第15話 学校一の美少女は相変わらず人気
「今日、隣のクラスも調べ物学習があるらしいぜ?」
「まじかよ、じゃあ斎藤さんもいるんじゃね?」
「まじで可愛いよなー、話しかけるのは怖くて無理だけど見るだけで眼福」
「それな」
特段小声という訳でもなかったのでクラスメイト達の会話が聞こえてきた。
今、放課後でないにも関わらず、図書館へ向かっている。なぜなら授業の一つで調べ物学習というのがあるからだ。
その名の通り、図書館を利用して資料を調べて発表する授業なのだが、スマホがあるこの時代にネットを利用しないなんてのはいささか時代遅れな気がしてならない。
まあ、不満を零したところで変わる訳ではないので、大人しく授業のために図書館へと移動していた。
図書館へと入ると、普段は人気が少ないはずの館内は少し騒々しく、ちらほらと人が歩いたり話したりしている姿が目に入った。
さっきのクラスメイトが言っていた通り、別のクラスも調べ物学習でこの図書館に来ているらしい。
普段と異なる図書館の雰囲気に違和感を覚えながら、資料を探し始めた。
元々発表するテーマは決めていたので、それに関連した資料を集めてさっさと席に座る。
既に多くの人が席に着いていて、もしゆっくり探し物をしていたら座れなかったかもしれない。
座れたことにほっと一息をついていると、ふとさっきまでのクラスメイトの会話を思い出した。
(あいつ、いるのか?)
こっそりと辺りに視線を巡らせて見れば、人が沢山いても際立って目立つ容姿の少女が斜め前のテーブルに座っているのを見つけた。
ただ読んでいるだけで様になるなんて、美少女というものは得なものだ。
資料を真剣に読んで座っている斎藤に視線が吸い寄せられている男子も多くいた。
目を向けたのは一瞬だったがそのタイミングでたまたま顔を上げた彼女と視線が交わる。
遠目ながらぱちりと目が合ってしまい、気まずげに視線をさ迷わせれば彼女の口許にはくすっと小さな笑みが浮かんだ。
「え、嘘、笑った!?おい、今斎藤さん笑わなかったか?」
「悪い、見てなかった。だけどどうせ見間違いだろ。塩対応で有名な斎藤さんだぞ?無表情以外誰も見たことないのにこんなところで笑うかよ」
「本当なんだって!今、絶対笑ったんだって!」
俺の隣に座っていた奴も彼女の笑顔を見たらしく、必死にそいつの友人らしき人に話しているがその友人は鼻で笑って全然信じようとしない。
当然と言えば当然か。あの彼女が笑うなんて誰も想像がつかないだろう。俺も最初見たときは同じように驚いたものだ。
あの頃に比べれば、表情が豊かになってきたので多少は心を許してくれているのだろうか?
こんな学校一の美少女と関わりを持っていることに未だにしっかりとした実感を持てず、もう一度だけ彼女の方を見てしまった。