32.モルダヴィア帝国工作艦
なんと! ほんの一瞬だが日間一位になりよった!
何かの間違いでは? と何度も見直してしまいました。
みなさんもエッチィー話が好きなのかな? それともJK?
ここから、話は加速していきます。
「かーせーだー!!」
「えっ、仮性なんですか」
「ちがーう。火星だよ、火星。Marsだよ!」
俺は、メインスクリーに映る火星を見て大興奮!
総旗艦フラデツ・クラーロヴェーに巡り会ってからの俺は、大興奮する日々を送っているが、その中でもトップクラスの大興奮!! だって、他の惑星に到着したんだよ。
米国が、火星探査衛星を送るのに片道2年半もかかるのに、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーは高天原を出て30分もかからずに来たんだよ。すっげぇー!! こんなに簡単に来れて、宇宙飛行士の皆さんゴメンなチャイ。
「マスター、もう宜しいでしょうか」
「ああ、ありがとうハッタ。わざわざ近寄らせてごめんよ」
「いえいえ、これぐらいでしたら、また今度でも」
「ダメ元で聞くんだけど、火星に降りられる?」
「米国の探査機に歩いているところ激写されたら、『火星人発見かー!!』 って記事になりますよ」
「だよねぇ~」
人の世で隠れて生きるのは辛いねェ~。でも、折角ハッタがアステロイドベルトへ向かう途中に、遠回りしてまで火星に寄ってくれたんだ。今は、これで満足しよう。
「では、アステロイドベルトへ向かいます。所要時間は約71分です」
「一時間ちょい! そんなに早く着くの!」
「ええ、現座標から、アステロイドベルトまで約1億500万キロメートルぐらいですからね。光速の約79%の速度で航行しますので、それぐらいです」
光速の79%でそれぐらいという事は……、メッチャ早いということですね……。最近、いろいろと勉強したから判るかなって思ったけど……、俺には理解できなかったよ……。
大騒ぎしている俺を余所に総旗艦フラデツ・クラーロヴェーは、アステロイドベルトへ向かい次々小惑星をスキャンしていく。精密な金属の含有量は判らないらしいが、それでもどの種類の金属がふくまれているかぐらいは判るらしい。
『1700年前のデーターないの?』と聞く俺に、『ありますが、流石に小惑星が移動していて役に立たないものですから』との返答。まぁ、そりゃそうだ。
そして、『これが良いでしょう』とハッタが目星を付けた小惑星に、ロボ太を満載した二隻の内火艇を向かわせた。その後は、ロボ太達を向かわせた小惑星の付近をスキャンして、有用な小惑星を探していく作業を進めるだけ。
そうすると、また俺のする事が無くなってしまう。食事は、済ませた。後は、酒を飲んで寝るぐらい。しかし根が小市民な俺は、ロボ太が働き始めて早々に酒を飲む気になれない。どうしようと考えていると、ある質問をハッタにしようと思っていたことを思い出した。
「ハッタ、亜空間転送ゲートは火星ぐらいまで送れるって言ってたけど、ここからは送れないの?」
「現座標では、無理ですね。少なくとも、あと1億2000万キロメートルは近くないと」
「そっか、残念」
「どうかされましたか?」
「いや、レアメタルを津久留島に送って、販売すればお金がザックザックって思っただけ」
きっと、この時の俺の瞳には、¥マークが浮かんでいたのであろう。ハッタに、思いっきり溜め息をつかれてしまった。
「はぁ~、マスターは、約9600兆円も持っているではないですか。それに、私が売買した株利益もありますよ。それで、十分ではないですか」
でも、あの金使えないよね……。
「あっ、ああ、そうだね。ちょっと、レアメタルを独り占めできると思ったら、目が眩んだだけさ。」
「そうですか、それなら宜しいのですが、会社は年末までに解散させるつもりですよ」
「何故に?」
「もう会社を維持する理由もありませんから。それに、無理して維持しても手間と税金がかかるだけですよ」
