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多分……、宇宙もの……。  作者: わだつみ
49/94

49.フラグ回収

 戦いから三日経ったのだが、俺達は未だ戦闘のあった座標宙域に留まっていた。それは、行方不明者の捜索を継続しているからだ。

 戦闘終了後、直ぐ捜索を始めたのが良かったのか多くの漂流者を救助したが、30時間経っても12名の行方不明者がいた。

 必死の捜索により9名の遺体は回収したが、3名は結局見付けられずに捜索が終わった。

 敵艦からの砲撃を受けた時に運悪く着弾した付近に居れば、爆発に巻き込まれて身体が蒸発している可能性もあったのだが、アスピヴァーラ軍は捜索をやりきった。


 この戦闘で、30人を超える死者を出した。それが、多いのか少ないのかは、俺には判らない。ただ、もっと早く総旗艦フラデツ・クラーロヴェーが戦場に到着していれば、死者が減ったであろうとは思う。

 しかし俺は、『あの日、撮影などしてないで、もっと早くにハッタに状況確認をしていれば』とか『もっと早く戦場へ到着していれば、戦死者を減らせたのに』なんて、そんな傲慢な思い上がりをしていないし悩んでもいない。

 もし、遺族から『もっと早く、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーが参戦していれば、家族が助かったかもしれないのに』と言われても、平然としているだろう。

 俺は、軍事の素人だ。その素人が、軽々に判断して戦場に向かい戦う。ハッタのお蔭で、勝利はするだろう。しかし、その結果俺は、良く知りもしない戦いを軽んじる男となるかもしれない。

 総旗艦フラデツ・クラーロヴェーという強力な戦力を持つ軽はずみな男、この世にとって災厄でしかない。そんな存在になどに、俺は成りたくない。そんなモノに成ってしまえば、恐らくハッタは俺を宇宙空間へ放り出すだろう。なんて、楽しく明るい未来だこと、絶対に嫌だ。

 だから俺は今回の戦いは、突発的な状況でベストな結果を残したと思っている。そして、戦死者の方々には、哀悼の意を示すに留まった。



 捜索の最中、俺はすることが無かったので、もっぱら第63小隊との親睦を計りかなり親密になったりした。特に、ロニヤ・ハカミエス曹長とは、手の掛かる人を喰った身内がいる事に共感を覚え、『ロニア』&『拓留』の二人が良く話し合っている光景が見られたはずだ。

 そんな最中でもクリスティーナは、我が道をゆく態度に変化は無かった。今も、指令室の艦長席の後ろに在るソファーにカーゴパンツと軍用ブーツを脱ぎショーツ丸出しで寝転がっていた。第63小隊の名誉の為に行っておくが、他の隊員はそこまで酷くは無い。ロニアが、厳しく小隊を統制しているお蔭だ。

 高天原に滞在していた機械化装甲兵を見る限りでは、戦場では死神の如き存在なのだろうが、平時に於いては粗大ゴミにしか思えない有り様だった。しかし、第63小隊は最低限の礼節を弁えている。ロニア、頑張っているね。おい、クリスティーナ、小隊長がそれでいいのか。



「マスター、予定通り主星ハメーンリンナに向かうとの連絡が来ました」


「そうか……」

漸くかとホッと息を吐く。暇な時間を利用して第63小隊の面々を激写していたのだが、三日もあれば既にそれすらも厭きていた。


「結局、俺達達だけでハメーンリンナへ向かう許可は下りなかったが、護衛を数隻付けてくれるだけで良いだけだったのにな。そうすれば、さっさとハメーンリンナへ向かったのに」


「マスター、データーリンクの情報によりますと、どの艦が総旗艦フラデツ・クラーロヴェーに同行するか揉めたみたいですよ。

 誰もが、地味な行方不明者捜索よりも、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを囲んで艦隊を組み、威風堂々と行進したいですからね。

 更には、この艦隊が混成艦隊なので纏まりが無く、誰も総旗艦フラデツ・クラーロヴェーに同行する名誉を他者に譲らなかったみたいです」


「で、その結果、三日間足止めを食らい、全艦隊での行進か。ハッタ、ありがとう。アスピヴァーラ軍の公にしていない情報を、態々探し出してくれて」


「どういたしまして、マスター。これぐらい朝飯前です。いつでも仰って下さい。司令官の食事のメニューだって調べてきますよ」

嫌味が全く通じなかったよ。

 ハッタは、機械化装甲兵が艦内をうろつくのが嫌らしい。それで、少々いつもより暴走気味だ。『もっと真面な者ならオッケェーですけど、彼女たちは無いですね。また、艦内を破壊されたら、軌道上からハメーンリンナを砲撃しますよ』とロニアの前で言い放った。

