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多分……、宇宙もの……。  作者: わだつみ
89/94

87 エルフさんは麺喰い

 結局この日は、出発出来なかった。それはエルフ達のコーディネートが終わらなかったからだ。


 なかなか準備の終わらないエルフたを待っていると腹が減ったので、料理していると匂いを嗅ぎ付けたエルフ達がワラワラとやってきたので聞いてみた。


「で、何でそんなに時間かかってんだ」


「アスピヴァーラから持って来た私服も着て行きたいのだが、デザインが違い過ぎて組み合わせが難しいのだ」


 当たり前のように俺の作った料理をモグモグと食べながら言うクリスティーナに、そんなモン前から用意しとけや! と思うが、そんな事は言わない。そんな事を女性に言えば、必ず喧嘩になるからだ。


 その代わりに……


「お前達は何を着ても似合うんだから、そんなに悩まなくても適当に決めても大丈夫だよ」

 俺の言葉に満面の笑みを浮かべるエルフ達。艶やかな花が咲き乱れている。


「だが、行動開始時刻に間に合わないって軍人としてどうよ」

 続いた言葉に項垂れ、とてもガックリとする。普段はダメダメな事が多いが、軍人としての矜持が高いので計画された事などはきっちり守るんだけどね。


「とりあえず、今日の出発は取りやめだ。明日の18時に変更するから、それまでに準備を終えておくように」


「「「了解」」」


 ふぅ〜、取り敢えず、上手く収まった。実は、ホテルの予約を取るのを忘れていて、その事をさっき料理している時に思い出した。

 言い訳をするとエルフが、『護衛なのだから、全員同室でなければならない』と言い張ったのだが、東京都内に観光地にあるような温泉旅館など無い。

 温泉旅館なら大部屋一室四人宿泊とか出来るが、そんなもの無いのでホテルのスイートに四人で宿泊しようという事になった。

 スイートなら、慌てて予約しなくても空きがあるだうろから後でしようと思ってて忘れてた。


 都内なら何処でも良いと指定されてないので、これから日時変更するフリしてコッソリ予約を入れよう。



 翌日の17時45分、俺達はヴェネレ号でマリーナへ渡った。


 気合いの入ったエルフ達は17時前にはスタンバってたんだが、マリーナ職員に未だエルフ達の姿を見せたくなかったので、マリーナの営業時間が終了するまで急かすエルフ達を宥めすかして、この時間になった。

