ー 序章 ー
ある日のことだ
「ああ、早く帰りたいなあ」
そう独り言を言いながら次の時間の準備をする。ここは僕の通う学校、「四葩高校」だ。
「四葩高校」の四葩とは、紫陽花のことだ。そして僕はこの学校の高校1年生だ。今は12月の冬の季節だ。この流れなら梅雨であって欲しかった。
「次はと、体育館で学年集会か」
「はぁ」とため息をつく。
「最近は風邪が流行ってて休みが多いなぁ」
意味もなく独り言を呟く。これはいつものことだ、多分きっとメイビー。
「行くかぁ」
ふいに自己紹介がしたくなった(?)僕は、また独り言を言った。
「僕はキラー・ペイン、最高の学校ライフを送っているわけだが、って誰に話しかけてるんだ」
なんやかんやあり、嫌々移動しようと思ったその時だった。
「ん、今なんか光が」
そのとき目の前に現れたのは、赤い一筋の光、ビームである。
「!?」
「【完全固定】ッ!」
辛うじて能力で僕の方向に飛んできたビームは止めることができた。
「ビ、ビーム!?は、待て待てなんだみんな倒れてい...」
言い終わる前に僕の意識は途切れた。
...
おい起きろ。
起きろ!!!
したたる水の音、冷たいコンクリートのような感触が肌に染みる。
ん、何が起きた。
僕は...
「はっ!!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、」
息が上がっている。何故だろうか。わかっているはずなのに、現実を認めたくない自分がいる。
「ここはどこ、どこだ、なんだ、コンクリートの、空間、なんなんだ、」
理解したくてもできない現実が目の前に広がっている。
「てか、立ったまま寝てる、?」
言い終わる前に自分より少し低い声が耳に入った。
「おお、やっと起きたかアンタ」
初対面でアンタ呼び、失礼とは思わないのかな。
そう思っている間に距離は詰まっていた。
「随分と面白い寝相じゃないか」
立ったまま寝ることは、この人からしたら面白いんだろう。僕はそう思わないけど。
「うーむ、自己紹介が無難かな?」
無難、無難と言えば無難だが、急に出会ってするものでもないだろう。あとこれ僕もしないといけないながれになりそう。クラスでする自己紹介は嫌いだからいい思い出はない。
「俺はタショナル・ラッシング、まぁよろしくな」
「おにいー!!」
言い終わる前に今度は元気な女の子の声が耳に入る、また知らない人が増えた...
「え、浮気?」
男同士で浮気、時代も時代、彼女がそう思ったのなら、そうなのだろう、違うけど。
「俺はお前と付き合ってねえよ、まず、兄妹だろ?」
なるほどだからおにいと呼んでいたのか、納得。
「うるせえアンタは彼氏じゃ!ぶち殺すぞ!」
物騒だ、そんな言葉を使うのは控えてほしい、なんだこの人達は。
「ず、随分仲の良い兄妹なことで、」
困惑した僕はこのぐらいしか反応ができなかった、そして今大事なことは、ここがどこかだ。
「えと、ここがどこだかわかりますか?」
「浮気相手は黙って!」
理不尽すぎる、この女は、緑の優しい色の髪をしているのに、言葉はちっとも優しくない。
「ああ、すまねえ、つっても俺達もここがどこだか知らん...強いて言えば、ここに来る前上空から大量のビームが降り注いだのは覚えているんだが、」
「っ...」
あの地獄絵図を思い出してしまった、クラスがめちゃくちゃとなり、血の海と化した、あの光景、そう簡単に忘れられるというものでもないが、思い出したくはなかった。
「ああ、すまねえ、嫌なこと、思い出させたか?」
「だ、大丈夫です」
苦し紛れに僕はそう答えた。
「それより、どうにかしてこの現状を打破しましょう」
そう口にした時に、空間に聞き馴染みのある音が響く、学校のチャイム、チャイムといっても、放送で、連絡があるときなどのほうだ。
「おっ」
最初にそう口にしたの彼、ラッシング、いや、妹もラッシングという苗字なはずなので、タショナルと呼ぶべきだろう。
「みーなさーん!元気ですかー?♪ここに集めた20名の皆様!私はゲームマスター!「X」と申します!」
元気で、明るい声が、脳に響く、名前の部分は、正確に聞き取れなかった。
「以後、お見知りおきを♪ここに集まってもらったのは他でもない!選抜されたのです!アナタらは!」
集まったというより、無理やり集められたという表現のほうが正しいだろう。
そう思っていると、遠くから声が響く、何か言っているのだろうか、でも、その答えはすぐに分かった。
「ふざけんな?家に帰せ?な~に!家には帰れますよ!最後の一人になれば...ですがね♪」
帰ったところで、誰もいないじゃないか。
「それでは!早速ゲームを始めましょう...最初のゲームは!」
ドクンッ、心臓が大きく鼓動した、脳に広がる、ある文字列。
「大富豪です!!」
大富豪、トランプで行う、カードゲームの一種、あまりやったことはないが、ルールぐらいは知っている。
「大富豪とは!」
能に文字列が呼び起こされる、どういう仕組みだ。
3→4→5→6→7→8→9→10→J→Q→K→A→2
→ジョーカー
という強さの順で順番にカードを出し合うゲーム。
本来はラウンド制だが今回は一回ぽっきり。
5人のグループを4つ作り、試合をする。
さらにそのなかで最後まであがれなかった人でグループを作り敗者決定戦を行う。
最後まで負け残った人は...
