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わたくし、意外とこの部署好きかもしれません!


「新人ちゃん、さっきはごめんね〜。ちょっと寝不足でさ?……統括部に選ばれてがっかりした?」


アル先輩は気遣うようにそう問いかけてきた。

確かに、統括部で名前を呼ばれた時の哀れみの視線は凄かったけれど、元社畜の私からすれば、逆に働きやすそうな良い職場だ。上司もそっけないけれど、真面目そうだし、手柄を横取りなんてしそうでもないし。何よりちゃんと働きを評価してくれそうな方々だ。ならば働く価値は十分にある、いや、ありすぎる!!


「いえ、皆様優しそうですし、何よりやり甲斐がありそうです。」


「強いね〜。君は。俺は、何度も逃げ出しかけてその度にハイリス先輩に連れ戻されたのに?」


「ハイリス先輩にですか?」


「うん。…君はようやく来たまともな戦力だ。逃げられると思うなよ?……なんて言われたんだよ?逃げれないっていうより、逃す気ないよねー」


うっわ〜。

なら、私が入った時のあの視線ってそういう見定めもあった感じ?確かにあんな貴族達がまた入ってきたらたまんないもんね〜。っていうか、あいつらは何様なんだろう?みんなが働いてる中、茶会だなんて…

いくら、ジルヴェルト様に提案されても、断って仕事手伝うのが普通だろうに…


「あの、さっきの方々は?」


私がそう聞くと、アル先輩は、頭の後ろあたりをかきながら、眉を顰めた。


「あぁ、あれね。…説明しとくべきだよね。一旦食堂に行こうか…」


そう言ったアル先輩は、食堂、と書かれた場所の扉を開けて中へと入っていった。ついていくと、そこには前世のフードコートを3段階くらい高級にした感じの内装が待ち構えていた。


もちろん、食堂にはこちらの貴族が食べるようなものや、前世の食堂に似通ったメニューが多いけれど、どちらかと言うと、みんなは軽食みたいなすぐに食べれそうなメニューを買ってそのままどこかに移動していた。ゆっくり座っている奴等が、大抵時間のかかる貴族系のメニューを食べている。…何だか、闇が深そうな光景だ。


「でね、さっきの話だけど、あまり大きな声じゃ言えないから内密にしてね」


アル先輩がそう言いながら話してくれたのは、統括部の派閥のようなものだった。


何でも、ジルヴェルト様を室長とした統括部は、テストを合格した実務派と、貴族の名を利用した名目派で分かれているらしい。名目派が一概に悪いわけではないけれど、基本的に実務をするのはテストに合格した人達で、名目派でやり手な方はほぼいないのだとか。


その上、統括部にはエリート文官、宰相のお膝元からこぼれ落ちたどうしようもない貴族達が天下りとして左遷されることが多いらしく、禄に仕事ができない彼らに不満を募らせたアル先輩は、以前ジルヴェルト様に抗議したらしいのだが、その方曰く、


『仕事ができないならいないのと変わらないでしょう?ならば、せいぜい邪魔にならないように遠ざけるだけです。そんなことに気を取られるのは時間の無駄ですよ?』


そう言って、書類運搬だけさせてあとは放逐しているらしい。


「まぁ、俺たちもあんな奴らと仕事したくはないから、ちょうどいいんだけどね。その分一人当たりの仕事が増えるのが難点なんだよな〜」


アル先輩はそう言いながら苦い笑いを浮かべた。


「アル先輩は、転部しようとは思われなかったんですか?」


文官の配属は一応決められてはいるが、転属先の室長の許可と、所属している室長の許可があれば、転属することは可能だ。


ジルヴェルト様のような方なら、あっさりと承認しそうだけど…


「そりゃ、思ったさ。だけど、俺よりもずっと頑張ってる人からさ、あんな貴族達よりかは目をかけられてると思うと、何だかまだ続けたくなるんだよな〜。」


アル先輩は、しみじみとした声でそう呟き、私と視線が合うとニッコリと微笑んだ。


「直ぐにわかるさ。あの人は、厳しいし、一見人に興味は無さそうだけど、ちゃんと見てくれてる人だ。部署としては外れだけど、上司としては最高だと思うよ」


この人、きっとこの仕事が、あの統括部のことが大好きなんだ。忙しくてもやり続けたいと思うくらいには。


私も早く、この人達の仲間に…

認めてもらえるようになりたいなぁ…


「って訳で、俺30分寝たいから、時間経ったら起こして〜」


「はい、わかりま……って、寝ちゃうんですか?あの、先輩?」


そう問いかけるも、先輩はすでに夢の中。

こりゃ、時間になるまで寝かせるしかないだろう。


父様、母様。

この部署、キャラが濃ゆいだけで、案外、居心地のいい場所かもしれません!お二人の名に恥じぬよう、精一杯働いてまいりますね!



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