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彼女はチート!ー白銀の逢魔街綺譚ー  作者: ふみんのゆめ
第3部 彼女がチート篇
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第2章:苦心の逃避行ー004ー

 信じるしかなかった。

 ちっと舌打ちする瑚華(こなは)は暗い廊下の角で身を潜めていた。


「まったく〜、この時間、人海戦術には敵わないわね」


 背後に控えるマテオたちも大小の差はあれ焦燥を湛えていた。


 逢魔街(おうまがい)において逢魔ヶ刻(おうまがとき)は、通信機能を初めとするさまざまなブラックアウトを起こす。他にも原因不明な事象が多々あり、しかも法律は不適用とされる時間帯だった。

 十五時から十九時の間は『夕刻の異界』として扱われていた。


 情報網がない中で、我が身は自分で守るしかない。

 機器による位置情報の取得が叶わない状況下では、数がものを言う。

 変身能力『鬼』の発祥地であり、同能力者が集う地である『東』はここぞとばかりに送り込んで来た。謀略によってウォーカー一族といった邪魔な勢力を逢魔街から追い出したが、一時的なものでしかないことは重々承知しているようだ。

 短期間勝負と見ての、街中に蔓延(はびこ)る鬼の追手だ。


 病院までならともかく、瑚華が秘かに用意した病室まで嗅ぎつけられた。


「さて、どうしましょ」


 軽い口調だが右手を頬に当てた格好が瑚華の苦境を物語っている。

 センセェ、と聡美(さとみ)に肩を借りているマテオが呼ぶ。

 ん? と振り返った瑚華へ提案する。


「僕が囮になります」


 途端に瑚華は渋面となった。


「あんた、なに言ってんの。そんな身体で」

「大丈夫です。発現は厳しいですけど、駆けるくらいは出来ます」

「走るのだって、どれほど出来るか解らないじゃない」

「でもセンセェには鬼の検体して欲しいし、こいつらも逃してやりたいです」


 そう言ってマテオが指差すは、流花(るか)が胸に抱く円筒ケースだ。未だ回復の兆しが見えない(かえで)の半分しかない顔だった。


 はぁー、と息を吐いてから瑚華は「ずるいわね」と一言だけ洩らした。


 笑みが溢れたマテオが借りていた肩から離れ一人で立った際だ。


「あたしも行きます。いいですか」


 肩を貸していたツインテールの看護師が申し出てきた。

 慌てたのはマテオだ。


「ダメですよ、照井(てるい)さん。危なすぎます」

「マテオくん、甘いっ。キミ独りでは囮だって早く気付かれるだろうし、下手すれば追ってこないかもよ」

「そ、それはそうかもしれないですけど……」


 聡美の言う通りではあるが、マテオは決断しかねた。

 とはいえ、ぐずぐずはしていられない。

 マテオは考えすぎで汗が浮かびそうになった。

 そこへ、だ。


 うっふっふっふー、と不気味な笑いが起きた。

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