 それはマリーナ職員に『彼女達は、何時津久留島に渡ったの?』とツッコミを入れられたく無かったからだ。


 マリーナは無人でも船舶の出入りをちゃんと管理してるので、調べられバレてメンドーの事になるといけないからだ。


 で、漸くレヴォーグに乗って出発した俺達は、今山陽自動車道八幡PAでメシを食っている。出発早々に食事しているのは、勿論エルフ達が寄れと言ったからだ。

 何でも八幡PAでしか食べれない『せんじがらラーメン』を食べたいとかで……。


「明日、ラーメン二郎食べに行くんだろ。なのに今もラーメン食べるつもりか」

と言ってみたが、


「それはそれ、これはこれ」

との事。


 で、俺はカツカレーを、三人は『せんじがらラーメン大盛り』を食べている。


「拓留、そのカツカレーとやらは上手いのか? ズルズル、ズズー」


 ヴィーヴィが、せんじがらラーメンを食べながら物欲しそうな顔で尋ねてくるが、カレーなら作ったことあるから食べたことあるでしょ。


「うむ、カレーにフライをトッピングするのか。面白い発想だな。日本人は食の探求に貪欲なところが我々と似ているな。ズズーズル」


「ソーセージや目玉焼きも加えたりするみたいですよ。ズズルー」


「それは夢が広がる話だな。ズルズーズズルー」

 俺に問いかけながらも、俺の返答を待つ事もなくラーメンを啜りながら話を進めて行く。


 そして……、


「ヨシ中尉、チェイサーだ。カツカレー大盛り3つ!」


「了解であります。少佐」


 ビシッと命令を下すエリート少佐と命令を受諾する参謀中尉。内容がカレーじゃなきゃ、かっこいいのにね。それに、まだ食うのかと呆れもある。


 でも俺が口にしたのは、


「チェイサーって、日本じゃ強い酒に付いてくる水の事だよ」


「何を言っているんだ。カレーは飲み物じゃないか」


 なんか、変なオチが着いた。




「……そしたらボブが難しい顔して言うんだよ『生まれたばかりの僕の子が、ジョン、君に似てる』ってな。

 だから言ってやったのさ『それはボブの気のせいだ。だって俺は、ちゃんと避妊したぜ』ってな。Ahaaaa!」


「「「「…………」」」」

 これは、ハッタ特選のご自慢アメリカンジョークを聞かされた俺達の反応だ。



 食事を済ませて八幡PAを出発してから直ぐに、キットにジョブチェンジしたハッタから運転させろとの提案というか嘆願があった。以下のように。


「やぁ、マイケルドライブには良い夜ですね。明日に疲れを残すといけませんから、私が運転しましょうか。というよりかは運転させて下さい。久々にアクセル全開でぶっ飛ばしてレヴォーグの性能を堪能したいです」


「駄目に決まっているだろ。そんな事を言うヤツに命を預けられるか! 」


「何を言ってるんですか、せっかくレヴォーグを唯一無二なマシーンに仕上げたのに堪能しないなんて、勿体無いお化けが出ますよ」


「堪能し過ぎるからダメって言ってんの」

との言い争いがあった。


 で、なんやかんやあって安全運転をすると約束させてハッタに自動運転をさせていたら、小粋なアメリカンジョークを披露すると言い出した。しかも絶対に自信のある特選した中でも自慢のジョークだと言い切った。その結果、沈黙を招いた。

 そしてエルフ達のとても素朴な質問が、ハッタを追い詰める。


「すまないがハッタ殿。確認したいのだが、今の話ではボブの細君はボブとジョンの二人と楽しんだと云う事であろう。それの何が面白いのだ? 」


 なんというか、こうカルチャーギャップって凄いね。国民の大多数が女性のアスピヴァーラは、異性と婚姻を結べるのは極少数だから必然と同性婚となる。

 だからといって男性を嫌悪している訳でも無いので、好みの男性との関係を持つのは自然な事と捉えている。ただしエルフ達は、男の好み以前に男として求められる基準がメチャメチャ厳しいから、決してビッチ系女子ではない。

 そして浮気という概念が無いなので、好みの男性二人と関係を持った女性の話のどこが面白いのか理解出来きないようだ。


 ハッタもエルフ達に上手く説明できないようで、『いや、そういう事でなく……』とか『舞台は、アスピヴァーラではなく……』としどもどろになっている。

 まぁ笑い話で、真面目な顔して何が面白いのって聞かれたら辛いよね。



「どうやら、アメリカのジョークを持ち出した私の選択ミスでしたね。

なので、やはりここは日本の古典落語で、私のお笑いセンスの正しさを証明しましょう」


 ようやくエルフ達との双方納得しない会話が終わったと思ったら、未だやるんかい。


「では、『天狗裁き』の開演です〜。パチパチ〜。


 ある長屋に喜八とお咲という夫婦が住んでおりやした。子は無かったのてすが、気心の知れた仲の良い夫婦でしたが、この日は些細な事から大喧嘩になっちまいました。

 寝てる喜八の顔が、笑ったり怒ったり苦しんだりと百面相。心配になったお咲が、喜八を起こして『どんな夢を見たんだい?』と聞きますが、喜八は『夢なんか見てないやい』と答え大喧嘩になりました。

 すると長屋の隣に住む徳さんがやってきて話を聞くと『夫婦喧嘩も大概にしな。で、どんな夢を見たんだい?』

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

『儂は、蔵馬山の大天狗。人の世の事など知らぬ。知らぬが、話したいと言うのなら聞かぬでもない。で、どんな夢を見たんだ?』と興味津々で聞いてくるんで喜八は困っちまいました。

 仕方なく『夢なんて見ておりません』と正直にこたえましたが、大天狗が怒りだし雷をバリバリと喜八に浴びせます。

 ギャーアアと叫んでいる喜八に、どこからかお咲の声が聞こえてくるではないか。

『あんた、あんた、どうしたんだい。笑ったり、怒ったり、苦しんだりして。悪い夢でもみんだろ。で、どんな夢を見たんだい?』

 お後がよろしいようで」


 ハッタが自ら拍手して始まった落語だったが、案外というか以外というか面白かった。エルフ達も聴き入って、終わった瞬間拍手喝采だ。しかしハッタのヤツ、いつの間に落語を仕込んできたんだか。


