16話 俺、2300歳になりました
ターク「俺も丁度聞きたかったんだ…まだ分からないことだらけだからな…」
タークの言葉を聞いたジェリックはニッコリして
テーブルから少し身を乗り出す。
ジェリック「なにかなっ♪」
ターク「近い」
ジェリック「ごめん」
ターク「まずは…この…場所…いや…国?についてかな…」
ジェリック「国…そっか…マールから聞いた通り…
本当に国や世界規模じゃない…宇宙規模…
異世界から来たのなら…全て違うのか…」
ジェリックは顎に手を当てブツブツ呟いている。
ターク「ジェリック?」
ジェリック「あぁ…ごめん…じゃあ…教えるよ…」
ジェリックはなにやら地図を取り出しテーブルに
広げる。
ジェリック「僕達がいるここ…ここの名前は
ガルド族領…」
ジェリックが地図を指差す。
ジェリック「…この繋がってる三つの内の一つ…
北に位置してる…。」
ターク「ガルド…」
ジェリック「実は…本当に国によって文化や文明が違ってね…ここでは武器は槍や剣だけど…この西の国は魔法が武器だし…東のこの国…PITは…銃が武器…」
ターク「銃…」
タークはその言葉に親近感を持った、銃…。
そう、タークは現実世界からこの世界に来る時に
しっかり隠れたホルスターにしまっていて今もしっかりあるのだ。
ターク「…(いや…)」
タークは取ってジェリックに見せようとするが手を
震わせるだけで止める。
ターク「…(武器だ…見せる必要はない…それに…
100%味方とは限らない…か…とにかく奥の手だ
…って…待てよ…?)」
タークは少し耳を疑う。
ターク「魔法だって?」
ジェリック「あぁ…マジリカの事?…そう…魔法だ…実は、昔の話だけど、マジリカとPITは大きな
戦争が続いてたんだ…でも二つの国は武力を捨てる事を条件に終戦…今はどちらもお互いの移民がいる…ただ…。」
ジェリックは少し考え込むように再び顎に手を当てる。
ターク「なんだ?」
ジェリック「PIT…Peace in Tactics…戦術に眠る
平和という名だけあって…武力を捨てる事を交渉し始めたのはPITなんだ、マジリカもそれに答え
終戦…っていうのは今話した通りなんだけど…」
ターク「おう…で?」
ジェリック「PITにいる友人から聞いたんだ…」
タークはジェリックの深刻そうな表情に飲み込まれ
聞き入る。
ジェリック「PITから誰かがマジリカに"亡命"した…って」
ターク「亡命…?その国同士は仲が良いのに?
PIT自体…問題があったのか?」
ジェリック「ううん…それが…友人いわく…
明かされてるなかで亡命は初めての事で…一時期
街ではその話題で持ちきりだったらしいんだ。」
ターク「…んー…なんだか妙だな…」
タークは既に脳の許容量をオーバーしていたので
とりあえず理解してるかのような事を言った。
ターク「…(現実世界の政治でさえ分からなくなる時あったのに…別世界の政治なんて知るか!)」
ジェリック「ま…それは結構前の話…100年前かな…懐かしいなぁ…あの時はまだ僕この国にいなかったかなぁ…」
ターク「へぇー…ん?いやいや…なに言ってんだ…
100年前だとか…お前生まれてなさそうじゃん」
ジェリック「ん?どういうこと?僕もう6歳だよ」
ターク「は?もっとはぁ?どういう事だ?…俺なんてもう23歳だぞ…」
ジェリック「23歳?じゃ2300年以上生きてるんだ?凄い年上!」
タークはさらに混乱する。
ターク「いや…23年だが…」
ジェリック「え?じゃあ…まだ一歳にも満たないよ…」
ターク「どういうことだ?」
ジェリックは考え込むが混乱していない様子でハッとする。
ジェリック「わかった!君の世界と…僕達の世界では…時代の進みが違うんだ!」
ターク「え?え?」
ジェリック「僕達の一歳は、100年経ったら…なんだけど、きっと君の世界では一年で一歳、で勿論
君の世界では一年で僕達の何年分も成長するから…
見た目はしっかり大人なんだね!」
ターク「っ…え…待った、つまり…俺早死にしね?」
ジェリック「んー…確かに、そうかも…」
ジェリックは呆気なく言い捨てた。
ターク「え、なんか嫌なんだが…」
タークは周りが全然若いまま自分だけが年老いてるのを想像してしまう。
ターク「…(嫌すぎる!)」
ジェリック「ふふん…安心して!」
ジェリックはニヤリとしてタークにビシっと指を指す。
ジェリック「僕の考察では!こっちの世界に来たのなら…こっちの世界の事が適応される!」
ターク「…は…はぁ」
ジェリック「さらにさらに考察だけど、この世界は君の世界のあらゆるものが何倍にもなってる…って思うんだ、さっきの年齢もそうだし…となれば…
"重力"なんてどうかな?仮にもそっちの世界より
こっちの世界の重力が高いなら…君はとっくに
潰れてるからね!」
タークは必死に頭を回転させながら。
ターク「つまり…俺は"適応"されている…?」
ジェリック「その通り!」
ジェリックは目を輝かせ。
ジェリック「いやぁ!しっかし!別世界から来た
人間なんて前代未聞だよぉ!しっかり記録したいんだ!」
ジェリックはノートを開きタークを見ながらノートに走り書きをする。
ターク「あ…あぁ…そういえば俺に聞きたいこと
あるって言ってたもんな…」
ジェリック「そう!だからまずは服脱いで!」
ターク「は?」
タークは唐突なお願いに反応出来ずにいた。
ジェリック「だって!異世界から来たのなら…
身体の構造違ったりするかもでしょ!それにそれに!」
ターク「いやいやいや!見れば分かるだろ!
同じだ!」
ジェリック「でも脱がないと分からないし!」
ターク「絶対に嫌だ!」
ジェリック「えぇー!!」
ジェリックは残念そうにしながらもタークに近付いてすがるように。
ジェリック「研究の為なんだよぉ!お願いお願い!」
ジェリックはタークに近付いて服を掴んだままで
ターク「ちょっ!やめっ!おい!」
そんな二人のやり取りを遠目で見ている二人。
ゲマナ「何してるんだろ…あの二人」
マール「さぁ…」
続く




