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学校一の美少女との約束成功の報告

【前回までのあらすじ】


斎藤とのデートの約束を成功させた田中は、相談相手である柊にデートプランについて相談する。無事デートプランについて合格をもらった田中は、最後に本人から「積極的にいく」宣言を受けたことに一切気付くことなく、呑気に残り数日に迫ったデートを楽しみにしていた。

「ねえねえ、例の彼女とのデート、どうなった?」


 学校の教室で少しだけ声の大きさを下げて尋ねてきたのは一ノ瀬。どこか期待するように目を輝かせてこっちを見つめてくる。


「ああ、一応デートを誘うことには成功した。快く承諾してもらえたよ」


「そうか、それは良かった。それで、ちゃんとデートについて柊さんに相談したんでしょ?」


「まあな、色々アドバイスというか意見はもらったよ」


「へぇ、なんて言われたんだい?」


「デートプランについては問題ないって」


「お、それは良かったね」


「ああ。色々仕掛ける内容を話している時は微妙に気まずそうにしてだけど」


 やはり他人のそういういちゃつきというのは、女子として何か思うところがあるのだろう。アドバイスを受けていた時の少し恥ずかしそうにしていた柊さんを思い出していると、一ノ瀬は納得したように頷いた。


「まあ、そうだろうね」


「あとは、最後に忠告をもらったな」


「忠告?」


「俺が斎藤にこのデートで仕掛けようとしているように向こうも仕掛けてくるかもしれないから気をつけなさいって」


「へー、そんなこと柊さんが?」


 少しだけ驚いたように目を丸くする一ノ瀬。やはり俺と同じく斎藤が積極的にくる姿が想像できないのだろう。


「ああ、俺的にはあの斎藤が積極的に来るとは思えないけどな」


「まあ、そうだけど……柊さんが言うんだし多少は覚悟しておいたほうがいいんじゃない?」


 どこか楽しそうに一ノ瀬は微妙に口角を上げて微笑んでくる。


「まあ、柊さんのアドバイスだから一応心には留めておく」


「うん、そうした方がいいよ」


 柊さんがわざわざ忠告するということは、女子として何か察するものがあるのだろう。頭の片隅には一応置いておくことにした。


 こうして改めて第三者に話していると、斎藤とデートするのだと実感が湧き始める。彼女が俺の誘いを受けてくれたのは俺のことを信頼してくれているからだろうし、向こうも俺のことを多少は異性として好ましく思ってくれているからなのだろう。

 それがどれだけ稀有なことで有難いものなのかは一応分かっているつもりだ。だからこそこのデートでは、しっかりとリードして男らしいところも見せたい。そのためにも一つ気になっていたことがあったので、それを尋ねてみることにした。


「なあ、やっぱりデートなら格好はちゃんとした方がいいよな?」


「あー、バイト先の格好になった方がいいかってこと?かっこいい方が斎藤さんも嬉しいだろうし、そっちの方がいいんじゃない?」


 やっぱりか。以前初詣に行った時にもっとお洒落した格好をしないのか、と聞かれたことがあった。あの時は俺がバイトをしていることが斎藤にバレる可能性があり断ったが、もし彼女にバレたとしても今なら黙ってくれると断言できるので、あの格好で行っても問題ないはず。


「そうか、じゃあ。そうしてみるかな。初めて見る格好できっと驚かせられるしな」


「初めて、ね。まあ、きっと驚いてくれるよ」


 一ノ瀬は一瞬だけ固まったかと思うと、薄く目を細めてゆるりと笑った。


「だといいけどな」


「変装した後の姿の方が喜んでもらえると思うし、そっちの方がいいと思うよ。それに少なくとも、そっちの姿なら周りの人に田中と結びつかないから、田中が噂されることはなくなるからね。あの格好は変装としてはよく出来ていると思うし、そうそう他の人は気付かないはずだよ」


「そうなのか?お前はすぐに気付いたみたいだけど?」


 バイトに一ノ瀬が来た時、そこまで接触していないにも関わらずこいつは俺の正体を見抜いた。なので意外と変装は上手くいっていないのかと思っていたのだが……。


「まあ、俺は人間観察が趣味だからね。そういうのに気付きやすいんだよ。それに、ネームプレートのヒントもあったし。ヒントもなければ、普通の人ならバイト先のあの格好の田中と学校の田中が同一人物だとは気付けないと思うよ」


 わざわざ嘘をつく理由もないし、一ノ瀬がここまで言うなら本当なのだろう。それに、もし本当なら、仮に斎藤が男と出掛けている噂がまた学校で広まったとしても、その相手が俺だとバレる危険性が減らせる。そういう意味でも一石二鳥だ。


「……そうか、ならバイトの時の格好で行くとするか」


「うん、そうしな。斎藤さん、驚いてくれるといいね?」


「まず、俺だと認識してもらえない可能性が高いけどな」


「……そうだね。でも、話せば本人だと分かってくれるんじゃない?」


「その前にもの凄く警戒されるのがオチだな」


「それはありそう。まあ最終的には気付いてくれると思うよ」


 話しかけた瞬間にあの最初の頃の冷たい目線で睨まれるのが容易に想像つき、苦笑がこぼれ出る。それでも話せば本人だと分かって貰えるだろう。誤解を解く手間は面倒だが、それで少しでもかっこいいと思ってもらえるならいくらでも頑張れる。


 驚く斉藤の姿を想像して、さらにデートが楽しみになった。


次回からデート回です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一ノ瀬というキャラクターはいらなかったと思う
[良い点] 斎藤さんの攻め手、楽しみすぎるw
[一言] 遂に来たかって感じですね。次回も楽しみにしてます。
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