"死亡"となる。
今回使える特殊ルール
・革命
今あるおいてあるカードより強いかつ、同じ数字のカードを4枚同時にだすことが条件。
革命を使用すると
2→A→K→Q→J→10→9→8→7→6→5→4→3→ジョーカー
という強さの順になる。
革命が起きているときにさらに革命を起こすことができる。
そうすると強さは元に戻る。
・11バック
JACKより上のカードの強さの順が
2→A→K→Q→J→10→9→8→7→6→5→4→3→ジョーカー
という強さの順になる。
積まれているカードがリセットされたら強さは元に戻る。
・8切り
数字の8が出せる状態で8を出すと今置いてある。
カードが全てなくなり、好きなカードを出すことができるようになる。
・スぺ3返し
ジョーカーは最も強いカードであるが、その上に唯一スペードの3を出すことができる。
そしたら数字の3からまた始まる。
特別ルール
ジョーカーは1枚。
カードの破壊、または消失や、相手のカードを見るための行為でなければなにをしてもよい。
「です!」
何も言っていなかった、言っていなかったはずなのに、すべてが聞こえた、いや、見えた
仕組みがわからないが、ルールは理解できた
「とりあえず5人一組で組んどいてー出来たらまた来ます☆」
適当に押し付けられたように聞こえるが、気のせいだろう
「なんてこったよ、」
タショナルさん、同意見です
「と、とりあえず、言われたとおりに、人を集めましょう」
そして幸運にも僕たちは3人で人を探し、どうにか5人組をつくることができた、多分、幸運だよね
「集まったはいいけど、メンツ濃いな、」
「僕のおにいに手を出すな泥棒猫!」
「あ?」
そう返事をしたのは彼、名前は聞いていない、黒とピンクの色をした、パーカー、そでは破けている、マスクをつけており、牙の柄だ
なかなか、厳つい恰好である
「なんか知らねえが殺すぞ!」
ああ、タショナルさんの妹さんと同じタイプだ、終わった...
めんどくさそうな顔をしているタショナルさんを横目に、もう一人の参加者を見た
和装、それも下駄だ、職業はなんなんだろうか、そして、目が三つ、おでこの位置に第三の目がある、まぁ、この世界では珍しくはないだろう、なんたってこの世界は、能力が蔓延る超次元世界なのだから
そうしているうちにまたチャイムが鳴り...ブチッという音とともに途中でチャイムが切られた
「長い、みんなー?集まったねー?それじゃあカードを配っちゃおう!」
どうやって?ここら一体にはなにもないけど、そう言ってると視界の前に裏側が見えているカードが現れる
「僕お手製のカードです!もちろん!表には記号と数字があるよ!ルールは君たちの脳内に直接おくりこんだから見てねー!」
「うわぁ!?脳に直接!?マジで何者なんだろう、」
規格外の出来事でおもわず驚いてしまう
そうしていると、カードが現れた
「なんか手から出てきたんだけど、」
僕がそう口にするとみんな苦笑いをした
そしてタショナルさんのとこに目をやると、カードが浮いていた、理由は大体わかるのだが、
「えーと、なんで浮いているんですかこれ?」
「能力」
「そうですか...」
即答、それもそうか
そう思っていると、カードが落ちた、幸い裏側が上になった
「ああ、時間の制限があるんだった、」
「えぇ...」
忘れるか、?自分の能力の概要を
「裏側が上になるように落ちてよかったね」
「そうだな」
「なんだろうこの空気、」
「おい!まだかよ!ゴミども!さっさとやるぞ!」
ああ、そうだね、さっさと始めないと
水色の丸い円が現れる、ゲームスタートの文字が現れ、その文字は大富豪という文字に変化した
水色の楕円の記号が現れ、床に張り付く、5人分の水色の円が、さっきの記号を中心として、まわりに現れる、そしてそれに、1から5の番号が振り分けられる
「わっ、すご」
「これを基準として進めていくのか」
地面に広げられたそれは、水色で、そして妖しく光っていた。
「みたいですね」
彼はさっきの和装の男の人だ敬語でしっかりしてそう印象。
「とりあえず、お互いの親交を深めるために...お名前と、能力の開示をしませんか?」
「ケッ、嫌だね!てめぇなんぞに教えて俺にメリットあんのかよ?」
そこまで言わなくてもいいのに、自己紹介は大事だよ。
「1つくらい、いいんじゃないか?」
そう言ったのはタショナルさん、こういう時に先陣を切ってくれる人って、かっこいい。
「俺はタショナル・ラッシング、好きに読んでくれ、まぁ俺はさっきのやつを教えようか」
さっきの能力とは、カードを浮かせていた能力のことだと思う。
「さっきのは【重力操作】、まぁ、触れた物の重力を5秒だけ操れる、って感じさ」
「おにいー?僕も言わなきゃだめー?」
ここで先に言うよ的なことが言えたら、かっこいいかな?かっこいいよね!
