71.お家へ帰ろう
「このように国民総生産に於いて一位の米国が、二位の中国の倍近くあり世界経済の中心である事は否定できません。しかしながら、近年の中国の経済発展手は著しく、日本に於いては輸出総額にて長年一位だった米国を抜いた事もあります。
但しGDPなどの発表された経済統計の信用度が怪しく、昨今の世界的なコロナ不況で製造業が危機的な状況に陥ったのを契機に外資の投資が激減し…………」
今俺は、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーの戦略会議室にてハッタが、連合から地球へ向かう調査団へミーティングと云う名の説明会をしているのを眺めている。説明を受けている調査団は、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーへ乗艦しておらず地球へ向かう調査船に乗っており、俺の目の前には調査団員120名分の簡易スクリーンが戦略会議室に所狭しと広がっている。
そう、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーは地球へ向かっているのである。大勢のお供を連れて……。
本議会で俺の演説が終わった後、ヘニッヒ議長に『中央銀河連合準参加見做し国ってどういう事』と尋ねると『ああ、五者会談では提案されなかったが、その方が物事が円滑に進むからな』と言ってニヤっと笑った。その姿は、どう見ても小学生にしか見えないのに内に秘めた芯の強さがが滲み出ていた。
これが約174兆の民を率いる男なのかと感心もするが、この男が日本人の知らぬ間に中央銀河連合準参加見做し国にしたと知ったら日本人は大騒ぎだな。そして、その姿を見て、また吃驚だな。
その後、俺はベジャルー滞在中も会談・面談・面会・訪問と馬車馬の如く働かされ、自由時間など無かった。
「大体にして、何でこんなに働かせられなきゃなんないのさー」
「それは、マタスーが良い顔しようと『スケジュールは、お任せしますよ』って言ったからですよ。
私は、『チエックしたほうが良いですよ』って言ったのに『メンドイ』って言ったのはマスターです」
「うっぐ」
と云う会話をハッタとしながら多方面に愛想を振り撒きちらして、八方美男子(自称)を発揮していた。そのお蔭で、ビタリ共和国の大使と歓楽街のエッチィーお店に行けなかったよ……。そう言えば、あの大使の名前なんて言ったけ?
そして、全ての予定をこなした頃には高天原へ帰還しなければならない時期になっていた。それでも色々な方々から滞在を伸ばすように要請されて、ハードスケジュールで疲れ果てている俺に『もう少し滞在日程を伸ばして、出来るだけ多くの人に会われた方が祖国の為になりますよ』と囁く連合職員さんがいたので数日伸ばしたのだが、『マスター、今から帰っても2月初旬に到着します。そろそろ高天原に戻って、確定申告の準備をしないとめんどくさい事になりますよ』と言われて帰還を決意した。
地球へ帰還すると伝えるとヘニッヒ議長に『はっは、はっは。税を徴収する部署は怖いですからな』と言って笑われてしまったが、事実なので致し方ない。
「銀河中央部へ来る時は、たった一隻で来たのに。帰る時は、300隻を超える艦隊かぁー」
「これこそ、当艦が正当に評価された結果ですよ。行きだって、マスターが『仰々しいのは嫌だ』って断らなければアスピヴァーラ国が艦隊を派遣してくれたんですよ。そうすれば、今の様に当艦を中心にして行軍して、当艦の威を知らしめる事が出来たのに!」
そう、ハッタが言ったように総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを中心に艦隊を組み地球へ向けて行軍しているのだが、随行艦からちょくちょく通信が入るので気が休まらない! 往路の様に単艦で行動していたほうが、気が楽だったよ。
さて、約360隻が総旗艦フラデツ・クラーロヴェーに随行しているのだが、全てが地球へ来るのではない。
先ず約120隻の分艦隊が中域部と辺境部の境、航路を中心とした周辺宙域の探査を行う。それは、移住可能で拠点設置可能な惑星や文明を持った人類が生存している惑星の調査だ。そして次に、連合が辺境部と呼称している宙域を、同じように約120隻の分艦隊で探索する。
どちらの分艦隊も探索範囲が広大な為、一度では完遂する事など出来ず。先ずは、拠点確保を最優先としているそうだ。