「おお、人の好奇心と欲望を端的に表しつつ、笑いを齎すとはかなり高度な話術ではないか」


「円満な人間関係が、薄氷の上に成り立っていると分かりやすい話だぜ。だけど大天狗って何?」


「この話のは、前提として多くの知識を必要としますね。古典ということは、過去の市井の人々の教育がなされていたとの事実が伺えます。なかなか興味深い話でした」


 三者三様だけど、エルフ達は喜んでいるみたい。俺も落語は、滅多に聴く事が無いので初めて聴いた話だったけど、確かに面白かったしね。


「昨日マスターが百面相をしていたので、この話を思い出しました。ここは、是非私の話術を披露しなければと思いまして」

 ああ、昨日何か思いついたって顔した時か。何だコイツはって思ってたけど、落語の事なんか考えてたのか。


「ハッタ殿、ありがとうございます。とても面白かったです。是非、直接見たいんですが、何処へ行けば見れますか」


「東京ならば、浅草・新宿・池袋に寄席がありますよ。浅草寺に行くのなら、浅草演芸ホールが良いでしょ」


「「「おおー、ならば是非」」」


 なんか俺を抜きにして、予定が決まってしまった。確かに明後日は、浅草寺に行き、その後の事は未定なんだけどね。


 わちゃわちゃと何処へ行くか話し合っているエルフ達だが、原宿とか銀座へ連れて行けと言わないあたりをみると世論調査の一環のフリを続けるらしい。でも、一番に行きたい場所がラーメン二郎では駄目じゃないかと思う。


 そんな事をしている間にレヴォーグは、岡山JCTから岡山道を経由して中国自動車道へ入った。理由は、山陽自動車道は走行車が多い為だ。特に夜間は、トラックが多い。

 今は、ハッタが自動運転をしているのだが、他車から運転席が見えた時にハンドルを握ってないのはマズイだろうと握っている。だが、勝手に動くハンドルを握っているのも疲れてきた。

 それにハッタもトラックが、頻繁にウインカーも付けずに突然車線変更したり、時速90kmでサイドバイサイドで並走しデットヒートを繰り広げているので、トラックへ届かない苦情をグチグチを言っていて鬱陶しいからだ。

 その点、夜の中国自動車道車が少ないというかいない。前後を走る車を暫く見て無いし、対向車線も時々走って来るぐらいだ。


 快調に疾走するハッタに運転を全任せているのでする事も無く少し眠くなってきた。パーキングにでも寄って、ちょっと休憩でもしてリフレッシュでもしよう。


「少し眠くなったので、次のパーキングに寄ってくれ。トイレにでも行ってくる」


「了解です。もう4kmで勝央SAが在ります。そこへ寄りましょう」


 もう200km以上走っている。時間はもう直ぐ22時になるが、マリーナを出て途中食事を取ったし、山陽自動車道ではペースが遅かったわりには順調といって良いだろう。


 勝央SAに到着すると、俺はトイレにエルフ達は売店を見て来ると言うので別行動なんだが、大丈夫だろうかと一抹の不安がよぎる。売店に行くぐらいで揉め事を起こすとは思えないが、エルフ達はとにかく目を引く。


 練りに練ったコーディネートもなかなのもので、クリスティーナは薄緑色のシースルーシャツにベージュのキャミ、白いロングなサーキュラスカート、ベージュのパンプスの清楚なお嬢様スタイル。

 エルヴィは、レモンイエローのシースルーシャツに赤いチューブトップ、デニムのホットパンツ、ナイキのエアフォースワン。ボーイッシュコーデにエロカワ要素を取り入れている。

 ヴィーヴィはと言うと、黒のシースルーシャツに白のヘソ出しTシャツ、タータンチェック柄のモスグリーンなプリーツミニスカート。黒のショートブーツ。なんとなくガーリーな感じだが、ヴィーヴィがお色気キャラなので非常にアンバランス。でもそれが良い!