「先に僕が言いますよ」
キマった...!
「僕はキラー・ペイン」
で、次は能力だったかな。
「そうですね、【完全固定】にしましょうかね、半径15mの指定した一つを完全に停止する能力ですね、このゲームではルール的に使いどころがありませんが」
ふう、なんとかやり切った。
「しょうがないなぁ...」
何も言ってないのに、何がしょうがないのだろうか。
「僕はクロカ・ラッシング!じゃぁ...【時を超えて】!チャージした時間の分自分の時間を飛ばせるの!」
なんだかみんな強い。集められている人はみんなこうなのだろうか。
「このゲームで使ったらルールガン無視でカード置いてることになっちゃうけどぉ!」
「それでは私が、私はトリッカ・アワーズ、能力は【一度だけの手品】10時間に一度一人の心が読めます」
え?激弱じゃない?それ。
そんな空気が流れてるならクロカさんがある人に喧嘩を売った。
「ピン黒トゲトゲはぁ?」
「よし殺すかかってこいや」
ピンクと黒、トゲトゲなのは服とかつけてるマスクのことだろう。
「まぁまぁ、」
そう仲裁したのはタショナルさん、こういうのには慣れっこなんだろう。大変な妹を持ったものだ。
「チッ、スケール・ラージだ」
多分名前だろう。
「【振動】、半径最大50mの波動を出せる、これで満足か!クソども!さっさと始めろ!」
所謂これがツンデレというやつらしい。ギャップ萌えってやつだと思う。いや違うかもしれない。
「これは僕からだね、まずは、ここにかざせばいいのかな?」
順番は、僕、タショナルさん、クロカさん、スケールさん、トリッカさん。つまり最初は僕、僕は前にある①のような形をしたところにカードを置いた。すると中心に大きく文字が表示された。
『♣4♥4』
「この二枚で」
まずはクラブの4とハートの4、最初のほうから弱いカードは消費していこう。
「じゃぁ、パスで」
もうパス?何か作戦があるのかそれとも様子見をしているのか。
「んー!これえ!」
『♣5♥5』
「おっせえなあ!」
『♠6♦6』
「次々ぃ!」
「さっさとやりましょう、お静かに」
そう言い、トリッカさんは不機嫌そうな顔をして、周りを黙らせながらカードを置いた。こういう、騒がしい雰囲気は苦手なのだろう。
『♥8JOKER』
もうジョーカー使うの、こんなところで使うとは。よほど不機嫌なのだろう。そしてここで8切り。
『8切り』
『♠4』
「はい、」
僕はトリッカさんの言葉に返事をして、またカードを置いた
『♥7』
「んー」
最初からパスをしたタショナルさんは少し悩み、カードを置いた。流石に二連続パスというのは無かった。だから余計、最初のパスの意味がわからない。もしかしたら、様子見するだけでとくに意味はなかったのだろうか。まぁ、今は考えてもしょうがない。試合に集中しよう。アナウンスの通りなら、このゲームで最下位、つまり大貧民になると敗者決定戦へと進む。そこでも大貧民になれば死亡となるようだ。そのようなリスクは負いたくない。大貧民になることは、意地でも避けなくてはならない。
『♦10』
「静かでつまんなーい」
彼女は多分空気が読めないのだろう。このタイミングでそんな発言をしたら、トリッカさんの気に触れてしまうという可能性は考えられなかったのだろうか。
『♥K』
「ちっ、パス」
もうパス、スケールさんの手札は、かなり弱い可能性が出てきた。それと、スケールさん、物凄く顔に出ているよ。
「お静かにと言ったのを忘れましたか?」
あーあ。言わんこっちゃない。さらに空気がピリピリとしちゃうじゃないか。どうしてくれるんだ。
「パス」
ここで僕の番、場面上にあるのはハートのキング、序盤でこれ以上の強さのカードを出すのは後に響く可能性大だ。慎重に、パスといこう。
「僕も」
「俺もかなぁ」
とトリッカさん、僕、タショナルさんの順にパスが続いていく。まぁ序盤によくあることだと思う。ずっと思っていたがずっといらないことしか考えていないか、?まぁ、いいか。
「わーい!また僕の番!」