「確かに……」
そだね。あの会社『量子技研工業株式会社』は、利益を上げる為に作ったのではなく、あくまでも総旗艦フラデツ・クラーロヴェーを修理する為に作ったんだものな、もう役目を終えたという事か。
しかし、俺は暇だな。
「丁度良い機会なので、マスターに提案があります」
「はい! 何でしょうか!」
暇を持て余している俺は、ハッタの言葉に飛びついた。
「当艦の運用についてのマスターの役割は、今後の目的を明確にする事、予定を承認する事、重要な場面に於いて決断する事が主になります。
雑事に関しましては、私及びアンドロイドが引き受けますのでマスターはノンビリしてくださって結構なのです。ですが、それでは手持無沙汰でしょうから、マスターの無聊をお慰めするアンドロイドを設計しました」
「無聊を慰める?」
何だろう、何が言いたいのか良く判らん。
「はい。シリコンをタップリ使用した、夜用のアンドロイドです」
あっ、ラブさんのことね。それをアンドロイドを使って、エッチィー目的専用に用意してくれるってことか。でも……。
「あー、お気遣いは嬉しいが必要ないよ」
「ほー。それは、また何故?」
「あー、なんて言うか。良く出来たアンドロイドだとしても、非生命体相手はないよ」
うん、ちょっと何かに負けた気がするから。それは、多分俺の性欲だな。
「マスターは、たった今、全世界の偶像性愛症の方々に喧嘩を売りましたね」
「感想は、個人の見解です。全ての方に、同様の効果を保障したものではありません」
「テレビ画面の下に、小さく書いてあるような言い訳ですね。しかし、必要ありませんか。そうですか、折角マスターが気に入りそうなJKタイプを2案用意したのですが、興味ありませんか。なら仕方ありませんね。この提案と設計図は、アーカイブから削除しましょう」
むむ、何やら気になるワードが……。
「あー、折角ハッタが用意してくれたんだから、見るだけ見るよ。メインスクリーンに映してみて」
「おや、私を気遣って、興味ないモノを無理に見る必要はありませんよ」
「いやいや、部下の仕事を確認するのも艦長の役目だよ」
「そうですか、ありがとうございます。では、メインスクリーをご覧ください」
誠意の欠片も無いワザとらしい会話の後、メインスクリーンにセーラー服を着た2人の少女の映像が映った。そして、その少女は……。
「セクサロイドJKタイプ、ナンバー001、固体名『心愛』。ナンバー002、固体名『美華』の二体です。津久留島滞在時のビキニ姿の映像からサイズを計測し、細部まで完全再現したキャストオフモデルとなっております」
「いらねぇーよ、こんなモノ!! 姪の親友をセクサロイドにするって、どんな鬼畜だよ!!」
「おや、お気入りませんでしたか」
「当たり前だ!!」
「では、義姉タイプも用意してありますが、いかがいしょうか?」
「もっと、いらねぇーよ!」
くっそー、ハッタのやつめ! 口を押えて笑ってやがる。最初から、からかうつもりだったな。くっそー。
散々ハッタにからかわれた俺は、拗ねてしまい、艦長室で酒を飲んで寝てしまった。で、目が覚めたら、高天原に戻っていた。
その数日後……。
「マスター、前方の小惑星の陰に金属反応あり、戦闘準備、内火艇の発進中止、ロボ太は所定のダメージコントロール担当部署に配置」
また、アストロイドベルトへ資材を集めに来ていた俺達だったが、あと数分で前回の座標に到着といったところで、ハッタが何かを発見した。
「金属反応って、何に反応したの?」
「小惑星の陰にいますので、詳細は不明です。しかし、人工物であることは間違いありません。主砲の照準をヨシ。主砲発射準備ヨシ」
緊迫したハッタの声が指令室に響く、それが実戦経験の無い俺には正しい対応なのか判らない。しかし、つい先日に重要な判断は俺がしろって言っていたのに、ハッタのヤツもう戦闘する気マンマンじゃん。
「待ってハッタ、確認が先。攻撃するな」
