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多分……、宇宙もの……。  作者: わだつみ
68/94

68.祝、初プロポーズ! しかし自覚無し!

 カツカツ。


五人分の足音が回廊に響く。


「こちらの本議事堂は汎銀河戦争後に建設が開始されましたが、中央銀河連合に参加を望む星間国家が増え続けている為、付属施設なども増築をしているので1700年経った現在でも完成していません。

 増築の度に首都ベジャルーの規模も大きくなり、周辺衛星都市との距離が縮まり、一つの巨大都市に成りそうなんです。

 ィーリエ王女が演説された旧議事堂は、現在はベジャイア会議記念館として保存されていますので提督も宜しければ見学下さい」


 俺と3エルフは、本議事堂の中層階の回廊で議会職員の女性に案内をされながら雑談混じりの説明を受けている。回廊の窓から見える首都ベジャルーは、見渡す限り都市が続きいている。周辺衛星都市とやらは、まるで目視する事など出来ないのだが、どれぐらい距離が有るのだろうか。周辺衛星都市と云うのなら、近辺にあると思うのだが。などと御上りさんな俺は、暢気に的外れな事を考えていた。

 そう俺は、これから中央銀河連合・全体本会議にオブザーバーとして出席する。議題は、先日ヘニッヒ議長達と話し合った日本との接触に関する事だ。


「こちらが、東郷提督の席となります」

 職員の方が開けてくれた扉をくぐると中は、学校の教室ぐらいの広さの部屋になっていた。正面は大きな窓になっていて開放感があり、窓の手前と左右に大きなソファーが幾つか設置してあった。たった4人なのに、この部屋を使えと? 40人ぐらいなら、机を並べても余裕をもって座れるね。それに大きなソファーは本会議が始まるまで、昼寝でもしろと云う事かな。

 小市民丸出しで、現実逃避気味に間抜けな事を考えている俺であった。と云うのも、ベジャイアに到着して今日で五日目だが、毎日面会・面談・会食などなどのスケジュールが俺の承諾も無しにピッチリ詰まっており、昨夜は俺の歓迎パーティーまであったので結構疲労が溜まっていたりする。だから会議を見物するだけの今日は、気が抜け捲っているのである。

 誰がそんなキツキツのスケジュールを組んだかと云うと、連合職員となっているアスピヴァーラ女性の仕業であった。なんとその女性は、アスピヴァーラ国で俺を馬車馬の如く働かせたラウタサロ大尉の元カノらしい。エルヴィと面識が合ったので間違いない。その女性も、ラウタサロ大尉からアドバイスを受けたと仄めかしていたしね。

 しかし、だからと言って詰め込みすぎだよと思ったが、『多くの方々がオティーリエ王女のご子孫である東郷提督との面談を望まれております。全ての方々との面談は時間的に不可能なので絞り込んではいるのですが、今後の日本国への協力関係に影響しますので、東郷提督に於かれましては快く引き受けて下さると助かります』と言われたよ。

 そんな事を言われると断る訳にはいかないので了承したが、前もって知らせてくれよ。少しぐらい観光もしたかったのに……。

 入国する時に、ハメーンリンナやドヴール・クラーロヴェーのような大騒ぎでは無く、粛々とし入国手続きと少しばかりの歓迎の人々だったので、少しぐらいは観光できるかなって思ってたのさ。でも、駄目だったよ……。

 今回の旅は、親善訪問の意味合いが強いので色々と式典などがあると思ってはいたけど、全く自由時間が無いとは思わなかったよ。俺の自由気儘な宇宙探検旅行は、いったい何処へ行ったのだろうか……。

 そんな事を遠い目をしながらぼんやりと考え、大きな壁一面の窓に近づくと本議事堂の全景が眼下に入ってきた。


 本議事堂は巨大な円柱の形をしており、四分の三が俺の居る部屋と同じような窓が並んでいる。今俺が居る部屋は円柱の真中ぐらいの高さなので、壮大に下部から上部へ続く窓が左右上下に見る事が出来る。そして残りの四分の一正面下部には、議長達の席が見える。

 『へー」とか『ほー』とか言いながら、いなかっぺ丸出しで窓に張り付いてあちらこちらを眺めていると、二つ右隣の部屋の窓際に立ちこちらを眺めている、つい先日知り合った妙齢の女性と目が合ったので会釈をしておいた。

 連合に来る前に礼儀作法は一通り勉強して来たのだが、付け焼刃では穴がポコポコ沢山あり、初対面の彼女に失礼な事をしてしまったのだった。すると彼女は微笑みながら、自らの孔雀の羽のような美しい色彩の髪の毛を指差し、軽く手で梳いている。どうやら、先日の事で俺を揶揄っているようだ。



