ー 命と弾丸 ー
ー 命と弾丸 ー
「ああああああああああああああああああああああああ」
「うるせえ、キラー。寝たいからって叫ぶな」
キラーは床でジタバタしてる。ガキかっ。
「やーだ!寝たい!寝たい!寝させろ!うわあああ!」
俺に抱き着き、顔をすりすりしまくるキラー。キラーの伸長は155cm程度、それに対して俺は身長180弱だ。クロカと似たように見えて、可愛らしく見える。顔も童顔だし。
「うらっ、さっさと行くぞ。早くしないとお姫様抱っこするぞ」
「してー!」
「わかった。その代わり能力使うからな」
「すみませんでした」
扱いやすい。こんなやつが生き残れるとは思えん。関係もほどほどにしておく必要がありそうだな。すまないが、こいつが死んで、情が湧いたら今後に支障がでる。
「うらっ、はよ行くぞ?」
「ふぁーい」
もう情が湧いてる気もするがな。
そして10分ほど歩いて、アナウンスで脳に送られた場所に向かった。ん、おかしいな。
「なぁ、キラー?アナウンスの影響で大富豪でああなったんだよな?仮定ではあるものの、気づいたら効果が無くなるのは事実なはず。何かおかしくないか?やっぱり仮定は仮定に過ぎなかったか・・・」
「うぅん、まぁ確かに。でも僕頭使うの嫌いだから任せますよ!先輩っ!」
「先輩って、俺は二十歳だ。学生みたいなことをするんじゃない」
「僕は16ですっ!先輩は先輩ですぅ!」
何言ってるんだコイツ。やっぱガキだな。
「着いたぞ?」
「じゃあ寝るんでなんかあったら起こしてください」
俺はキラーの服を掴んだ。
「今から何か起こしてやろうか?」
キラーは勢いよく土下座をした。面白いやつだなこいつ。
気づくと、周りにはもう参加者が集まっていた、というか元々同じ場所に居たのもあって、ほぼただの大移動だ。休憩時間?で名前は全員聞いた。
一人目は夕闇 殺。物騒な名前だ。キラーも対してかわらないか。見た目は医者の恰好をしているが、詳しいことは話してくれなかった。
二人目はエクレール・オプスキュリテ、こう思うと、色んな国のやつがいるのに話している言語が同じだ。何か運営に仕組まれているのか?むしろありがたいが。とりあえずコイツの説明にもどろう。見た目は派手で目の周囲に独特な文様がある。これは、魔級者に現れる魔力ヒビだ。一度割れたら治ることはないと聞いたことがある。当たり前だが、魔力ヒビがあるやつは魔力を使用するタイプの能力者なはずだ。ヒビが入る原因は、魔力が無いときに無理やり能力を使用するか、一気に使いすぎること、だったかな。
三人目は蒼穹 森羅。キラーと面識があるようで、学校の先生らしい。思い返してみよう。
「そ、蒼穹先生!」
「キラー、コイツと面識があるのか?」
「うん!学校の先生でさ、ってコイツ呼ばわりは良くないよ!」
まぁ、確かに良くはないが、コイツに教わったものは何もない。
「先生?お前はうちの生徒なのか?」
「はい!キラー・ペインです!魔術科なので、あまり関わることはないんですがね...あはは」
「はぁ、先生か。えっと、名前は?」
「俺は蒼穹森羅だ。ああ、えっとペインさん?まぁ、生徒らしいから、守る必要がある時は、守ってあげよう。先生だからな。そこの貴方も頼りたいとは言ってくれ。力になる」
と、こんな感じだ。人柄がいい。キラーが言うには、武器科の先生らしく剣術を扱うそうだ。ほとんど見ればわかる情報だ。いらない。
四人目は黒川 冬馬中性的な見た目だ。剣を持っているから、剣を使うのだろう。それくらいしか印象はなく、詳しいことは話してくれなかった。
五人目はド・フィール。ツギハギだらけで、ジャケットの背中部分だけ伸びている、独特なファッションだ。詳しく聞こうとしたが、名前を教えられた後睨まれたから深く聞けなかった。
最後はゼルゼ。名前を教えられたあとすぐに距離を取られて睨まれた。警戒されている。まぁこんなもんだ。
