12話 異世界、説明されても理解できません!
ゲマナとタークは、罠の改良について熱心に話し合っていた。
タークにとって、この世界の技術は新鮮だったが、意外にも自分の世界の知識と応用が効くことに
驚いていた。
そんな時
マール「……お二人とも、随分と楽しそうですね。」
おしとやかな敬語の声が響いた。
タークが振り向くと、そこにはマールが静かに佇んでいた。
髪を風に揺らしながら、落ち着いた表情で二人を見つめている。
ゲマナ「あっ、マール!どうしたの?」
マール「グリンスから、タークさんがこちらにいると聞きましたので。」
ターク「俺に用か?」
マール「ええ、少しお話が。」
マールは穏やかに微笑みながら、タークの方へと近づいてきた。
その礼儀正しい仕草は、彼女の知的な雰囲気をさらに際立たせている。
ゲマナ「おっ、マールがタークに興味持った?」
ターク「おい、変な言い方をするな。」
マール「……ゲマナさん、そういう意図ではありません。」
ゲマナ「分かってるって!冗談だよ~。」
ターク「で、俺に何の話だ?」
マールは静かに息を整え、タークをじっと見つめる。
マール「……あなたが異世界から来たという話、もう少し詳しくお聞かせ願えますか?」
ここから、タークの異世界の秘密に、マールが本格的に関わり始めるのだった。
タークはマールと一緒に焚き火の方へ歩いては
近くの丸太の椅子に一緒に座る。
マール「では…まず…どうやってこちらに来たの
ですか?」
ターク「うーん…異世界に来た、とは言っても…
気付いたら雪山にいた…それだけなんだ…。」
マール「…来る前の記憶に…なにか特別なことは?」
ターク「いやぁ…来る前も普通だったかな…
コーヒー淹れて、カーテン開けて…いつも通り
リラックスだ…それから気付いたら、何故か…。」
マール「不思議ですね…。」
ターク「俺が一番不思議だよ…」
タークはため息をつきながら腕を組んで考え込む。
この世界はあまりにも自分にとって厳しい環境の可能性があるのだ、美人がいるだとか、そんなことを
考えてる間に死ぬかもしれない。
ターク「…(それに…向こうの"部下"達…は、何もないのだろうか…それに…それに…)」
そんな現実世界の事を考えていた瞬間…
マール「タークさん?」
ターク「っ…」
タークがハッとして顔を上げるとマールが心配そうにこちらを見ていた。
マール「どうかしましたか?」
ターク「あ、いや…なんでもない…少し考え事をしていた…。」
マール「そうですか…」
マールは少しだけ眉をひそめたがそれ以上は追及してこなかった。
ターク「この世界はなんなんだ…」
…
マールとの会話後…そして朝食を終えた後、タークが焚き火の近くで考え事をしていると、グリンスがこちらに歩いてきた。
グリンス「そろそろ、この世界に慣れてもらう必要がある。」
ターク「……慣れる?」
グリンス「ああ。だから、軽い探索に行くぞ。」
ターク「ちょっと待て…探索って……
危険じゃないのか?」
グリンス「安全な道を選ぶ、心配はいらない。」
ターク「……お前が言うと妙に説得力があるな。」
グリンス「当然だ。」
彼女の言葉には迷いがなく、何よりも実力を目の当たりにしている以上、タークには断る理由はなかった。
ターク「仕方ないな……行くか。」
グリンス「そうこなくては。」
こうして、タークは初めての探索に出ることになった。
キャンプの外れに向かうと、そこには数匹の生き物が待機していた。
ターク「……あれは?」
グリンス「ソニバルドだ。」
目の前にいるのは、しなやかな体をした恐竜のような生物だった。
見た目こそ爬虫類に近いが、背が高く鞍をつけられ、大人しく佇んでいる様子は、まるで調教された馬のようだった。
ターク「…馬みたいなもんか」
グリンス「そう思ってくれて良い、乗りこなせれば…移動はかなり楽になるぞ。」
ターク「…(馬はいるのか…)」
ターク「そうは言っても……乗ったことないんだけどな。」
グリンス「……なら、練習してみるといい。」
ターク「おい、いきなり?」
グリンス「見ていろ。」
グリンスは軽やかにソニバルドの背へと飛び乗った。そして、手綱を軽く引くと、ソニバルドは
スムーズに歩き出した。
ターク「簡単そうにやるな……」
グリンス「慣れだ。」
ターク「……よし、やってみるか。」
タークは慎重にソニバルドの背にまたがった。
ターク「よし、いい子だ……ゆっくり……」
最初は何とか安定していた、だが…
ソニバルド「キュルルッ!」
次の瞬間、ソニバルドが勢いよく駆け出す。
ターク「うわっ!?ちょっ……!!」
バランスを崩し、そのまま落ちかけるターク。
ターク「無理だ無理だ無理だ!!止まれー!!」
ソニバルドはなんとか言うことを聞いて止まる。
グリンス「……どうやら乗りこなせないようだな。」
ターク「だから言っただろ!?」
グリンスは軽くため息をつくと、自分のソニバルドをタークの横まで寄せた。
グリンス「仕方ないな。私のに乗れ。」
ターク「……え?」
グリンス「一緒に乗る。それなら問題ないだろう?」
ターク「……いや、そりゃあ……」
しかし、他に選択肢はない。タークは渋々
グリンスの後ろに乗ることにした。




