↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
多分……、宇宙もの……。  作者: わだつみ
70/94

70.日本の未来

「最初に反対意見を述べたのが、非主流派と呼ばれている汎銀河戦争に参戦しなかった中域部の星間国家の派閥です。

 次に賛成意見を述べたのが、星系連合に参加して中央銀河連合の発足に携わった国々の派閥で、主流派と呼ばれています。

 最後に慎重案を提示したのは、銀河中央部の星間国家ですが汎銀河戦争に参戦せず、中央銀河連合にも後年参加した国々の派閥で中立派と呼ばれています。

 本議会での各派閥の勢力は、主流派65%、非主流派25%、中立派10%となっています。

 中央銀河連合は、参加国を大まかに正規参加国と準参加国の二つに分けています。さらに正規参加国も一級から三級の三階級に分けられていて、階級の高い星間国家ほど経済的・軍事的などの責務負担が大きくなっています。

 その為に本議会では、責務負担が大きな星間国家は議決投票権を複数所有しています。そして投票は、それぞれの星間国家によって選出された代議員によって行われます。


 主流派は、正規参加国の一級国家全てと二級国家からの派閥で、非主流派は一部の二級国家と三級国家、それに準参加国からなる派閥です。そして中立派は、二級国家のみの派閥です。

 国家階級は、問題行動を取らない国家であれば責務負担さえ受け持てば上がります。ただ国家階級が上がれば、余程の理由が無い限り国家階級を下げられたりしませんので、莫大な責務負担を受け入れられない星間国家は国家階級を上げようとしませんね。


 今回の様に本議会のみでの議論では、連合参加国の国民からも注目を浴びますので、自派閥の考えを声高に主張する事に熱心なのですよ。ですが、主流派の多くが地球との接触を認めていますので、可決されることは間違いないですね」


 解説役のエルヴィが、事細かく教えてくれたので良く判ったよ。それで政党が無くて、派閥のみなのね。

 エルヴィが俺に色々と教えてくれている間、スラックスを履いたクリスティーナとヴィーヴィは我関せずと食事を摂っている。エルフさん達は、その外見からは想像も出来ないパワーをお持ちなのでカロリーが必要なのだろう、皆食べる事べる事。思い出してみれば、津久留島でもエルフさん達は皆さん良く食べたよね。


 アスピヴァーラ国での会食は、皆さん俺の量に合わせた食事量しか摂っていた無かったが、打ち解けた3エルフはとっても食いしん坊です。なので、連合職員さんが用意してくれた大量の料理は、もう殆ど残っていません。

 二人とも仕事中だから、程々にね。腹一杯で、動けないって無しだよ。因みに俺は、もうお腹一杯で少し眠いです。



 議論百出しているのだが、それぞれの意見を主張しているので歩み寄りなど無く、ただ平行線な議論が交わされている。そして、ある程度の意見が出たところで、ヘニッヒ議長が口を開いた。


「卿らの主張は、それぞれに納得ゆくものがある。しかし、オティーリエ王女殿下の帰還に関して一つ忘れている事が有るようだ。

 オティーリエ王女殿下の亡骸は、未だに稼働している冷凍保存カプセルに生前と変わらぬ姿で安置されている。これは、東郷提督が現地に赴き調査を行なって確認している。だが1700年前の冷凍保存カプセルなど、いつ機能停止していもおかしくは無い。

 現時点で生前と変わらぬ姿をしているのに悪戯に時を掛け、麗しい女性がミイラになるまで待つのかね。今回の場合、時は破産者だ」


 正直俺は、ヘニッヒ議長の言葉に驚いた。法律家のヘニッヒ議長は、もっと理論を前面に出した論法で説得すると思っていたのだが、感情で、情緒で、出席している議員達に語りかけるとは思っていなかったからだ。

 ハイデラント人は、よく堅苦しい人種と言われているが、俺と接した時やこの言葉を聞くと案外人情家なのかもしれない。ビタリ人も、案外付き合いやすい人達だったしね。


 ヘニッヒ議長の言葉で議論は、地球との接触に賛成している主流派の優勢になった。反対している非主流派も慎重論の中立派も、オティーリエ王女の功績は認めており、早期の御遺体帰還に関しては反対出来なかったからだ。


「しかしながら、統一国家の無い地球に於いては、そもそも交渉相手が居ないではないか。誰と接触して、誰と交渉し、誰と友誼を交わすのか。そして、地球をどのような立場と定めるのか。その辺りを明確にしてもらわなければ、賛成など出来ようもない」


この非主流派議員の言葉を聞いた時、俺にはスクリーンに映るヘニッヒ議長の口元が僅かに綻んだように見えた。そして……、


「さぁ、これからヘニッヒ議長のターンですよ、マスター! 一気に採決までGO!」

と、パーソナルスクリーンに干渉したハッタが、いきなり雄叫びのような声を上げた。


「おっふ」


「どうした拓留。何か、あったのか?」


 いきなり登場したハッタに驚いた俺の声に反応したクリスティーナが、食事を続けながら声を掛けて来る。一応、護衛だと覚えていたのね。

 