休憩時間のことを振り返っていると、アナウンスのチャイムが鳴った。ゲームの説明が始まるのだろう。
「やほやほやっほー!大富豪で勝利を勝ち取った君たちー!君たちなら、このゲームでも勝てるよね☆ってことで!次のゲームの名前はーっ!『命と弾丸』ッ!でぇす!ルール説明しっまぁす!と、言いたいところですが、ゲームマスター二人の、ご登場でーす!ルール説明もその二人に任せまーす!よろしくぅ!ばいばぁい!」
いつも思うが、アナウンスは何者なんだ?名も名乗らないし、名を知られることが不都合なのかもしれない。詳しいことはわからない。だが、
「ゲームマスターがいるってことは、俺達全員が生き残る方法があるかもな?な、キラー」
「うーん、むにゃむにゃ、(x + 4)(x - 4)を展開した答えはx100乗 + 2000!」
俺はキラーの服を掴んだ。
「うわぁ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
トラウマになってるな。よし。
「うら、ゲームマスターらしき奴らが来てるぞ」
「やほ!俺の名はレイヤーズ!このゲームを仕切るゲームマスターの一人だぜ!で、この隣にいるのが!」
「こんにちはぁ...私の名前はぁ...ルミノシティ...このゲームのげーむますたぁでぇす...」
とにかく明るい奴と、とにかく眠そうな奴が登場。てか眠そうなやつは別のいみで明るい。体が発光してる。
「うらっ、起きろルミ!」
「眠いぃ...レイがルール説明してよぉ...」
ほとんどの奴らが何だこいつらっていう目で運営を見ている。マジで何だこいつらは。
「っ...しゃあねえなあ?えーっ、『命と弾丸』のルールを説明するぜ!まずAチームとBチームに分かれてもらぜ。俺がA、コイツがBに入るぜ」
運営と戦うってことか?それともただ観戦してるだけか?全然ありあえる、てかこんな眠そうなやつがゲームマスターに入っているが、ちゃんとゲームできるのか?できないほうがありがたい。死にたくないからな。
「A対Bの、デスマッチだぜ」
・・・は?A対B?つまり、運営同士で戦うってことか、?流石にそんなことはないか、ただAとBで監視するってことだな。そうに違いない。
「勿論、俺達も戦うぜ」
理解不能。意味がわからない。運営同士で戦ってなんのメリットがあるんだ...?
「まずランダムにAチームかBチームに銃が支給される。そして5分が経過したら銃を持っていない奴に銃が渡る。それの繰り返しだぜ」
もう驚かない。銃がテレポートするということになるが。大富豪であれだ、それを行うぐらい、屁でもないのだろう。キラーのほうを見たらアホみたいな、というかアホの顔をしていた。ルールを理解していないのだろう。
「まずルール1だぜ。誰かが一人死ぬか、72時間が経過するまでこのゲームは終了しないぜ。」
72時間何もしなければゲームは終わるのか、ただ多分72時間飲まず食わずだ。耐えれるはずがない。
「ルール2だぜ。銃で相手を殺すこと、だぜ。能力や武器は使用してもいいが、それらで相手を殺害することは反則だぜ。デスペナルティだぜ。」
ほう、能力の使用が許可されている。このルールはかなりでかい。能力で殺せないが、銃の殺傷能力なら申し分ないだろう。
「ルール3だぜ。誰かが死ぬ、または24時間経過したら『負け犬』と『史上最低』を決定するぜ。この試合は、銃で怪我を負わせた回数がカウントされるぜ。『負け犬』は最もカウントが少ない奴、『史上最低』は、人を殺害してない人の中で最もカウントが多いやつだぜ。どちらも同数の奴がいた場合、『死の決闘』となるぜ。お互いの力を好きに使ってぶつかり合ってもらうぜ。ただ、負け犬だけは、『死の決闘』は免れるぜ。それぞれを決定したら、『負け犬』は次回のゲームで能力使用禁止のペナルティ。『史上最低』はデスペナルティとなるぜ。もちろんこのルールは運営にも適応されるぜ。それと、銃は全員が同じじゃない。弾は有限。ただ、所持者が入れ替わるたびに補充される。さぁ、5分後に試合開始だ。試合開始とともに、チーム分けが表示される。くれぐれもルールを破るんじゃないぞ?」