 昨夜の歓迎パーティーは、全ての連合参加国の代表達が参加した盛大なものだった。そして、俺は二百近い国家の人々挨拶を交わしたのだが、数が多すぎて誰と会ったか数人しか覚えていない。一応は、ハッタのサポートで及第点ギリギリの対応でこなしていた。

 それが段々怪しくなっていったのはビタリ共和国の大使と会話を交わした辺りからだった。


「ふ~ん。君がオティーリエ王女の御子孫かい。あまり似てないね。でも戦いに強いのは、オティーリエ王女の血筋だからかな。まぁ、取り敢えず宜しく提督。ようこそ中央銀河連合へ」


 歓迎してているのか喧嘩を売っているのか判断し辛い言葉ではあるが、握手を求め右手を差し出してくれたので、ギュッと握ったらピクピクとイヌミミが動きよった! その様子に俺の視線が釘付けになったのに気が付いたようで、ニヤっと笑った後に犬ミミをこれでもかと動かしてくれた。

 その様子から、言動がナンパでイマイチ信用に為らない雰囲気を作り出しているが、結構ビタリ人って良いヤツじゃねぇー。って思ってしまい、他にも大勢の挨拶待ちの方々が居るのに色々と話し込んで、色々と仕切ってくれていた連合職員の方に……、


「他にも東郷提督に挨拶をされる方々が居ますので、繁華街へ遊びに行く計画は後で立てて下さい(怒)」

と、ちっとも笑っていない笑顔で言われてしまった。だって、色々な人種の女性が働いているエロエロな場所へ連れて行ってくれるって云うだもん。仕方ないよね、男だもん。

と云う事で、ベジャルー滞在中に時間が取れれば、素敵な場所を案内してくれる約束をした。

 ビタリ人も、なかなか良い人で友達になれそうだったよ。あっ、それと犬ミミって云うと機嫌が悪くなるから、狼ミミって言わなきゃいけないんだった。


 その他の人で記憶に残ったのは、虎ミミとウサミミの方々。ただ、虎ミミは非常に憶病とかウサミミ男性は早漏絶倫とかの隠し設定のあるようなネタ種族ではなく、善良で理性的な人達だったよ。正直言ってネタ種族は、もう結構なので助かりました。

 でも、ウサミミ女性とは一度でいいから、とっても親しくなりたいとは思いました。だって男なら、あのミミをイロイロとエロエロにモフってみたいよね。そして俺、国に連れて帰ったらリアルなバニーガールにするんだ……。


 そんな事を考えている時点で、『歓迎パーティーへ出席しているのを忘れているだろう』と叱責をされても仕方ないぐらいに、俺は弛み始めていた。そして、そんな俺と彼女は出会ってしまった。


「御機嫌よう。私は、ニジェール連邦共和国選出の連合議員サブリナ・アシュールと申しますわ。東郷提督に於かれましては良しなに」


 アシュールと名乗った彼女は、タイトなエメラルドグリーンのロングドレスが白っぽいベージュの肌に良く映え、眼鼻立ちの整った顔立ちに歌劇団バリの濃い目のメイクも似合っている。そして何よりもドレスと同じ色合いで、艶やかな光沢を放つエメラルドグリーンでロングの髪の毛が一際眼を引く。

 それは、ケモミミの方々よりも浮世離れした雰囲気を醸し出していて、正にファンタジーの住人と思わせた。更に、耳の後ろ辺りから孔雀の羽のような数本の髪の毛が、逆立っているのがファンタジー感をより強調している。


「はじめまして、アシュー議員。総旗艦フラデツ・クラーロヴェー艦長、東郷拓留と申します。こちらこそ、宜しくお願いいたします」

 俺は幾人もの方々にした挨拶をしたのだが、その視線はアシュール議員の光の当たり具合で色合いが変化する髪の毛に釘付けだったりする。


「ふふ、そんなに熱く見詰められると照れますわね」


「ああ、申し訳ありません。とても素敵な御髪だったので、思わず見惚れてしまいました。しかし、初対面の方に取る態度では有りませんでしたね。失礼を致しました」

 しげしげと見ていた俺の態度に満更でも無さそうなアシュー議員であっったが、不躾な行為であったのは事実なので、余り重くならないぐらいに誤っておいた。でないと、いくら俺に好意的でも、礼儀知らずなヤツと思われてしまうからね。