 何も言わずに俺は、左手のブレスレットを操作して簡易スクリーンを呼び出して、モグモグとお口を動かしている3エルフさん達にもハッタからの通信を見せる。そう、3エルフ。

 俺への解説が終わったと判断したエルヴィも、クリスティーナとヴィーヴィと料理の取り合いをしながら食事をしているからだ。


「連合が公式公開している地球に関する議題ですが、総旗艦フラデツ・クラーロヴェー帰還に関連して持たされたオティーリエ王女の情報、それに地球の現状に関するものしか上げられいてないと云う事です。

 先日の五者会談にて決定した、日本国のみと国交樹立を目指すアスピヴァーラ国提案を表明していません。恐らくは、反対論や慎重論を抑え込むためにヘニッヒ議長が秘匿していたのでしょう。ですから、ここからヘニッヒ議長のターンです!」


 確かに、最初に統一政府の無い地球全体と交渉すると思わせれば、非主流派や中立派は声を大にして異を唱えるだろう。そこへアスピヴァーラ案を叩き台にした、日本のみを交渉相手とするとの提案をすれば、非主流派や中立派も主張が取り入れられたと思い賛同しやすくなるかもな。

しかし、それは交渉や議論のテクニックであって秘匿とは言わないんじゃねェーか、ハッタさん。


「確かに卿らの言う通り統一政府の無い惑星では、交渉する相手がいない。かと言って、乱立する全ての惑星内国家と交渉したとしても、惑星内国家の勢力争いに巻き込まれるだけで、統一された見解や結論など望むべくも無く労力と時間の浪費でしかない。因って卿らには、交渉に向けた修正案を提示しよう。

 地球側の交渉国家は、オティーリエ王女殿下が眠っており、更に総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを帰還させた東郷提督の母国である日本国のみに限定し、他国が交渉を望んでも受け入れない事とする。

 そして、日本国に混乱を招かぬように細心の注意を以って技術提供を行い、数百年を掛けて日本国を中軸とする統一政府の設立に協力する。

 これならば過去にも特殊な事情により適用された、原則統一政府の無い惑星への不干渉の例外的な交渉範囲に入る。そして我々連合は、数百年後ではあるが、銀河辺境域にも同朋を持つ事が出来る。

 この銀河に於ける我々連合の勢力拡大が、安定と発展を齎す事は云うまでも無く卿らにも理解してもらえると信じている」


ハッタの予言通りヘニッヒ議長の発言後、議論の一気に形勢は日本と接触し交渉を行なう方向へ傾いていった。それでも非主流派から『接触するのは日本国のみと限定する事を約束しいただこう。それを破った場合は、責任を取っていただく』と反対したいが出来ないので悔しーいってカンジの発言があった。そして、その発言で締め括られ採決された。


「やっと採決されたか……」

 俺は、日本の国会で議論など見た事も無いし、地元の議会ですら足を運んだことが無い、ただ各報道機関が切り取ったニュースで目にするぐらいだった。なので目の前でされた議論が、どんな意味を持ち、どんな思惑が込められているかは判らなかった。


「拓留、どうかしましたか?」


「いや、結構、採決されるまで時間が掛かったなと思ってね」

 俺の呟きにエルヴィが反応してくれたので、思ったままの感想を口にしたのだが……、


「小委員会を経ていませんので他の議題より少々長かったですが、この程度なら早いほうですよ。ヘニッヒ議長が上手く取り纏めましたからね。だから非主流派は、見せ場を余り作れずに負け惜しみを言っていたんですよ」


「そうか、そんなものか……。それにしても俺からしたら、派閥が宙域ごとに纏まっていると云うのが不思議だな。日本では思想信条の近しい者達が集まって集団なり派閥なりを作るからな」


 そう、そこなんだよね。宙域ごとに思想信条が近くて派閥を形成するなんて、とっても不思議。強引に日本で当て嵌めて例えると、東日本と西日本でそれぞれ派閥が結成されて、中部地方の一部が中間派ってカンジ。なんか変だよね。


「それは、中央銀河連合の成立に関わる話ですね。

 汎銀河戦争終了後に星系連合から連合国家である中央銀河連合設立の為に、各星系国家は政体を民主共和制に変化させていったのです。星系連合の中には帝政・王政の国家も少なくありませんでしたが、君主制では中央銀河連合に参加した後に意思決定のプロセスに於いて齟齬をきたす事が多かったからです。

 拓留の身近な例では、シュクヴォル王国も長い時間を掛けて立憲君主制へ政体を変化さました。


 しかし、中央銀河連合に後に参加した中域部の星系国家では、未だに君主制が多く。代議員も貴族などの支配階級の者達で構成されていますので、基本的な価値観に相違が有ります。

 勿論、中央銀河連合に参加する為に必要な自由と尊厳の確立は守っていますが、国民の人的資源を活かしきれずに国力の発展を阻害しています。しかしながら、支配階級が自身の存在が国家の発展を阻害しているなど認める訳も無く、今回のような場面に於いては自らの存在をアピールする事に執着しているのですよ。