長々とした説明だが、つまりはこうだろう。全く撃たないかつ、殺さなかったら、ペナルティ。沢山撃ったとしても、殺せなかったら、死亡。中間を狙うか、はたまた誰かを殺すか。
「キラー、しっかりと考えて銃使えよ?弾も有限だ」
「あー、これ、僕勝っちゃうかも」
「そ、そうか?そういやお前の能力ってなんだっけな。忘れちまった」
「教えるかどうかは、チームわけ次第っ」
「そうかよ」
そんな風にキラーと会話しながら、5分という時間を潰した。そしてチーム分けがわかる。
「さあ、チームわけを公開だ!」
Aチーム 『断層』『夕闇 殺』"『タショナル・ラッシング』"『蒼穹 森羅』『黒川冬馬』
Bチーム 『輝彩』『キラー・ペイン』『エクレール・オプスキュリテ』『ド・フィール』『ゼルゼ』
俺はAチーム。キラーとは、違うチームだ。敵となるわけだ。キラーと目を合わせたが、舌を出して敵対アピールをされた。まぁ、仕方がない。違うチームなら、仲間意識はいらない。死ぬわけにはいかないからな。
「お前は...」
「ん?誰だ?」
こいつは、蒼穹森羅だ。俺と同じチームのようで、話しかけに来たようだ。
「同じチームだよな。よろしく、ただペインさんと別のチームだ。心は痛いが、ここは学校じゃない。慈悲はいらないだろう」
「同意見だ」
運営含め5対5のデスゲーム『命と弾丸』が、今始まる。
ー『命と弾丸』 開始 ー
「スタートだぜッ!」
突如手に銃が現れる。しっかりと握り、俺は「重力操作」を使用して、空中へ飛んだ。まずはチームを把握しよう。運営は断層、そしてさっきの蒼穹森羅、夕闇殺、ゼルゼだ。ッ!?突如後ろから音がした。咄嗟に振り返ったら亜空間が現れていた。そこから現れたのは、エクレール・オプスキュリテ。
「空中にばっかいてずりぃんだよ!叩き落してやらぁ!」
そいつは剣を振り、俺を斬ろうとしていた。が、俺はそれにあえて当たるように前のめりになった。
「ちっ、」
想像通り。ルール上、銃以外で殺せばデスペナルティだ。攻撃できるわけがない。俺はそのままそいつに銃を向けて、発砲。だがすぐに亜空間は閉じられいて、弾丸は遥か彼方へ。たった5分で銃の所持するチームが変わってしまう、どうにかしなければ。もうすでに何人か撃たれている。今攻撃しやすい奴は...キラーだな。キラーはきょろきょろと周りを見ているだけで背後を全く気にしていなかった。俺はキラーの背後にゆっくりと降り立ち、服を掴んで後頭部に銃を突きつけた。
「んっ、やっほー?おバカさん!『完全固定』ッ!」
目の色が変わっーー
いつのまにかキラーは消えて、銃は無くなっていた。
足に激痛が走り、撃たれていることに気づいた。まるで時間が一瞬にして飛んだような感覚だった。
「タショナルさん!あんまり僕のこと舐めてると痛い目見るよ?」
キラーは銃口に息を吹いた。
こいつが何故銃を...すでに5分が経ったということか?いや違う...少し遠いが、見える。銃を持っているAチームの奴が、つまり俺はキラーに銃を取られたのか!確かに人の銃を取ってはいけないというルールはなかった。
「ほいっ」
キラーから銃を投げ渡された。どういうことだ?慈悲をかけられて...違うな、5分経過で銃が交代するのを利用しようとしてるのか!だが、少し投げ渡すのが早い、今のうちにキラーに返せば、また俺の物に、!
「『完全固定』」
っ!?、銃がない。またキラーの能力だ、こんなの、不利すぎる!逃げるしかない、!
俺は能力で高速で横移動し、キラーから逃げた。「ちょ、逃げるなああ!」という声が聞こえたが、わけのわからない力に付き合うほどお人良しじゃない。また銃がまわってくるまで上に飛んでいっ...