 そして、三人御揃いの耳まで隠れる大きな帽子を被っている。


 アスピヴァーラから持って来た服はどれ? と聞くとシースルーのシャツだそうだ。日本にはない化繊だとかで、シルクのような光沢があるが丈夫で傷みにくいらしい。


 三人とも、それぞれ似合っており表参道辺りを歩いていたら、俺が駆け出しの頃にやっていたストリートスナップで撮影をお願いしていただろう。そんな三人が、夜の人気のないSAに出現。流石に無人では無いので、居合わせた人達に注目を浴びそう。


 しかし俺の膀胱がスッキリさせろと訴えているので、トイレへ急行する事に。そして、スッキリ後に売店を覗きに行くと、そこには牛骨ラーメンを食べている三人が居た。


 エルフ達は栄一さんを持ち合わせていないので、俺がエルヴィに約二個小隊分の栄一さんを渡して『好きに使って良い』と言ってあるのだが、コイツらが使ったのは『せんじがらラーメン大盛り』『カツカレー大盛り』『牛骨ラーメン』と食べるものばかりだよ。まぁ、好きに使っているって事か……。


 牛骨ラーメンを豪快に食べているエルフ達に近づいていくと、フードコートに居た数人の客がチラチラと見ているのに気付くが、今更の事か……。絡まれていない事を良しとしよう。


「おお、拓留も食べるか? 」


「いらねぇーよ。さっきカレー食ったばっかりだ」


 ご機嫌なエルフから、ご機嫌な言葉が掛かるが、俺はマジでお腹いっぱいなので拒否する。その様子をチラチラと見ていた数人から舌打ちが聞こえるが、そんなに良いモノじゃないよ。




「拓留は眠いんだろ。私が運転席に座っているから睡眠を取るといい」


 お腹いっぱいでご機嫌なクリスティーナから、レヴォーグへ戻る途中に有り難い申し出。遠慮なく寝かせてもらおうと助手席に乗り込もうとすると。


「拓留、後部座席にくるんだぜ。膝枕をしてやるんだぜ」


 とのお誘いがヴィーヴィから。更にレヴォーグのラゲッジルームから、クッションを数個取り出して後部座席をフラットにしてくれた。津久留島から何の為にクッションを持ち出しているんだろうと思っていたが、この為だったのね。


 ご厚意を素直に受けて、靴を脱ぎ後部座席でプリーツミニスカートからハミ出した太腿を枕に寝転がると、ヴィーヴィが何かゴソゴソとやっている。


「どうした、重いか?」


「いや、ブラを外しているだけだぜ。拓留は、そっちの方が好きだろ」


 はい、大好きです。なんとヴィーヴィが辛いのかなって思って気を使ったら、それを超えるエロイ気遣いをしてくれました!

 ヴィーヴィのハリのある太腿と柔らかなオッパイにサンドされた夢心地な俺は、ほぼ一瞬で夢の中の住人に成りました。




「マスター、朝ですよ、起きて下さい。マスター、起きて下さい、到着しますよ」


 気持ち良く寝ているとハッタの起こす声が聞こえる。ああ、到着したかと思い目を開けると、そこには褐色の肌とヘソだしTシャツの間から見えるヴィーヴィの素晴らしい……。


「知っているオッパイだ」


「マスター、そんな雑なパクリなんてしてないで起きて下さい。もう直ぐ海老名SAに到着しますよ」


 ああ、そうね。と思いヴィーヴィの胸に二度ばかし顔を押し付けてから体を起こすとエルフ達は三人とも熟睡状態だった。ただクリスティーナは、右手をハンカチでハンドルに縛った状態で寝ている。

 ハッタが何も言わないから邪魔にはならなかったんだろうけど、運転席に座る時に『眠くなったら、交代しろよ』と言う俺に『ふっ、徹夜ぐらいなんともない。そんなヤワな鍛え方はしておらん』と言っていたヤツは誰だ。お前だよクリスティーナ。


「ハッタ、駐車場の車の少ない場所に止めてくれ。三人を起こすから」


 俺の指示に従ってレヴォーグを止めくくれたので、そこでエルフ達を起こす。流石に運転席に座っている者を起こすのを見られたくないからね。

 その後フードコートに入り、エルフ達は、『えびしおらーめん」を、俺は缶コーヒーとサンドイッチで食事を済ませている。


「この惑星の住人は、朝は少食だ。ただ、どれの料理も素晴らしい」


 サンドイッチを食べている俺を見てエルヴィが呟いている。調査団団員に、このネタを教えたのはエルヴィ?



