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わたくし、治癒魔法が意外と役に立つ様です!


「…よしっ、次の場所行こうか。」


言われた通り、30分後に先輩を起こすと、最初はまだふわふわとした感じだったけれど、食堂の隅に置いてある、『魔法の劇薬』なる小瓶が入った箱を持ち上げると、私に押し付けてきた。分量的には、チオビタぐらいで、大体一箱に50本くらい入っている。


「先輩…これ、何ですか?」


「んーっと、君がこれからお世話になるやつ。多分先輩方もそろそろ限界だから、持ってかないとね。」


…見るからに身体に悪そうな液体なんですけど。本当に飲んで大丈夫なのかなぁ…


「さて、次に紹介するのは、我ら多忙な統括部、文官達の味方、仮眠室だよ〜」


先輩がそう言って指し示した場所は、先ほどの食堂とほとんど変わらない広さで、長椅子が所狭しと並べられており、奥の方に二つほどしっかりとした天幕付きのベッドが置いてある。


現時点で空いているのは、大体4つくらいだろうか…


「この時期は、法案の可決とか、新人育成とか、あとは皇族、上位貴族の盛大なパーティーがあるからどの部署も忙しくて…。おかげさまでこの有様なんだ」


皆様、だいぶお疲れのご様子で…

ご愁傷様です。


アル先輩は、長椅子の細い隙間を通り、ある一つの長椅子の前で立ち止まった。


「サイモン、起きろ。もう十分休んだだろ?」


サイモンと呼ばれたその人は、一瞬だけもぞりと動いたけれど、寝返りを打って無視するかのようにまた寝入り始めた。


するとアル先輩は、私の持ってる箱から瓶を取り出し、コルク栓を抜くと、サイモンさんの口にぶっ刺した。


その瞬間、サイモンさんはガバっとでも言えそうなほど、勢いよく起き上がって、口元を抑えている。


やはり、あれは飲んだらいけないものなのでは?


「……おまえ、最悪」


「目が覚めたようで良かったよ〜♩サイモン、こっちが新しく入ったリンデル君。」


「はい。リンデルと言います。宜しくお願いします!」


「んっ、…了解……。はぁ、仕事戻るか……」


サイモンさんは目の下にのっぺりと黒い隈をつけたまま、立ち上がった。だが、瞳の奥がフラフラしていてどこか危なっかしい…


「あの!サイモン先輩。少し目を瞑って下さい」


「……なんで?」


「良いですから!早く!」


サイモン先輩は渋々とでも言うように目を瞑ってくれた。私は手を翳して、魔力を集中させる。


私が使えるのは光の属性。それも非戦闘向けの治癒魔法だけだ。正直、この世界ではポーションが発達しているから、よっぽど力が強くない限り、治癒魔法が重宝されることはない。呪いが解けたり、分断された足をくっつけるとか、そのレベルなら話は別だけど。


私はもちろん、並の力しか使えない。

だけど、ポーションの使いすぎよりかはマシだよね?


サイモン先輩は僅かながらに口元に笑みを浮かべた。


「…助かる。だいぶ楽になった」


「お役に立てたなら良かったです。」


「え〜!?いいなぁ〜、俺にもしてくれない?」


「はい、勿論、良いですよ。」


そう言ってアル先輩にも治癒魔法をかけると、見るからにリラックスされた表情を浮かべていた。


「ん〜っ!!これ、良いね〜。頭が軽くなる気がする」


どうやら、簡単な治癒魔法は意外と文官達には、好評なのかもしれません!これはお役に立てるチャンスになりそう。


「アル、そろそろ戻ろう。書類が溜まる」


そう言ってそそくさと歩き出したサイモン先輩だけど、何か思い出したように振り返った。


「アル、あれのこと、話した?」


「んー?何のこと〜?」


アル先輩はニヨニヨとした笑みで質問に答える。

サイモン先輩は一瞬眉を顰めたけれど、私に目線を合わせると哀れみの目を向けた。


「……三日間、頑張って」


「えっ??」


サイモン先輩はそれっきり振り返らずに行ってしまった。


「あらら、…やけに優しいじゃん、珍し〜!!」


「あの、アル先輩、三日間って何のことです?」


「それは、 ひ ♡ み ♡つ!!」


「ちょっ!アル先輩ー!!」


アル先輩はスキップ混じりで先へと行ってしまった。


三日間って何のことだろう?

もしかして新人への選別、的な?


とにかく、頑張ろ………


父様、母様。

とりあえず、何とか頑張ってみますね。

だってわたし、自由が欲しいのですから!!





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