中で踊る。
ターク「…(やはり…美人には頼られる俺…)」
そう思いながらグリンスのテントまで歩いていく。
機嫌良く歩いているからか地面に足をつく度に砂ぼこりが舞う。
ターク「グリンスちゃーん!呼んだ?」
テントを開け確かにそう言った。
グリンス「グリンス…ちゃーん?」
グリンスはテントのベットに座っていて。
ターク「あ…いや、すんません…グリンス…」
グリンス「お前は時々変な時がある」
ターク「その方が良くないか?」
グリンスは青い綺麗な瞳でジト目で見つめてくるが
可愛いだけだった。
グリンス「まぁいい、ところで、マールから情報
をもらった、マール。」
マール「はい」
ターク「え!いたの!?」
マールは背後とかでもなく普通にテント内に座っていた。
マール「はい、マールちゃーんです♪」
ターク「…(あぁ、いじられてるぅ!)」
マール「えぇっと、話す内容としては、ガルド族領
の山岳地帯…地図で言うと少し端の方ですが…
そこで奇妙な村があるとの事なんです。」
グリンス「奇妙な村?」
マール「ええ、その村では喋ったり歩いたりする
小さな犬や猫、動物の耳が生えた人間…さらには
普通の獣が喋ったり、交友関係を持っているとの事なんです…。」
ターク「…(滅茶苦茶ファンタジーじゃないか!)
しかし…その村がどうかしたのか?なんか退治
でもするのか?」
マール「実は、周辺でカグヤが目撃されているんです…」
ターク「カグヤ…?」
グリンス「竹が集まり人の形をした…かなり大きいモンスターだ…しかし生息地ではない…」
マール「そうなんです、そしてカグヤの生息地は
先程の動物の村の周辺…」
ターク「そこから流れ込んできたと…?」
マールはメガネを直しながらコクりとうなずく。
ターク「ってことは…とりあえず村近くの捜索
って事だな…よーし!(遊ぼう)」
グリンス「現状…出没しているカグヤは?」
マール「あぁ…えぇと…一応他モンスターとは
関わっていないらしく…まだ放置では大丈夫そうですが…村の周辺の探索が終わったら退治が必要だと思います…。」
グリンス「了解した…ターク行こう。」
ターク「おうっ…」
グリンスが立ち上がりタークに声をかけテントを
一緒に出ようとした時だった。
マール「ふふっ…」
ターク「…?」
タークはマールに振り返る。
マール「なんだか、本当にパートナーになったんですね。」
グリンス「…ターク」
グリンスはそれだけ言うとタークの手を握っては
引いていく。
マール「頑張ってきてくださいねー♪」
…
ベースキャンプからソニバルドに一緒に乗り
一時間…。
砂漠から森…そしてさらにその奥、進んでいると
木が竹に変わり、さらに澄んだ空気になる。
川の流れる音…そして竹の森のさらにその奥に
棚田と木造の家、それと遠目に何かが畑仕事をしている。
と、そんなことを置いてタークは、
ターク「スンスン…スンスン…」
タークはあたかもいつともと違う場所に来たから
匂いを感じていると思わせて全然グリンスの匂いをかぐという最低の行いをしていた。
ターク「…(いやっ!これには理由がある…グリンスからいつも通りいい匂いがするが、今回はさらに
いい…香水みたいな感じ…)」
グリンス「ここら辺は、空気が澄んでいるな」
ターク「あぁ、本当にいい匂い。」
グリンスは棚田で何かをしている何かを見つけ
そこまでソニバルドを走らせていく、敵意を見せないように慎重でもあった。
やがて畑で土を耕している何かの近くに着くと
一発でそれが何かがわかった。
猫耳、いや小さな猫が立ってクワもって耕している
可愛い光景だった。
???「るにゃっと!るにゃっと!」
その猫は竹笠(傘のような帽子)を身につけて、甚平を着用していて畑仕事を頑張っている。
やがて畑仕事を終えたのか、ふにゃぁ、と一息着いて猫の手で汗を拭っていた。
既にソニバルドから降りたグリンスとタークは
敵意を見せないように慎重に近付く。
ターク「俺がいく、カリスマってもんを見せてやるよ」
グリンス「そうか」
グリンスはタークの後ろに周り、様子を見る。
ターク「やぁ!そこの猫さん」
???「ん?にゃぁ…ご苦労様だにゃ──…」
猫はタークを見るなり瞳孔を小さくする。
???「こいつ耳が生えてないにゃぁぁぁぁぁ!」
ターク「は!?おい!ちょ!静かに!」
???「不法侵入にゃぁぁぁぁぁ!!」
猫はクワを持つなりタークにブンブン横に振りながら近付いてくる。
タークはというと、猫の頭を抑えてるだけで猫は
クワのリーチが届かないままブンブン振ってるだけだった。
ターク「止まれ!良い子だから!止まれ!」
???「にゃぁぁぁぁぁ!!」
その時だった…
ワンゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
ワンワン!!!
犬が二足歩行で走ってくる、警官の帽子のような物を被っていて場違い感に驚いたがそんな場合ではなかった。
ターク「ちょ!まじで!誤解!まじで!」
タークは瞬く間に数匹の犬に囲まれてしまう。
犬「ルニャ族よ!何があった!こいつかワン!」
ルニャ族1「そうにゃん!こいつにゃん!きっと
オレの畑の作物狙いにゃん!」
ターク「はぁ!耕している最中だったし作物ねぇ
だろ!弁護士を呼べ!」
ルニャ族1「その権利ねーだろ!にゃん!」
犬「動機を述べるワン!」
ターク「知らねぇよ!動機は"散歩中"に声かけた
だけだ!」
ルニャ族1「言い訳は有罪の証にゃん!」
ターク「どんな法だよ!」
犬「まぁ落ち着け…ワン…とりあえず連行するワンね」
ターク「…(ワンがくどい…)」
タークはトホホと連行されていくがすぐに気付く。
グリンスとソニバルドは既に近くにいなかった。
そうして辺りを見渡していると双眼鏡でこちらを
見ているグリンスを見つける。
ターク「…(数分前俺なんて言ったっけ…)」
「俺がいく、カリスマってもんを見せてやるよ」
ー2399 タークー
続く。