「しかし正体不明艦に、先制攻撃の機会を与えます。当座標域に、銀河中央部の艦船が存在する可能性は低く、敵対勢力の可能性が高いです」
「総旗艦フラデツ・クラーロヴェーの防御フイールトは、強固なんだろ。先ずは、確認しろ」
「……命令を了解しました。当艦を正体不明艦が確認出来る座標へ移動します」
正体不明艦の隠れる小惑星に正対していた総旗艦フラデツ・クラーロヴェーは、ゆっくりと、それでも射線をキープし照準に捉えたまま、小惑星を回り込み正体不明艦を視界に入れた。
CG補正された光学映像に映っていたのは、やや横広がりで400メートル近い全長の宇宙船が、大きさ数キロの小惑星にめり込んでいる姿だった。その宇宙船の後部が、大きく破損している。
「あれは、船体に描がれている国旗からモルダヴィア帝国の艦船と確認しました。形状からみて、工作艦と思われます。熱源反応なし、ステルス機能及び光学迷彩の使用確認できません。完全停止状態です」
正体不明艦の素性を知ったハッタは、落ち着きを取り戻したのかな。詳細を丁寧に教えてくれる。しかし、なんかモジモジしている。あれか! 思いっきり銀河中央部の艦船はいないって言い切ったから、ハズいのか。
「なんですか、マスター。私の事をジロジロ見て」
「べっつにー、何でもナイサー。それよりも、生存者がいると思う?」
「ぐっ、マスターのくせに……。完全停止していますから、生存は絶望です」
「冷凍保存カプセルにコールドスリープなんて機能ある?」
「ありません。コールドスリープは、医師が管理してくれるから出来る事です。冷凍カプセルでは、代謝に必要な栄養補給もできませんから」
「なら、生存者ゼロの前提で艦内捜査をしよう。ロボ太とバルトロメイ達を内火艇で向かわせて」
「はい……」
すると直ぐに二隻の内火艇が、帝国工作艦へ向かって飛び出していった。
「マスター……、先程は申し訳ありませんでした。1700年前の…………、最後の会戦で不意打ちを受けたので、過敏になっていたようです」
「そうか……、なら、次からは良く確認してくれ、攻撃した相手が民間船だったら、目も当てられないからね」
おっ、珍しい、いつも厚顔不遜なハッタがしおらしい。
「はい! 今度は、ちゃんと敵勢確認して、主砲をぶっぱなします」
うん、ほんの一瞬だったよ。今は、全然しおらしくない。では、もう一本釘を刺しますか。
「あー、ハッタさん、武器の使用テストした覚えないんだけど、主砲をイキナリぶっ飛ばすの? 俺、死にたくないんだけど」
「そう言えば、後回しにしていましたね。近いうちに、全装備のテストをしましょう」
としれっと仰ってる。前みたいに何か不具合があると、総旗艦フラデツ・クラーロヴェーが吹っ飛んでたかもしれないのに。
そうして、暫くすると帝国工作艦の破損部分から乗り込んだロボ太達から映像が届いた。メインスクリーンに何分割もされて映るその様子は、異様そのものだった。
帝国工作艦の乗員は全員船外服を着用して、それぞれの部署に於いて整然と亡くなっていた。この艦に何が起こったのかは判らないが、混乱を起こした様子は見て取れない。シートに座っている乗員が、いつ動き出してもおかしくない様子を映し出している。
「モルダヴィア帝国人らしい亡くなり方ですね。死してもなお、その名誉に拘ったんですね」
モルダヴィア人は、自己に厳しく、名誉に拘る。その為に死後発見された時に、死を前にして取り乱したと受け止められては名誉を汚すと考え、このように亡くなったのであろうとハッタが教えてくれた。
「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり……か」
そんなこんなで俺は、宇宙を駆ける者達の覚悟を知った。
拓留が異星人とファーストコンタクトする。
しかし、整然とした中にも苛烈な思いを込めて亡くなっていた。
そして、その姿を見た拓留は……。
次回、総旗艦 Ζフラデツ・クラーロヴェー 「中央銀河連合」 君は、刻とハッタの涙を見る。




