11.だっさい? 獺祭は好きだけど、ダッサイはきらい
シリアスパートは、前話で終了だ!
ハッタ行きまーす!
総旗艦フラデツ・クラーロヴェーとハッタの事を多少なりとも知ったので、色々と尋ねたいことが山積みだが、日本人としては先ず最初に確かめなければならぬ事柄がある。
なので……
「あのぉ~、ちょっと質問があるんですが」
「どうぞ何でもお聞きください。なんなら、私のスリーサイズを教えしますよ」
「いや、アンタAI何だから、スリーサイズなんて無いだろ」
「私の姿は、生前オティーリエ王女が自らの姿を元に作り上げたもので、言わばオティーリエ王女の理想の姿となっています。ですので、理想のスリーサイズも設定してあります」
ああ、なんかハッタの姿がオティーリエ王女に似ていると思ったが、元ネタだったのね。ならば、俺も少しリクエストしてみよう。
「因みになんだけど、ハッタの姿をもう少し若く出来る? 具体的に言うと、日本の17・18才ぐらいに」
「出来ますが、出来ません。そのような、オティーリエ王女を侮辱するかのような加工など出来ません」
はいっ! はっきりと断られてしまいました。うーん、残念。仕方ない、本来の質問に戻ろう。
「どう考えても我が家の家系が、皇統に絡んでるとは思えないんだけど……。はっきり言って、全く関係無い血筋だよ。掠りもしない。なのに何故、オティーリエ王女の遺伝子が俺に?」
そうそれだよね。ここを確認しないと! だって、ハッタの話が本当なら我が家の血筋を辿ると仁徳天皇に繋がるって事だよ。しかも、もし現在の皇族がオティーリエ王女の血を引いていたら、俺達親戚じゃん。かなり遠縁だけど。皇族と親戚かぁ……、何か考えるだけでめんどい。
「勝手ながら、エレベーター地上部に於いて血液中のDNA検査をさせていただきました。この星の住人の体内に存在しない、第五の塩基を確認しましたので間違いないかと」
血液検査って……。ああ、手がチクッてした時か、傷が無かったのは泡まみれになった時に治療してくれたのかな。
まぁ、それは良いとして皇統かぁ……。我が家の血筋に皇統かぁ……。
考える……、考える……、ポクポク……、ポクポク……。何も思いつきません。
考える……、考える……、ポクポク……、ポクポク……。何も、それらしき事ありません。
それでも、考える……、考える……、ポクポク……、ポクポク……、チーン!! あった!!
「母親の実家が、愛媛と高知の境の山の中にあるんだけど、そこに安徳天皇と平家の落ち武者の隠れ里伝説がある!」
「ビンゴー!!」
スクリーンの中のハッタが、ラッパを持ちパフパフ鳴らしながら突然叫ぶ。テンションがイキナリ上がるから驚いたよ。さっきまで、チョットしんみしてたのにな。
「それです。間違いありません。この優秀すぎるAIハッタが保証します。裁判では、通用しませんが」
保障するんかい、せんのんかい、どっちや。って突っ込みたくなる言葉だけど、まぁ良い。取り敢えずは、資格アリってことで。
それよりも、映像の人達の事で聞きたい事があるんだよ。
「さっき見せてもらった映像に……、オティーリエ王女が演説をしている映像に、見慣れない人達が映っていたんだけど……。ええっと、例えば頭の上に耳があったり、瞳孔が縦だったり、耳が細長ったり」
「星系連合軍が結成されたの瞬間の演説映像ですね。少々お待ちください」
とハッタが言うと映像が、さっき見た演説映像に切り替わった。
「ご主人様は、言葉が判らないでしょうから、私が通訳をさせていただきます。では、始めます」
するとオティーリエ王女の映像が動き始め、ハッタがアテレコしていく。
「諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ。何故……」
「ちょっと待った!! それ違うよね、機動戦士な話だよね。ガルマって人がいるのかと思ったけど、ザビって言ったよね」
「ご主人様、少々突っ込みが遅いですよ。私は、このままジーク・ジオンと叫ぶまでいくかと思いました」
「突っ込み前提かよ! 真面に訳せば良いだけじゃん」
「それでは、会話に彩りがありませんから」
「いや、そんな彩いらないから」
「そうですか、それは失礼致しました。私も人と会話するのが、久方ぶりだったものですから、少々羽目を外しすぎたようです」
なんともまぁ、言い返しづらい事を言うものである。
そんな時、俺にお茶を持って来てくれた、なんとなくアシモぽっいロボットがトレーを持って俺の側にやって来た。
トレーの上には、ぶっとい金のチェーンネックレスが乗っている。あれだ、怪しげな仕事をしている胡散臭げなおっさんが身に着けている、ダッサイ金のネックレスだ。
「これは?」
疑問は当然だよね。突然に、ダッサイ金ネックレスを渡されても意味不明だよ。
「翻訳機能内蔵の通信機です。これを身に着けていると、地上に居ても通信できますので、是非肌身離さず身に着けておいて下さい」
と言うが、今日も俺の服装は、ティンバーランドのブーツ、不動産会社の社長から貰った薄緑色のテロテロの布地に背中にカタカナで『ヤンマー』と書いてあるナイスな作業ツナギ。そこに、ダッサイ金のネックレスを装備する……。間違いなくチンピラだな。
「もう少し、デザインどうにかならなかったの? それとも他の物にするとか」
「幾つかある物の中で成人男性が、身に着けてもおかしくない装飾具とデザインを選びましたが、それが何か」
「ぐっ」
確かにダサイが、広く中年オヤジ向けと言われれば、『ぐっ』の音しか出ない。
「では、再生を始めます」
その合図で流れ始めたオティーリエ王女の映像に沿って聞こえてきたのは……。男性の低く渋いバリトンボイス……。まるで銀河万丈さんの声のような……。
「諸君らが愛してくれたガルマ……」
「だから、そのネタはもういいって!!」
「そこは、『坊やだからさ』と言うところですよ」
話が進まねぇー。
そんなこんなで俺は、無表情のまま妙にはしゃいでいるハッタと何故か漫才をしていた。
ハッタが、本領を発揮し始めました。ジーク・ジオン!!