一度聞いた音、これは、亜空間ッ!
「よお!また会ったなズル野郎!今度はちゃんと殺せるぜええ!!!!」
顔を傾けるが、飛んできた銃弾はかなり深く頬をえぐる。
「ぐっ...」
俺はそいつに触れ、亜空間の奥に『重力操作』で押し込もうとした。が、体が動かなくなった。息もできない、思考することしかできない。
「『眼縛』ッ!」
まずい!このままだと、撃たれ...ない?
「ちっ、弾切れかッ...チクショーッ!」
体が突如動くようになった。俺はさっきしようとしたことはやめ、あることを確認したかったことを思いだした。
「なぁ?弾ないならその銃、くれないか?」
頼む、馬鹿であってくれ。
「あ?いいぜ。ほらよ」
俺は銃を渡され、装填音がした。俺が確認したかったことは、ルール説明で言っていた『弾は有限。ただ、所持者が入れ替わるたびに補充される。』の詳細だ。これは5分経過で入れ替わることを指すのか、それとも本当に所有者が入れ替わるたびに補充されるのか。さっきキラーから銃を手渡された時に実は変な音がしていた。その音が何か今ならわかる。本当に所有者が入れ替わるたびに補充される。俺はオプスキュリテの足に向かって発砲、だがすでに亜空間は閉じられてしまっていた。というか銃を渡した後普通に帰ろうとしている素直なやつだった。ま、まぁいいのか?
それより、誰かを殺さないと試合が終わらないが、最もカウントが少ないとペナルティだ、それは避けたい。カウントが見えないのが不便だな。ん、人が歩いてきた。あれは...光彩だ。呑気にこちらに歩いてきた。こいつでカウントを稼ぐのが良さそうだ。俺は光彩に銃を乱発した。こんな眠そうな奴なら、避けられるわけがない。
『んっ、これ光をうまく調節して分身つくってるだけ...本体はこれじゃない...やってるふりして寝てるの...』
そう文字が浮かび上がった。何だコイツ、やる気ないんじゃないか?だとすると、最下位ペナルティは避けられる可能性はある、誰か殺さなくては...
そう考えていると、銃が消えてしまった。5分が経ってしまっていた。俺は遠くから見守っているだけで、大きな怪我ってほどの怪我はしていないが、密集しているところは乱戦で血だらけだ。今一番しにそうなのはゼルゼと言う男。肌が灰色に変色している、これは能力だろう。ただ、体はボロボロ、漁夫をされそうだ。というか、中々人が死なないのは、殺すのを躊躇っているやつが多い。どうしても情が湧いてしまう。
そしてそいつは突然現れた。今まで姿を現していなかった奴が、現れた...断層。ものすごい足の速さ、これも能力だろう。そんなことを思っている場合ではない。コイツッ、誰かが死にそうになるのを待っていたんだ。漁夫をする気だ!
