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わたくし、意外と男装好きかもしれません!


「リーシア、良いね?君が女性だとバレたら、文官として働くことはそれで終わりだ。分かったね?」


「はい、わかりました!お父様」


「くれぐれも身体に気をつけて。男装しているからといって淑女にあるまじきことはしてはなりませんよ?良いですね?」


「はい、お母様!精一杯働いて参りますわ!!」


-----------


意気揚々と朝、心配の中見送られた私ですが、…


男装って思っていたより楽で簡単かもしれません!!


「これを持って、文官、及び騎士、魔法師、任命式を終了する。この国のため、貴殿らが精一杯その力を振るうことを期待している!!」


国王陛下の力強い一声に、騎士は剣を掲げて誓いをたて、文官は最敬意を示す礼をする。


国王陛下が退室された後は騎士、魔法師が退出し、文官は、宰相により、配属先の部署を言い渡される。


この国の内政は主に七つの部署から成り立っている。

人事を司る人事部。

財政を司る財務部。

軍隊を統帥する兵部。

教育を司る礼調部。

環境を整える改街部。

司法を司る司法部。

そして其れ等重要案件を全て預かり、宰相率いるエリート文官という名目だが、実際は上がってきた案件を論議するだけの通称、評議員に内容を取りまとめて奏上するのが統括部。


ちなみに、この統括部が一番のブラック企業というのが専らな噂だ。そこに配属されるものは、通称、眠れぬ文官と言われ、憐れみの眼差しが送られる。


わたくしですか?

わたくしが配属されたのは勿論…


「失礼します。本日よりこちらに配属されましたリンデルと申します。宜しくお願いします。」


私の挨拶と共に、疲れ切った顔の大人達が、一斉にこちらを向いた。そして、最奥に座っていた方が立ち上がるなり満面の笑みを浮かべられた。


「ようこそ、統括部へ。見ての通り、ここは、根性のある方、もしくはよっぽど使えない方しか仕事をすることができませんが、貴方はどちらを希望されますか?」


なんなのだろう…この嫌な言い回しは。

見る限り、よっぽど使えない方なんてこの中にはいなさそうなものだけれど…


「ジルヴェルト、昼休憩から戻った。」


私の後ろから五人くらいいかにも貴族らしい人達がざわざわ話しながらやってきた。ジルヴェルトと呼ばれたここの責任者であろう方は、笑みを崩さないまま、指示を飛ばす。


「おや、お早いお帰りでしたね。では、溜まった書類を各部署に届けて下さい。それが済めばまた茶会でも何でもなさって下さって構いませんよ?3時ごろに戻って下されば構いませんので…」


「承知した。眠れぬ部署と聞いていたが、仕事で楽で助かる。あぁ、新人か。我々の分まで頑張りたまえ」


私と目が合うなり、そう言って足取り軽く出ていく彼らに部屋中から殺気が溢れ出るのを感じた。そういう私も、拳でぶん殴りたいくらいにはイラついたけど。


「良いのですか?あのようなままで…」


主語を言わぬままそう言ってみたが、それだけでも十分意味は伝わったらしく、ため息をたっぷりと溢していらっしゃった。


「良いのですよ。逆に仕事をされる方が害悪ですので…。それで、どちらがよろしいか返事を聞いても?」


こくりと傾けられた仕草は可愛く見えて、その実、冷たいまでの圧力しか感じない。目の下の隈や、青白い顔がそれに拍車をかけているのかもしれないが…


代弁するならば、

さっさと決めろ、新人。こっちも暇じゃない。

ってところだろうか。


「根性はあると思いますので。ご指導のほど、お願い致します」


そう言うと、ジルヴェルト様は直ぐに席にお座りになって、目線を書類から逸らさないまま指示を出し始めた。


「私は室長のジルヴェルト。呼び名は好きなように。貴方の教育は…アルに頼みましょう。貴方が戦力になることを期待します」


その言葉と共に、アルという名であろう物腰が柔らかそうな男性が腰を上げた。この中では若い方だろう。


「やぁ、新人くん。私の名はアルフレッド。アルとでも読んでくれ。こんなむさくるしくて過労死まっしぐらな場所だけれど、よろしく頼むよ〜」


「はい。これから宜しくお願いします!アル先輩」


そう言うと、アル先輩は喜色満面の笑みを浮かべ、私の手を取ってブンブンと振り回した。


「うっわ〜、こんな良い子が部下になってくれて良かったー!ここだと俺はまだ若造だから肩身も狭かったし〜!ほんとありがとう〜」


大丈夫、なのだろうか?

何だか前世の、ナチュラルハイに似ているんだが…


「アル、悪いことは言わないから一旦、休憩がてらに中を案内してきなさい。」


「えぇ〜?何でですか?ハイリス先輩〜、俺まだまだ大丈夫ですよ〜?」


「大丈夫じゃないやつは皆んなそういうんだ。ごめんね、リンデル君、いつもはもっと真面目なやつだから」


「そうそう、この時期くっそ忙しくてこうなってるだけだから…」


「……君もいつか、こうなる。今のうちに人生を謳歌したまえ」


ちなみに皆様、一切書類から目を逸らさず、手も止まっていない。


この感じ、前世の職場に少し似てるかも…

忙しい故の、結束感、みたいな?


「分かりました!戦力になれるように頑張りますね!」


「新人ちゃん、行くよ〜!」


「はい!アル先輩」


私の文官生活。部署は地獄ですが、同僚は面白く、優しい人たちみたいです!


レッツゴー!社畜…いえ、輝かしい自由な毎日へ。



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