そして残りの約120隻で太陽系へ向かうのだが、高天原まで随行するのは調査団を乗せた船とモルダヴィア帝国から貰った工作艦である(名前はまだ無い)。その他の船は、木星で金属水素を補給する要塞の建設に向かうとの事。
2分艦隊の探索も木星での要塞建設も地球との……、いや日本との本格的な交流が始まったら必要になるモノなので、予め準備しているのである。いかに連合の本気度が判ると云うものだ。
因みに調査団を乗せている船は、高天原で調査団を下した後にスクラップ状態の工作艦ムレシュを曳航して木星まで行くとか。そして、工作艦ムレシュも要塞建設の材料にするとかなんとか。
そしてハッタは、調査団員達に先入観を植え付けない程度に地球の状況を説明している。それは、主に地球世界全般の経済と宗教や民族などの社会状況、それらに纏わる戦争の火種。
「ハッタお疲れさん。それにしても120人の調査員かぁ~。また大勢送り込んできたな」
ミーティングが終わり120人分の簡易スクリーンが消えて、戦略会議室に俺だけになったので声を掛けた。聞きたい事もあるしね。
因みに3エルフさんは、やる事が有るとか言って同席しませんでした。まぁ、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーの中だから危険は無いし問題ないからね。
「世界各国へ直接赴いて調査をするのですから、これでも少ないぐらいですよ。私は、最低でも千人単位で送り込んで来ると思ってました」
「そんなに来たら、高天原で滞在する場所が無いだろ」
「そうですね。出発する前に、バルトロメイとアレンカにドウアの指揮をさせて、大人数が滞在できる宿舎を作らせていますが、千人単位で来られては間に合いませんね」
「それで、降下した調査団の滞在費用を俺達が肩代わりすると言っていたが、具体的にはどうするんだ? 架空口座を120人分も作るのか?」
先程のミーティングでハッタが、世界各国の通貨など持っていない調査団に金銭は俺達が準備すると告げていた。金を都合するのは良い、俺も連合滞在時にお世話になったから持ちつ持たれつだ。
ただ、具体的にどうやって金を渡すかだ。調査団員達は、約2か月から3か月の間世界各国を隅々まで廻って状況調査すると言っていた。その間に必要な金を一括して渡すのか? 紙幣通貨の無い国からやって来た調査団員も、そんな大金を渡されても困るだろう。
「マフィアどもからお金を巻き上げた時に、ケイマン諸島に架空名義口座を10口ばかし作ったものがあります。各口座に1000万ドル、スイスの銀行のマイケル・イーストビレッジ口座から入金します。後は、調査団員から10人ばかり口座管理者を選出してもらって、自由に使ってもらいます。
合計一億ドルも有れば、数か月ですから十分でしょうし、足りなくなれば追加するので問題無しです」
「……ハッタ。お前、それが目的でマフィアから金を巻き上げたのか?」
「ええ、そうですよ。それがどうかしましたか?
もしも調査団が来てマスターの口座からお金を動かすと、そこから追跡されるじゃないですか。そうしたら、そこから調査団員が密入国して、秘密裏に調査していたと後々になって気付かれるかもしれませんからね」
しれっと……。とても、しれっと『どうかしましたか?』って言いよった。マフィアから、金を巻き上げた報告もしなかったくせに。
「どの時点で、連合の調査団が来ると予測していた?」
「マスターと出会って修復計画を始めた頃、つまり最初からですよ。ただ、連合の存在を知りませんでしたから、我々と接触したシュクヴォル王国が調査団を派遣すると思っていました。
何と言っても、日本にはオティーリエ王女が眠って居られますからね」
なんとも、まぁ~、そこまで考えていたのか。1700年も時間が有ったから、その時代に合わせて色々とシュミレーションしていたんだろうな。
でも、最初に話して於いてくれよ……。って、あの頃の俺に話しても無駄か、宇宙へ行けると燥いでいたもんな。
しかし、今の俺は一味違う。イロイロとエロエロな経験を……違う。エロエロな事をイロイロ経験して……違うぞ、エッチィー話をしたい訳じゃない。クッソー、ベジャルーでアシュール議員と知り合ってから、3エロフの夜の攻勢が激しいから、つい思考がそちらにイッテしまうよ。
ええーと、つまりは俺は連合の人々と触れ合って、一皮剥けたと声話大にして言いたい。だから、きちんと聞くべきは聞くのだ! それは……、
「他に報告していない事は無いか? 特に金銭関係で。確か株取引していただろ」
そう、金の話だ!