「来たぜー!瀕死の奴が!いっただきだぜー!」
そいつはゼルゼの首を掴んだまま走り続け、頭に銃を、発砲した。
ー 試合終了 ー
試合終了のブザーが鳴る。俺は遠くから見てばかりだったからか、苦戦って感じはしなかった。キラーはしっかりと戦場にいたから、後で話を聞こう。だがそれより大問題だ、一発を当てれていないのだ。
「お前ら!集まるんだぜ!」
断層が大声で集合させる。ゼルゼ以外の全員が集まり、怪我はいつの間にか治っていた。
「おい!ルミ!起きろ!次はお前が『負け犬』と『史上最低』を決定するんだろ?」
ここで一番の問題がある。ルール3で『どちらも同数の奴がいた場合、『死の決闘』となるぜ』と言っていた。カウントが同数になった場合、これからが本番となる。
「それもレイがやってぇ...むにゃむにゃ...」
「ちっ、いっつも世話焼かせやがって。まぁいい!じゃあまず、カウントの公開だぜ!」
『断層 殺害者』『輝彩 5』『夕闇 殺 9』『タショナル・ラッシング 0』『蒼穹 森羅 4』『黒川 冬馬 6』『キラー・ペイン 6』『エクレール・オプスキュリテ 9』『ド・フィール 0』『??? 死亡』
「...」
この試合で死んだやつの名前が思い出せない、というか死体は、本当にこのゲームは理解に苦しむ。
そして、二組同数ができてしまった。黒川 冬馬とキラー、夕闇 殺とエクレール・オプスキュリテだ、そして輝彩は嘘吐きだったようだ。
「まず、負け犬は、タショナル・ラッシングとド・フィール、てめえらだ!雑魚が!ふはははぁ!」
正直うざいが今は堪えよう。
「次に史上最低は...おっと同数だな、こういう場合は、どうせ『死の決闘』がある。それで死んだほうが『史上最低』ってことでいいだろう」
そして視界は歪む。意識も薄くなってくる。
「負け犬と部外者は、失せてもらおうか」
俺の意識はここで途切れた。
ー 『死の決闘』 ー
僕はキラー、『死の決闘』を行うことになってしまった。黒川さん。全く情報がない。
そう僕が悩んでいると、彼女?彼?のほうから話しかけてきた。
「これからよろしくお願いします」
そう言って、彼女?彼?は立ち去った。いいや、大丈夫。僕なら、一瞬で決着がつくことだってありえる。そう、僕のこの力なら。『弾劾』なら、きっと。
「んぅ、どうもぉ、輝彩でぇす、この『死の決闘』を担当しまーす。まぁ寝てるから適当にやっておいてールールないからぁ、ってことでおやすみぃ」
そのまま床で寝てしまった。羨ましい。そしたらタイマーが現れ、『試合開始まで残り5分』と表示された。そういや他のみんなは?もうこのゲーム理解するほうがきついか。もういいや。目の前の人これから僕が殺しちゃうわけだし。深く考えてたら脳内メモリがオーバーフローしちゃう。
その後僕は軽くストレッチをして床に大の字で寝そべった。床が冷たくて気持ちいい。そのまま冷たい床を堪能していると試合開始のブザーが鳴った。走ってくる足音が聞こえる。えーもう試合なのー、めんどくさい、このまま寝ていたい。でもこのまま寝てたら、永遠の眠りについちゃう。それはいやだ。
僕は軽く飛び上がって、もう彼女呼びでいいや、彼女の背後に降り立った。
彼女は無言で僕を睨む。また僕の方に走り出した。彼女は逆手で剣?を持っており、僕を殺す気のようだ。
「死にたくないから、ごめんね、『完全...」
陽炎のように彼女の体が揺れたかと思えば、いつの間にか僕の目の前にいた。速すぎ!ひえー!
僕はぎりぎりで攻撃を回避して彼女の肩を掴む、そして彼女の体の構造を把握する。
『弾劾』触れた物を軸に自由自在に斬撃を発生させる。どんなのでも斬れる。斬れないのは、親友ととの硬い絆ぐらい?そんなのはどうでもいいけど。
彼女は僕からさっと距離を取る。
インピーチの弱点は触れて、一度の構造を把握しないといけないことだ。まぁ、それによって正確に斬撃を放てるんだけどねっ!
「わっ、消えた。後ろかな、いや上かぁ」
上には彼女の姿やっぱ女の子か男の子かわかんないや。
「『炎通』ッ!」
僕に剣の先端が迫る。これはまずい。必死に回避しようとしたが、刃は僕の肩をえぐり、地面に刺さる。
痛い。だが今はそれどころではない、速すぎる。剣が刺さっている隙に攻撃をしなくてはならない。
僕が触れようとしたその時、彼女は水色の光に体が覆われた。何か来る、!
