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多分……、宇宙もの……。  作者: わだつみ
55/94

55.二隻の近衛護衛艦

「やだ、拓留。皆が見てるじゃない恥ずかしい」


「見せつけているのさ。さっエルヴィ、口を開けて、この葡萄美味しいよ。もう一つ食べて」


「「ぬぐぐぐ」」


「ありがとう。でも拓留。膝の上じゃなくてソファーで食べたいんだけど」


「今は駄目。エルヴィとの仲をお馬鹿な二人に見せつけなきゃいけないから」


「済まなかった、拓留。反省しているから、もう許してくれ」


「ああ、そうだぜ拓留。もう約束破らねェーよ。だから許してくれ」


 今日でアスピヴァーラ国を出発して四日目。

 艦長席に座る俺。その膝の上に横座りのエルヴィ。そして、俺達の正面で、軍服を着て正座するクリスティーナとヴィーヴィ。コイツら、二人とも二日目には約束を破って、オッパイ丸出しで総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを歩き回りやがった。しかも注意しても、何度も半裸で歩き回る始末。

 だから、遺伝子提供協力を経て仲良くなったエルヴィと大袈裟にイチャついて、お馬鹿二人に見せつけている。しかも、『約束を守らん奴に、遺伝子提供協力なんぞしてもらわなくても構わん!』とまで言い切ったよ。それで、謝罪の為にお馬鹿二人組は、俺の眼の前で正座をしている。

 因みに遺伝子提供協力の順番管理はエルヴィがしており、そのハードスケジュールの内容は、やっぱりエルヴィもアマゾネスだったのねと思わせるに十分でした。


「マスター、そろそろお馬鹿な人達を許すか、放逐するかにして下さい。あと2分で、護衛艦隊と共に亜空間航行から離脱します。シュクヴォル王国軍の迎えと合流座標まで約4分です」


「そうか、もう合流か仕方ない。エルヴィは、ソファーへ。おい二人とも、次に約束を破ったら、即帰国してもらうからな。判ったら立ってヨシ」


「「もう約束破りません」」

どうせ、三歩も歩いたら忘れるような気がするが、そん時はマジで追い出したる。


 アスピヴァーラ国の盛大な見送りで出発した俺達だが、護衛についてくれた艦船から引切り無しに挨拶やら定時連絡やらの通信が入る。その背後をオッパイやショーツ丸出しのお馬鹿が映り込むと、ロリ疑惑以上にマズイ噂が立つとしか思えん。

 しかも今日は、シュクヴォル王国宇宙軍艦隊の御出迎えの日だ。初っ端から不適切な映像が流れると、絶対に俺の人格が疑われる。そんなのやだー。


「亜空間航行より離脱しました。前方にシュクヴォル王国宇宙軍艦隊を…………」

ハッタの報告が途中で止まり、メインスクリーンが前方の艦隊をズームアップして二隻の白い艦船を映し出した。その白い二隻は、艦隊中央部に位置どっていた。


「ハッタ、あの船は?」


「近衛護衛艦、ウースチー・ナド・ラベムとチェスケー・ブジェヨヴィツェです……。汎銀河戦争に於いて、当艦と共に戦場を掛けた僚艦です。まだ、健在だったのですね……」


「そうか、懐かしい船に会えて良かったな」


「ええ……。マスター、私は帰ってきたのですね」


「ああ」

ハッタと俺の関係性を理解しているクリスティーナとヴィーヴィは、何も言わずに神妙な態度だが、まだ慣れていないエルヴィは戸惑っているというか困惑している様子だ。


「マスター、シュクヴォル王国宇宙軍艦隊より通信が入りました。繋ぎます」

いつもの調子に戻ったハッタが、通信を繋げてくれると三人の男性がメインスクリーンに映った。その中で、軍服に着いた略章が一番多い男性が口を開く。


「シュクヴォル王国宇宙軍第一艦隊指令、マトウシュ・ドビアーシュ中将です。東郷提督をお迎えに参りました。シュクヴォル王国を代表しまして歓迎をさせていただきます。よくぞ総旗艦フラデツ・クラーロヴェー共々ご帰還なさいました」

