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多分……、宇宙もの……。  作者: わだつみ
4/94

4.姪と気持ちイイー!!

 ビィーン、ガガ、ビィーン、ガガ、ガガ、ビィーン、ガガ。


「ふぅ、一休みするか」

 今俺は購入した島、その名も津久留島(つくるじま)で草刈りをしている。燃料式の草刈り機はパワフルで大変宜しいが、とにかく五月蠅い。しかも、重い。肩紐を通してで背負っているからなんとかなるが、もう少し軽量化してくれないものだろうか。

 しかし草刈り機のお蔭で、港からの道の雑草をほとんど刈り終わった。あともう少しだ、一休みしたら張り切っていこー!




この津久留島(つくるじま)に初めて足を踏み入れたのは、もう一か月以上まえの事だ。夜通し高速を疾走した俺は、そのまま不動産会社に赴き、水上タクシーで津久留島(つくるじま)に乗り込んだ。

 想像以上に立派な港、立ち並ぶ倉庫、別荘地まで続く整備された道、雑草が生い茂っている野原、更に木々が生い茂る森。開発から30年経っているので、全体的に草臥れているが問題は無さそうだった。

 そして何よりも、港からも見える一軒の大きな館。そう、館と呼んでもそん色のない大きな建物。多分だけど、俺の実家の三倍はあるな。

 俺の実家だって、田舎の一戸建てだから、まあまあ大きい部類に入る。なのに父親が一生懸命ローンを払って建てた家が、無人島に立っている空家の三分の一だなんて無情すぎる。


 大きな館の内部は、間取りも大きかった。ダイニング・暖炉のあるリビング・居間・客間・寝室といずれも大きく。四畳半なんて部屋は、存在しなかった。浴室でさえ20平米ぐらいある。畳換算だと10畳以上の浴室に大きな湯船、いったい何人で風呂に入るつもりだったのだろうか。館の中も全体的にくたびれており、やはりリホームが必要な状態だった。 

 

 津久留島(つくるじま)に上陸し一通り見て回ると、漸く不動産会社の社員が値段の秘密を教えてくれた。

 

 不動産会社の社員曰く。

 コロナ禍前の津久留島(つくるじま)の本来の価値は、一億五千万前後だそうだ。しかしコロナ不況で無人島全体の相場が下がり、近隣に大きな都市の無い津久留島は、交通の便が悪く価値が暴落。なんと、一億円程度にまでなってしまったらしい。

 しかしこの不況の中、現金で一億円ポンと出せる者など簡単に見つからず売れ残っていたそうだ。時間をじっくりとかければ買い手も見つかるだろうが、持ち主である関西の不動産会社の状況が、それを許さなかったらしい。

 何時売れるかわからない物件を抱え込むよりも、目先の金を欲した。そして、徐々に値を下げ、ついに半額の五千万円になった時に俺が見つけたとの事。


「まぁ、無人島の値段なんて、オーナーの言い値なんですけどね。でも、これ以上下がることは無いと思いますよ」

との不動産会社の社員の言葉に乗せられた訳ではないが、不動産会社に戻り即日仮契約をしてしまった俺だった。

 その際に、リホームの発注もお願い出来るとの事だったので、お願いしておいた。壁紙などを張り替え、オール電化、暖炉の煙突掃除、古くなった排水設備の修理などなど。費用がやや高いと思ったが、津久留島まで船で行く経費と言われて納得する。


 後日、支払総額を銀行振り込みした後で本契約する事になり、俺も不動産会社の社員達もコニコニで別れたのだった。俺は、良い買い物をしたと満足気で実家に向かった。そう、実際に実家で兄貴に経過を伝えるまでは、ニコニコではしゃいでいたのだった。



 不動産会社であれやこれやとやっていたせいで出立が遅くなり、実家に到着した時には役所勤めで地方公務員をしている兄貴はもう帰宅していた。 

事前に帰宅を連絡しておいたので家族に温かく迎えられた俺は、両親と兄貴、義姉に姪と久々の再開と食事を大いに楽しんだ。

 兄貴は、コロナ過最中の激務で退職者が激増し人手不足で大変だと漏らすので、心に余裕のある状態の俺はここでも愚痴の聞き役になって話を聞いていた。

うん、やっぱ。精神的余裕って大切だよね。どんな話でも、寛容な気持ちで受け止められるぜ。


「で、拓留の仕事はどうなんだ。上手くいっているのか」

この父親の言葉に俺は、東京での段々苦しくなっていく生活の現状を伝えた。そして、でも大丈夫! ロト7当たったから、島を買っちゃったから、船はこれからだけど買うから、大丈夫!


と浮かれている俺は能天気に言い放ってしまった。まぁ、『その日から読む本』を熟読して家族には伝えるべきだと思っていたが、浮かれきった話し方が悪かったのかもしれない、突然兄貴がキレた。


「何をくだらない事に無駄遣いしてんだ。島だー。船だー。そんな物の無駄遣いする金があるなら、親父達のために家に金を入れろー!」


 これにはカチンときたね。だから言い返しちゃったよ。


「たとえロト7で当てたとしても、この金は俺が手に入れた物だ。俺が今後の人生を考えて、好きに使って何が悪い。家に金を入れろというが、両親の年金とこの家を貰っといて図々しいだろうが!」