「ッッ...」
光はパッと消えたかと思えば背後に気配がし、それに気づいたころには体に剣が貫通していた。
視界がぼんやりとする。もろに攻撃を喰らった。人間にはこの状況はまずい。
もう手段なんてどうでもいい。
僕は無理やり体から飛び出た剣を掴み、構造を把握した。
「諦めてください。この傷では助かりません。楽にさせてあげるので、大人しく首を差し出してください」
彼女はもう勝ったと思っているようだ。確かにまずいことには変わりないが、助からないのは君もだ。
「弾劾...ッ!」
僕は剣をバラバラに粉砕した。体に空いた風穴からはドバドバと血が流れだす。頭痛と吐き気に襲われる。だが死にはしない。僕の辞書に致命傷はない。生きてるか、死んでるかしかないのだ。
呆気に取られている彼女に間髪入れず足払いを転ばせる。そのまま首を掴んで、最後の空間把握、そして形勢逆転。
「何か...言い残すことは...?」
僕がそう問うと。目に光が無いまま「化け物」と言って目を閉じた。潔いので、一番すぐに楽になる方法を取る。
「弾劾...」
彼女の頭を三枚におろした。すぐに彼女の体は抵抗をやめ、だらんと力を無くした。
「...」
お腹の傷はいつの間にか無くなっており、彼女の姿も、名前も無くなっていた。厳密には忘れてしまった。悲しいな。殺した相手の名前も覚えてあげられないなんて。
ー 能力の最高到達点 ー
俺はエクレール・オプスキュリテ。『死の決闘』を行うことになった。俺はかなりワクワクしている。にやけがとまんねぇぜ。ふははははははあはははああ!自分の能力を本気で使って殺し合いなんて、最高ッじゃねえかぁ!?。
んなことを思っていると、相手が近づいてきた。なんだ?まだ試合すら始まってないのにやろうってのか?いいぜいいぜやってやるよ。
「あの、いつもテンション高いんですけど、ク〇リとか、やってます、?」
は?何を言ってるんだコイツ。俺は当たり前に「んなもん使ってるわけねえだろ!!」と返した。
相手は「そうですか...」とトボトボ少し離れた場所に歩いて行った。
頭がおかしいやつの相手をしていたら、運営が現れた。こいつは、断層。クソ足が速くて、地面をガリガリ削ってた奴だ。こいつとも戦いてえぜぇ。
「この『死の決闘』を担当する、断層だぜッ!ルールはシンプルだぜ!好きなように殺し合え!勝てば生き、負ければ死ぬだけの簡単な話だ!もう開始時間なんていらねえ!今すぐ始めろ!すたぁとおおおお!」
コイツ...気が合いそうだぜ。
「うらぁっ!やってやらああ!!『眼縛』ッ!」
『眼縛』相手の体の自由を制限し、思考することしかできなくさせる。ちょーつええ技だぜぇ。10秒より多くやると目に負担だ。しかも20秒連続で使ったら失明する。だが俺には10秒もいらないぜぇ!
高い身体能力を駆使して、ぐんぐんと距離を詰め、亜空間、『エスパス』を開く。そこから愛用のブレイサーという剣を取り出し、そいつの首に剣先を向ける。が、急激に目が痛くなった。
「痛ああああああああい!!!!!ぐっぞおおお!!!」
普通に15秒ぐらい経っていたようだ。
俺はしょうがなく能力を解除して真剣勝負をする。コイツは懐からメスを数本取り出し、俺のほうに投げてきた。俺は軽くそれを避け!!!たかった!!がっつり頬を掠めた。だが、こんな攻撃大したことない!!うらいくぜえええええ!!!
「『過剰なるかすり傷』...」
頬が爆発したかのように傷が広がり、血が溢れた。
「痛ああああああああい!!!!!ぐっぞおおお!!!」
「デジャブ...」
呆れたような声でそう言った夕闇はハサミを取り出し、俺へ刃先を向けてきた。
「おいッ!ハサミを渡すときは刃先を持って、持つところを相手に向けるってならわなかったのか!」
俺の超絶優しい教育に対してコイツは「別にあげないよ?」と言い、刃を開いて投げてきた。
俺はその剣を弾いた。が、嫌な予感がした。
「『過剰なるかすり傷』...」
剣が一気に刃毀れした。これ以上はまずい、俺はやる事に決めた、ハイリターンハイリスクの究極の技。
「『眼縛』...ステージ全開ィ...!!!」
周りが揺れる、空気が冷たくなる。この世には、途轍もない力が存在する。それが、『ステージ全開』もとある技を派生し、最大出力で使う。そうすることで成り立つ。さぁ、お前の負けは決定だ。
「≪⦅〘寂しくても一人〙⦆≫」
ー タショナル先生のステージ全開口座 ー
ここはッ...前の休憩場所か?