 どうやらアスピヴァーラ国で戴いた提督号を、シュクヴォル王国も尊重してくれるようだ。訓練艦ラハティと出会う前は、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーの所属を巡ってシュクヴォル王国と揉めると思っていたが、揉め事も無く主星、ドヴール・クラーロヴェーへ向かえそうだ。総旗艦フラデツ・クラーロヴェーとハッタの故郷だから、出来るだけ仲良くしたいものな。


「ありがとうございます、ドビアーシュ提督。総旗艦フラデツ・クラーロヴェー艦長東郷拓留と申します。これからの道中、お手数ですが宜しくお願いします」

 中将の位にある方が丁寧に接してくれるのだから、俺も礼を以って挨拶を返すのだが、ドビアーシュ提督は俄か提督の俺と違って貫禄があるね。


「近衛護衛艦ウースチー・ナド・ラベム艦長、クレメント・ドルホシュ中佐であります。総旗艦フラデツ・クラーロヴェーの護衛の任を承りました。全力で任を果たします」


「近衛護衛艦チェスケー・ブジェヨヴィツェ艦長、ルカーシュ・カドレチェク中佐です。東郷提督にお会いできて光栄です。安心して、護衛をお任せ下さい」

 続いて挨拶をしてくれたのは、ガッチリとした体型のいかにも軍人さんってカンジのお二人。どこぞの特務中佐とは違って、見るからに頼りがいがありそうな方々。


「東郷拓留です。宜しくお願いします。汎銀河戦争時の近衛護衛艦ウースチー・ナド・ラベム艦長は、ベチュヴァーシュ・ドルホシュ中佐だったと当艦のアーカイブで見た記憶が有るのですが、ドルホシュ艦長の血縁のお方ですか?」

勿論、そんな事を俺が知る訳が無い。ハッタが寄越した情報を『如何にも知ってましたよ』ってフリをしながら話している。だが、効果覿面だったようだ。ドルホシュ艦長の眼が大きく見開いた。


「はい! 正しく我が血筋の者です! 当時も、我が家の者は総旗艦フラデツ・クラーロヴェーの御側にて戦っておりました。ただ、その任を全うできず無念だったと伝わっております」


「そうですか……。近衛護衛艦チェスケー・ブジェヨヴィツェは、ツチラト・ドラーパル大佐が艦長で、イェロニーム・カドレチェク少佐が副長だったと記憶しています。カドレチェク少佐が、カドレチェク艦長の血縁のお方となるのでしょうか?」


「ええ、その通りです。総旗艦フラデツ・クラーロヴェーと共にある時、ご先祖様は少佐でしたが、東郷提督のお蔭で私は中佐になっております」

話した感じ、ドルホシュ艦長は熱血漢、カドレチェク艦長はユーモアの判る人ぼっいな。硬軟揃って、良い組み合わせなのかもしれないな。


「運命とは奇なるモノですね。汎銀河戦争で共に戦った者達の子孫が、1700年の時を超えて当時と同じ船で再会をしました。私は、これも両艦長の御先祖様が奮戦して、私の先祖のオティーリエ王女を守ってくれたからだと思います。

先程、任を全う出来ず無念だったとの話でしたが、近衛護衛艦隊が必死に総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを守って下さったから私はここに居ます。

私は、この縁を齎してくれた全ての人々に感謝の念しかありません」


俺の言葉に、直情的なドルホシュ艦長は薄っすらと涙を浮かべ、カドレチェク艦長はシニカルな笑みを浮かべている。悪感情が持たれなかったみたいだ、取り敢えず合格と言うところかな。実は俺、突発的なトラブルが起きた時の為に、出来るだけ好感度ポイントを稼いでいます。そして、俺は何か起きるかもしれないと思っています。


「ツチラト・ドラーパル大佐の血縁の方は、軍にはいらっしゃらないのですか?」

不意に気になったので尋ねてみたが、スクリーンに映る三人の表情がアチャーってなっている。これって、尋ねちゃ不味かった?