 顔面蒼白のロニアは、『絶対に部下には、そんなことさせません。しかし少佐は……』と最後に言葉を濁した。クリスティーナの行状を熟知しているハッタは、『仕方ありませんね。レフティマキ少佐は別枠扱いにしましょう』と言ってロニアに無茶苦茶感謝されていた。



「マスター、艦隊司令部から通信が入りました。繋ぎますので、後ろの人をどうにかして下さい」

後ろの人とは、勿論白いショーツ丸出しで、寝転がりながらタブレットを弄っているクリスティーナだ。


「クリスティーナな、そこにいると通信に映り込む。カーゴパンツを履くけ」


「むっ、細かい事言うな拓留、我々の仲ではないか」


「通信にショーツ丸出しの女性が映ったら、朝から何やってんだと怒られるだろ、俺が! 履くのが嫌なら、指令室から出て行け」


「むっ、仕方ない。私は、拓留の護衛だ。出て行く訳にはいかないから、履こう。少し待て」


「急げ、相手を待たせているから」

護衛だったのかよ、との言葉は飲み込み。クリスティーナの準備が終わり次第、通信を始める俺だった。


 

 戦闘があった座標宙域から200隻の艦船と艦隊を組んで航行すること三日、遂に俺達はアスピヴァーラ国、主星ハメーンリンナ付近の宙域までやって来た。

 俺は、ハッタから報告を聞き、クリスティーナはショーツ丸出しでソファーに寝転んでタブレットを弄っている。お前、仕事しろよ。


「マスター、ハメーンリンナの放送で面白いモノをやっていますよ。メインスクリーンに映しますね」

と言って、ハッタが勝手に映したメインスクリーンに現れたのは、軍服を着た護衛艦パーツヨキ艦長、ヘンリーッカ・ミュッリュス少佐と警邏艦ミッケリ艦長、アウリッキ・レフティマキ少佐だった。

 そして、スクリーンの右上には、『東郷拓留艦長は、オティーリエ・アンドルリーク王女殿下の再来か!! 英雄の血筋に迫る!!』とのテロップが書かれていた。何これ?


「先日のンジェグ海賊艦隊の撃退に関する放送が、とても沢山星間ネットワークに流れています。これは、その一つですね。

 負傷したお二人は、我々より先に後方へ下がりましたから、この放送に出演する機会があったのでしょう」

 

 いや、俺の聞きたい事は、そこじゃない。なんか、お祭り騒ぎになっている事を想像させるテロップの事だ。この放送って、報道番組というよりか、ワイドショーなのか? そんな俺の疑問を誰も答えてくれる筈も無く、番組は進んでいく。


『では護衛艦隊司令部が、救援に向かうかを協議している間に東郷艦長が先に決断を下したのですね』

と司会者がミュッリュス少佐に質問をすると、


『ええ、そうです。我々の艦隊は、国賓扱いである東郷艦長と総旗艦フラデツ・クラーロヴェーの護衛が任務でした。その国賓を放置して、救援に向かうか、それとも救援に向かわないか、安易に判断出来ない難しい決断でした。

 東郷艦長は、連合議会議長の名で招待されています。その東郷艦長に、もし何かあると星間国家間の問題になる可能性があり、我々では政治的判断が出来ず、軍司令本部の判断を仰ぎました。

 しかし東郷艦長は、そんな我々を不甲斐無く思ったのでしょう、『総旗艦フラデツ・クラーロヴェー、独断先行す!』との通信を残し戦場へ向かわれました。我々は、軍の存在意義を改めて思い知らされました』

ミュッリュス少佐……。とても好意的に思ってくれるのは嬉しいのですが、戦場へ向かう判断をしたのはハッタで、俺はハメーンリンナへ向かうと思っていました……。

 なんか、この番組見るの胸が痛む。それでも番組は進んでいく。


『総旗艦フラデツ・クラーロヴェーが、3隻のンジェグ海賊艦隊を護衛艦隊が到着する前に撃滅していたという事実も驚きなのですが、警邏艦を襲っていた約5倍の18隻ものンジェグ海賊艦隊に立ち向かうのに東郷艦長は、少しも怯んでなかったとお聞きしていますが本当なのでしょうか?』


『ええ、まさにその通りです。圧倒的多数の敵との戦闘を前にして東郷艦長は我々に【総旗艦フラデツ・クラーロヴェーは、友の為の戦いから逃げたりはせぬ。 さあ、諸君! 自由の為、尊厳の為、愛する者達の為、我に続け】と言われました。

 戦いに臨む全ての者から不安を取り除き、勇気と力強さを与えました。小官は、あの光景を一生忘れる事は無いでしょう』


『その言葉【我に続け】は、オティーリエ王女殿下が、汎銀河大戦の勝利を決定づけたヘルシンゲア会戦にて発したお言葉として後世に伝わっていますが、それを東郷艦長が、絶望的な僚艦を助ける為に不利を承知で戦いに向かう将兵に言われたのですか?』


