episode.6 妹たちの気持ち
「飛雄先輩。私と付き合ってください。」
俺に告白をしてきたのは一つ下の後輩、水沢可憐さん。
「ありがとう。気持ちを伝えてくれて。でもごめんね。今はまだ俺は、誰とも恋愛する気がないから水沢さんとは付き合えない。」
「ならまだチャンスがあるってことですよね。わかりました。私諦めません。」
そういうと、その女の子は去っていってしまった。俺はそれを見送りながらため息をつくのであった。
前回の話で、出てきた俺が人気者ということについてここで話そうと思う。
先ほども告白があったが、俺は何度か後輩の子や同学年の子などにも告られたことがある。
妹たちにも嫌われてはいないようだから俺自身も、人柄はいいと思っていた。
小学校から中学までは野球をやっていたこともあり、
スポーツも意外と得意だったり、勉強も前の結果で、9位だったことでわかる通りできる方だと思う。顔は普通だと思うけどな。
そんなわけで俺は意外と告白されることが多い。
もちろんとても嬉しい。だけど今の俺には恋愛なんて考えられなかった。それは両親を失ったってことが大きい。せめて空がもう少し大きくなるまでは俺は、恋愛をしないと決めている。そんなことを思いながら帰り道を歩く。今日はバイトがやすみだった。
「雄にぃーーーーー」
後ろから俺を呼ぶ声がした。
「おう、未来か。珍しいな。俺より遅いなんて。」
「うん。今日日直でさ。日誌書いてたら遅くなっちゃって。」
少し慌てた様子でそう返してきた。
「それより。雄にぃ。また告白されたんでしょ。」
明里もそうだが、未来も本当に勘が鋭い。
「まぁな。それにしても良くわかるな。」
「雄にぃは告白された帰り絶対遠回りして帰るからね。」
確かに言われてみればそうかもしれない。学校から普通なら家まで15分ほどで着くが、もうすでに20分以上経っている。
「雄にぃさ。知ってる。私も実はモテるんだよ?」
自慢げに言ってくる。
「大変だよね。断る身にもなってほいよね。」
笑いながら未来はそう言う。
「まぁ私は心に決めてる人がずっと前からいるからって理由で断ってるけど」
なぜか俺を見ながら、アピールしてきやがった。
「未来、好きな人いたのか?誰だ?お兄ちゃん応援してやるぞ。」
「ばーか。お兄ちゃんの鈍感。もう知らない。」
未来は頬を膨らませながら、先に行ってしまった。帰る方向は一緒なんだけどな。家の前で未来に追いついた。
「「おかえりにぃに」」
いつものように双子がやってくる。
「ちょっとあんたたち、わたしにはないの?」
未来は納得いかなかったようで二人のほっぺたをつねる。
「「未来ねぇえさんもおかえり」」
そう言われると未来は納得したのかリビングに入っていった。
「あれが未来なりの愛情表現なんだよ。」
俺は夢と叶うにそう告げた。
リビングに行くと明里が妙にご機嫌だった。
「あーお兄ちゃんおかえり。もうご飯できるよ。」
空はまた寝ていたため5人で夕食を食べた。
「「「「「いただきます。」」」」」
「可憐ちゃん」
ご飯を食べているとふと、明里がそうつぶやいた。
その名前を聞いて、むせてしまった。
「ゲホッ!ゲホッ!可憐なんでその名前を?」
「えーだって友達だもん。今日お兄ちゃんに告白したのも知ってるよ。」
明里は満面の笑みでそう言った。
「まぁ理由は分かったがなんで、告白をすることを知っているのなら、結果がどうなったかも知ってるはずだろ?なんでそんなに嬉しそうなんだよ?
そこで自分の態度がおかしかったことに気づく。
「あ、えっともちろん。可憐ちゃんがフラれちゃったのは、残念だと思うけど、私もお兄ちゃんを渡すわけにはいかないし。」
「「え?」」
俺と未来が同時に反応した
「お姉ちゃんそれどうゆう意味?」
「あ、えっと、可憐ちゃんはとてもいい子で可愛いし、天使だからお兄ちゃんなんかよりもっといい人がいるって意味だよ。えへへへへへ」
「なんだ。そうゆうことか。」
「ふぅん」
俺は納得したが、未来は納得していない様子だった。
「お姉ちゃん。ちょっと話があるからお風呂一緒に入ろう。」
ご飯を終え、おれはリビングでくつろいでいると、
未来がそんなことをいっていた。
未来はいつも夢と叶と入っているため、そこに明里が入ることになる。まぁ前にもいったが両親が社長だったのもあって風呂場はでかい。
「いいけど。空はどうしよう。」
明里はいつも空とお風呂に入っている。
「俺が後で一緒に空と入るからいいよ。」
おれがそう言うと、
「ありがとうお兄ちゃん。じゃあ行こっか。」
二人でリビングを出ていってしまった。
「久しぶりだね。4人で入るのなんて。」
「うん。そーだね。」
「「やったお姉ちゃんとだ。にぃにも呼んでい?」」
「「ダメ」」
明里と未来は顔を真っ赤にしてそう言った。
「ねぇお姉ちゃん。お姉ちゃんって雄にぃのこと好きなの?」
「え?うん好きだよ。当たり前でしょ?」
「じゃなくて私が言いたいのは、1人の男として好きか聞いてるの。」
未来の言葉にわたしは戸惑いを隠せない。
「えっと。それは.....」
「どうなの?」
「うん」
私はうなづいてしまった。
「そっか。まぁ予想はしてたけどね。」
「未来もなの?」
「うんそうだよ。私も雄にぃのこと好き。大好き。」
私は何も言うことができなかった。未来が続けて口を開く。
「今までさ、パパとママがいたから遠慮してたけど、いなくなってから雄にぃって存在を改めて認識してもっともっと好きなっちゃった。」
照れ臭そうにそう言った。
「パパとママがいなくなって悲しいけど、今はもう平気。雄にぃがいて、お姉ちゃんがいて、夢も叶も空もいてくれるから私はもう大丈夫。だからこれからはライバルとして勝負だよ?お姉ちゃん。私負けないから。」
「私も負けないよ。お兄ちゃんを好きな気持ちは私だって負けてない。」
二人の決意は固まった。リビングでくつろいでいる俺は何も知るよしもないがな。
「夢もにぃに大好き。ずっといっしょにいるもん。」
「叶も好き。にぃには私のものだもん。」
何故かそこで、夢と叶も対抗心を燃やしたのだった。
「じゃあみんなライバルだね。」
俺がリビングでくつろいでると、空が起きてきた。
「おお、空か。今日はお兄ちゃんと一緒にお風呂入るか。」
「うん」
空は満面の笑みでそう答えた。そこにちょうど妹たちが出てきた。
「お兄ちゃんお待たせ。ちょうど空も起きてきたみたいだし行ってらっしゃい。」
「よし。空いくか。」
俺がそう言うと、
「にぃたん。空ね。大きくなったらにぃたんと結婚する。それでね。毎日一緒にお寝んねして、お風呂入るの。」
「そうか。じゃあもし空が大人になってもまだにいちゃんが好きなら結婚しような。」
俺は誤魔化しながらそういった。何故か4人がこちらを睨んでくる。
「これは、面白い展開になりそうだね。」
未来が笑いながらそう言った。そして新たなライバル空が加わったのであった。さっきも言ったが俺はこのことを何も知らないんだけどな。後ろから冷たい視線を感じながら俺はお風呂場へと向かった。