17話 盲目でも見える希望
ーありふれた村ー
ガチャ…チリンチリン…
一人の女性がドアを開ける、髪は黒く長く、前髪をおろし睫が長い、なんといっても綺麗な青い瞳。
店主「あぁ…いらっ──…」
店主は女性のお客に店主としての言葉を言い切らなかった、さらにその他店内で話していた村人同士も話をやめその女性に目をやる。
ヒソヒソ…
女性を見るなりすぐに陰口を叩く…。
女性「…すみません…えっと…この…メモの食材を探しているのですが…」
店主「知らねーよ」
店主は頬杖をつく。
店主「自分で探しな…」
女性「…っ…は…はい…すみません…」
女性は仕方なく食材を探すが時代も時代、名札がなくメモの通りに買い物をするのは至難の技だった。
客1「あれが…噂の…魔法使いの娘かしら…」
客2「あら…あなた知らないの?"あの"魔兵大戦の
ヴァイオレットの娘なのよ…」
客1「…処刑された女の…?」
客2「えぇ…魔兵大戦…マジリカの恥の娘…あの娘には関わらない方が良いわ」
客1「子供を襲ったって噂だものね…」
ルリィ
ー偉大過ぎた魔法使いの娘ー
ルリィ「…。」
第3章 暗闇の奥
パカリッ…パカリッ!ズサッ!ヒヒーン!
ターサーは走らせていた馬を急に減速し止まる。
ターサー「…(日が暮れてきた、そろそろキャンプ
設営だな…場所は…もう少し先が良いか…)」
ターサーは石ころがまばらに落ちている荒れた道の上に再び馬を走らせる。
その時だった。
???「きゃっ…!」
前で金髪のポニーテールの小さな少女が石ころに
つまずいて転んでしまう。
ターサー「っ…?」
ターサーは馬を減速させ前の少女の様子を見る。
少女は手を前にしたまま倒れていた。
???「っ…ぅ…」
ターサーはゆっくり馬に乗りながら近付いて声をかける。
ターサー「おい、大丈夫か?」
???「っ…!え…えと…ぁ…だ…大丈夫です
それより…」
少女は手を地面に這わせ撫でるように何かを探していた。
ターサー「どうした?何を探している?」
???「え…えと…えっと…」
少女が手を伸ばし何かを探してる地面よりもっと
斜め先にカゴが落ちている。
ターサー「カゴならここにあるぞ…」
ターサーは声をかけながら馬を降りてはカゴを拾う。
???「ん…んぅ?」
少女はターサーの声のする方に顔を上げる…。
ターサーはその顔を見て少し驚く。
少女は目に赤い長い布を巻いていた。
ターサー「…(これは…)」
ターサーは少女の手の近くにカゴを差し出す。
少女はそのカゴに触れるがすぐになにか違和感に
気付いては聞いてくる。
少女「中身…中身は…どこに…」
ターサー「中身?」
ターサーは周りの地面をなぞるように見てみると
地面に落ち、汚れたパンや野菜、果物を見つける。
ターサー「…こりゃ…もうダメだな…食える状態じゃない…」
少女「っ…うっ…そ…そんなぁ…」
少女の目は布で見えないが布の奥の悲しんでいる
目が簡単に想像できてしまう。
ターサー「…」
ターサーは食材と少女を交互に見ながらも少女の前に膝をついて言う。
ターサー「仕方ない…俺が新しく買ってやろう…」
少女「っ…!?で…でも…」
ターサー「気にするな…落ちた物は馬が食ってる」
少女「っ?お馬さん…?」
ターサー「そうだ…」
少女「えっと…えっと…」
少女はまだ何かに困惑しているようだった。
ターサー「とにかく…馬に乗せるぞ…」
少女「っ…ぁ…は…はい…」
ターサーは馬に乗り上がった後にまだ困惑している少女を抱き上げ自分の前に乗せる。
ターサー「捕まってろ…」
少女「わわっ…は…はい!」
ターサーは少女を乗せたまま馬を走らせる。
ターサー「それで…聞いても良いか?…何故…
こんな道を歩いている」
少女「こんな…道?…えぇっと…どんな道ですか?」
ターサー「とにかく荒れてる…」
少女は首をかしげて言う。
少女「え…えっと…ナズア通りじゃ?」
ターサー「ここは…名前もない道だぞ…きっと
間違えたんだな…」
少女「…や…やっちゃった…」
ターサー「無理もない…その感じ…目が見えないんだな」
少女「そ…そうなんです…生まれてからずっと…
こんなんで…」
ターサー「辛いな…」
ターサーは馬を走らせ続けながら更なる質問をする。
ターサー「名前は?」
リリー「リリー…です…」
ターサー「そうか…リリー…で…両親はいるか?」
リリー「あ…はい!ナズア村からナズア通りを
まっすぐ通ったら家があるんです…」
ターサー「そうか…リリー…聞いて良いことか、分からないが…両親は買い出しを手伝ってくれたり…
代わりに言ってくれたりしなかったのか?」
リリーはターサーの質問に少し黙り込んでから答える。
リリー「それは…私…遺伝関係何しに…盲目で
生まれちゃったし…出来損ないで迷惑かけてるから…」
ターサー「なんだって?そりゃ…誰が言ったんだ」
リリー「それは…」
ターサー「両親が言ったのか…」
リリー「…」
ターサー「…酷い話だな…」
リリー「で…でも…」
ターサー「これに関しては否定できる事じゃないぞ…」
リリー「…そう…なんですかね…その…ところで…
あなたは…?」
ターサー「ターサーだ…ピットから来た。」
リリー「ピッ…ト…?」
ターサー「他の国だ…」
ターサーはもうしばらく馬を走らせていてると
「この先、ナズア」という看板と共に街の建物
らしき物が見えてくる。
ターサー「そろそろだ…買い物のメモはまだ残ってるか…」
リリー「…」
ターサー「ぁ…悪気があった訳じゃない…
すまない…」
…
街については馬を繋ぎ馬から降りてはリリーをそっとおろし。
ターサー「さぁ…街についた…さっきの店の名前は?分かるか?」
リリー「は…はいっ…えっと…ロズヨってお店です…」
ターサー「…あそこか…」
ターサーの視線の先には木造の古い建物…。
しかし扉はシックで窓ガラスもかなり綺麗で古い
ものの管理はしっかりされているのが分かる。
ターサーはリリーの手をそっと引きながら店に入る。
ガチャ…カランコロカラン。
扉が開くと同時に店主に客を知らせる音が店主に
気付かせる。
カウンターの少しすると奥の方からゆっくりと腰に手をついたおばさんがやってくる。
店主「あら…さっきの娘ね…何か買いそびれたのかしら?」
ターサー「すまない…色々あってこの娘のさっき買った食糧が全てダメになったんだ…もし覚えてるなら…さっきの食材その通りに…頼めるか?」
店主「ええ、勿論よぉ…」
続く