「提督程の男性に褒められるのも悪くありませんわね。でも、何も出ませんわよ」

 うん、素っ気無い態度を取ろうとしているけど、やっぱ喜んでいるみたいだ。まぁ、美しいと褒められると喜ぶのは、全銀河共通なのだろうね。

 なんか機嫌良さそうだから、もう少し近くで眺めても良いかな。アシュー議員の髪の毛って、昔のアルファロメオの塗装のような玉虫色なんだよ。一体全対どうなっているんだろうね、興味が尽きないよ。近くで見るだけだから、この雰囲気ならお願いすればオッケェーしてくれるかな。



「私が世間知らずでも、アシュール議員に何かを強請ってお手数を掛けたりしませんよ。ただ少しお願いがあるのですが、私の出身地である地球にはアシュール議員のような魅力的な髪をされた方は居りませんので、宜しければもう少し近くで見せて頂いても宜しいですか?」

 俺がささやかな望みを口にすると、アシュー議員は『えっ』って言って眼をまん丸に見開き、周囲の人々は皆一斉に口を噤み静寂が訪れ、ハッタがパーソナルスクリーンに『あっちゃー、マスターやっちゃったー』との文字をデカデカと出した。うん、俺って、何をやったかは判らないが、何かをやったのね。


 何かをやってしまった俺は、周囲を横目でチラチラと観察して事態を把握しようとするが、さっぱり判らん! しかもハッタは、『マスター、幾らなんでも初対面の方に失礼ですよ。ビタリ人と仲良くするから、精神汚染したんですよ』と訳判らん事を言ってやがる。そんな事どうでも良いから、情報プリーズ! 俺って、何をやったの?


 内心焦り捲っている俺をよそにアシュール議員は、ゆっくりとした所作で自身の耳の後ろから伸びている孔雀の羽根のような髪の毛を一本抜き取り、無言のままにっこりと笑って俺に差し出した。

 アシュール議員の行動の意味が判らないままの俺が、『ありがとうございます』との一言添えて髪の毛を受け取ると、周囲から『おおー』との声が上がる。本当になんなのよ、誰か教えてよ。

 そんな俺の思いが通じたのかハッタが……。いや、違うな。ハッタの事だ、このタイミングを待っていに違いない。だって、ハッタから送られてきた情報は…………、


「ニジェール女性に『近くで髪の毛を見たい』と伝えるのはプロポーズの意味です。そして、ニジェール女性が無言で羽根を渡すのは『結婚は出来ないから、この羽根で我慢して下さい』と云う意味を持ちます。

 マスター、幾ら手相で結婚出来ない運命を示されているとはいえ、初対面の女性にいきなりプロポーズするのは如何なモノでしょうか。そんなんだから、衆人環視で断られちゃうんですよ」

と送ってきやがったからだ!

 そんな意味を持っているなら事前に教えておけよ! 髪の毛は、ニジェール人の特徴なんだから話題になることぐらい想像出来るだろ! あっ! だからハッタのヤツは、今になって教えてきたんだな。俺を揶揄う為に!


 はぁ~、知らなかったとはいえ俺は、夏目漱石の『月が綺麗ですね』のような事を、知らず知らずの内にやっちまったんだな。そしてアシュール議員は、セオリー通りに羽根のような髪の毛を俺にくれたと云うことか。ハッタは後で叱っておくとして、先ずはアシュール議員に謝っておかなければな。


「アシュール議員。たった今総旗艦フラデツ・クラーロヴェーのAIから、ニジェール人の慣習を聞きました。どうやら私は、アシュール議員の御髪に見惚れて、大変に失礼な事をしていたみたいです。心からお詫びします。お許しを」


 俺が素直に謝罪して頭を下げると、アシュール議員が更に目を真ん丸にして驚いた様な顔をしている。あれ? 謝罪の仕方が軽かった? 土下座した方が良かったかな。


「ふふふ、東郷提督は、本当に魅力的な方ですね。私は男性の方が、そんなに素直に非を認める姿を始めて見ましたわ。しかも、とても誠意のあるお言葉で……。東郷提督は、銀河中央の風習に疎いのですからお気になされないでくださいな。

 ふふふ……、 私、東郷提督を気に入りましたわ。いずれ、ゆっくりお互いの事を語り合いましょ」


 どうやらアシュール議員は許してくれただけでなく、俺の事を気に入ってくれたようだ。周囲の方々も、微笑みながらアシュール議員を称えている。ついでに、俺の事も……。なんでも、誠意のあるお方らしい……。



そんなこんなで俺は、人生初のプロポーズを自覚の無いままに行ない、自覚の無いままに断られていた

ついにストックが無くなってしまいました。


今後は、週に二話は上げれるように頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 連投マラソンお疲れさまでした! 大変楽しく読ませてもらってます 更新については無理のない程度に頑張って下さい のんびり待ってます!
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