「株売買は短期間でしたから、マスターが融資してくれた金額を稼いだだけです。まぁ、荒稼ぎした後は、トヨタやキャノンなど製造業の日本企業株に買い替えて所有はしていますが、連合へ行っていたので売買はしていませんよ」
「どうして、日本企業株に? 不景気で苦しんでいる日本企業の株よりも、医療関係会社の方が良くないか?」
そう、世界的な不況で物が売れていないので、製造業はとても苦しんでいる。が、医療関係は、次の未知なるウイールスの襲来に備えてと、各国で莫大な投資が行われ研究施設などが次々に建てられている。
「そんなの決まっているじゃないですか。未知との遭遇をすれば、齎された新技術で一気にV字回復を見込める産業だからですよ。
そして我々は、高い確率で未知との遭遇が起きる事を知っていましたからね。フッ、フッ、フッ」
「フッ、フッ、フッ、じゃねぇーよ! 俺達、当事者なんだからインサイダーだって言掛りを付けられるぞ!」
「大丈夫ですよ、マスター。インサイダー取引は、企業内部情報を知っていたらアウトですが、私達は地球外部情報を知っていただけですから。
今後、色々と私達に言いがかりを付けて来る人が居るでしょうが、基本的に日本国法は大気圏から出たら適用外ですからね」
駄目だ、何を言っても通じない。確かに言っている事は正しいのかもしれない。世界中どの国の法も、異星人が存在することを前提に作られていない。なので、法の抜け道が沢山あるだろう。だからと言って、それを積極的に活用するとは相変わらずぶっ飛んでやがる。
「ケイマン諸島に架空名義口座の件に話を戻しますが、未だ一枚もキャッシュカードを発行していないんですよ。
発行手続きは済ませましたのですが、津久留島に送って貰うには時間が掛りますので、直接取りに行って貰う事にしました。
なので、調査団員は、纏めて首都ジョージタウンへ降下してもらいます。そこから、キャッシュカードと活動資金を受け取り世界中へ散ってもらいます。
ああ、そうそう。調査団員達の偽造パスポートも、私が用意する事となりましたので作ります」
うん、判っていた事だけど……、必要な事だけど……、ハッタは順法精神全く無しだね……。目的の為に手段を選ばないや……。
「それでマスターにお願いしたい事があるのですが、調査団員の着衣をECサイトで購入してマリーナ送りにしますので受け取って欲しいのです」
「ああ、それは構わないけど、120人分の洋服かぁ~。一人三着ぐらい買うとしたら、結構な量になるな。ヴェネレ号に積める範囲にしてくれないと、マリーナにも迷惑が掛かるぞ」
靴に下着に洋服。ジョージタウンへ降下するなら、コートやダウンは不要か。それでも、いったいダンボール何箱分になるんだろうな。こりゃ時間指定して、予めマナリーナで待ってなきゃならんな。でないと、マリーナに迷惑かけ捲くりだな。
「その点は大丈夫です。一人一着として、その他は調査の一環として現地で購入してする事なっています。例えば、ナイキのスニーカーの同じ商品を世界各国で購入して、物価調査をしたりとかするみたいです。それに3チームは、高天原に残って指揮と情報の整理とするみたいですから、111人分で良いみたいですよ」
「ああ、そうなんだ。まぁ、それでも大量の荷物になるけどね。それと、調査員も1チーム3人体制なんだね」
「ええ、現地での情報分析として学術研究者、護衛役の軍人、情報収集のプロとなっているそうですよ」
情報収集のプロってスパイ? でも世界各国の軍事情報は、今回は調査対象外だったよな。連合から見たら軍事技術は骨董品だし、経済規模を調べれば動員可能な軍事力も把握できるからって。って事は、単純に短期間での調査効率の問題かな。
「成程ね。でも、まぁ111人も120人も荷物の量は、そんなに変わらないから全員分買っておけよ。何か突発的な出来事で、降下するかもしれないし、着なくてもお土産になるだろう」
「ええ、私もそう言ったのですが、地球調査費用を全てマスターが負担するので、僅かでも無駄な出費を控えると言われました」
おおー、どっかの全日本交通安全協会に爪の垢を煎じて飲ませたい発言だぜ。あいつら7年間も架空経費を計上して所得をごまかし、約4億7000万円を不正に隠してやがったからな。