「何おー、東京の写真学校に行かせてもらっといて、何だその言い種は!」

「別に兄貴が金を出した訳じゃないだろ。それに、専門学校だから2年間だけだ。その後は、全部自分でやった。兄貴は、大阪の大学に五年も通ったろうが!」

酒って怖いね。楽しく飲むのはのは良いけど、ちょっと間違うとエキサイトしちゃうんだよね。ほら、この時みたいに。


 義姉と姪に、牛の喧嘩に仲裁に入るかのようにドウドウと言われながら間に入られ、俺と兄貴はそれそれの部屋に連行されてしまった。


 いかんな、金の事で喧嘩になってしまったから、暫く兄貴とは距離を置いた方が良いかもしれない。

 実際問題40億円を超える金を持っていても、小市民の俺には扱いきれない。普通預金口座に入れているだけで、年間の利子だけで暮らせてしまう額だ。それなら、新生活が落ち着いた後にでも家族に贈与するつもりだったのだが、その前に揉めてしまった。

 でも、ちゃんと説明しなかった俺も悪いが、イキナリ金を寄越せと言った兄貴には、やっぱムカつく。何日か、放置の刑だな。俺のスローライフを指をくわえて見てるが良いー。


 って事を客間に敷いた布団に寝転んで考えていた。俺が子供の頃に使っていた部屋は姪の恵莉(えり)が使っているので、普段は半分物置として使われている客間を使っている。すると、客間のドアをノックする音と俺を呼ぶ声がした。


「たっちゃん入って良い」

「許す。入るがよい」

「あはは、何それ。王様? 殿様?」

この家で俺をたっちゃんと呼ぶのは、母親と恵莉だけ。幼い頃からプレゼント攻勢で手懐けた恵莉には、俺の事を『叔父様』と呼ぶように躾けたが、気が付くとたっちゃんと呼ばれていた。多分、母親と義姉の仕業であろう。

 嬉しい事に今でも懐いてくれているので、俺のつまらないギャグにも良いリアクションをしてくれる。


「お父さんがゴメンね。たっちゃん」

いつもケラケラ笑っている恵莉が、眉をハの字にしている。いかん、俺のハートが痛い。ここは、フォローしなくては。


「気にすんな」

「最近、お父さん疲れてるみたいで……」

「仕事が大変で、苛立っているんだろ。何日かしたら、詫びを入れてくるさ」

「たっちゃん、良く判ってるね」

「伊達に40年近くも兄弟してませんから!」

ああ、良かった恵莉が笑っている。まったく娘に心配させるなんて、父親失格だぜ兄貴。しっかりと義姉にでも怒られて反省しろ!


「ねぇ、たっちゃん。今度、買う島の事教えてよ」

「オッケー、だけど腰を足で踏んでくれないか」

「なに、JKに足で踏んで貰って喜ぶ性癖があるの?」

「ねぇーよ、そんなもん。あったら恵莉に頼まねぇー」

「冗談、冗談。いつもの様に足ふみマッサージね」

幼い頃から背中や腰に乗って踏んで貰っていたので今日もリクエストしたのだが、まさかの返しがきた。、

恵莉はケラケラ笑っているが、俺はそれどろじゃない。もう少しで、新しいプレーを開眼するところだったからだ。しかも姪相手に。


「なになに、冗談、面白くなかった?」

「いや、ただ恵莉も下ネタ言う年になったんだなと思うと感慨深くてな。それにJKが、下ネタ言っちゃー駄目だろ」

「なら、足ふみマッサージしなくても良いのね」

「いえ、すみませんでした。表現の自由バンザイ。足ふみマッサージお願いします」

大人として未成年に一応注意しましたが、あまり本気で無いのを恵莉にばれているのであっさり返されてしまい、すぐさま降参する俺でした。


 それからは恵莉から足ふみマッサージを受けつつ、津久留島や今後の事を色々教えていた。

時より『へぇー、プライベートビーチが在るんだ』とか『海でバーベキューとか楽しそう』とか言っているので、興味を持ったみたいだ。


「ねぇ、ねぇ、たっちゃん。夏休みに遊びに行って良い?」

「オッケー。夏までには粗方片付くだろうし、連絡くれればお迎えに行くよ。なんなら友達連れてきても良いよ」

「嬉しー、ならお小遣い貯めて、新しい水着買わないと!」

「ビキニ限定なら、出資してもええんやで」

「むむ、私に対する挑戦とみた」

「ハッハッハ、どうだね恵莉くん、尻尾を巻いて逃げるかね」

「何そのキャラ、変。でも良いわ、私はどんな挑戦でも受ける! 夏までにお腹の肉を減らして、ビキニが似合うナイスバァディーになってみせる! ビキニ王に私はなる!」

「いや、女の子なんだから女王だろ」

そんな楽しく穏やかな家族の時間を過ごした。


「恵莉ありがとう。ほい、お小遣い」

「ありがとう、たっちゃん。大スキー」

足ふみマッサージをしてもらったし、偶にしか合わないので栄一さん一人を小遣いとして渡すと嬉しそうだ。心にもない事を言って、喜ばしてくれる。


「義姉さんに、貰ったって言っとけよ」

「判ったー。たっちゃんが、気持ちイイー!! って言うマッサージしたら、お小遣いくれたって言っとく」

らぁめー、そんな言い方しちぁらめぇー。

確かに『痛くない?」って聞かれて、『気持ち良いよ』と答えたけど、そんな言い方したら義姉さんに俺が怒られるじゃん。


「うそ、うそ。あはは」

恵莉はカラカラと笑いながら部屋から出ていき、残された俺は、昨夜からの疲れが一気にでた。


そんなこんなで俺は、疲れ切ってそのままふて寝した。

リアル娘が小学生の頃は、足ふみマッサージをしてくれましたが、思春期のリアル娘はしてくれません。

リアルに哀しい。

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― 新着の感想 ―
思ったよりおもろい。 継読決定。 ただ、スバルに乗ってるのは、そう言う装備が必要されるところの住人=田舎と見ているので、田舎に住んでるんだなと思う。 追 この前スバル販売店に行って、衝突軽減ブレーキ…
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