『ええ、そうです。小官も感動に震えたものです。正に、歴史の一ページに残る瞬間に立ち会っているのだと』

 何か、インタビュアーも不利な状況っていうのを強調し過ぎな気がするし、ミュッリュス少佐も大袈裟な気がするよ。それでも更に番組は進み、警邏艦ミッケリ艦長、アウリッキ・レフティマキ少佐の出番となった。


「むっ、愚妹め、怪我はもう良いみたいだな」

とクリスティーナ。へっ、同じ姓だなとは思っていたけど、姉妹だったの!


「クリスティーナ、愚妹って言ってるけど、レフティマキ艦長は立派な人物だったよ」


「むっ、そうかぁ? 機械化装甲兵ではなく、艦長になった軟弱者だぞ」

ああ、そうね。脳筋思考だと、軟弱者扱いなのね。

でも、俺は知っているよ。極限状態で、自らの死を選ぶ決断が出来る人物だという事を。だから、少し庇おう。


「でもレフティマキ艦長は軍に後から入って、クリスティーナと同じ階級だろ。なら優秀という事なんじゃないのか?」


「うっぐぅー」

何やら、クリスティーナが大きな声を上げて胸を押さえて顔を背ける。


「マスター、機械化装甲兵のレフティマキ少佐は、数か月前に上官の中佐を殴って二度目の降格処分を受けたのですよ。本来なら、もう大佐の地位にあります」


「あっそ。でもハッタ、その情報は知っちゃいけない情報だろ。軍事機密で遊ぶのは止めなさい」

ほんと、どうでも良いな。しかし、ここでサボっている事バレたら、また降格になるぞ。



『という事は、警邏艦ミッケリを守るために総旗艦フラデツ・クラーロヴェーは、盾になりながら戦っていたという事でしょうか。しかも、防御フィールドが消滅してからも』


『ええ、その通りです。敵光子魚雷が総旗艦フラデツ・クラーロヴェーに命中して、防御フイールドが消滅した直後に小官は通信をしました。

 内容は、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーに回避行動を取るように進言したのです。流石に総旗艦フラデツ・クラーロヴェーと言えども、防御フイールド無しでは大きな損傷を受けますから。

 しかし東郷艦長は、冷静に、そして穏やかに言われました。【総旗艦フラデツ・クラーロヴェー健在なり。救助活動に専念されたし】と。

 あの時小官は、東郷艦長にベジャイア会議でのオティーリエ王女殿下姿を見ました。きっと汎銀河大戦に臨んだ者達は、あの時の小官と同じように、この方の為なら死んでも構わないと思った筈です』


『自らの生命の危険を顧みず、友軍の為に戦い続ける姿は、正にオティーリエ王女殿下の御子孫として総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを受け継ぐのに東郷艦長は相応しい人物たという事でしょう』


インタビュアーが、とても上手く纏め過ぎているので、この東郷艦長はとても凄い人物だと思ってしまった。この東郷艦長は、絶対に俺の事ではないな。だって、俺は何もしてないもの。



「マスター、やりましたね。二つもフラグを回収しましたよ」


「何の事?」


「先ずは、【我に続け】です。放送でも言っていましたが、ヘルシンゲア会戦の最終局面でオティーリエ王女が言った言葉です。力強く、決して己の責務から逃げないオティーリエ王女を象徴する言葉として後世に残っています。

 次に、マスターが自分で発せられた【総旗艦フラデツ・クラーロヴェー健在なり】ですが、ベジャイア会議の演説でのオティーリエ王女最後の言葉、【フラデツ・クラーロヴェーが健在な限り戦場に立ち続ける】を彷彿とさせる言葉です。マスターが、オティーリエ王女の意思を受け継いでいるとアスピヴァーラ国は……、いえ全中央銀河は思うでしょうね。

 おめでとうございます。これでマスターは、中央銀河史に名を残す英雄の子孫から、英雄伝説の一人にランクアップしたよ」

 

 眩暈がしそうな話である。だいたい【我に続け】は、ハッタが言わせたんだろ。

 あっ、そうか! 総旗艦フラデツ・クラーロヴェーが、俺の所有なのを誰にも文句言わせないように、あの戦いを利用しやがったな。


「フッ、フッ、マスター。戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものですよ」


あっそ。



そんなこんなで俺は、アスピヴァーラで歓迎され、英雄に成っている事を知った。

実は、あちらこちらにフラグをばら撒いています。

一つは、回収できない事が決定していますが、残りは回収できると良いなぁー。

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