「なら改めて、光子魚雷一本分の値段にもならないから、必要経費だと思って遠慮なく使うように伝えておいてくれ」
「太っ腹じゃないですか、マスター」
「優秀過ぎるAIのお蔭で、使う事の出来ない金が有り余っているからな。こんな時に使うのさ」
「そうでしょう、そうでしょう。流石私ですね!! では、その辺りの打合せをしてきまーす」
今回も嫌味が通じず、ハッタはご機嫌なご様子でスクリーンから消えていった。
さて、今は地球時間で英国は正午、つまり日本は午後九時だ。調査団員の方々は、地球へ行って困らないように英国時間で過ごしているから、これから昼飯なのだろう。
しかし、日本時間の俺は今日のお仕事は全て終わったし、夕飯も済ませているので部屋に戻って休もう。そう思い部屋へ戻ると……。
「「「待ちわびたぞ、拓留」」」
俺の部屋で、全裸の3エルフさんが仁王立ちして待ち構えていました……。
「もう今日は疲れているんだけど、せめて一人にしてくれない。それに総統が言っていたけど、かなりの量を送っているんだろ。もう少し、ペースを落としても良いんじゃないか」
「ああ、大量に送っているから喜ばれているぞ。でもな、段々と量は減っていくものだ。だから、今だけでも送れるだけ送らないとな」
「違うでしょクリスティーナ! 今日は、アレをするんでしょ」
俺の言葉を認めつつも、さくっと無視したクリスティーナを窘めるようにエルヴィが何かを匂わすよ。アレって何?
「拓留は、以前高天原で我々の塩の使い方を訊ねたそうですね。折角ですから、今日はその事を教えるついでに拓留の疲れを癒そうかと思いまして。ですので、このマットの上に服を脱いで乗って下さい」
疑問顔の俺にエルヴィが説明するから乗れと言って指差したマットは、床に敷いたビニールシートの上に置かれた大きなビニール製のエアーマットだった。
ゴクリ! エアーマットに裸で寝る×塩を使用する=それはエロエロな塩マッサージですね。はい、喜んで!
と云う訳で、気分だけルパンタイブを決めた俺は颯爽とエアーマットに寝転び、3エロフからとってもマンゾクなマッサージを受け、元気になってハッスルしましたとさ。
そんなこんなで俺は、お家へ帰る最中にアスピヴァーラ人の塩の使い方を知った。
豪雨も過ぎ去り、崩れ落ちた土砂の片付けで筋肉痛の作者わだつみです。
さて、先日『言い訳回』を掲載したところ、多くの方々から励ましのコメントを頂きました。大変にありがたく思っています。
お蔭様で、未だ戦えそうです。
しかしながら、説明不足で皆様にご心配をかけたようなので捕捉をしておきます。
あの『言い訳回』は、2021/06/9に五話目を書き終わった頃に書きました。今から二か月以上前ですね。
その後、奇跡的に連載が続き、『言い訳回』を書いたことも忘れていたのですが、ご感想に「銀河連合日本」の名が乗ったので思い出しました。
ストーリーも随分進み、拙作を読んでも『パックた』と言われないだろうとは思っていました。
では、何故『言い訳回』を掲載したかと云うと、世の中にはいろんな方がいらっしゃるからです。
応援して下さる皆様のように、拙作を読み込んで下さる方であれば良いのですが、ななめ読みでパックたという人が居るかもしれません。
つまり、チキンな僕のリスク管理が一番の理由です。
めんどくさい事に巻き込まれたくないので、予め『銀河連合日本の事を知っていますよ。ストーリーが全く違っても、登場キャラクターが酷似していると問題があるかもしれないと思い設定の変更を行いましたよ』と予防線を張りました。
それが、『言い訳回』掲載理由です。
ですので、『銀河連合日本』の名を出された方をクレーマーとか思ってもいませんし、エタるとしたら仕事の事などが理由になります。
もし説明不足な『言い訳回』で、ご感想を書き込まれた方が不愉快な思いをされていましたら、ここでお詫びをしておきます。
応援して下さっているのに、申し訳ありませんでした。
あと70話の後書でも描きましたが、最近のご感想は鋭いモノが多くてネタバレする可能性がありますので、当分の間返信をしない事にしました。
だってストーリーは、判らない方が楽しいですものね。
という事で、掲載ペースが不透明ですが、これからも宜しくお願い致します。
わだつみ