 それに非主流派は、決して結束が高い派閥ではないのですよ。中央銀河連合内での経済的な対立は、殆どが非主流派の国家間での争いなんです。


 あと中立派の国家は、伝統的に折衷案しか出さないですね。それは主に国力不足が原因で、何かしらの提案をしても自らに実行能力が欠如しているからだと言われています。まぁ、その為にバランサーとして機能していますけどね」


 成程ね、連合が結成されて1700年経っても人である以上、捨てられないカルマがあるって事か。だから、経済的対立も感情的対立もあると云う訳ね。でも、その人間臭さが俺には心地良い。だって、宇宙を駆ける技術を持っていても、君たちはどう生きるかと模索中って事だから。

 これが、俺から見て完璧な倫理観を持った完成された社会だとしてら、堅苦しくて相手になんかしてられないよ。まぁ、尤もこれまで出会った人達との交流で、そんな事は無いだろうと思っていたけどね。ってな事を考えていたら……。


「マスター、何をボーとしているのですか! 次は、マスターに関る議題ですよ。ちゃんと聞いておかないと、この後で演説するのに支障が出ますよ」


 結構時間が経っていたので、元々抜けていた気合が更に抜けていた俺にハッタの喝が入った。でも、そんなに気合を入れなくても、演説内容は皆で考えて出来ているんだから大丈夫だよ。

 そんな事を考えながら、次の議題である俺に関する事柄を語っているヘニッヒ議長を見ていた。



「以上の事からアスピヴァーラ国は、ンジェグ海賊艦隊撃滅に報いて東郷拓留氏に名誉提督号を送られた。

 少数の艦隊戦であったとはいえ、東郷提督は圧倒的に不利な状態から勝利を掴み、多くの民間人を救ったのは事実である。また、捕獲したンジェグ巡洋艦から、現在ンジェグが拠点の座標判明した。

 これらの実績を踏まえ、中央銀河連合に於いても東郷提督に中央銀河連合宇宙艦隊名誉提督号を捧ぐを提案する」


 ああ、麗しのクーストネン総統閣下様が本会議で提案するって言っていたけど、本当に提案したのね。しかし、ヘニッヒ議長の語り掛けは終わらずに、次の言葉を紡いでゆく。


「しかしながら、東郷提督は連合不参加国の日本国出身である。今までの慣習に於いて、連合不参加国に何かしらの称号を奉じた前例はない。

 常に前例とは、破られ忘却の彼方へ送られるものではあるが、連合不参加国の民に連合称号を奉じる意味が無いのも事実である。

 この相反する問題に於いての解決方法は、ただ一つしかない。それは、東郷提督の母国である日本国を中央銀河連合準参加国と見做す事である」


「えええー!」

 ヘニッヒ議長の言葉を聞いて、思わず俺はソファーから立ち上がっちゃったよ。だって、俺以外の日本人が誰も知らない内に、日本が中央銀河連合参加国に成っちゃうんだよ! 例えそれが準参加見做し国だとしても!


「議長。未だ日本国と接触もしていないのに、それは幾ら何でもやり過ぎではないですかな」


「なぁに、いずれ連合参加国となるのだ。ほんの数百年早くても問題あるまい。それに日本国と国交樹立後に支援をするのであれば、準参加見做し国としておいた方がやり易いであろう」


 主流派らしき代議員から呆れた様に窘められたヘニッヒ議長であったが、ニヤと笑って事も無げに言い放った。そして、僅かな時間で日本の中央銀河連合参加が採決された……。


 

 そんなこんなで俺は、日本の人々の知らぬ間に、日本の未来を決定してしまった。

いやー、お盆も過ぎたのに大雨ってどう云う事! って云うぐらい雨が降りますね。


因みに僕の住んでいる地域では、数日前から避難勧告が出ています。そして、仕事に行ったり行かなかったり。避難したり、避難しなかったり。


お蔭で、全く捗らない!

という事で、やっと書き上げたのですが、次話も遅くなると思われます。


本文に手を付けられないので、ご感想に対する返信も全くと云って良いほど出来ない状態です。

しかも最近のご感想は鋭いモノが多く、返信をしているとネタバレになると思われるので『今が、返信できない言い訳をするチャンス』とばかりにお伝えしておきます。


「暫く、返信はせん! というか、諸々の事情で出来ん!

僕は、これから町内会の人達と崩れた裏山の土砂をかたずけなきゃならんから! でないと、生活道路が通行不可になって非常時に避難も出来ん!」

という事で、週二回の公開は夢のまた夢となってしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんか展開が「銀河連合日本」に似てきましたけど、こちらの方が軽くて好きです。頑張ってください。
[一言] [僕は、これから町内会の人達と崩れた裏山の土砂をかたずけなきゃならんから!でないと、生活道路が通行不可になって非常時に避難も出来ん!] !? それは不味い。非常に不味い。 楽しみに待ってま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。