 朝食を終えた後は、珍しくナチュラルメイクをしているエルフ達が化粧直しを済ませたので海老名SAを出発する。

ここからは、ハッタに任せずに俺の運転で走る。俺の方が、渋滞を避ける道を知っているからね。



 海老名SAを出発して約一時間後、俺達は稲城市に在る墓地に来ていた。そう、オッパイスキー隊長が他界してから一年が経ったからだ。

 親族でもない俺は一周忌法要に呼ばれる訳も無く、墓地を知らなかったのでモンデール君に連絡を取って調べてもらった。

 墓地に到着してからは、作務衣を着た方が居たので墓の位置を教えてもらい、墓前で手を合わせていた。


「随分と長い間、祈ってますね」


「ああ、とても大切な友人だったからな」


 エルフ達も一緒に拝んでいたのだが、何時までも拝んでいる俺にエルヴィがどうかしたのかと声を掛けてきた。

 この時俺は、拝みながらも先程作務衣姿の人が『先日も男性が三人程来られましたよ』の言葉を反芻していた。

 多分あの三人だろうから、マスコミ対策なんかに三人を巻き込むのはどうかな、と。



 墓地を出た俺達は、今回の世論調査観光旅行の第一目的であるラーメン二郎へ向かっている。


 多摩川の川沿いを走る多摩川沿線道路に出て、快調ににレヴォーグを走らせる。この多摩川沿線道路は、それなりに車が走っているが比較的に信号が少ないので川崎にしてはスムーズに流れる。

 世田谷通りとの交差点である多摩水道橋交差点をスムーズに通り過ぎ、左手の土手を眺めながら二子橋に向かって走る。そして二子橋交差点を左折して246に入り二子橋を渡り、二子玉川の賑わいを一年ぶりと懐かしく思いながら瀬田交差点を右折して環八の渋滞に少し巻き込まれる。

 そして上野毛駅前交差点を左折して、みずほ銀行側の上野毛交番裏を左折すると、よいよ目的地のラーメン二郎上野毛店だ。

 現時刻は10時40分ぐらいなのに店の前に三人並んでいる。まぁ、いつもの事だけどね。


「済まないが、エルヴィとヴィーヴィは並んでてくれ。他の人が着たら、直ぐにあと二人来ますって言ってくれ。車を止めたらすぐに来るから」


 そう言って二人を送りだしレヴォーグを走り出そうとするとクリスティーナが、


「そこに駐車場があるではないか」

と店の隣のコインパーキングを指差すが、


「そこは、みずほ銀行と連携していて、みずほ銀行を利用しないと高いんだよ。昔、知らなくてラーメンと同じぐらい金を払った事が有るから、なんとなくヤダ」


と狭量な事を言って、良く利用していた近くのコインパーキングへ止めて店へ向かう。


 店に着くと未だ開店しておらず並んでいる人が増えている。そして、エルヴィがチャラそうな男にやたらと話し掛けられている様子が見える。一方で、身長が180を超えるヴィーヴィには、誰も視線を合わせようとしない。頑張れニッポン男児、デッカイからって負けるな!

と心の中で応援するが、まぁ話し掛けても塩対応なんだけどね。


「お待たせエルヴィ・ヴィーヴィ」


「あっ、拓留。ここですよ」


 俺の声に明らかにホッとするエルヴィ。チッと舌打ちするチャラ男。なんか昨夜も舌打ちされたよね。本当にそんなに良いモノじゃないんだよ。



「三人は、大ぶた入りで良いよな」

と確認しながらも、返事が来る前に発券機で次々と購入していく俺。どうせ答えは決まっているんだから、サクサクといかなければ並んでいる人に悪い。因みに俺は、小ラーメン。


 Lの字型のカウンター席の左側、一番奥にエルヴィが入っていく。隣にクリスティーナ・俺・ヴィーヴィの順に水の入ったコップを持ち席に着く。


「「「麺固めでお願いします」」」


 下調べは出来ているようだ、とてもスムーズに。そう、まるで常連かの様にスムーズにオーダーしていくエルフ達。

 ただ両隣のヴィーヴィとクリスティーナが、やたらと姿勢を正し、背筋を伸ばして座っている。おまけに何やら緊張感まで伝わって来る。

 ラーメン食べるだけで、何そんなに緊張してるんだ? エルヴィは、変わらねぇぞ。


「どうした二人とも、そんなに緊張して。まるで、これから圧迫面接を受けるみたいだぞ」


 俺の軽口に二人は、生真面目な顔をして唇を耳元へ寄せてきる。


「あの店員二人は、従軍経験者だぜ。スキが無さすぎるんだぜ」


「ああ、その通りだ。角刈りの店員の眼つきは、歴戦の(つわもの)の眼だ。それに坊主頭の店員は、さり気なく周囲を監視して警戒している。曹長、何時でも行動できるようにしておけ」