「えっ、あっ、おにぃいいいぃいぃぃぃぃぃ!!」
能力で一気に距離を詰めたクロカが、俺に抱き着いてきた。
「もう会えないかと思ったよお!」
「ごめんごめん...」
俺はクロカの頭を撫でてやった。全く、ブラコンすぎる。そして俺はふと、話したいことができた。俺は小声でクロカに問う。
「クロカ、ステージ全開を使ったか?」
「ううん、使ってもバレないし、大丈夫な可能性はあるけど。使わなかった」
「そうか、わかった。」
ふと、どこか高くにいる、偉い人が、ステージ全開について説明しなくてはならないとかなんとか。謎の使命を感じた俺は、説明しようと思う。
『ステージ全開』とは、元の能力を派生し、最大のポテンシャルを発揮する。完全詠唱をすることで使用できる。能力が無数にあるように、ステージ全開も無数にある。
「おにい?」
ただ、ステージ全開を得るための条件がある。能力の暴走だ。暴走と聞くと、悪いイメージがつくかもしれないが、意外とそうでもない。暴走することによって、普段出さなかったような出力や、破壊力を出すことができる。それにより、ステージ全開として、新しい力となる。ステージ全開は、実質能力の暴走を自ら起こしているようなものだ。条件がある以上、誰しもが持っているわけではない。
「おにい!」
そこで、使用できるかどうかの判断材料がある。魔力ヒビだ。魔力ヒビは魔力を、過剰使用、底なしで使用することでできる傷。ステージ全開を手に入れる仮定で大抵の人が魔力ヒビができる。なので、魔力ヒビを見ることで、判断できる可能性はある。そしてステージ全開の弱点は、大声で詠唱し、詠唱中に刺激を受けないことが条件だ。刺激を受けると、暴走しかけた魔力に緊急ブレーキがかかる。体はその反動をもろに受ける。それが弱点だ。...説明は以上だが、なんで説明なんて...
「おにい!!!!」
「あ、あぁ、すまん。少し考え事をだな。」
クロカは「もぉ...」と不服そうな顔をして俺の胸に顔を埋めた。俺はそのまま頭を優しく撫で続けた。このデスゲームで、クロカを失ったら、俺は...ステージ全開を使って、何もかも破壊するかもしれない。クロカにブラコンなんて言ったが、人のことは言えないのかもしれない。俺もかなりのシスコンのようだ。辛い。
ー ステージ全開 寂しくても一人 ー
「≪⦅〘寂しくても一人〙⦆≫」
世界が止まり、俺、エクレール・オプスキュリテだけの世界となった。15秒の間だけ、俺は世界の覇者となる。俺は動かない目の前の敵に素早く近づき、首を切り落とす。勝ちが決まったところで、一度言ってみたかったセリフがあるのを思い出した。どうせ一人だ。恥ずかしくない。
「時は動き出すッ...なんてな、ハハッ」
世界が元に戻ると、声も出せないまま夕闇の頭は重力に負けて地に着いた。味気ない、この力は、どうしても面白くない。そして最後に残る静寂は、もっと面白くない。
試合が終わってから数分して、放送のチャイムが鳴った。
「コングラチュレーションッ!おめでとうッ!勝者よッ!勝利したキラー・ペインさん、エクレール・オプスキュリテさんは、次のゲームをお休みになります!休憩できますねおめでとう!」
包装が終わってすぐ別のとこに転送された。もう慣れてきた、この非現実的なシステムに。とりあえず、休憩となるようだ、しばらく戦えない。つまらない、ちッ。
ー キラー視点 ー
僕は口元を拭いて、試合終了を待った。もう床で寝ちゃおうかなと思ったころに、放送のチャイムが鳴ってしまった。寝たかった。
「コングラチュレーションッ!おめでとうッ!勝者よッ!勝利したキラー・ペインさん、エクレール・オプスキュリテさんは、次のゲームをお休みになります!休憩できますねおめでとう!」
はぁっ、やっと終わった。目を閉じて「んーっ!」と伸びをして、目を開いたころには別の場所になっていた。僕が殺してしまった彼女の名前を忘れてしまった。やっぱり慣れない。意味がわからない。そんなことを思っていた、けど僕は見てしまった。
「...は、はぇ」
クロカさんとタショナルさんが抱きつきあって、タショナルさんのほっぺにく、口付けをしているところを。兄弟の仲でそんなこと、いや、有り得な、どういうことお!?