『♠J♥J』
「これ!」
「...パス」
またもやパス。多分、というか絶対スケールさんは手札が弱い。くそざこ。
「パス」
不機嫌な顔をしたままのトリッカさんもパス。トリッカさんも弱い手札の可能性はある。そして、僕の番
『♦3♥3』
出してすぐ積まれていたカードはリセットされた。
「あ、絶対出せない時はリセットされるんだ。」
この大富豪でのジョーカーの枚数は1枚。これより上は絶対に出せない。
『♦8』
そして8切り。いま使わなくてもよかったかもしれないけど。
『♣10』
「時短やろうなあ、寿命のな」
寿命への時短、なかなかひどい言い方を思いつく人だ。
『♦Q』
「縁起でもないこと言わないで!うー、パス!」
もうダメだこの人のテンションにはついていけない。頭が痛くなってくる。
「パス、」
案の定。滝汗をかいているよ。わかりやすすぎ。
「同じく」
どんどん顔が険しくなっていくトリッカさん。まぁ、もう静かにはならないと悟ったのだろう。
『♣A』
ぶっちゃけ、僕も静かなのは嫌なので話を振ってみよう。
「てか、皆さん大富豪やり慣れてます?」
「まぁ、クロカと結構やってたからな。パス」
流石は兄妹って感じだ。僕も妹とかいたらなぁ、クロカさんみたいなのは嫌だけど。
「おにいに勝てた覚えないけどね...パス!」
「まあ勝つのは俺だがな!」
激よわ手札でよく言えたものだ。
『♣2』
おっと強気に出た。てか2持ってたんだ。
『♦4』
「騒がしい...」
久しぶりに口を開いたトリッカさん。騒がしいとは言っているが、何かを考えているような。気のせいかもしれない。
『♦5』
というか、タショナルさん、強いってことかな。さっきからやたらパスが多いし。うーん、出会ってばっかりだし、よくわからないや。でも、どうにかしないと。死にたくない。
そう沢山のことを考えているうちに、大きなため息をついてしまった。
「おいおい、考える時間が長いぜ?リラックスしようぜ」
「あ、ごめんなさい」
考えすぎてカードを出すのを忘れていた。恥ずかしい。
『♠K』
だけど、きっと彼には何かある。ものすごい勝利方法が!
「キラーとアワーズ」
名前を呼ばれたときドキッとした。ただ呼ばれただけではこうはならない。なんだ?
「俺が何か企んでいて、ものすごい勝利方法があるとか、そんなこと考えてるんじゃないか?ははっ、大正解だ。ただ、手遅れだ」
手遅れ、?もう彼が大富豪になることは確定している、?
「まぁ、あとはせいぜい頑張れ。クロカ」
彼女の名を呼んで彼は肩に手を置いた。
「死ぬなよ」
『♠A』
『♦K』
「え、いや、出せる、けど?」
困惑しながら彼女はカードを出す
『♣A』
「は、はぁ?思わせぶりなことしやがってよぉ!パス!」
「パ、パス」
全員汗をかき少し安堵した表情を見せる。
心臓がバクバクして止まらない。なんて発言をしてくれたんだ。
「パ...」
気づいてしまった。クロカさんが出したクラブのエース、ずっと誰もそれより上を出せていない。もしや、これより上を出せるのは想定済み?まさかな...
「パス」
今回ははっきりをパスと言い切れた。
「すまないな、命がかかってるんだ。例えあんたらが初心者だろうと手加減できない」
『♥2』
『♥A』
「お、おい!待てお前ェ!」
「すまないな」
『♠8♣8』
8切り...
『♠2♦2』
もう全員呆然と見ているしかできない。
「あ、嗚呼」
「あがり、だ」
『♠5』
『大富豪』
彼がカードを置いた瞬間...中心に大きく大富豪と書かれた文字が現れた。そうか、彼は最初にあがったんだ。うんうん。手札が強すぎる。頭がおかしい。おかしい...おかしい。おかしいおかしいおかしいおかしい。あはは。
どうも。新人のSper_genoです。
昔、あるゲームのユーザー名を付けたときにSuperを誤字したことと、genocideを組み合わせたことからこの名前になっています。
これ以降は、エピソードが一区切りついてから、後書きを書こうと思います。それではまた次の機会に。