 若干重々しくなった空気の中で、ドラーパル大佐のその後を教えてくれたのは、ドビアーシュ提督だった。

 ドラーパル大佐は、当時の近衛護衛艦隊指揮官だった。その為、ヘルシンゲア会戦後は総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを守りきれなかったと非難されたそうだ。しかも、大半の国民から。

 失意のドラーパル大佐は、逃げ出すように軍を退役。妻子・縁者からも縁を切られて、人目の無い僻地にて一人暮らしていたそうだ。その後は、恐らくだがその地にて亡くなったと思われる。

 当時の王家と軍は、ドラーパル大佐を責めはしなかったが助けもしなかったらしい。後年、ドラーパル大佐に全てを押し付けたとの声が上がりはしたが、軍は何もせずに誰も口にしない話題となった。


 俺が、アッチャーだよ。いきなり特大の地雷を踏み貫いちまったぜ。でも、ここからリカバーしなくては、マイナスポイントになっちゃう。


「そうですか。ドラーパル大佐には辛い思いをさせてしまいましたね。出来うる事ならばドラーパル大佐にも献花したいのですが、何処に眠っておられるか軍はご存じないでしょうか」


「恐らく記録にも残っていないと思われますので、直ぐに調査させましょう。ただ、1700年前なので見付かるかどうかは判りませんが」

俺の、『それぐらい探してくれるよね』ってサインをちゃんと理解してくれたよ。やっぱ、本物の提督は有能!


「我儘言って申し訳ありません。宜しくお願いします」


 この後は、今後の航行に関する確認を手早く済ませて通信を終わった。そして総旗艦フラデツ・クラーロヴェーは、シュクヴォル王国宇宙軍第一艦隊と合流して、アスピヴァーラ国艦隊に見送られながらシュクヴォル王国を目指した。



「ハッタ、ドラーパル大佐の事を合法な範囲で調べること地出来る?」


「政府官庁などの公的機関にハッキングすれば、判ると思いますが」


「合法な範囲で」


「難しいと思います。著名人であれば、一般的な情報網にも残っていると思われますがドラーパル大佐では……」


「もしかしたら、悪名かもしれないが残っているかもしれない。合法な範囲で探してくれるか」


「判りました、合法な範囲ですね」

なにか念入りに確認したせいか、前フリになったような気がするが……。どうしよう、探すの止めさせようか。でも、ドラーパル大佐の情報欲しいしな。



「拓留、終わったのなら食事を作ってくれ。今日は、肉じゃがが良いな」


「おれは、魚の煮付けが良い」


「私は、みそ汁を多めに下さい」

 未だ考え事の最中なのに、腹ペコな三人の女性が艦長で提督たる俺にメシを作れと言いよった。コイツら、三人揃って料理出来ないとかってイヤガラセかよ。しかも日本食が気に入って、悪びれもせずにリクエストまでしやがる。だけど、フライや唐揚げなどの揚げ物は、アスピヴァーラにも有るからイヤって我儘まで言いやがる。


くっそー、俺は、艦長で提督で種馬で料理人かよ。俺が、思い描いた宇宙探検旅行と絶対に違う!



そんなこんなで俺は、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーでハッタの故郷へ向かった。

白い軍艦だと、ブリュンヒルトか! それともスター・デストロイヤーか!

って、スター・デストロイヤーは灰色か。


オリンピックが始まったのでテレビを見ていると、ついつい筆が止まってしまい、ストックがドンドン無くなっていきます。

しかも、サッカーのメキシコ戦で久保がゴールを決めた瞬間は、Deleteを押したまま見続けてしまい、かなり文章を消してしまったよ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうせなら料理人やら色々と派遣してくれたら良かったね。
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