「あっ、キラーじゃないか。勝ったのか!あ、クロカ離れてくれるか?」
「むぅ、もうちょっとしたかったな」
え、え?見られてないと思ってる?逆に怖いよ?
「え、あ、さっき、何してたの?」
「え?キスだよキス」
クロカさあああああああああああああああん!!素直に言わないで!?え、てかなんで!?え?えええ。
「あー、キラー?初めて会った時みたいに、クロカは俺を彼氏扱いしてるんだ、だからご愛敬ということで。あまり咎めないでくれ」
いやいや、無理でしょ。無理無理。見てて恥ずかしすぎるし。
「そんなことよりキラー。生きてて良かった。」
「う、うん。意外と楽勝だったよ」
僕はダブルピースをした。もうさっきのことを忘れるために訳の分からない行動を取ってしまっているらしい。二人の顔が引きつっている。気まずい。
「あ、ああ、えっと、次のゲームは僕お休みらしいから、二人とも頑張って?」
「...ああ、頑張るぜ」
ああもう恥ずかしい死んじゃう。僕は二人とは少し離れた所の床に座って頑張って忘れようとした。
そして、僕は頑張って忘れようとしてるうちに、寝てしまっていたらしい。いつの間にか周りには誰もいなかった。厳密にはもう一人の『死の決闘』の勝者がいた。名前は忘れたけど。
僕は話しかけられないと会話できないタイプだから彼に話しかけられない限りは僕は一人で何かしていようと思った。でも一人は寂しいな。頑張って、話しかけてみようかな。やーめた!寝ちゃお。
僕は床に寝そべって気持ちよく眠った。
ー 運営たちの休憩談義 ー
あり二人は。
「ねえ、✖✖。私、早くゲームマスターやりたい!」
「試合がしっかり進むためにしっかり割り当てたはずだ。それまで待っていろ、✖✖」
「はあい」
また、ある二人は。
「ねっ、✖✖✖✖。次のゲームなんだっけ」
「僕がアナウンスだからって毎回聞かないでよ✖✖✖全くー。次のゲームは...」
またまた、ある二人は。
「...」
「おい、次は俺達の出番だぞ?」
「...」
「わかってるつーの。お前も、アイツがいるからって、贔屓とかするなよ?」
「...」
「それでいい」
最後にある4人は。
「最初のほうだったけどキツかったなぁ!なぁ、エンジェ?」
「あれは失態でした。次はヘマしません」
「うぅん...」
「おいルミ、いつまで寝てるんだよ。まぁ今はいいけどさ」
「レイ漁夫してたサイテー...むにゃむにゃ...」
「顔面削るぞ」
「むにゃむにゃー」
「都合の良い奴だぜ...」
そして...
「みんな、放送始めるよ。✖✖✖、✖✖✖✖、よろしく」
「...!」
「やってやるぜ」
ー ラッシング家 兄妹 ー
「おにい?なでて?」
おにいはしぶしぶ私を撫でる。
「おい、何度も言ってるが、俺達は付き合ってないからな」
そんなのわかってるよ。だけど、彼氏として扱いたい。
そうイチャイチャとは程遠い仲良しこよしをしたら、放送のチャイムが鳴った。
「やほやほやっほ!次のゲームのお時間だよ★次のゲームは名は、『罪人確保』です!ルールは、全員集まったら、ゲームマスターが話してくれるから、脳に送った場所に、次のゲームの参加者は、言ってね!そして、タショナル・ラッシングさんと、ド・フィールさんは、『負け犬』なので、能力の使用を禁止します!それでは、集まってください!またねー!」
そう言い、放送が終わった。
「さてと、クロカ、俺は能力の使用ができないから、俺にあまり頼るなよ」
「あいあいさー!」
「そんな元気に返事されても...ハハ」
私達は、人の名が、姿が、『忘却』されていくのに恐怖を感じなくなっていた。