「了解です。少佐」


 ラーメン屋に入って、なんて事を言ってんだコイツら。行動出るようにって、ここで暴れる心算か。


「落ち着け二人とも。あの二人は、確かに目つきが鋭いが、とても優しい人達だ。客に危害なんか加えないから、大人しくラーメンを喰え」


「いや、油断するな拓留。戦場では油断したものから死んでいくんだぞ」


「それは一度聞いた。で、ここはラーメン二郎で戦場じゃない。いや、ある意味戦場かもしれんが、お前たちの知っている戦場じゃない。大人しくしてろ」


「少佐、多分あの角刈りはスナイパーで坊主頭はスポッターですぜ。やたらと周囲の状況を確認して把握しようとしてますぜ。戦場で染み着いた習性は、簡単に抜けやしませんからね」


「いいから、落ち着け二人とも。もう直ぐラーメンがくる。大人しくラーメンを喰え。暴れるなよ」


 返事が無い。ただの死体のようだ。

って、だめだコイツら自分達の世界に入って俺の話を聞かない。日本にラーメン屋をやってるスナイパーなんているもんか。

 そんな感じでコソコソと三人が小声で話していると


「ニンニク入れますか? 」

との声が俺達に掛かる


「「「はい、全マシマシ。味カラメで」」」


普通に答えるんかい! まぁ……、暴れられるよりか良いかぁ……。


 全マシマシをお願いした時に『食べれるの? 』って顔をされたが、エルフ達が大人しくスープも残さず完食すると店内に居た俺以外が驚きの表情をしたことを、ここに記して於こう。



 完食後、レヴォーグで渋谷方面に向かって走っているのだが、元気いっぱいのエルフ達はアレヤコレヤと夕食の予定を話している。


「次は、やはり外苑前のホープ軒だぜ。拓留も美味しいって言っていたし」


「えっ、未だラーメン喰うの! 次は違うものにしようよ」


「何を言っている。この場に来なければ食せないラーメンとの一期一会の機会を逃せるものか。それとも旨いラーメンを私達には食べさせないつもりか」


「そうですよ。友好親善使節団が来たら、こんなに気軽に食べ歩き出来ないんですから、今の内に堪能しませんと」


といった感じでエルフ達三人に押し切られて、夕飯はホープ軒に行く事を了承させられました。お前ら、苗字を小池さんか小泉さんに変えろよな。


その後も車内では、


「やはり、二郎のスープはガツンとくる。他にはない味だ」


「あの濃いスープだからこそ、あの極太麺に良く絡むんだぜ」


「チャーシューは、モモ肉ですかね。私としてはバラ肉が良いんですが。まっ、ホープ軒はバラ肉みたいですし、そちらに期待しましょう」


 なんだか一端の食通評論家みたいな事を言っている。コイツら何で、ここまでラーメンに拘るんだろ。ただのラーメン好きでは説明がつかないよ。

 

「お前ら、何でそんなにラーメンに拘るんだ? 他にも美味し物が有るぞ」


「拓留のせいですよ。総旗艦フラデツ・クラーロヴェーでカップラーメンを食べさせてくれたでしょ。アスピヴァーラにも麺類は有りますが、今までにない麺類だったので報告書に記載したら、文化調査の一環で詳しく調べてこいとの命令を受けたんです。

だから、切っ掛けは拓留ですよ」


なんと、驚愕の真実が!


「そんな事があったのか……」


「まぁ、命令もあるがな。我々アスピヴァーラ人は、男性と麺類には少しばかりうるさいぞ。なにせメンクイだからな。アハハハハ」


と高らかに笑うクリスティーナ。なんか一日掛けてオチがついた。

御後が……、まだ宜しくないようで……。



そんなこんなで俺は、塩分の摂り過ぎを恐れていた。

ハッタ特選のご自慢アメリカンジョークは、昔何かに書いてあったのをパクリました。

何に書いてあったか覚えて無く、登場人物の名前も覚えていませんので適当に着けました。


誰が、元ネタを御存じの方は教えて下さい。

怒られそうなら、話しを変えますから。

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― 新着の感想 ―
ハンカチでハンドルに手を固定していたら、駐車場に停めるとき腕は大丈夫なのか気になった
何気に諭吉さんから栄一さんに代替わりしてるのが そこはかとなく哀愁を感じさせられたりしなかったり
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