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わたくし、意外と気が短かったみたいです!


「案内終わりました〜!」


「お帰りなさい、アル君、新人君。

じゃあアル君は一旦仕事に戻って下さい。新人君は、室長の指示に従うように」


「へ〜い、じゃ、新人ちゃん。頑張ってね。」


そう言ってアル先輩は書類がうず高く積まれた机にと戻っていった。さっき会ったサイモン先輩も仕事に取り掛かっている。…というより、この『魔法の劇薬』、どうすれば良いんだろう?


「新人さん、こちらに」


どうしたものかと考えあぐねていると、ジルヴェルト様から声がかかった。箱を持ったまま、近づいていくと、彼は何も言わずに箱から4、5本抜き出すと、そのまま一本、緑のドロドロとした液体を飲み干した。……うっわ〜、身体に悪そうー、てかチオビタとかより不味そう。…やだなぁ…これ飲むのは。


「先に言っておきますが、貴方は新人です。ですから今の貴方に出来る仕事は此処にはありませんよ」


・・・what?

もしかして、私、は・ぶ・ら・れ・て・る?


いやいやいやいや、初っ端からそれはなくない?!


前世の悪徳非道な会社でも初日から用無し宣言されることなかったよ?それどころか馬鹿みたいに雑用申しつけられたり難癖つけられたり、使い潰されたんだよ?!


いや、どっちも酷いけどさ…

使わずに不良品扱いはなくない?ねぇ?

私あなたは真面な上司と思ってましたよ?てか思わせて下さいよ!!せっかく男装までして就いた仕事なんですから!


「あの…それはどういう意味でしょうか?わた…、俺はこの場で働いてはいけない、という意味でしょうか?」


まずっ!!今の私、男でした……

男なら、一応一人称は俺、だよね?


っていうか、もしかして女ってバレたからこんな扱いなのかな?そうなのかな?


だとしても、男女差別酷くない?!

女でも仕事できるよ?

前世30年間の精神年齢に加えて、この世界の学術院、これでも主席だったんだよ?!

頭、悪くないよ〜?


「お好きな様に考えて下さい。ですが、少なくとも今この時期に貴方に統括部の仕事を一から教えてあげられるような方はいらっしゃらない、という意味です。」


ピクって私のこめかみの辺りが軽く動いたのを感じる。だってムカつくじゃん?こんなに遠回しでいながら傷口抉るような嫌味吐くんだよこの人。それこそ、息をするみたいにサラッとさ?!ムッチャイラつく〜!!


しかも一切こっち見ないし!!


ていうか、薬受け取ったなら、礼くらい言えよ!!


「では、俺は何をしていろと?」


「何も。休憩するなり、茶会に行くなりお好きにされては?あぁ、そうそう。統括部の物品や書類を動かす際には必ず私の許可を取るように。話は以上です」


うっわ〜。完全に部外者扱いだよ。いらないもの扱いだよ。マジで苛つく、コイツ、、、、


ハカバニウメテサシアゲヨウカシラ?


わたくし、こう見えて不遜な態度には行動でお返しするのが流儀ですの。えぇ、勿論、殴る蹴るなどという幼稚なことは致しませんわ。圧倒的な行動力と前世仕込みのスキルを用いて、鼻持ちならない殿方のプライドと見栄をバキバキに折って差し上げるだけですの。


わたくし、これでも淑女ですから。


「承りました。それでは勝手にさせて頂きます!」


私はとりあえず、箱に入っている重たい物体達を片付けるために、書類で埋もれている先輩方の机に五本ずつ薬瓶をおいていった。余った奴は知らない。置いておけば勝手に飲むだろう。


「……何をされているのです?」


ハイリス先輩が目の奥を丸めながらそう言ってくる。


「はい!途中で呼びつけられても面倒ですので先にお渡ししておこうかと思いまして!!余計なことでしたか?」


「いえ、…助かりました。丁度飲まねばやってられないところでしたので」


「それは良かったです!それとジルヴェルト様、処理済みの書類を仕分ける権利と、皆様がお使いになられてお戻しになられていない書籍を整理する権利を下さいませ!」


満面の笑顔を意識しながらくジルヴェルト様に食い気味にそう言うと、彼はようやく書類から目をあげて私の方を見た。


「……許可します。ではついでに、後でリストをお渡しするのでその分の書籍をこちらに運んできて下さい」


そう言った彼の頬が、僅かながらに緩んだように見えたのは、気のせいなのでしょうか…


少しだけジルヴェルト様の雰囲気が、柔らかくなったような気がします!


だからといってさっきの嫌味は許す気ないですけど!!


「承知しました!書類を仕分けた後、行わせて頂きます!」


「新人ちゃーん、こっち終わったから持ってって良いよ〜。」


「新人、こっちも溜まってる、早く持ってけ」


「……こちらは処理済みだ。印のあるものは別にしておけ」


「はい!畏まりました!」


父様、母様。

わたくし、もしかしたら室長に嫌われたのかもしれません!だけれど、わたくし、決して負けませんわ!


どんなに邪魔をされようと、どんなに用無し扱いされようと、耐えて耐えて耐えまくり、いつか室長にギャフンと言わせてやるのです!


わたくし、労働は大好きですわ!!

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